大和国立国際ダンジョン学園所属! 雄々敷檀司郎は幼馴染と付き合いたいッ!!   作:水金地火木土天海冥

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15.欲龍の権能

 蒐集欲龍グリム・グリム。それは二人の破落戸(ローグ)が使用した魔法の名と同じ。彼は自身をこの世界の魔法の源であると称したが、いったいそれはどういう事なのか。

 

【檀司郎の持つ縁は食欲龍(アンダバエ)か。……あぁ、なるほど。魔力が適合せずにバグってるのか。力が変な絡まり方をしているから、龍玉座の座標を辿るのは難しいな。……そっちの嬢ちゃんの名は?】

「ネエク、です」

【オーケー、ネエク。そっちのペンダントを少し触らせてもらうぜ。……この顕示欲龍(オルディナフ)の縁なら大丈夫そうだな】

 

 ネエクのペンダントに触れたグリム・グリムは空の異形を警戒しつつ呪文を唱え始める。

 

蒐集欲龍(グリム・グリム)から顕示欲龍(オルディナフ)へ。龍器拝領(GEAR=DRIVE)一時占有開始(JackStart)

 

 グリム・グリムの呪文を受けてペンダントが輝きだす。この世界の魔力とは違う、異質な力の奔流がこの場を支配する。もっと別の、この世界には存在しない力だ。

 

******顕示欲龍(オルディナフ)から蒐集欲龍(グリム・グリム)へ******

******協力申請を受諾。顕示欲龍の権能を蒐集欲龍へ一時付与開始******

******──権能「顕示宝都(オルディニア)に格納された特殊顕示兵装群(オルディナート)の利用権限」の付与完了******

 

 虚空から降ってくる機械音声にグリム・グリムは口角をつり上げる。ネエクのペンダントから手を離して、更に呪文を重ねる。

 

特殊顕示兵装群(オルディナート)解放。超顕示破砕大砲オルディナフ・マキシマ】

 

 その名はネエクの砲撃魔法と同じだが、持ち主(オルディナフ)から正式に利用権限を譲渡された兵器──特殊顕示兵装群(オルディナート)はその比ではない。

 空間が歪み巨大な砲口が現れて、駆動音を轟かせて空の異形を捉える。これこそがネエクの魔法の源、顕示欲龍(オルディナフ)が保有する破砕大砲であると誇示するかの如く。

 

『■■』

 

 顕現した砲口を前にして、空の異形は短く唸り足元の機体から剣を引き抜く。それは明らかに錆びついたガラクタの刃。なまくらとも言えぬゴミを構えて、異形はただ静かに呟く。

 

『【土星剣・贄宝血食(SACRIFICE OF THE SATURN)】』

 

 檀司郎の耳にもはっきりと聞こえた言の葉は、異形の世界の魔法であろうか。錆びた刃に力が渦巻く。ガラクタには似つかわしくない、まるで一国の王が纏うような気品さえ感じる力だ。

 グリム・グリムはオルディナフ・マキシマに発射命令を出す。轟音と閃光、そして世界すら溶かしかねない熱量のレーザーが空の異形へ着弾する。

 ネエクの砲撃魔法がまるで玩具(おもちゃ)のようだ。人知を超えた世界を揺るがす力。これが魔法の源、欲龍の真の力なのだろう。

 

【……あぁ、そういう事か。ミスったなこりゃ】

 

 グリム・グリムの言葉を証明するかのように、異形は依然として健在だった。巨大な砲口から吐き出された膨大な熱量など知らぬとばかりに何のダメージにもなっていない。

 

【星剣……思った以上に厄介だな。──蒐集完了(Complete)

 

 グリム・グリムの手に異形が持つ錆びついた剣が握られる。蒐集欲龍の権能はその名が示す通り、あらゆる物を管理下に置く事だ。

 現物(オリジナル)ではなく複製品だが、一度見て理解した物であれば何でも蒐集できる。

 

【土星剣。あらゆるエネルギーを吸収し、自身の強化へ変換する……か。随分とふざけた能力だ】

 

 敵の能力を把握し、その上で対処が難しい。エネルギーの定義も非常に曖昧であり、あの異形がエネルギーだと断じれば即吸収にもっていける柔軟性。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「毒や炎、電撃を吸わせてもダメージにならないのか?」

【駄目だな。あれに解釈を与えるものじゃダメージにならない──おっと!!】

 

 吸収した熱を機体のロケット噴射に転用し、空の異形が落ちてくる。今まで空に留まっていたのは機体を動かせるほどのエネルギーが無かったからだろう。オルディナフ・マキシマによる攻撃が、異形が動き出す切欠になってしまっている。

 その大質量の突撃を片手で抑えるグリム・グリムが檀司郎へ説明する。

 

【人類判定とはいえあれに効く毒物が特定出来ない以上、毒は論外だ。炎や電気は足元にあるスペースシャトル──あの機械の動力源にされるから無意味だな。その他の攻撃に転用できそうなものも全て、剣の持ち主の認識次第で吸収するだろうよ。えげつねえ能力だ】

「化物かよ」

 

 スペースシャトルを掴んで離さず動かさないグリム・グリムは、檀司郎の言葉に苦笑する。ここまで聞けば確かに化物と呼ばれてもおかしくはない。しかし、この世界だからこその突破口も存在する。

 

【だが、それはあれが認識できるものに限っての話だ。この世界にあるじゃねえか。人類が汚染されて死にかねない、特級の危険物がよ】

 

 その言葉を受けて檀司郎の脳裏に一つの答えが浮かび上がる。

 

「呪詛の事か?」

【あぁ、そうだ。この世界特有の致死物質。未知のエネルギーなら吸収をすり抜けられる】

 

 呪詛という概念が存在しても、それはあくまでも概念でしかない。有害な物質として存在するこの世界のものとは根本から異なる。

 

【足元の機械は俺がこのまま抑え込んで固定する。檀司郎はこの上にいる宇宙服を着た──あぁ、いや。丸っこい鎧の部分をぶん殴って止めてきてくれ。ある程度弱らせたら、こっちの力で元の世界へ強制送還する】

 

 グリム・グリムの無茶な要請に檀司郎はため息を吐きそうになる。しかし、ここを生き残るためにはやるしかない。どの道これを放置する事などできはしない。

 

「この化物をぶん殴っている間、ネエクも守ってくれるんだろうな?」

【当然だ。後ろは気にするな。何せこのままだと他の次元にも影響が出るからな】

 

 ネエクをグリム・グリムの後ろへさがらせ、檀司郎は剣を構えた人型の元へ駆け上る。異形は丸い頭部を檀司郎へ向けるが、自ら動き出す事は無い。それは余裕か、それとも動けない理由があるのか。

 

 ──どちらでもいい。ならば鉄槌をそのまま叩きつけるだけだ。好き勝手に暴れ出す前に、こいつを潰す!

 

 黒い人型は檀司郎を目の前にしてもやはり動かない。その不気味なほど静観の姿勢を崩さない異形を目掛けて、檀司郎は鉄槌で殴りつけた。

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