大和国立国際ダンジョン学園所属! 雄々敷檀司郎は幼馴染と付き合いたいッ!!   作:水金地火木土天海冥

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1.その男の名は雄々敷檀司郎

 唐突だが! 大和国立国際ダンジョン学園一年、雄々敷(おおしき)檀司郎(だんじろう)は幼馴染と付き合いたいという願望を抱いている!

 檀司郎が想いを寄せる幼馴染の名は百瀬(ももせ)桃華(ももか)。二十三女とは言え、知らぬ者は居ない名家の──分家ではあるが──お嬢様! 普通であれば近付く事すら不敬であろう。

 

 ゆえに、檀司郎は己の価値を見せつけねばならない。即ち──ダンジョン探索である!

 両の手には二つの大鉄槌。身体は頑丈な金属鎧とグレートヘルムで覆われている。二百を超える身長と、そこから生み出される膂力こそ檀司郎の強み。

 この強靭な肉体を使い倒してダンジョン資源を持ち帰り、有用な人間であると証明するべく彼は今日も潜るのだ。

 

「お、俺が悪かった! 俺が悪かったから!! ゆ、許し──」

 

 そして今、彼は自身の決意に泥を塗る害虫の駆除を強いられていた。

 ボロボロの皮鎧を着た、何とも情けない姿と声に一考すらせず、檀司郎は巨大な鉄槌を振り下ろす。こんなものに耳を貸す道理などない。駆除。駆除。駆除である。

 あまりにも脆弱な肉体がその質量に耐えられる筈もなく、命乞いを発した生物はあっけなく血煙となって消えていく。死人に口無し悲鳴無し。されどこれは人ではない。

 

 檀司郎は嘆息しながら自身の得物を見つめる。

 既に我が相棒と言っても過言ではない二つの鉄槌は、夥しい返り血で赤黒く染まっている。先程以外にもいくらか駆除活動を行ったからだ。

 見つけ次第潰さねばらなぬ。なぜならこれらは破落戸(ローグ)と呼ばれる、ダンジョンに住み着きながら探索者の命を奪う異常者であるからだ。

 

 異常者。そう、異常者なのだ。

 この世にダンジョンが生まれて幾星霜。ここから得られる資源は瞬く間に文明の発展を後押しした。その恩恵を持ち帰る探索者を、あろう事か害する存在。それが破落戸(ローグ)だ。

 端的に言えば人のかたちをした害虫であり、人間として誰からも認められていない。ゆえに積極的に駆除したところで何も問題はない。これはそういう生物なのだ。

 

「しかし、今日は随分と破落戸(ローグ)が多いな。もう少し進んでおきたかったが、仕方ないか」

 

 放っておけばすぐに数が増えるのが破落戸(ローグ)の嬉しくない特徴だ。他の探索者も見つけ次第狩っているだろうが、如何せん数が多い。

 鉄槌を振り下ろすだけとは言え、一日に十や二十の害虫を潰していればやる気も削がれるというものだ。

 

 モチベーションが下がった状態でのダンジョ探索は危険だ。普段ではしないようなミスを踏み始める。

 だから今の内に撤退の準備を始める。目的は達成できなかったがダンジョン資源もいくらか確保しており、赤字では無いのが唯一の救いだろう。

 

「まぁ、そういう時に限って面倒な事が起こるのがダンジョンなんだが」

 

 帰還魔法のスクロールを起動させようとした瞬間に唸り声が聞こえた。檀司郎が後ろを振り向くと巨大な狼が火を吹きながら彼を睨んでいる。

 逃がしはしない。狼の言葉など分かるはずもないが、そういう意思を感じる。

 獣の目には殺意がありありと燃えている。それは檀司郎への復讐心からだろうか。いずれにせよ、狼を殺さねば撤退すらできないという状況だ。

 

破落戸(ローグ)の飼い犬か? なるほど、妙に弱いと思ったらブリーダーだったか」

 

 ダンジョンを生きる破落戸(ローグ)には識別名が割り当てられている。

 モンスターを狩って生きるのであればハンター。護衛用のモンスターを作り出すのであればクリエイター。モンスターを育てて己の手駒とするのであればブリーダー。

 その他にも種類は確認されているが、概ねこの三種に分類されている。先程駆除した破落戸(ローグ)は、ブリーダーの中でも下の下だろう。

 目の前の巨狼を見ても、ビリビリとヒリつくような殺気を感じない。この程度の殺意では檀司郎の恐怖心は煽れない。

 

「さて……」

 

 巨狼が跳躍して火球を吐き出す。ブレスによる広範囲ではなく、あくまでも彼一人を狙って威力を高める方針のようだ。

 確実に殺す。加減などない。熱を持った殺意の具現。迫りくる炎を前に、しかし雄々敷檀司郎は動じない。

 

 ──くだらない。まさかこの程度で殺せると、本気で思っているのか畜生め。

 ならば思い知らせてやろう。その思い上がりを粉砕しよう。

 

 檀司郎は両手に鉄槌を構えて巨狼の着地地点へ走り出す。

 吐き出された火球が、彼を焼き焦がさんと火の粉を散らして咆哮する。

 

「死ね」

 

 向かってくる火球を一振りで相殺。足を止めずに、着地して一瞬硬直している巨狼の頭にもう一振り。

 たったこれだけで巨狼の頭蓋が砕けて絶命した。その呆気ない最後に、檀司郎は二撃目を繰り出そうとした己の腕を止めた。

 

 ──もう一振り必要かと思ったが案外脆いものだ。

 やはりブリーダーの腕がヘボだったのだろう。まさかたった一撃とはな。

 

 巨狼からモンスターの命の源である魔石を抜き取る。すると最初から居なかったかのように巨狼の死体は霧散して消える。

 その様子を見届けてから、檀司郎は改めて帰還スクロールを開くのだった。

 

 ◆

 

 異次元への進出が発端となった歯止めのきかない人口爆発。異次元に住めない人類は負け組で、異次元で悠々と過ごす人類は勝ち組。

 そして莫大な収入さえあれば異次元への入居が許される。土地は無限に存在するのだ。上昇志向の塊のような連中がこぞってダンジョン探索に熱を上げているというのが、この世界の実情だ。

 大和国立国際ダンジョン学園はそんな数多くの有名な探索者(命知らず)を世に送り出した事で、名門という肩書を有している。探索者として大成したいならここ。そんなイメージ。ゆえに入学希望者は後を絶たない。

 雄々敷檀司郎もそんな有象無象の一人である──と結論付けるのはいささか早計と言うものだ。

 

 なぜなら彼の入学理由はただ一つ。ここに百瀬桃華がいるからだ。

 異次元への開拓技術を独占する百相院財閥。それに連なる百ある分家の一つである百瀬家の二十三女。

 一般庶民の十二男である檀司郎と比較すると、彼女に流れる血の歴史だけで住む世界が違うのだと誰もが理解させられる。そこに問答は無用である。

 

 だがそこは雄々敷檀司郎。そんな聞き分けのいい男であれば、彼はダンジョン学園に入学などしていない。

 百瀬桃華がここに推薦入学するという情報を聞きつけた彼は、彼女と付き合いたい一心で己の進路をダンジョン学園に全ベットした。イカれてる。

 更にとある理由から探索者に向かないという事実に基づいた嘲りもあったが、持ち前の肉体強度でこれを黙らせた。マジでイカれてる。

 幼馴染という間柄で日頃のコミュニケーションも欠かさない。彼女と共に生きていく為の名声を手に、告白する。

 

 これが現時点での、雄々敷檀司郎の人生プランの小目標リストであった。もし彼女にフラれたならば、己の不甲斐なさを噛み締めながら余生を過ごすというところまで決めている。果たしてこの男が大人しく余生を過ごせるのか、という疑問は一旦横に置いてほしい。

 無論、そうならない為の努力はこれからも続ける。続けるが、最終的に檀司郎と生きるか否かは百瀬桃華の胸三寸である事も承知の上で、無駄に終わるかもしれないこの生き方を貫いている。

 

 この物語は、そんな環境の中で一人の女性へ熱を上げ続ける男──雄々敷檀司郎が己の道を爆走する様の記録である。




ヴァンガードの二次創作がアニメが終わるまで休止状態なので、オリジナル小説の投稿を始めます。
更新は相変わらず不定期ですが、よろしくお願いします。
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