大和国立国際ダンジョン学園所属! 雄々敷檀司郎は幼馴染と付き合いたいッ!!   作:水金地火木土天海冥

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20.学園内の諍い

「てめぇ、随分と調子にのってるじゃねえかよ!」

「魔力測定不可判定のごみがどんなズルを使ってんですかねぇ!!?」

 

 何だこいつら。檀司郎は内心で首を傾げる。

 現在の時刻は八時。探索準備を終えた檀司郎がダンジョンの入り口に向かっている最中に、二人の生徒がいちゃもんをつけてきた。

 

「何の用だ?」

「けぇごを使ってくれますかねぇ!!?」

「こちとら先輩だぞ、オォ!?」

 

 面倒くさい。檀司郎は顔でそう抗議するが、目の前の二人には聞き入れられない。

 当の二人も威嚇のつもりでしかなかったのか、早々に本題に入る。

 

「まー? てめぇのよーなごみが随分イキってるみてぇだからぁ? こーして注意しにきてやってんだよ。先輩のこーいってやつにぃ、感謝のかの字があってもいーんじゃねーかぁ?」

「ついでにムカつくんで一発ぶん殴って身の程ってものを分からせてあげる先輩のありがたい教えに喜び、咽び泣いて土下座してほしーですねぇ!!?」

 

 すごくつまらない話だった。聞いて損したと檀司郎は無視して歩き出そうとするが二人は妨害する。周りの生徒も関わらないように一瞥してから通り過ぎるばかり。

 教師も止めようとすらせず、むしろ檀司郎の偉業を好ましく思っていないのでここらで汚点を作ってくれないかなと期待すらしている始末だ。

 

「はぁ」

 

 檀司郎は立ち塞がる二人を見るだけで大体の実力を把握した。弱い。明らかに弱い。

 ザコの破落戸(ローグ)よりは若干マシだが、アルベルト・アルティソーラーを名乗った不審者や老いた刀使い、そして異次元からの侵略者であるセンリなどとは比較にすらならない。

 

 現に今の檀司郎は危機感すらない。ただひたすらに面倒な事になった。檀司郎の心中は憂鬱なため息で満ちていた。心を二酸化炭素で窒息させるのが目的であれば、とうに果たされているほどに。

 

 このままこの二人に時間を使うのも癪だと感じた檀司郎は、背負っていた二振りの鉄槌の内、一つを地面に立てる。

 そのまま持ち手を離し、鉄槌を立ち塞がる二人の方へ倒した。

 

「「ヒイイイイイイィィィィィッッッ!!!!!????」」

 

 情けない悲鳴と共に避ける二人。ゴォン、と鉄槌が倒れる音が学園内に大きく響いた。

 

「触る度胸も無いのか」

 

 檀司郎の呟きに二人は反応するが、さっきまでの威勢は完全に殺されている。その様子を檀司郎はじっと見つめるだけだ。その目には何も感じていないかのように、わずかな光すら宿らない。

 弱いのはいい。臆病なのもいい。だが、度胸がないのはいただけない。この様子では三百層どころか二百層まで進めるかも怪しいラインだ。

 

「俺を罵りたいなら特に何も言わない。だが、邪魔だけはするな」

「──ムカつくごみだなぁ、てめぇはよぉ!!」

「棒倒しで粋がらないでほしいですねぇ!!」

 

 沸点の低い二人の頭が即沸いて二人から拳が飛んでくる。鉄槌に触れさせるかとばかりの速攻に、このまま受けても問題ないと檀司郎は避ける素振りすら見せない。

 檀司郎が殴られる寸前に、二人の動きがピタリと止まる。

 

「何をしているのですか?」

 

 丁度通りがかった保健医のレドラが冷たい声を浴びせかける。くたびれた白衣の下から無数の白い手が伸びて、殴りかかろうとしていた二人を拘束した。

 

 多手人(ヘカトンケイル)は自身の身体から無数の手を自在に具現化させる能力を種族単位で有している。具現化させられる手の数は個人差が大きいが、悠久を生きる彼女はこの特性が極まっている。

 

 大和の言葉を使って称するならば八百万(やおよろず)。数える事すら億劫なほどの手を一瞬で展開する事すら可能である。

 

「喧嘩ならば外でやりなさい。そして檀司郎君、武器を落としてはいけません!」

 

 落としたわけではない。その言葉を口内で留めた檀司郎は、レドラの手で持ち上げられた鉄槌を受け取る。

 触れれば死ぬ鉄槌を、力が失活しているとはいえ何の気負いもなしに持ち上げるレドラを見る二人は開いた口が塞がっていない。

 

「問題を起こした二人は反省文ですね。ヴァルト先生に引き渡しましょうか」

「「いやああああぁぁぁぁ…………っ!?」」

 

 悲鳴を上げる二人の口を素早く塞いで、問答無用と引きずっていく。

 校内引き回しとは哀れな。レドラが問題児を鎮圧して引き回すのは日常茶飯事となっており、その様子を見られただけで学園内では腫物扱いだ。

 

 事実とは関係なく、レドラの手を煩わせるほど暴れたと認識されるのだ。彼女の強さは学園教師陣の中でも屈指。そんなレドラが鎮圧して引きずり回す人類など、できれば関わりたくない。

 あの二人はこの学園内で孤立していくだろう。傷の舐め合いができるのは不幸中の幸いといえるかも知れないが。

 

「お兄さん、どうしたの?」

 

 そんな様子を眺めていると、準備を終えたネエクが檀司郎の傍まで寄ってくる。これから二人でダンジョンへ潜るのだ。

 

「いや、何でもない。ちょっと揉めただけだ」

「あまり喧嘩しちゃだめだよ」

 

 こちらから喧嘩を吹っ掛けたわけではないのだが。しかしネエクからすれば同じ事なのだろう。

 たとえ喧嘩を売られようとも、敵を作りやすいい言動をしている檀司郎にも少しは責任があるという事か。

 

 とはいえ檀司郎自身はその事に関心を持てない。百瀬桃華と付き合う為に、名声を重ねている最中なのだ。脇見をしている余裕などない。

 他人とのコミュニケーションを脇見と考えている時点で、現状の改善は見込めないだろう。

 

「善処は、しよう」

 

 口だけの檀司郎がそこにいた。

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