バイク戦艦「ガタッ」
いっけな〜い、遅刻遅刻☆彡
わたしはエトワール校に通う12歳のごく普通の女の子!
エトワール校がルージュ地区にあって家が反対側のブルー地区にあるせいで、寄り道で遅くなると帰路がバトルゾーンになっちゃうの!
バトルゾーンを通ると問答無用でバトル挑まれちゃうしもう大変!
回り道すると門限すぎちゃうし、一体どうなっちゃうの〜!?
A.強行突破しかなくなります。
「間に合わなかったッ…!!」
時刻は夜。もうすぐ門限というタイミングで、近道を塞ぐ赤いホログラムを前に、私は項垂れていた。
私の通うエトワール校はミアレシティ北東部、ルージュ地区にある。一方、我が家はミアレシティ南西部のブルー地区である。真反対なので、必然的に帰るのに時間がかかる。
普段の帰り道なら門限に間に合うのだが、寄り道したのがいけなかった。仕方なかったのだ。どうしても、ど~~~~うしてもミアレガレットが食べたかったのだ。ミアレガレットの魅力というのは抗いがたいもので、今はないがいずれ論文も出る(確信)
そして一度寄り道してしまうと、あちこちに遊びに行きたくなるのは人間の定めである。だから私は悪くない(責任転嫁)
Q.門限を破るとどうなる?
A.知らんのか。バシャーモがブレイズキックをお見舞いしてくる(隠喩)
「ガタガタガタガタガタ」
先日は5分の遅刻ですら晩御飯がピーマンの肉詰めになりかけたのだ。またしても遅れてしまえば、晩御飯が生ピーマンの山盛りサラダになってもおかしくない。
だが、今回はしっかりと作戦を練ってきている。いや「寄り道すんな」と言われればそれまでなのだが、こうなったときのためにちゃーんと準備をしていたのである。
「いくよハガネール!」
「ガー!」
二匹目のポケモン、ハガネールを繰り出す。私のハガネールは通常よりも体格の大きいハガネールである。そのデカさたるや、今回のエリアの路地くらいなら埋めてしまうほどの身体のデカさである。
今回の近道は曲がり角が少なく、家方向までほぼ一直線に路地が伸びている。ここをまっすぐ突貫できれば楽なのだが、そううまくはいかない。死角が少ないということは、乱戦が起きやすいということである。
乱戦に巻き込まれると必然的に時間をとられる。のんびりしてたら遅れに遅れてブレイズキックが狂喜乱舞する(隠喩)
ならばできることはひとつ。乱戦ごと轢いていけばいいじゃない。天才か?
「ルートよし。ハガネール、てっぺき!」
「ガー」
まずてっぺきを積みます。ハガネールの光沢がある身体が更に磨きがかかり、にびいろに輝く。こうなったハガネールはあらゆるポケモンの中でも有数の防御力を得ている。もはや生半可な障害物ではビクともしなくなったハガネールの背に乗り、しっかりとしがみつく。
「これより地上クリーン作戦を開始します」
「ガー」
「全軍(総勢1名と1匹)突撃ィィィ!!」
◆
ハガネールが路面を削りながら狭い路地を進行する。建物・路面等はホログラムによってある程度保護されており、多少荒く暴れても破壊を防いでくれる。ありがとうクェーサー社!でも帰り道をバトルゾーンで塞ぐのは許さないぞクェーサー社!
「また会ったな◯ね! ピジョン、でんこうせっか!」
「
「またはがねタイプじゃん! ピジョーーン!!」
この前も喧嘩を売ってきたピジョン使いを吹っ飛ばす。相変わらずタイプを見ずにでんこうせっかで突っ込む癖があるらしい。路上を突き進むハガネールに吹っ飛ばされて星となった。
ちなみにハガネールの顎部分はスプーン状になっている。野生個体はこの顎で地中を掘削するらしい。これがどうなるかというと…
「何だアレ!? スピアー、ミサイルばりだ!」
「
「す、スピアーがー!?」
こうなります。
路上でキョロキョロしていた虫捕りシティボーイのスピアーを顎部分で掬い上げるように吹き飛ばす。体重が軽い虫ポケモンのスピアーは遥か星となった。
「しゅ……シュシュプ! マジカルシャイン!」
「
「シュシュプー!?」
路上を埋めるように突き進む巨大なハガネール。道中にいたシュシュプを連れた女性が逃げ場がなく、ヤケクソ気味に攻撃を指示するがハガネールは容赦なく吹き飛ばした。
「フッ……そこまでだ暴虐不尽のトレーナー! 僕は名誉あるMSBCの会員No.23を拝命するもの。どうやら強靭な防御力のハガネールなようだが、僕に言わせればハガネールに対して物理攻撃を挑むのは愚の骨頂。僕のロズレイドの華麗なるリーフストームを前にしてはハガネールといえどいとも簡単に」
「
「ロズレイドーー!?」
なんか長たらしい口上を垂れ流し始めた身なりのいいトレーナーのロズレイドを吹っ飛ばす。トレーナーの口上に合わせてポーズ決めていたロズレイドはポーズを維持したまま星となった。似たもの同士か。お引き取り願います。
「ふーはははははー!」
「ガー」
路地に蔓延るトレーナーをクリーンしながら高笑いする。なんて快適なんだろう。最初からこうすれば良かったのだ。簡単ッッッ!! 簡単ッッ!! これが、ハガネールの力ァ!!
もう何も怖くない。勝ったな風呂入って田んぼの様子見てくる。こんなバトルゾーンに居られるか!私は家に帰らせてもらう(門限ギリギリ)この戦いが終わったら最新研磨剤でハガネールの身体を磨いてあげるんだ。
家までもうすぐ。やったか!? ここを抜ければ門限以内に家へ帰られるんだから! わーいでくちら
「力こそパワー! 力こそジャスティス!」
「ゑ?」
ゑ?
「
ドゴォ
凄まじい音を放ってハガネールが動きを止める。いや、正しくは止められた。
ハガネールを真正面から受け止めたのは、四本腕ポケモンのカイリキーと、二本腕ポケモンのニンゲン……ニンゲン? 人間!?
「お見事なぶちかましです。このシロー、素晴らしい一撃を前に身体の芯から震えが収まりません!」
「ぶちかましじゃなくてアイアンヘッド!」
ポケモンと共にハガネールのアイアンヘッドを受け止めたのは筋骨隆々の大男。ミアレシティ逆名物、入会すれば脳まで筋肉になれると噂の「ジャスティスの会」の長である、シローという人物だった。
というか、構わず突き進もうとするハガネールがビクともしないんだけど! どう言うこと!?
「体格差によって大型ポケモンの戯れに付き合うことができないそこのあなた。このような巨大なポケモンの一撃でも、心身清らかに鍛え上げれば受け止めることができます。さあ是非ともジャスティスの会へ入会を!」
「間に合ってまーす! ちゃんとハガネールとも遊んでまーす!」
「なんと素晴らしい! 貴女のような人物が居れば人とポケモンの垣根を越える一歩ともなれましょう。どうかジャスティスの会へ入会を!」
「親の許可がありませーん!」
「私が説得しましょう! 是非とも親御さんと共に入会を!」
「絶対それ肉体言語じゃん!!」
このまま抑えられるとエンドレス勧誘なので、ハガネールをボールに戻して労る。お疲れ様、ハガネール。
「門限までに帰らないといけないの! 行け、ニダンギル!」
「なんと、それならば共に足腰を鍛えましょう! 体験入会者です、お願いしますカイリキー!」
ニダンギルはゴーストタイプを含むのでかくとうタイプに有利、しんかのきせきを持たせてあるので防御も強固。勝手に体験入会扱いさせてくるコイツをニダンギルで押し通る!
「道を切り開け! シャドークロー!」
「ぶつかり稽古を体験しましょう! ほのおのパンチ!」
◆
「ハァ、ハァ……逃げ切れたー!」
家の前で荒く息をつく。長く苦しい戦いだった。
なんとかカイリキーを倒した私は、次のポケモンを出される前に全力で逃げ出した。私の目的はポイントではなく突破である。あのシローという人物は有名人かつ高ランクのトレーナーで、高ランクトレーナーを倒した時のポイントは高い。今ごろポイントの漁夫の利を目的としたトレーナー達がこぞって襲いかかっているだろう。ざまあみろ!
……いや、平然と捌きながら全員勧誘してる姿がありありと思い浮かんだ。無敵じゃん。
だが今回は、ちゃんと門限に間に合った私の勝利だ。バトルで火照った身体を落ち着かせながら、家の扉を開いた。
「ただいまー! 今日のご飯なーに?」
「5分過ぎてるわよ」
「アッ……ハイ……」
「今日から3日、お風呂掃除の当番ね」
この後めちゃくちゃお掃除した。
●主人公ちゃん
休日の趣味は手持ちのはがねポケモン達を磨き上げること。SNSで様々な研磨剤をレビューしている。12歳のシティガールのくせに渋すぎる。
●ミアレガレット
美味しい。