こんにちは。ミレニアムサイエンススクール1年の響楽ナミネだ。私がキヴォトスに転生して早数か月、いろいろなことがあった。
今世にてやりたいことを決めた私が始めにしたことは私が通う学園選びである。幸いにして私が目覚めたこの家はインターネットにつながっていたので情報はすぐに入手できた。
通う学園なのだがやはり最初に見つかったのはキヴォトス3大校で校あるトリニティ、ゲヘナ、ミレニアムの3校である。
しかしトリニティはいわゆるお嬢様学校と呼ばれる場所らしく前世でどのような身分であったかは知らないが珈琲も紅茶も美味ければどちらでもいいだろ派だった私とは肌に合わないだろうと感じた。
ゲヘナもまた、自由と混沌を校風としており、銃撃戦の絶えないキヴォトスの中でもいっとう治安が悪そうに見える。残念ながら私は銃声や暴力が苦手であるため論外である。
ミレニアムは前2校と違いひたすらエリートであるという印象だ。敷地内の建物や設備は前世よりも最先端であり近未来型の都市というイメージを受ける。そのようなエリートたちの集まる学校のため治安はいいのかと思いきや案外そうでもないらしい。なんでも研究肌の人間が多いために手段を選ばない研究、開発の結果の事故やセミナー、ほかの学園でいう生徒会の役割をもつ組織への襲撃など他2校と比べると事件数は少ないがそれでも治安は良いとはいえない。
ある程度規模の大きい他の学園については前世日本の古代・中世と雰囲気の似通う百鬼夜行連合学院や一学園でありながらキヴォトスの鉄道機関を総括するハイランダー学園、かつては3大校に匹敵するほどの規模でありながら原因不明の砂嵐と急激な砂漠化により衰退したアビドス高等学校などいろいろな学園があった。
しかし私のやりたいことの一つにASMRを自分で作るというものがある。キヴォトスにマイクや立体音響機械があるかはわからないがどちらにしろ機械や技術の最先端であるミレニアムは私のやりたいことを叶えるのにぴったりである。
百鬼夜行連合学院は私の前世が古き良き日本の文化や風流を好んでたのだろうか、自然とこの学校の雰囲気を好んでいた。
アビドス高等学校についてはここ数か月ある出来事があり少々気にかけることがあるのだが私は暑いところが苦手なので遠慮したい。
そういうわけでミレニアムか百鬼夜行と悩んだ結果、現在住んでいる場所がミレニアムのほうが近いのでミレニアムに行くことに決めた。
ミレニアムに入ると決めた私が次にしたことは勉強である。前世の私がどのくらい勉強できたのかは知らないがミレニアムの入試過去問を開いて呪文書のように感じてしまったほどの知識量だったので猛勉強した。数学など大嫌いだ。もう二度と数字などみたくない。
試験当日、ミレニアムの自治区はとても広くて迷子になりそうになったが、キリッとした赤い目に綺麗な黒髪を持つ女性にしては高身長な先輩に案内してもらい事なきを得た。
……とってもクールでかっこよかった。
入学して1か月経っていろいろなことがある程度落ち着いてきたのでセミナーにASMR部を設立しようとセミナーに申請しに行ったのだが肝心の部活設立の規定をこれまでの1か月で確認しておらず、設立条件を満たせなかったため設立できなかった。
セミナーに行った際なのだがもうすでに1年の役員がいて驚いた。前世では生徒会役員は選挙制で決めるものだと思っていたが私が知らないだけで実は選挙をやっていたのだろうか。
本人は「にゃははー私は先輩に捕まっ…スカウトされたんですよー」といっていたがセミナーの先輩方が自らスカウトに来るとは彼女はとても優秀なのだろう。
仕方がないので部活として活動するのを諦め同好会として活動することにした。活動場所や機材の問題もあったがエンジニア部と交渉して場所と機材開発を約束した。対価としてエンジニア部が開発した新商品のテスターをすることになったが……。
そして今日、依頼から4日目の朝、私のスマホに機材完成の連絡が入りエンジニア部の部室へ来ていた。
「やあナミネ、約束の配信機材だよ。本当ならもっとロマンを詰め込みたかったんだ依頼料が依頼料だったからね。今回はおふざけなしだ」
「白石先輩、まず余計なものをつけ足さなかったのはありがとうございます。私にとっても思い入れの深いものだったのであなたが真摯に取り組んでくれたことには感謝します。……ところで、私が依頼したのは4日前でしたよね。あなたの技術力を疑っているわけではないですが、いささか早すぎませんかね」
「ふっふっふ、キミが疑う気持ちもわかる。なにせこの技術はキヴォトスでは初の試みだろうからね。私も初期構想だけで2日かかった。といっても機械から音声を出す技術自体は以前からキヴォトスで広く普及していたし立体音響を出すことも半日でできた。しかしこの立体音響というのは実に興味深い。ただ音が立体に聞こえるだけではあの気持ちよさは味わえない。実際の耳かきでは音の心地よさもあるがなにより耳壁を撫でられるくすぐったがなんともたまらないものだが音を発する立体音響では感触までは再現できなかった。最初は音声に合わせて耳かきをしてくれる形にしようと思っていたのだがそれでは耳かき用のアームに音が反響してどうしてもリアルな音質を損ねてしまう。それに……」
「……先輩、先輩が私の趣味を熱く語ってくれるのはとても嬉しいことなのですが、いったん落ち着きましょう?先輩睡眠時間を取れてませんよね。目の下の隈がすごいし、なにより目の充血もひどい――」
「そこで私は思ったんだ。やはり小細工なしで音の質のみで勝負するべきだとね!しかし音質も奥が深い。細かい音まで拾うようにマイクの感度を上げると部屋の換気扇の音まで拾ってしまうし、なによりホワイトノイズがひどくなる。逆に鈍感にしてしまうと耳かきはもちろん耳ふーの音圧が下がり気持ちよさが激減してしまう。正直そこらへんは個人の好みの問題になってくると思うのだが……」
「先輩?先輩の愛は十分に伝わりました。ですので一旦仮眠室に行きませんか?ベッドで私が耳かきしてあげますよ」
「なにっナミネの耳かき?!了解した。すぐにベッドに行こう!」
「あっちょっ、先輩!急に腕つかんで走りださないでください!慌てなくても耳かきしますから…」
「フフッ、4日前から楽しみにしていたんだ。あの時の快感が忘れられなくてね。はあ…」
実は4日前、機材の依頼を頼んだ時にそれを使って何をするのかという話になって依頼相手である白石ウタハ先輩に耳かきをしたのだが、それ以前にもあった依頼が忙しくあまり眠れていなかった先輩には効果てきめんだったようですっかり耳かきにハマってしまったようなのだ。
そのためもし機材が完成したら依頼料や新しい発明品のテスターとは別にお礼として耳かきをしてあげると言ったのだが、それが逆に効果を発揮してしまったのか徹夜で機材の開発に勤しんでくれていたようなのだ。
実を言うと初対面のときに少し喧嘩をしてしまったので白石先輩が耳かきに興味を抱いてくれるのはとても嬉しい誤算なのだが最初の頃の険悪さからは想像もできないほど物理的にも精神的にも距離が近くて少々戸惑いとドキドキを感じてしまう。
♢
「はーい先輩私の膝の上に頭乗せてくださいね。まずは右耳と左耳どちらがいいですか?」
「あ、ああ…左…いや右からがいい」
「ふふっ了解です」
エンジニア部にある仮眠室のベッドの上で白石先輩は私の膝を枕にして寝っ転がっていた。てっきり開発に使う道具やら何やらでごちゃごちゃしていると思った内装は特別女性らしさがあるわけではないが、シンプルで整っており耳かきするだけなら十分な設備であった。
「リラックスしてくださいね。緊張で体が震えたりしたらお耳を傷つけることになってしまいますからね~。ではまずはお耳の外側、縁からやっていきましょうか」
「ああ……」
「いきますよー。カリ……カリ……すり、すり」
「んぅ」
まずは耳の外側から、力を入れすぎないように、触れるか触れないかぎりぎりのところで何度も、擦るように耳かき棒を動かして耳の感度を高めていく。
「かり、かり……気持ちいいですか、白石先輩」
「ナミネ、名前で呼んでくれ。そうだな……くすぐったいような、気持ちいいような感じがするな」
「ふふっこれからどんどん気持ちよくなりますからね、ウタハ先輩」
口を耳に近づけ、ふーっと息を吐くとビクンッと体を動かし耳も赤く染まっていく。
(ふふっ……ウタハ先輩、かわいい♡)
「ではそろそろ奥に入れていきますね」
ぐりっぐりっグリッグリッ
「先輩、最近耳掃除してなかったでしょう。ちょっと汚れが目立ちますよ」
「んっ…仕方ないじゃないか……あっ…研究へのロマンは…何者も優先されるんだ……ひゃっ」
「ふむ、先輩はここが気持ちいいんですね」
耳壁の上部を耳が傷つかない程度に少し強めに搔くと先輩は可愛らしい声を上げた。どうやら敏感な部分に当たったらしい。
かり…かり…カリ…カリ。
「先輩、敏感なとこに当たって気持ちよくなっちゃうのは仕方ないですけどビクッてするのは我慢しましょうねぇ。急に頭を動かすと耳を傷つけてしまいますから」
「そんなこと言ったって…どうしても反応してしまうん――んあ♡」
「かわいいなぁ先輩♡でも危ないからね。ほら、がまん♡がまんですよ♡」
耳かきで気持ちよくなるウタハ先輩があまりにもかわいいので耳元でささやく私の声もつい甘ったるくなってししまう。
「あっおっきい耳垢が取れましたね。では梵天しましょうか。先輩は梵天って知ってます?」
「ぼんてん……聞いたことないな。なにか…特別な施術なのかい?」
「いえ、そんな大層なものではなくてですね、この耳かき棒の頭についている白色のふわふわしたもののことですよ」
「それは…梵天というのか……。いつも……ふわふわと言っていたよ」
耳かきの効果なのかウタハ先輩が少しウトウトしている。目をとろけさせて会話もふわふわとなってきた。
「じゃあ先輩、この梵天を今から耳に入れますからね。とっても気持ちいいですよ♡」
ぐぐぐー。ぐり、ぐり、ぐり♡
「んっ…これは…気持ちいいね……すこしくすぐったいけれど……パチパチという音もいい…」
「個人的に梵天は耳の縁らへんを撫でるようにくるくる回すのが好きなんですよねぇ。羽毛が触れるみたいでくすぐったさと気持ちよさがとってもいいです」
くる、くる、ぐり、ぐり。
「はーい右耳しゅうりょうです。次左耳いきますねー。頭反対向けてくださーい」
頭を左耳が上になるように姿勢をとると先輩の顔がこちらを向く。そうなると当然先輩の顔がよく見えるわけで……。
(先輩お顔まっかだ!かわいいなぁ♡)
(ナ、ナミネのお腹がこんなに近く……それになにかいい匂いがする?!)
耳の位置を固定するため先輩は私の顔を見れないが、私からは先輩のとろけたアメジスト色の目やりんごのように真っ赤な頬をよく観察することができるわけだ。
「では、左耳に耳かき棒が入っていきますよ。ぐぐぐー」
「ん…これはまた、右耳とはちがった新鮮さがあるね……」
「どんなに気持ちいい耳かきもリアルでは慣れがありますからねー。やっぱり初めて入れる耳かき棒が一番気持ちいいでしょう?」
「うん…くすぐったさと……きもちよさが……交互にきてる…これは、たまらないな♡」
ぐり♡ぐり♡ぐり♡ぐり♡ぐぽ♡ぐぽ♡ぐぽ♡ぐぽ♡
ゾクゾク♡ゾクゾク♡
「んふ…あぁ……きもちいい♡」
「フフッ、やはりウタハ先輩は強めにされるのがお好きなようですね。そんなにかわいい声上げられたらもっと強くしたくなっちゃいます♡」
カリ♡カリ♡カリ♡カリ♡クリ♡クリ♡クリ♡クリ♡
(なんだ、これは…?!先ほどより……刺激がつよいッ♡)
「かり、かり、かり、かり♡でもこれ以上強くするとお耳が傷ついてしまうから、これで我慢して下さい」
ふー♡
「うひっ」
「あっ急に吐息がきてびっくりしちゃいました?でもこの風の圧が心地いいんですよね♡」
先輩はどうやら右耳よりも左耳のほうが感度が高いようで右耳のときよりもいい反応をしてくれる。
「ではもっと奥の方に入れていきますよー」
それから30分後、ウタハ先輩はすっかりトロトロになってしまっていた。もちろん30分間強めの耳かきをしていたら耳を傷つけてしまうため、所々で囁きや耳を撫でたりしていたのだがそれが思ったより効きすぎでしまったようだ。
「先輩は左耳に耳かきしているときのほうが気持ちよさそうですね。そんなに反応されるとこちらも続けたくなってしまうのですが……そろそろ時間ですね」
「え……もうじかんなのかい?まだゆうがたじゃあないか……もうすこしだけ、つづけてくれないか」
「だーめ。睡眠は睡眠でしっかりとらないと。先輩が眠るまではそばにいますから。最後に梵天だけしましょうねー」
「い、いまねたらへんなじかんにおきてしまう……あと30分だけでいいから……みみかき…ほしい……」
(ねむくてトロンとなってる先輩かわいい!)
「ん”ん”ん……先輩、これ以上は先輩のかわいいお耳が傷ついてしまいますから、本日はこれでおしまいです。ほーら梵天いきますよー。ふー♡」
ずぷぷぷぷ♡さわさわ♡ぐりぐり♡
「んん……そんな、ぼんてんとみみふーでむりやりごまかすなんて……ずるいじゃないか…」
いよいよウタハ先輩の目が開かなくなってきた。ここは仮眠室のベッドの上であるのでこのまま寝かせてもかまわないだろう。なので最後の仕上げだ。先輩の耳元に近づいて……。
「ウタハせんぱ……ウタハ」
「ひゃ♡」
「今日はこれで終わりだけど次やるときはもっと気持ちよくしてあげるから、楽しみにしててね。おやすみなさい、ウタハ」
「あ、あうう……」
……どうやら眠ったようだ。先輩はここ最近寝ずに作業していたのでこれを機に生活リズムを戻し、しっかりと体を休めてほしい。先輩の綺麗な顔に隈があったりしたら嫌だからね。
「さて、では私もそろそろ行くかな……おやすみなさい、ウタハ先輩」
先輩の肩まで毛布を掛けて部屋の照明を消してから、私は部室を後にした。
シチュエーション?って書くの難しいですね……。