大和国立国際ダンジョン学園所属! 雄々敷檀司郎は幼馴染と付き合いたいッ!! 作:水金 天海
「ッチィ!」
「逃がすかボケェ!!」
レズヴェルが振るう右の拳に違和感を抱いた檀司郎は、後退して躱す。しかしそれを咎めるように、左が伸びてくる。
左は人間の腕では無かった。熊のごとき剛腕と猛爪の追撃を檀司郎は鉄槌で弾く。
「お前の魔法も変身系か?」
「ただの変身じゃねえよ。俺の中にある力を引き出してるだけだ。アレだろ? 契約した化物に殺された
ウィルカインストの力はただの猿真似でしかないとレズヴェルは断じる。現に左の剛腕と猛爪は、レズヴェルによって振るわれながら成長しているかのように発達していく。
これこそがレズヴェルに眠る力の一端。力が解放される度、より強く、鋭く、敵を穿つ。
「アホが。あんなモンと一緒くたにされちゃたまんねえぜ。借物を振り翳す紛いもんなんかじゃ断じてねえよ。折角の機会だ。もっと面白いモンを見せて、殺してやるよ!!」
レズヴェルの右腕が突如ドラゴンの顔へ変わり、予備動作もなく火を吹いた。背中からはグリフォンの剛翼が飛び出して強風を煽る。結果発生するのは火炎旋風。レズヴェルと檀司郎の周囲は既に炎が渦巻き、魔王と勇者の決戦場の様相を呈している。
「俺はこの世界に夜を齎した
過去に存在した六法愚者、ダンジョンに住むモンスター、そしてレズヴェル自身の身体変異。これら全ては彼の魔法で起こされた事象だ。これこそがレズヴェルが最強であると誇る幻想の力。
「かつて存在した者達をこの世へ呼び戻して像を結ぶ。像は実体を成し、人格やら知能やらを与えてやれば自立行動も可能。それだけじゃなく、さっきやって見せたように身体の一部を呼び出してぶん回す事だってできる。ドラゴン、グリフォンに始まり、オーク、ゴーレム、モルフェウス。──カハッ、モンスターだけでもバリエーションは無限だ。それによぉ、この魔法は結構応用も利くんだぜ! こんな風に、なぁッ!!!!」
触手に僅かな知能が搭載されているのか、檀司郎が躱そうが鉄槌で弾こうが追撃が一向に緩まらない。レズヴェルの腕は最初の一振りしか動いていない。触手だけが狙い、伸縮し、檀司郎を絡めとらんと執着する。
「眷属の合成。その上でちょいと余分に魔力を注いでやれば、手軽に自動追尾機能も付けられる。そらどうした、檀司郎!! 特異点に入れろと妄言をほざいた分際で、もうリタイアか!? だったらそれでもいいさ。調子に乗った身の程を噛み締めながら──ズタズタのミイラになっちまいなぁッ!!!!」
触手から手を離し、持ち手に高い機動性を誇る
周囲は既に火炎旋風に取り囲まれ、逃げ場などありはしない。檀司郎が選べる選択肢など最初から一つしかない。
「いつもの事だな」
正面からぶん殴る。小細工の余地など無い。ただ力任せに。ただ鉄槌の呪詛任せに。己の全てを乗せて敵を叩く。
いつも通りだ。そも、ダンジョンの攻略法など情報が出揃ってからはただの作業でしかない。探索者はその作業に耐えうる肉体と技量を持ちさえすれば、魔境であっても鼻歌混じりに散歩ができる。それができる域にまで鍛え上げる事の困難さから目を背ければ、だが。
つまるところ妥協や挫折を踏み躙り、死力を尽くせば栄光に手が届くのだと、檀司郎は本気で信じているのだ。そこに努力の多寡や才能の有無など関係がない。
たとえ無惨な死体となって転がる事になろうとも、心から溢れる衝動を叶えたいと願ってしまったから。
だからこそ。彼女と、百瀬桃華と付き合いたいと覚悟を決めた瞬間から、雄々敷檀司郎は止まらない。後退、停滞、そんな言葉はまとめてゴミだ。活路が前にしかないならば、迷い、戸惑い、刹那の散漫であろうとも死に直結する害悪だ。
進むのだ。進むだけなのだ。何も難しい事ではない。百瀬桃華と添い遂げるその日まで己が道を邁進するのだ。敵も障害も薙ぎ倒し、屍を晒す覚悟を胸に、己の願いを掴み取る。
「あぁ、そうだ。何も変わらない。劣勢なんていつもの事だ」
だがそれでも。何度死にそうになったとしても。檀司郎は今ここに立っている。
死んでいない。それこそが変わらない事実なのだ。
「今までも、そしてこれからも。俺は目標に向かって歩み続ける」
無邪気なフェアリーが近づいて、檀司郎を見つけた触手が唸る。音を超えて檀司郎に接近するが檀司郎の手に掴まれ阻まれる。
籠手にヴァンパイアの牙が食い込むが、それがどうしたとばかりに檀司郎は力任せに触手を引き千切った。
「脆い」
この程度では物足りない。火炎旋風で退路を塞いでやる事がこの程度?
何だそれは。舐めているのか。千切った触手をレズヴェルへと投げつけて、檀司郎は失望の息を吐く。なるほど、魔王はどうやら耄碌したらしいと。
檀司郎の態度にレズヴェルは何も反応しない。文字通り歯牙にもかからなかった触手を見て、小さく呟く。力が足りねえ、と。
「いいだろう」
レズヴェルの凶貌が表出する。魔王として、そして魔法使いとして。雄々敷檀司郎をここで潰すと裁可を下す。
異議は認めぬ。拒否は認めぬ。特異点に押し入る愚者を排除するは魔王の義務ゆえに。
「【陽月輪へ降りし者が、闇の