たまも様が開発した国家運営ゲームをもんぱらキャラがプレイするだけの話 作:邪魅魑
ヤマタイ村、ヤマタイ中央塔の一室で、一人の幼女と一人の妖女が町のようなものを映した光り輝く画面を見つめながら一喜一憂していた。
「くっ!またか!運営経験なら妾の方が豊富じゃろう!なぜ負けるのじゃ!納得いかぬ」
「くぅくぅ。それは……と、これを言ってしもうては、うちが勝てなくなるかもしれぬのう……いや、冗談じゃからそう詰め寄るな」
一人は玉藻、魔界にてヤマタイの統治を1000年続けた為政者である。そしてもう一人はたまも。特異点世界にて、9代魔王以降の教育係として国政に携わった為政者である。そして、現在二人が行っていたのは、二人が開発した国家運営遊戯であった。
元々は、ネオヤマタイの先進的な技術を政治に活用しようと、ただ単に各国の情勢などを入力し、自身の政策を追加で入力することで自身の統治による影響をシミュレートするだけの計画だった。だが、その制作を主導した二人が完成までの間にお互いの政治手腕を見て、ふと思ったのだ。「こいつと妾(うち)どっちが政治家として有能なんじゃろう」と。
そこから、その国家運営をシミュレートする装置に、国の発展度、各国との友好関係、自然環境との付き合い方などを総合評価し、設定期間内の政治手腕を評価する機能を追加することが決定し、完成後の二人はその動作確認を理由に頻繁にこの装置でお互いの統治能力を競い合わせていたのである。
そして、現状、玉藻とたまもの戦績は倍ほどの差を広げてたまもが勝利数を重ねていた。本来統治者としての実績は、玉藻が1000年に対し、たまもは500年。どちらかと言えば玉藻が有利になりそうな状況で、よもや装置にたまもが有利になるような仕様の偏りがあるのでは、と疑った玉藻に、たまもは苦笑いを浮かべながら答えた。
「はっきり言おう。お主とうちでは、統治経験に質の差があるのじゃ」
「質の差、じゃと?」
それを聞いて不可解な顔をする玉藻に、たまもは小さくうなずいた。
「まず、魔界と特異点世界では状況が違う。魔界では六祖が各町を統治し、にらみ合っておったようじゃが、要は内ゲバであって、本当の意味での政治的な外的と呼べるものはおらんかったじゃろ?それに、お主の上司の邪神様は基本的にお主のやることを止めなんだはずじゃ」
そこまでたまもが言葉を発すると、玉藻は少し得心が言ったように思案の表情を浮かべる。
「ふむ……なるほど。そう言うことか。確かに、妾の統治には民による外的排除や他国との競合といった視点が抜けていたかもしれぬのう。しかし、邪神様が政策を止めなかった、というのは?」
「うむ、これは他の統治を間近で見ねば分からぬと思うが、愚かなものが必ずしも悪しき統治者になるとは限らぬのじゃ。うちらのような統治に慣れている者の政策を一瞬で過去のものにするような政策を年端もいかぬ幼子が生み出すこともあれば、完全に間違っていると論理的に思える方策も、民の心理や状況によっては正道よりも効果を上げることもある。……まあ、つまり、『うちが主導した政策』以外の政策の経験分、お主よりもうちの方が経験豊富ということじゃ」
それを聞いて、玉藻はほう、と息を吐いて呵々と笑った。
「なるほど、確かに、凡夫でも三人寄れば賢人の知恵に届く。まして、王となればその経験は至宝となるか。なれば、その多くの王の知恵の集積、ヤマタイの統治にもよくよく活用してもらうぞ」
「言われんでも分かっておるわい。というか、見た目の問題でお主がここの領主面しておるの、いまだに納得しておらんのじゃが」
「そうは言うても、お主はこの村の村長兼狐神社の祭神、妾はヤマタイを国として1000年統治しておった。どちらが上に立つかは明確であろう。むしろ、共同統治という形で公式には妾たちの上下を決めておらぬのだから、納得してもらうしかないわ」
その言葉にたまもは扇を口元に当てて困り顔で頷いた。
「うぅむ。まあ、お主が上下を決めておらぬ以上、確かにうちの威厳のなさがすべての元凶とも言えるわけじゃが、それでも納得いかぬわい」
そう言いながらさて、もう一戦、と再び二人が装置に顔を向けたところで、襖がバン!と空いて、二人の魔物娘が部屋に入ってきた。
「おい!たまも!遊びに来てやったぞ!ってうえっ」
「黒狸様!そうずかずかと玉藻様の部屋に入り込んでもらっては困ります……」
現れたのは狸の里の長黒狸と、巨大な狐の下半身を持つ妖狐七尾だった。
「むぅ、黒狸、何しに来たんじゃ?まあ、今は別に何かしら重要な案件をこなしていたわけでもないから構わんと言えば構わんが」
たまもがそう言うと、黒狸は玉藻を凝視していたしせんをたまもに戻し、気を取り直して声をかけた。
「お……おぉ!そうだ!お前、最近狐の里に顔を出してないだろ!何回も狐の里に勝負を挑みに行ったのに、一向に会えなかったから、こっちに顔を出しに来たんだよ!」
そうして胸を張る黒狸の様子に玉藻がひそひそとたまもに耳打ちする。
「のう、あれ、地上の魔物の長じゃろ?お主とは比べ物にならんと思うのじゃが?あの態度はなんじゃ?もしや、正体を知らぬとかか?」
「あ奴には正体を伝えておるよ。なんでも、うちのライバルとして、最後まで競い合うとかで、意地を張っておるのじゃ。最も、戦いに関しては既に結果は出ておるゆえ、囲碁やら将棋やら、戦闘に関わらぬ勝負をもっぱら挑んでくるようになったがの……正直頭もそこまで目立って出来が良いわけでもないから、この封印された身で戦っていた時の勝率にも劣る程度にしか勝負になっておらんが」
そう言うたまもの言葉に玉藻は黒狸を見て少し優しい顔をした後、はっとたまもに目を向ける。
「のう、たまもよ。こやつにも、これ、やらせてみぬか?他の者の統治の仕方を見る、というにはちょうど良い機会になりそうではないか?」
「……ふむ。本来統治者の手の内を探るというのはそこそこ無礼に当たりそうじゃが……まあ、こやつなら良いか」
そう言って、たまもは黒狸に向けて声をかけた。
「黒狸よ。いま、うち達は国の運営を演算するような装置で遊んでおってな。どうじゃ?お主も少し触ってみぬか?」
「なんだそれは?おもしろそうだな!いいぜ、今日の勝負はそれにしようか!早速やろうぜ」
そう言ってにやりと笑う黒狸に、たまもはいやらしく笑う。
「ど阿呆。これはうちとそっちの玉藻の作った装置じゃぞ。今の状態でやったら間違いなくうちが勝つわ。最初はうちがさぽーとに入る故、七尾との勝負にしておけ。その勝負で七尾に勝てたら、次はうちが相手になってやろう」
「えっ、私ですか?」
驚く七尾だったが、ここには未経験者が黒狸と七尾しかいないのだから当然だった。そして、黒狸も少し不満そうだったが、装置自体にも興味があるのか、それ以上不満は言わずにたまもの横に座った。
「ほら、七尾も座れ。さっさと倒して、俺とたまもが戦うんだからな!」
「勝負となれば、いくら黒狐様でも手加減はしませんよ」
そうして二人が戦うことになったのだった。
そう言えば個人的に設定してる統治能力ステです。基本的には作中ゲームのステをそのまま本人のステータスとして置いていますが、本人と大きく異なるキャラが出てきた場合は現実の数値を()で表記予定。
※
戦闘……単純な戦闘力ではなく、個人戦闘における戦闘勘や戦況把握能力、ゲームにおいてはプレイヤーのカリスマ性や一騎打ち等の際に影響。
戦術……戦争における戦略や戦術の知識や戦略感覚、ゲームにおいては戦争や各国の勢力争いに影響
知力……単純な知識、及び日常での判断力。ゲームにおいては政策決定の際のテキスト表記に影響
交渉……主に取引におけるやり取りなどの上手さ、ゲームにおいては他国との交渉に影響
商才……経済勘、資金繰りなどに影響、ゲームでは経済系の政策決定の際のテキスト表記に影響
技巧……技術面、工作面における専門性、ゲームにおいては技術開発、医療など専門的な技術に関する政策決定の際のテキスト表記に影響
信仰……信心深さの値、ゲームにおいては高いと宗教国になりやすく、国民の忠誠心が上がりやすい
対人……個人関係の対人関係。いわゆるコミュ強かどうかを現す数値。ゲームにおいては優秀な臣下NPCの勧誘に影響する
たまも 統治LV10
戦闘A 戦術A 知力SS 交渉S 商才A 技巧B 信仰C 対人A
長いヤマタイ統治と魔王の養育係及び宰相職の経験から高い統治能力を持つ。また、六祖であることから、戦闘においても長けており、他人を扱うのも上手いオールラウンダー。また、邪神様に対する高い信仰心はあるものの、政治と信仰を分離して考えているため為政者としては宗教から距離を置いている。
安定的な発展を目指す治世が得意で、逆に躍進的な発展や乱世での統治は比較的苦手としている。
玉藻 統治LV10
戦闘S 戦術S 知力SS 交渉B 商才A 技巧S 信仰A 対人B
魔界にて長年ヤマタイの領主として統治をおこなった六祖の一人。非常に高い統治能力と六祖ならではの高い戦闘勘を持つ。ただし、自身の実力の高さと、周囲にの国家が全て身内の国家であるために、外交、内政共に交渉事に対しては統治期間に比してやや劣る傾向にある。尤も、統治期間が規格外なので、優れた統治者並みにすぐれた治世ではあるのだが。
急進的な発展や、乱世での統治を比較的得意としており、平穏な時期の統治は退屈さを感じてあまり乗り気ではないようである。