13歳の時に出会ったエトを曇らせる話   作:お稲荷さま

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3話

 

次の日の朝

 

「おはようー母さん朝ごはん出来てるー?」

 

「おはよう、今からパン焼くからちょっと待っててね」

 

 土曜日という事もあって少し遅めの9時頃に起き、朝ごはんを食べる。

 

 寝ぼけながらパンを食べてると、鼻水が出てきた

 

「母さんティッシュ取って〜」

(ご飯食べてきてる時に出てくるのはやめてほしいな…)

 

「はいどうぞ」

「ありがとう」

 

 母さんからティッシュを受け取り鼻をかむ。

 

(ん?少し水っぽいな……)

「うお!鼻血出てる」

 

「あら本当、最近乾燥してきてるしね加湿器でも買う?」

 

「うーん、あんま鼻が乾燥してる感覚無かったんだけどなぁ」

 

「どっかで鼻でもぶつけた?それとも昨日言ってたエトちゃんと遊ぶから興奮してるの?」

 

「もう!母さんまたかよ昨日も言っただろ、そんなんじゃないって」

 

「でも善吉あんまり女の子の友達居なかったじゃない?だから嬉しくて」

 

「嬉しいなら変な事言わないでよ」

 

「今度母さんにも紹介してね、母さんもその子が書いた作品読んでみたいし」

 

「はいはい、わかったよ」

 

 昨日からどこかワクワクしてる様な母さんを流しつつ鼻にティッシュを詰めパンを食べる。

 

(そういえば、3日前も学校で鼻血出てたっけ?加湿器買ってもらおうかな……)

 

「善吉そういえば今日はお昼ご飯どうするの?サンドイッチでも作ろうか?」

 

「ありがとう母さん、お願いしようかな」

 

「あなたは夢中になるとお昼食べるのも忘れるんだからエトちゃんもいるかしら?少し多めに作っとくわね」

 

「まぁ、もし食べなかったら俺が食べるから多めにお願い」

 

「母さんが作ってる間に準備しちゃいなさい」

 

「あーい、歯磨いてくる〜」

 

 朝のテレビを見るともう10時前だぼちぼち準備しよう。

 

(昨日の神社はだいたい歩いて20分くらいだし10時半くらいに出ればちょうどいいかな)

 

 歯を磨き、寝癖を整えて、鼻に詰めてあるティッシュを外す。

 

(完璧!さて、そろそろサンドイッチもできてる頃かな)

 

 リビングに行き様子をみると母さんは作り終えてテレビを見ているところだった。

 

「善吉そこのバケットに入ってるわよ〜」

 

「ありがとう母さん、じゃあ行ってきまーす!」

 

「行ってらっしゃーい」

 

 バケットを取り、ドアを開けようとすると向こう側からちょうどドアが開いた。バンッと勢いよくドアにぶつかる。

 

「あら、大丈夫?結構いい音したわね」

 

「善吉、居たのか!すまん気づかなくて大丈夫か?」

 

「うん、音はすごかったけどあんまり痛くなかったし、行ってきます!」

 

「おー、大丈夫ならいいんだが結構勢いよくぶつかってた気がしたんだがなぁ」

 

「まぁ大丈夫って言ってるし、でも貴方も気をつけてよねさっき鼻血出てたんだから」

 

「気を付けます……」

 

 

 俺の状態について話しているが早く向かいたいので両親が話し合ってるのを横目に見ながら玄関に行き靴を履く。時間に余裕はあるが早くエトが書いた小説を読んでみたい。

玄関を飛び出し走って昨日の神社まで向かった。

 

 

 

 ――――――――――――――

 

 

「ハァ、……着いた」

 

 走って上がった息を整え神社に入る。明るい時間帯に来たからか、昨日とは雰囲気が違う。木陰と少し冷たい風が火照った体には気持ちが良い。

 

 賽銭箱の方に視線を向けると、昨日帰り際に見たのと同じシルエットが見える。時間には遅れてはないみたいだが、足早に駆け寄る。

 

「エト!おはよう、早くついたのか?俺時間間違えてないよな?」

 

「うん、大丈夫だよ。ちょっと早く着いてしまってね、それに善吉くんも早いんじゃないのかい?まだ11時前だろう?」

 

「楽しみだったから走ってきたんだ」

 

「そっか、早めに来た甲斐があったね」

 

 そう言って軽く微笑む。子供らしくない少し大人びた表情をしている彼女に見惚れていると

 

「どうしたんだい?そんなに疲れたの?」

 

「いや、何というか、綺麗だなって」

 

「おや、ナンパかい?意外とやるねぇ善吉くんおねぇさんを口説こうなんて。」

 

「え……エトって俺より歳上!?なのですか!?」

(めっちゃタメ口だし、お前とか言っちゃってた!)

 

「なにその変な言葉遣い………くくっ、大丈夫……君と同じ13歳だよ」

 

「だよな!良かったぁ、あれ?歳教えたっけ?」

 

「いや?昨日のテストに一年って書いてあったし」

 

「なんだよ、からかったのか?」

 

「いや…ふふ、ごめんごめんまさか本当に信じるとは思ってなくて…」

 

 

「全く俺の周りには俺をからかう人しかいないのかよ」(両親と言い、エトも俺を小馬鹿にしやがって)

 

「おや?他にもからかわれたのかい?」

 

「うん、昨日エトのこと話したら父さんも母さんも俺に春が来たとか言って、俺がいかにエトが凄いかってのを説明してるのに真面目に話を聞いてくれないんだぜ?」

 

するとエトは鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔をしながら

 

「そんな事話してたのかい?随分と買われてるみたいだね私は」

 

「だってあんな風に小説が楽しめるなんて初めてだったんだぜ?まるで頭ん中で劇でもやってるみたいだった」

 

「面白い表現をするね君は」

 

「それより、小説持って来てくれたんだろ?見せてくれよ」

 

「はいはい、そう急かしなさんなちゃんと持ってきてるよ。君も何か持ってるみたいだが何を持ってきたんだい?」

 

「これか?母さんがサンドイッチ作ってくれたんだお昼にってエトも食べるか?」

 

「ん〜今の所はいいかな、さっき食べたばっかなんだ

 はい君が読みたがっていた小説だよ。と言ってもまだ完成してないんだけどね」

 

エトが鞄の中から原稿用紙を取り出す。本になる前の小説が何だか珍しく早くもドキドキとワクワクが押し寄せる。

 

「どんな物語なんだ?題名とかは決まっているのか?あとどのくらい書くんだ?」

 

テンションが上がり次々に早口で質問する。

 

「小説のネタバレはたとえ作者であってもしてはならないものだよ。ふむ、でも題名か今は何も書いてなくて【空白】だけど……【拝啓カフカ】にしようかな!」

 

そういってエトは空欄に題名を書き入れ用紙をこちらに向ける。

今目の前で本のタイトルが決まった事がさらにワクワクを膨らませる。

 

「なんかおしゃれそう……!とりあえず読ませて!」

 

 原稿用紙を受け取り早速読み始める。

 

 ――――――――――――

【ある朝、目覚めると、虫になっていた】とある小説の冒頭に使われている言葉である。今まで出来ていた事が突然出来なくなったり、目覚めた時には何もかもが変わっていて急に周りが自分の事を化け物にでも接するかのようにしてくる。何が何だかわからない。困惑、憤り、世の不条理、悲観、絶望それらを感じる事になるだろう。

 それでは【初めから虫として生まれてきたものはどうなるのだろう】。もちろん虫は住む世界が違い、人間と同じ様には考えられない為、世の中を恨んだり羨んだりはせずそのまま生きていくのだろう。しかし一度でもその甘美な世界を知ってしまい住む世界が重なってしまったら?それらを人間と同じ様に考える力があるなら先ほどの虫になってしまった人と同じ様に困惑、憤り、世の不条理、悲観、絶望それらを感じ羨む事になるのではないだろうか。

 初めは人間で虫になってしまった場合と

 初めから虫として生まれた場合

 【人と虫にはどんな違いがあるのだろうか?】

〜〜〜〜

〜〜〜〜

 

 ―――――――――――――




後半にある小説もどきは原作のものと一切関係ありません。作者が考えて書いてみただけです。

元にしたのはフランツ・カフカによる[変身]という小説にある言葉です。
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