トリニティ総合学園所属、隠れ呪言師です。   作:トチ

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セイアはもう少し先になると前回言いましたが、あれは嘘です。

追記:
タイトルがFOX小隊の登場と勘違いされるような気がしたので、変更致しました。


狐影

夕方の帰り道。

俺はいつもの通学路を、一人で歩いていた。

今日も──ミカとナギサと過ごした、穏やかな一日だった。

 

"(次も、あの尖塔でご飯食べたいな)"

 

少し楽しみに思いながら、俺は歩き続ける。

空はオレンジ色に染まり始め、街には夕暮れの静けさが降りていた。

──その時。

ふと、微かな音が耳に届いた。

 

"(...鼻歌?)"

 

俺は足を止め、音の方向を確認する。

いつも通り過ぎる公園──そこから、静かな鼻歌が聞こえてくる。

美しい旋律。

まるで、誰かを慰めるような──優しい歌声。

 

"(...誰だ?)"

 

好奇心に駆られ、俺は公園の方へと近づいた。

フェンスを抜けて、木々の間を進む。

やがて──ベンチの前で、俺は立ち止まった。

そこには──一人の少女が座っていた。

ベンチに腰掛け、静かに鼻歌を歌う少女。

白を基調とした制服。

まるでキツネのような耳と、ふさふさとした尻尾。

そして──どこか幼気な、小柄な体躯。

 

"(あの制服は、トリニティの生徒だよな...? 知らない子だけど...)"

 

俺は少女の後ろ姿を、じっと見つめた。

 

"(ミカみたいに、制服の見た目が普通の生徒とかなり違うような...)"

 

袖がかなりブカブカで、スカートの下にはハイヒールのような靴。

一般的に着られているトリニティの制服とは、部分的にだが明らかに異なる。

改造制服とか...だろうか?

 

"(なんだか、不思議な雰囲気の...)"

 

俺は立ち尽くしたまま、少女の鼻歌に耳を傾けた。

──その時。

突然、鼻歌が止まった。

 

"(えっ!?)"

 

俺は驚いて、息を呑む。

少女は相変わらずベンチに座ったまま、背中を向けている。

だが──その空気が、変わった。

まるで──俺の存在に、気づいたかのように。

沈黙が、重く降りかかる。

そして──少女が、静かに口を開いた。

 

「──ひとつ、問いを投げかけても構わないかい」

 

"...へ?"

 

思わず、声が出た。

素っ気ない、困惑の声。

そして──数秒後。

 

"(...あっ)"

 

俺は慌てて、自分の口を両手で塞いだ。

 

"(ヤバい、喋っちゃった...!)"

 

呪言を忘れていた。

幸い、命令形ではなかったから暴発はしなかったが──

 

"(...ど、どうする)"

 

心臓が早鐘を打つ。

だが──少女は、何も言わなかった。

ただ、ゆっくりと──振り返った。

ベンチに座ったまま、上半身だけを捻るようにして。

そして──俺と、目が合った。

 

"(...綺麗な、瞳だ)"

 

橙色の、つぶらな瞳。

まるで夕焼けのような──静かで、焦りを忘れさせるような神秘的な色。

少女は、小さく微笑んだ。

 

「影とは、光があって初めて輪郭を得るものだ。ならば、影を凝視する者もまた、知らず光に触れていると言えるのではないかな」

 

"(...いきなり何を言ってるんだ、この子)"

 

俺は困惑しながらも──その言葉の意味を考えた。

影と光。

観測者と被観測者。

 

"(...これは、問いなのか?)"

 

少女は試すように、俺を見つめている。

俺は慌ててポケットからメモ帳とペンを取り出した。

そして──少し考えた後、書き始める。

 

 

──────────────────────

光が遮られた場所に、影は作られるものだよね?

つまり、光から視認できず、照らされることがなかった影を見ることができるのは、影と同じく光から遮られた"闇"だけだと思う

──────────────────

 

 

それを少女に見せる。

少女は目を丸くして──そして、少しだけ驚いたような表情を浮かべた。

 

「...なるほど。そう導くか」

 

少女が静かに呟く。

 

「君は実に誠実だ。"理"という道標を外さず、最短距離で答えへ辿り着こうとする」

 

"(...褒められてるのか)"

 

俺は首を傾げた。

だが──少女は続けた。

 

「だが──ひとつだけ、視界から零れ落ちているものがあるようだ」

 

"(...見落とし、か?)"

 

俺は自分の書いた文章を見返す。

どこが間違っているんだ?

光が遮られた場所に影ができる。

そして、闇だけが影を見ることができる。

論理的には、合っているはずだ。

だが──

少女は、小さく笑みを浮かべた。

 

「"闇"という概念は、光を知らねば定義すらできない。対極は断絶ではない。互いを規定し合う、不可分の関係だ。...皮肉なものだね」

 

"(...!)"

 

その言葉に、俺は息を呑んだ。

闇は、光を知っているから"闇"と呼ばれる。

もし光が存在しなければ──闇という概念すら、生まれない。

 

"(...そういうことか)"

 

俺は無言で、その言葉の意味を考え込んだ。

影と光。

闇と光。

それらは──対立しているようでいて、実は互いに依存している。

 

"(深いな...)"

 

俺が思考に沈んでいる間に──少女が立ち上がった。

 

「とはいえ、今の返答は興味深かった。思考の軌跡が美しい」

 

少女が微笑む。

 

「...もし再び巡り合う機会があるのなら──その続きは、その借り物ではなく君自身の言葉で聞かせてほしい」

 

"..."

 

「答えは聞かないでおこう。どうせ、辿り着く先は同じだ」

 

表情が少し、硬くなる。

 

「...君がそれに気付くかどうかの違いしかない」

 

そう言って──少女は歩き去った。

白い制服が、夕暮れの中に溶けていく。

キツネのような尻尾が、ゆらゆらと揺れている。

俺は呆然と、その後ろ姿を見送った。

そして──我に返った時には。

少女の姿は、もう見えなくなっていた。

 

"(...いつの間に)"

 

俺は公園を見回すが──もう誰もいない。

まるで、幻でも見ていたかのように。

 

"はぁ..."

 

俺は小さく溜息をつく。

そして──通学路へと戻り、再び歩き始めた。

夕焼けが、少しずつ夜の色に変わっていく。

俺の影が、長く伸びていた。

 

"(君自身の声って、呪言のせいで無理なんだが...)"

 

少女の言葉が、頭の中で反芻される。

 

"(...あ、名前も聞き忘れてた)"

 

そんな、取るに足らない事も考えながら──俺は再び家路についた。




作者の頭が悪すぎるせいか、セイアの台詞を完成させるのに諸々三時間程掛かりました。
これからもセイア登場回は容赦なく時間をおかけすると思いますが、ご了承下さい。

主人公の所属部のアンケートです  作者の力が及ばず、二つしか選択肢を作れませんでした

  • ティーパーティー(フィリウス分派)
  • 正義実現委員会
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