大和国立国際ダンジョン学園所属! 雄々敷檀司郎は幼馴染と付き合いたいッ!! 作:水金地火木土天海冥
「貫け、【土槍】!」
魔法使いとして覚醒し、ネエクは土属性の幻想を具現化させる。ダンジョンの床から土で創られた槍を無数に突き出し、アルベルトを串刺しにせんと迫らせる。
「この程度、捌けないとでも思ったか!!」
黒い炎を身に纏わせ、殺到する土の槍を驚異的な溶解力で無害化させる。幻想とはいえ、土を固めただけの槍に【世界火】が貫けるものか。
既に格付けは済んだ。ネエクは弱い。アルベルトを倒すには至らない。そう判断し、しかし万が一の敗北要素をここで放置する選択肢もない。
「消しとぶがいい! これこそが【世界火】だ!!」
掌で転がる玉の如き大きさへと黒い炎を一気に圧縮させ、ネエクに向かって放つ。その危険性を嗅ぎ取ったネエクは更に幻想を重ねて具現化させる。
「砕けろ、【瓦礫落とし】」
複数の土塊を瞬時に生成し、圧縮された黒い炎の射線上に重ねて積み上げ、即席の塁壁とする。
一つの塁壁だけでは溶け落ちて止まらないが、二つ、三つと絶え間なく土塊を降らし続けて塁壁を量産していく。
しかし、塁壁を築く速度よりも圧縮された炎が到達する速度が速かった。ネエクの身体へ弾丸と化した黒い炎が着弾する直前、それをいつの間にか近くに来ていた檀司郎が遮った。
「オオオオォォォォッッ!!! グ、ウウゥゥッ!?」
「お兄さん!?」
辺りに散らばる土塊を盾にして傾斜を作り、逸らそうとするが【世界火】の炎は物理法則に囚われない。むしろ盾となった土塊を溶かし始め、檀司郎の身体に到達しようとしていた。
「お兄さん、逃げて!」
「違うぞ、ネエク! ここで逃げるわけにはいかない。逃げてしまえば、あの
万物を溶かし尽くす炎を前に、檀司郎はネエクを安心させるように笑う。
「今はネエクだけが頼りなんだ。色々と試したが、俺の攻撃では魔法使いの防御を突破できない。同じ土俵に立ったネエクじゃないとできない事なんだよ」
「……お兄、さん」
「迷うなネエク。お前は強い。あの
闇に浮かぶ漆黒の人類。欲龍という超常生物と共に倒した異次元の存在。手を出す事すらできなかったセンリと、目の前のアルベルトを見比べる。
「……あの時の、人ほどじゃない」
人類の進化形だ。生物の頂点だ。無敵の怪物だ。得意げに御託を並べるその姿に、ネエクはいつの間にか吞まれていたのだろう。
センリはどうだった。剣を一振りさせるだけで太陽を出現させたり、落雷を呼び出したり、洪水を起こしたり。超常現象というならばセンリの方が余程強かったではないか。
ネエクが一番怖いのは、センリの時のように何もできない事だ。
ただの傍観者でしかなかった自分に戻るのか。魔法使いとなっても、アルベルトと同等の力を手にしても尚、立ち向かわないのか。
「私はもう傍観者にはならない!」
檀司郎が持つ土塊が溶け落ちて、その炎が檀司郎に襲い掛かるその瞬間。ネエクは素手で炎の弾丸を捕まえる。
痛みはない。熱も感じない。咄嗟にネエクが感じた事はこんなものだったのか、という拍子抜けした感想だった。
これが世界を焦がす炎? 本当に? 本気でそう思っているのであれば、アルベルトの実力など大したものではないのだろう。
炎をそのまま握りつぶす様子を見たアルベルトは困惑する。
「私が格下だと、舐められたというのか!? ふざけるなよッ!!」
「お兄さん。ようやく、魔法使いの戦い方が分かってきたよ。これからもっと力になれる」
激昂するアルベルトをよそに、ネエクは檀司郎に戦力になれると嬉しそうに報告する。
どこまでもこけにするネエクの態度。アルベルトの怒りに呼応するかのように黒い炎は勢いを増していく。
「【土槍】」
「が、はぁ──ッ!!?」
勢いが最高潮になった時、ネエクの魔法がその炎ごとアルベルトを貫いた。【世界火】でも溶けぬ土の槍は、魔法使いと化したアルベルトを吐血させるに足る威力となっていた。
意識一つ変えるだけで魔法の強度が増していく。なぜ魔法使いが原始的なマウントの取り合いに終始しているかがよく分かる。
己こそが最強であるという魔法使いの傲慢は、自身を守る盾であり敵を貫く矛である。ゆえに魔法使いは常に増上慢であり続ける。
たとえそれが身を滅ぼす要因となろうとも、滅ぶ前に滅ぼしてしまえばいい。魔法使いとは総じて愚者なのだから。
「お、のれェ! このままでは終わらんぞ……ッ!」
ネエクの槍に貫かれたまま、アルベルトは右手に嵌められた銀の指輪に魔力を込める。
それは魔法式が刻まれた装具にて、魔法を発動させる動作であった。
「【其は虐を齎す血の刃──】」
呪文と共に魔法がセットアップされる。檀司郎とネエクが気付き、詠唱を止めようとするがもはや間に合わない。
既に魔法は唱えられた。欲龍の権能が今、ここに顕現する。
「【
完成したのは血塗られた刃。その切れ味は、桃華の斬首というかたちで思い知らされた。