私の名前は
あれはひどく疲れた夜だったか。疲れていた理由は分からぬがとにかく肉体が疲れという疲れに蝕まれていた夜のことだ。私は普段寝るときにはイヤホンをつけて耳かき音声、いわゆるASMRを聞きながら寝ているのだが、その日は無線イヤホンの充電を忘れていて有線イヤホンを使ってASMRを聞いていた。そういうことは以前にもあったので特に気を付けることもなくそのまま横になったのだが気づいたらそのままぽっくり逝っていしまった。
世の中には餅を喉に詰まらせて死ぬ人やチーズを頭にぶつけて死ぬ人がいるがイヤホンが首に絡まって死ぬなどという死に方は平日の朝、テレビ番組で放送され、そのまま通勤中の人に呆れられるくらいには馬鹿げた死に方である。
そんなどうでもいいことは置いておいて、私が生まれ変わった世界はブルーアーカイブと呼ばれる世界である。そう、創作の世界なのである。始めは全く気付かなかった。目が覚めてすぐ目に入ったのは青く塗られた天井であり周囲を確認してみれば一人暮らしでもしていそうな部屋だった。部屋をあらかた確認して鏡に映る自身がきれいな藍色の髪の美少女だったことを確認して、ようやく家の外に出た。
外に出てしばらくは道行く人々が犬だったり猫だったりロボットだったりと人型の生物が見つからなかったのでここはそういう世界なのだと思っていたが、玄関に立ち尽くして数十分、大きな破裂音のような音とともにヘルメットをかぶった後輪のある少女たちが拳銃やら突撃銃やらを携えて罵声を浴びせながら銃撃戦を始めていた。
私は初めて聞いた銃声にびっくりしてすぐに家の中に引っ込んでしまったが銃声がやんでしばらくして外を見にいったとき血痕が一つも見当たらなかったのでここはそういう世界なのだと天を仰ぎ見た。ついでに空にヘイローを巨大化した輪っかのようなものがあるのを見て、ここが過去数々のミームで有名になった?ブルーアーカイブというスマホゲームの世界だと確信を得た。
ここがブルーアーカイブの世界だと知っても私は喜びはそんなになかった。なぜならば私がブルーアーカイブを遊んだことがなかったからだ。正確に言えばエレベーターからキヴォトスを眺めるところまでは行ったのだが、そこで電話がかかってきてアプリを閉じてしまいもう一度同じシーンを見るのが面倒くさくやめてしまったのでほんの少しだけ知っているのだがこんなもの知っているの内に入らないだろう。
私がブルーアーカイブについて知っているのはものすごく治安が悪い世界であること。銀行強盗が蔓延っているということ。透き通るような世界観を謳う便利屋…便利屋……便利屋47がいることくらいである。
ここが私の良く知っている創作の世界ならば物語に関与、いわゆる原作介入したり不幸な結末を迎える登場キャラクターを助けたりできたのかもしれないが、私はブルーアーカイブをよく知らない。また便利屋…007が言っていたようにこのゲームは少女たちの青春がテーマだったはずなので登場キャラクターが死ぬような重い展開はないはずである。また何かするにしても前世の動画配信サイトのショート動画にあった「先生が〇〇してしまったときの生徒の反応」を見る限りブルーアーカイブという世界はIFエンドが相当重い者なのかもしれない。
それらの理由から私は原作に関わることなく前世でやりたかったこと、やってみたいことをして今度こそ充実した人生を送ることを決心した。本当は人の来ない山の中で一人でスローライフをしようと思っていたのだが、どうやら私にも後輪(ヘイローというらしい)がついており生徒であるらしいので学園に通わなければいけなかった。もちろん学園に通わなくても生きていくことはできるのだが、この世界では学園に所属しているということが前世での住民票のような役割を果たしていて、生徒は学生証がなければ都市内の様々なサービスを受けられないそうだ。
私はスローライフ志願だったので衣食住の確保は自力で何とかしようと思っていた。が、この世界は治安が悪く、そのため怪我も絶えないため医療機関にお世話になることが多い。学園に所属していればその学園にある医療組織が無料で治療してくれるし、たとえ民間の医療機関を使うにしても学生証があれば格安になる。私は衣食住に関することはすべて自分で賄おうと思っていたしできるつもりでいた。しかし医療の心得はないため先ほど述べた怪我やまた流行り病などの病気はどうしようもない。そのため私は学園に所属することを決めた。
それに伴い私は学園生活中にできる”したいこと”を考えた。やはり学園生活といえば青春だろうか。この世界の原作でもあるブルーアーカイブも青春をテーマにした作品だったはず。それとも前世からの趣味だったASMRの作る側になってみようか。あるいはゲームの世界に生まれたからにはとことん強さを求めてもいいかもしれない。この世界はちょっと物騒みたいだから……。
そんな風にいろいろ考えて数か月、現在私はミレニアムサイエンススクールで音研究同好会として活動している。
「あ、いいわ。そこっ、ぐりぐりってするの。んあッ」
「ふふ、気持ちいいですか?調月先輩」
「ええ、もっと奥、おねがい・・・あっ」
「かわいい声出ちゃってますよ、先輩。もうちょっと声我慢してくださいね。ふー」
「ひゃっ、ちょっと、いきなりは反則じゃないかしら?
「ごめんなさい、先輩があまりにもかわいいからつい…ね?」
「もう…」
ついでになぜか耳掃除の同好会もしている。なぜ同好会かって?それは、部員がわたし一人だからさ。
文豪の皆様、どなたか続き待ってます。