大和国立国際ダンジョン学園所属! 雄々敷檀司郎は幼馴染と付き合いたいッ!! 作:水金地火木土天海冥
雄々敷檀司郎がダンジョン第三百八十七層を攻略した頃、彼は二年目の学園生活を送っていた。このまま卒業しても問題無いのだが、彼は一切気にする事なく学園の生徒で在り続けている。
檀司郎の入学から一年が経過したという事は、魔王による千年のタイムリミットから九百九十八年が経過したという事と同義である。世間一般には知られていないが、世界の滅亡まで残り二年もないという状況にある。
人知れず世界の終わりが迫る中、檀司郎はある噂を耳にした。
ダンジョン学園において百瀬桃華が孤立している、という噂だ。檀司郎は桃華とよく話しているが、孤立しているようには思えなかった。
彼女の周りには人がたくさんいるし、何より貴重な光属性の魔力持ちだ。
光属性は他の四属性──火属性、風属性、土属性、水属性──とは根本的に異なる。モンスター特攻、呪詛耐性、魔法強化。魔力が光属性であるだけでこれらの恩恵が何の代償もなく受けられるのだ。
他の属性ではこうはいかない。確かに火属性であれば火への耐性が上がったり、風属性であれば素早く動けたりといった効果が無いわけではない。
しかしそんなものは雀の涙程度の、もはや気のせいじゃないかとすら言われるレベルの効果だ。光属性に肩を並べるどころか、比較する事すら侮辱であろう。
そんな生まれついての特権を有し、百相院財閥に連なる分家の血が流れる百瀬桃華が孤立するなどありえない。少なくとも檀司郎はそう考える。
「実際のところ、孤立云々はただの噂で片付けていいのか? 桃華さん」
「それを本人に聞きますか……?」
生徒寮の食堂に百瀬桃華を誘った檀司郎は、噂の真偽を本人に確かめていた。
分からぬならば裏どりをすればいい。本人から聞ければ尚良し。檀司郎の思考がスケルトンカラーの如く透けて見える。人はそれを浅はかと呼ぶのだが。
「噂はある意味では真実です。あくまでもダンジョン探索においての話、ですが」
「学園から斡旋されたパーティメンバーはどうした?」
「殺されました」
桃華の言葉は短い。檀司郎はそうかと相槌を打つのみに留まった。
「誰に、というのはもう聞くまでもないな。あの
「えぇ。嫌というほど殺しに来ます。あの男……アルベルトに襲撃される度にパーティメンバーが殺されて、学園からは探索禁止の通告が出ています」
眉間に皺を寄せながら桃華は静かに語る。彼女を姫君と呼び、並々ならぬ執着を見せた
学園からすればこれ以上光属性の魔力持ちにダンジョンを探索させる理由など無いのだろう。急ごしらえで特例をブチ上げてしまえば良いとでも考えているのかも知れない。
卒業生にあの光属性が、という箔を付ける事にしか目を向けていない。檀司郎からすれば実に下らない話だった。
どうしてダンジョン探索を禁止する方向に舵をきってしまったのか。どうしてあの
「理解も共感もできないな。結局はあの
強い
かつての檀司郎はアルベルト・アルティソーラーに勝利する事ができなかった。しかし同時に彼はアルベルトに殺されなかった。生き残ったのならば次があるのだ。アルベルトというふざけた
学園が斡旋したパーティメンバーはアルベルトに殺された。それはアルベルトに殺される実力しか有していなかったからだ。
あの
「状況が分かった今、取れる手段は一つだな」
「アルベルトを殺すのですか?」
「結局のところ、俺もイレギュラー判定をくらっている。今まで俺に茶々をいれてこなかったのは桃華さんへの襲撃があったからだろう」
だからこそ。桃華がダンジョン探索できない今の状況は檀司郎を襲う好機となる、筈だ。アルベルトの目的が良く分かっていない以上、断言はできない。
要はアルベルト・アルティソーラーが雄々敷檀司郎の排除をどの順位に置いているかだ。邪魔は邪魔だが大した事が無いと思われて、向こうから襲って来ない可能性もある。
だからといってこちらから探す事は出来ない。どの階層に隠れているのかも分からないまま、広大なダンジョンを虱潰しに探す時間など檀司郎にはない。
「結局はあの
「私が一緒に行けたら良かったんでしょうけど……」
「考えが無いわけじゃないが、最後の手段だな」
基本的に百瀬桃華は雄々敷檀司郎を信頼している。強さもそうだが、彼のダンジョン探索に対する異常なまでの積極性も頼もしいと思っている。その原因が自分にあるとは思ってもいないが。
しかし同時に桃華は不安に駆られる時がある。檀司郎の考えは己の強さを前提として無茶を通すという傾向にあるという事を、桃華は良く知っている。幼馴染として共に長い時間を過ごしてきたのだ。檀司郎が自身の考えを以て物事にあたる光景を幾度も繰り返し見てきている。
そこに最後の手段という言葉も加わった。ゴリ押しだ。絶対力にものをいわせてゴリ押しする気だ。嬉しくない事に、檀司郎に対する桃華の嫌な予感は良く当たる。
桃華は檀司郎の考えを実行する事がないように内心で願うしかなかった。たとえそれが無駄に終わるとしても。