殺人鬼は何を斬るのか   作:勇者あああああ

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皆さんの作品を見ていて、自分も書きたい!という思いで制作しましたので、至らない点などもあると思いますが、指摘やアドバイスよろしくお願いします。


スレイヤー

帝国。その国はまるで末期の癌が体を転移して行くように腐っていった。腐敗政治は杜撰を極め、数パーセントの富裕層が肉を喰らい、酒を煽る。一方、地方では重税や圧政に苦しむ。

 

その帝国を打倒せんと立ち上がった戦士達を革命軍と呼び、その中でも帝都を震え上がらせる殺し屋集団ナイトレイド。帝国は着々と変化しつつあった。

 

△▽△▽

 

帝都 市街

 

人々が賑わいを見せ、あたかも活気のある良い国のように見える歓楽街。その雰囲気に似つかわしくない1人の男が歩いていた。その男から発せられる雰囲気はどこか1歩引かせてしまう。しかし、それは恐怖や畏怖の類いではない。不気味という理由がしっくり来る。男は自分が浮いてる事などお構い無く人盛りの多い街道を歩く。まるで注目を浴びるように。

 

そして男は待ちに待った気配を感じ取った。それは自分に向けられる明確な殺意。それを感じ、口許を歪ませる。手頃な裏路地を誘惑するように入っていく。街道の賑やかさが消え、じめじめとした空気が覆っている。そして獲物は罠に掛かった。

 

「お前、手配書のレインだな?」

 

男は獲物の声に振り向く。5人程の男が視界に入り、色が抜けたような白色の髪が深く被ったフードからするりと出てきた。レインと呼ばれた男はフードをおもむろに取ると、髪色に負けず劣らずの白い肌が姿を現す。だがその肌は美とは程遠く、不健康としか言えない。反して、整った目鼻立ちは見た人に美しさを感じさせる。そんなアンバランスさで体を成す男は僅かに気を落とした。

 

「てっきり帝国軍が釣れると思ったんだけどな」

 

言葉とは裏腹にレインの声に落胆の色はない。少し低い声という印象しか持てない声に、表情すら特にない。その不思議さを身に纏ったような男は着ていたローブを襲撃者に投げ付ける。視界を奪われた襲撃者はローブを斬るが、既にレインは宙に姿を消していた。ローブを斬った男の頭から刃を入れ、真っ二つに切断しながら着地を成功させると、残りの男が狼狽えながらも声を出す。

 

「い、一気に囲んじまえ!」

 

だが、男の声には力強さは感じられなかった。立ち向かおうが、退却しようが殺されることを感じたのか、半ば決死隊のような思いでその言葉を吐いたのだろう。現に男達の目は死の宣告を受けた死刑囚のそれと変わらなかった。繰り出される刃を打ち返し、最良の一閃を打ち込んでいく。最後の1人は両腕を失い、切断面からは止め処なく鮮血が漏れ出している。男の絶叫が裏路地を反響する。街道の市民が裏路地へ駆けつけ、惨状を見ると、瞬く間に悲鳴の波紋が広がっていく。男に止めを刺すと、大通りへ戻る。

 

「これで少しは戦いやすくなったか」

 

人が居なくなり、物寂しくなった大通りで、1人刀をぶら下げているレインは呟いていると、警邏していた3人の帝国軍がやってくる。

 

「ゲームスタートだ…」

 

明確な口調で発せられた言葉は言葉通り試合開始のコングとなった。斬り込んでくる一手を軽く弾くと、流れるような所作で首を落とす。立ち尽くす死体を楯に懐へ入り込み、敵に死体をぶつけると、死体ごと腹部に刃を貫通させる。刀を抜き、振り向き様に打ち込まれる一撃を受け止めると鍔迫り合いになり、刀の鍔を相手の顎に目掛けて打つ。生まれた隙に前蹴りを放つと、くの字になりながらも耐えたが、次の瞬間には心臓を貫いていた。

 

刀に付着した血液を払うべく一振し、腰の鞘に銀閃を放つ刃を納めていく。すると大勢の足音が耳を打つ。相手しきれないと判断すると裏路地へと身を投げた。

 

△▽△▽

 

「情報通りだな」

 

レインは事前に聞いていた普段から人通りの少ないルートを全力で駆ける。案の定、敵に見つかることもなく帝都の中心にある宮殿付近へと近付けた。ここでレインは回転するように動かし続けていた足を止める。人が切り株に欠伸をしながら腰掛けていた。その人物が逃げ遅れた市民に見えるほどレインの目は曇ってはいない。

 

「何者だ!」

 

顔を守るように柳の構えを取り、問いただす。次第に不明瞭だった人物はフォルムが浮かび上がり、レインの目に動揺が現れる。

 

「お前…クラウか…!」

 

その男は切り株から腰を上げると、小さな笑いを見せ、無精髭を触る。刀を構えるレインに対しても臆することもなく近付く。

 

「久しぶりだな、スレイヤー(殺人鬼)?」

 

旧友との再会にレインは構えを解く。

 

「それは…俺の名じゃない」

 

歯切れ悪く返答するレインはどこか後ろめたさを感じているように見える。対照的にクラウは吐き出すように笑うと、肩を竦めて見せる。

 

「まぁいい、それよりも今更何しに来た?」

 

クラウはヘラヘラとした調子を消し、目線と気配を鋭くさせる。レインとは正反対の短い黒髪を靡かせると、刀を勢いよく中段で構え、切っ先をレインに向ける。

 

「俺はあの男と大臣を…殺しに来た」

 

クラウは耐えきれないように笑い出す。

 

「革命宣言と復讐宣言か?格好いいじゃないか、さすがはスレイヤーだ」

 

レインは反論することもなく、無言で刀を元の構え方に戻す。互いに間合いをはかり、足裏を接地させたまま摺るようにして、来るべき時を待つ。精神を落ち着かせ、気を高め、最後は戦士として信じる勘が、体を打ち出すように前へと疾駆させる。そして、相対する敵とタイミングが偶合する。

 

「気が合うな」

 

クラウは斬り込む刹那にそう呟いた。そしてお互いの狙いもまた、右肩から左脇腹にかけての袈裟斬りと偶然にも一致する。一致するが故の激突は鍔迫り合いとなって現れた。レインは力で押し切る形で相手を仰け反らせると、1歩踏み込み、必中の間合いで心臓に突きを放つ。

 

「詰めが甘い」

 

クラウは余裕の表情を浮かべる。予備動作を起こすことなく、突発的に半身へと体勢を移行し、突きを不自然に躱す。突くために前に出した力を引き戻せる筈もなく、隙だらけで敵の懐に突っ込んだことになる。クラウは絶好のチャンスに強烈な膝蹴りを鳩尾に叩き込む、皮や筋肉を越え、臓器へと直接痛みが走る。

 

ーー動け…!

 

レインは強くそう思い、脳からは筋肉に信号を送り続けるが、体はまるで動こうとしない。クラウは膝蹴りに使った足を地面に戻さず、体を1度旋回させると、頭部に回し蹴りを打った。レインの体は派手に飛ばされる。

 

「どうしたレイン?その程度か?」

 

地面に伏し、痛みに悶えながらも立ち上がり、刀を構え直す。クラウは楽しそうな笑みを浮かべると、刀で地面を抉りながら一直線に走ってくる。レインも体に鞭を打ち、走る。裂帛の気合いと共に激しい打ち合いが開始する。斬れなければ狙いを変え、攻撃を流すように避け、文字通り火花を散らす。クラウはレインの刀を頭より上へと弾き上げる。そのまま大きく振りかぶり、力のままにレインに刀を振り抜く。なんとかレインはその衝撃を刀で受けると、大きすぎる衝撃に踏ん張るが、地面を滑るように流される。

 

死と隣り合わせの攻防にレインは額に汗が滲み出ていた。それに引き替え、クラウはまるでその生死の境目を楽しむように薄い笑みを張り付けている。

 

「なぜだ…!」

 

昔はクラウよりも実力は上位に位置していたレインは驚きを隠せずにいた。

 

「人は日々成長する、当たり前のことだろ?レイン」

 

クラウの刀の鞘の形状が通常と異なることに気がついた。鞘に引き金のようなものがついているのだ。

 

「帝具か?」

 

通常の武器や兵器を越えた兵器、それが帝具。帝国を築いた始皇帝が、金と人材を注ぎ込み、実に48個も造り上げた超兵器。だが、強力であるがため、体力と精神力を大幅に削られるという欠点もある。

 

「よく気がついたな、でもこいつはそこまで強力な帝具じゃない」

 

「帝具の中では…だろ?」

 

クラウは嫌味な笑みを浮かべる。額の汗を拭うと刀を構え、戦意が萎えていないことを見せる。

 

「帝具と聞いてまだやるのか?」

 

そもそも単独で帝国へと攻め入るという、正気ではない作戦を決行したのは他でもない、二大将軍の片割れエスデス将軍の不在、この一点に尽きる。

 

「もう俺には時間が残されていない、今がチャンスなんだ…!」

 

歯を食いしばり、闘志を燃やす。

 

「どの道ブドー将軍だっているだろ?」

 

帝国の切り札である男の名に体が強張る。あの男と相対出来るかさえ怪しい、どこか考えないようにしていたのかもしれない。事実、動揺したのがいい証拠だ。

 

「2人相手にするよりはマシだ…」

 

レインは精一杯の強がりを口にし、大地を蹴り、駆け出す。全てを終わらせるために。

 

「OK、お前の気持ちは伝わった」

 

クラウが口を開ける最中もレインは疾走する。

 

「その上で叩き斬る!」

 

この戦いで1番の殺気を噴出する。その重圧に気圧されるが、レインは速度も戦意も衰えを見せない。クラウは刀を腰の鞘へとしまう。まるで降参の図だが、獰猛な獣が発するような殺気は未だ健在だ。

 

間合いは約2歩。クラウの頭に狙いを付け、叩き割るように振り下ろす。

 

そして、体全体が前へと進んでいたにも関わらず、体に強い衝撃を受け、よろよろと後ずさる。クラウは刀を抜き終わっており、切っ先が天に向いている。するとレインは唐突にバランスを崩し、尻餅をつく。まるで何か足りない、そんな感覚に浸っていると、視界に自分の刀がない。その不思議に右腕に目をやると、自分の身に何が起きたのか分かった。

 

「えっ?…あ…っ…え?」

 

右肘から先がないのだ。壊れたスプリンクラーのように赤い液体が噴射し続ける。不思議にも痛みはない。アドレナリンの影響か、はたまた既に死んでしまったのか。唯、途方もない恐怖に脳が蹂躙され、何が何か分からないまま気が遠くなる。感覚器官も徐々に機能を停止していく中、小さな破裂音が立て続けに鼓膜を刺激したが、レインの体はその刺激も感じなくなり、目を閉じた。




この小説はオリジナル小説を書きながらの投稿になりますので、亀更新になると思います。

追記

スラッシャーからスレイヤーに変更しました。他のものと混ざって間違えました。変更前に読んだ方すみませんでしたm(__)m
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