大和国立国際ダンジョン学園所属! 雄々敷檀司郎は幼馴染と付き合いたいッ!! 作:水金地火木土天海冥
推定千層。これが何を意味するかはもうお分かりだろう。そう。現段階におけるダンジョンの深さだ。地上から下へ降るほど、モンスターの強さも増していく。
大和歴に換算して時は幻奥。この世界にダンジョンが現れてから何千年もの時間が経っており、ダンジョン攻略は九百九十八層まで完全に終わっているのが現状だ。
では、九百九十九層はどうだろうか。ここで登場するのが魔王と言う存在。人類の文明を破滅に導く脅威そのものが、九百九十九層の最奥に座っているのだ。
魔王は言った。この先は資格ある者しか通さぬと。この先に進む者がいないのであれば世界は滅ぶだろうと。
強行突破を図った者たちもいたが、全員魔王とその配下に殺された。彼らは先へ進む資格を有していなかったゆえに。
ならばその資格とは何か。これについては魔王からふざけた返答があった。
「俺の妃に似ているヤツを連れて来い」
一字一句そのまま伝言として持ち帰った際、関係者は頭を抱えた。
そもそもお前の妃って誰だよ。知らねえよ。という言葉が当時の音声記録に残っているあたり相当腹に据えかねたのだろう。気持ちは分かる。
この返答に対する明確な答えは未だ出ていない。この発言があって更に二千年。数多の人類が魔王の前まで到達したが、資格を得た者は誰もいない。そしてついに、魔王から更なる条件が課せられた。
「ダラダラとやる気がねえテメェらにタイムリミットのお知らせだ。残り千年で先に進む資格があるヤツが来ないなら、この世界が滅ぶ前に俺がをぶっ壊してやるよ。これでちったぁ本腰入れるか? さあ本気で足掻けや
この最後通牒は各国の上層部しか知らぬ事であり、既に九百九十七年が経過している。そう遠くない未来に、世界は滅亡を迎えるのだ。
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ダンジョンは十の倍数の階層毎に守護モンスターが配置されている。その役割は先へ進む探索者のふるい落としだ。少なくとも、昔はそういった役割が課せられてい
九百九十九層に人類が足を踏み入れて最低でも二千年以上経っている。その間に、ダンジョン内の情報は世界中へ広まっており、その中には当然守護モンスターの攻略法も含まれる。
たとえば九十層の守護モンスターであり、砕けぬ岩の身体を持つ巨人。ゴーレムは魔法による攻撃が有効だ。
「俺にとっては脆すぎる!」
しかし檀司郎は二つの鉄槌を叩きつけてゴーレムの身体を粉砕した。防御が硬いなら、砕けるまで叩けばよいのだ。バカみたいなごり押しである。
たとえば百層の守護モンスターであり、夢心地の多幸感で五感を惑わす妖精。モルフェウスは羽から舞い散る鱗粉を吸わなければ惑わされる事がない。
「そんな小細工など、諸共踏み潰してしまえば問題ない!」
しかし檀司郎はイカれているので鱗粉を吸ったところで多幸感を感じない。そのまま鉄槌で潰してフィニッシュだ。彼の幸せとはつまり、百瀬桃華と恋人になる事以外にないのだから。
たとえば百十層の守護モンスターであり、比類なき怪力と無尽蔵のスタミナを持つ蛮族。オークは毒物への耐性が皆無である。
「力比べで勝てばいいだけの話だ!」
しかし檀司郎はそんな力自慢のオークを投げ飛ばし、顔を潰して瞬殺する。数多の探索者を撲殺してきたオークであっても、檀司郎にとってはか弱い存在でしか無かったのだ。どちらがモンスターなのか分かったものではない。
「まずまずの攻略速度と言ったところか。とはいえ、五百層までは散歩道でしかないが」
九百九十八層までの攻略情報があるものの、全ての人類が最下層まで辿り着けるかというと、そうではない。五百層から下は完全に魔境なのだ。
五百層以前の守護モンスターが闊歩するのは当たり前。モンスター同士で殺し合いが発生する関係で、強いものしか生存権がない。そこに弱者による適者生存の法などありはしない。適者とは即ち強者なのだから。
──順調だ。しかし足りない。この程度では俺は五百層に、魔境に足を踏み入れる権利すら得られない。
魔境のデタラメさを身をもって体験しているゆえの自己評価。では、檀司郎はいつ魔境に足を踏み入れたのか。その答えは彼の過去にあった。
檀司郎は過去に二度、ダンジョンに迷い込んだ経験がある。魔境に入り込んだのはその内の一回目だ。幼い頃、遊んでいた公園の地面に突如としてダンジョンの入り口が現れ、その崩落事故に巻き込まれたのだ。
遊具やベンチを巻き込みながら、檀司郎はダンジョンの八百七十八層に何の準備もないまま叩き落された。命が助かっただけでも奇跡に等しい。
『へぇ、ガキがこんな場所にいるとは珍しい』
幸いにも檀司郎は助けられた。白貌、紅の双眸。白金の如く輝く髪に、誰かに傅く事を是とするような黒く上品なタキシード。彼は名をレズヴェルと言った。
『まさかここまで直通とはお前も運が無かったな。いや、命があるだけ運がいいのか? まぁどちらにせよ、お前は晴れて遭難者というわけだ』
そう言って彼はニヤリと笑っていた。
『だが安心しな。この俺、ダンジョンの中でも最強の存在……魔王様が最低限は守ってやる。だが、何事も事故はつきものだ。絶対に生き残りたいと言うのなら、その為の強さを求めるなら。俺がある程度の手解きをしてやるよ』
その提案に幼い檀司郎は疑問をぶつける。人類の敵である魔王が、なぜ自分を助けるのかと。
『別に全人類を皆殺しにしたいわけじゃない。それに今回はこの魔境直通の入り口を塞ぐついでの暇つぶしだ。ここまで盛大なショートカットはさすがに見過ごせねえしな。……後は、お前自身に興味が湧いた。崩落に巻き込まれ、魔境に叩き落されて、どうして生きているのか。ここまで興味深い人類は久しぶりに見たぜ』
そこから約一ヶ月。ダンジョン内で帰還魔法のスクロールを拾うまで、檀司郎はレズヴェルから戦い方やダンジョンの歩き方を教わった。後遺症などもなく元の生活に復帰できたのは不幸中の幸いと言っていい。
雄々敷檀司郎……彼は魔境からの生還者にして、魔王に鍛えられた唯一の人類。これこそが彼の強さの理由。その一端であった。