早くも検査入院の日になった。今日から2泊3日ここで過ごし色々な検査をしていく。運動機能の変化、症状がどの程度まで出ているのか、何故Rc細胞が過剰に分泌されているのか。何百万人に一人くらいの確率でしか発症しないから、まだまだこの病気について調べる事が多いらしい。
入院中にRc細胞の値を調べるとかで色々な所から採血をされたがいつもよりあまり痛くは無かった。しかし何箇所も針を刺されるのは精神衛生上あまり良く無い……。痛いかどうかでは無く体に針が刺さり、血を抜かれてるって事自体がそもそも精神的に良く無いんだろう……。あまり知りたくは無かったけど。
病院食は不味いと聞いた事があるが普通に美味しくてびっくりした。これは良い発見だ。しかしメニューが偏っていた気がするんだけどこれも何かの検査なんだろうか?
嘉納side
彼の体を検査、研究してわかったことはRc細胞値が1番高まるのはやはり食事の後であり、顔付近に多く蓄積されていることがわかった。やはり普通の人間の食事から摂れる栄養をRc細胞に変換させている。食後に毎回血液検査をしたのだが、肉を食べた時が一番Rc値が高くなり、逆に米やパン、麺等はあまり上昇は見られなかった。タンパク質をRc細胞に変換させているのだろう。
彼自身は紛れもない人間であるため喰種の
喰種のRc値が1000〜の事を考えると彼の数値は800とかなり高いその割に症状がほとんど出ていない。可能性があるとしたら彼が高いRc細胞値に耐えられる体質であることも考えらるか……。また傷の回復も頭側が早く。足の方は一般的な回復速度に落ち着いている。しかしどの程度まで耐えられるか実験をしようにも、家族に反対される可能性もある。あまりしっかりとした研究は出来ないか……。
善吉side
様々な検査が終わり3日目、今回の検査入院で分
かった事を先生が両親と俺に説明してくれるらしい。
「先生善吉は大丈夫なのでしょうか?あれから色々と調べたのですがROSについてあまり出てこなくて」
前回の説明の時にいなかった父親が少し焦った様に聞く。
「そうですね。ROSは発症例が少ないので調べても簡単な事しか出てこないんですよ。それで今回分かった事ですが、善吉くんは今のところは症状が進行することは無いと考えられます。」
確信してるかの様に先生は言っているがそんな事が本当にわかるのだろうか……。
「「そうですか……よかった」」
やはり心配だったのだろう両親は先生の言葉に心底安心している様だ。
「先生この病気わからない事がたくさんあるんですよね?なんで進まないってわかるんですか?」
あまりにも簡単に言われた為疑問に思った事を聞く。
今回の検査で原因がわかったのだろうか?
「まず、善吉君のRc細胞の数値が高くなってるのは食事によって増えている事がわかったんだ。だから薬によって進行を送らせつつ、食事に気をつければ進行は遅れ今の所は他のROS患者の様に症状が進行する事はないってわかったんだ。」
「ご飯って何を気をつければ良いんですか?」
「細胞の数値が高くなるのは動物性タンパク質を摂取した時なんだ、だから出来るだけお肉を食べずに他のもので栄養を摂ってくれれば進行は抑えられるよ」
「肉が食べれないんですか……」
「一週間に一回僕の所に来てもらって検査をするんだけどその月の初めはRc抑制剤を打って検査をする。その前の一食分だけはお肉を食べても大丈夫だよ。」
ありがたい話ではあるが調べたところRc抑制剤は貴重で高いらしい、それを月一で打ってしまったら物凄いお金がかかるんじゃ?
「先生、お肉は食べたいですけど、月一で薬を打つのはお金がかかってしまうんじゃ……それならお肉は食べたくないです」
「「善吉……」」
「そこは気にしなくて大丈夫だよ。基本的な日常では鼻血が出てしまってなおかつ検査キットで陽性が出た時のみRc抑制剤を使ってもらう。だけどそれ以外は使わなくていいし、ここでの検査では君の珍しい症例を研究するって目的で使わせてもらうからね。こちらで負担させてもらう。……ただし検査に来て調べさせてもらう事が条件だけどね。」
嘉納先生は心配させない様に優しい笑顔で説明してくれた。俺の病気を治すために調べてくれてしかも月一の薬代まで負担してくれるなんて……なんて良い先生なんだ…!
「嘉納先生!ありがとうございます」
「「ありがとうございます」」
俺と両親は揃って頭を下げた。
――――――――
「と……いう事でまぁお肉はあんまり食べれなくなっちまったけど遊ぶのは問題なし!後は副作用?的なので怪我が治りやすくなったりとか、後はちょっと感覚が鈍くなったりするらしい」
「らしいって君の体だろう?もう少し自分の体に興味持ちなよ……」
検査が終わった後いつもの様に家で遊びながら検査の結果をエトに話す。
「急に寒くなったよなぁ、雪でも降りそうだ」
「鍋が美味しい季節になってきたねぇ」
もうすっかり寒くなり外より家で遊ぶ事が増えた。そのついでとばかりにエトは母さんに料理やコーヒーの淹れ方を習っている。土日はエトがお昼ご飯の手伝いをしてる。最初は焦がしたり、形が不揃いだったりしたが今じゃもう母さんのと見分けがつかないほど料理が上手くなっている。毎回エトの才能には驚かされる。
「にしても、毎回飲み物でコーヒー出してくるのはどうにかならないか?」
「良いじゃないか……美味しいし。それに練習に付き合ってくれるって前言ってた気がするんだけどなぁ」
「まぁ、そうだけど。お昼と合わない時にも出されるのはなぁ……」
「なんだい?私が淹れたコーヒーは飲めないって言うのかい?不満があるならもう淹れるのやめようか?」
「いやいや、とんでもないです。とても美味でございます」
少し不満はあれどエトが淹れるコーヒーは母さんと同じくらい美味しいのでここのところコーヒーが好きになりつつある。本を読んだりまったりしてる時に飲むコーヒーはめちゃくちゃ美味いのだ。
「ところで善吉くん?見た所今君が持ってるのは小学生の国語の教科書だと思うんだけど、まさか小学校の勉強からやり直してるのかい?」
「そんなわけないだろ。エトのおかげで小説を読むのも好きになってさ、小学校の頃って何のってたかなぁて気になって読み返してるんだ。」
「なるほどね、何か面白い話はあったかい?」
「ん〜、ごんぎつねとか改めて読んでみると面白い話だなぁって思った」
「ごんぎつね、ねぇ……小学四年生で授業をするには少し残酷な話だよね。悪戯をして後悔した狐が、男に食べ物を運んでたらまた悪戯されたと勘違いされて撃たれちゃう話だろう?どこが面白いと思ったんだい?」
内容としてはエトが説明した通りだが改めて読み返すと前は気にならなかったごんの気持ちや考えが気になり始めた。作者が本当にそんな意図で書いたのかわからないけどなんと無く気になった事をエトに共有する。
「最初読んだ時はごんが死んじゃって可哀想だなって思ったくらいだけど、改めて読むとただ可哀想って訳でもないのかなって」
「ふーん?どこを読んでそんな風に思ったんだい?」
さっき読んでて気づいたらところをエトに見せる。
「ここなんだけど、自分が運んだ栗や松茸を神様のおかげって事にされてひき合わないなぁって言ってるだろ?」
「そうだね。さっきの善吉くんみたいに不満がある様に感じるね」
さっきの事を思い出しからかってくるが今はそれより会話に集中したい。
「そこはもう良いだろ……この言葉からごんはじつは自分が栗や松茸を持ってきてる事を知って欲しかったんだろうなって」
「確かにそんな感じはあるよね。でも殺されてしまったら意味がないというか、結果論的には知られない方が良かったんじゃないかい?」
「でもさ、最後にごんが頷いてるんだ、もし自分の死や、知られた事に後悔してるんだったらいちいち頷いたりしないと思うんだ。だからごんは最後に知ってもって良かったって思ってたんじゃないかなって」
「ふーん、そこまでしてごんは償いがしたかったのかね?」
「なんとなくだけど最初は確かに償いが目的だったんだろうけど、途中からは償いをしたかったんじゃなくて友達が欲しかったんじゃないかなって。悪戯ばっかりしてたのもそれが理由なんじゃないかなって思うんだ。」
「おもしろい考えだね。確かに可哀想な物語として読むよりそっちの方が面白く感じるね」
「だろう?いろんなみかたが出来ると読むのが楽しいよ」
ひと段落したところでコーヒーを飲む。やっぱりエトが淹れたコーヒーは美味しい。
こうして二人でゆっくり雑談をしながら過ごす日常は幸せだ。
嘉納医師は善吉達には優しく見えてますが善吉の事を考えているというより研究のことしか考えてませんその為の優しいふりみたいな感じです。
ごんぎつねは作者が好きな話です。