アフターワールド   作:プラモプール

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お待たせしすぎました!!!!!


腹を割って話しましょう

 現在、ミシェルとフィーネは同じ部屋のベッドで眠っていた。精霊使いのアーシャとの戦闘の後、惨状を見つけた騎士によってアーシャは捕まった。

 危うく、二人もこの惨状の原因として逮捕されかけたが、意識を取り戻したパルクの証言によって、冤罪は免れた。

 そして、二人は怪我の状況から騎士達に病院へと連れてかれたのだった。そしてそこで治療を受け…現在に至る。

 隣で爆睡しているフィーネを横に、ミシェルは不服そうな顔をしていた。

 

「僕は…まだ弱い…」

 

 アーシャとの戦闘で、ミシェルは自身の力不足を感じていた。

 たった一人に、手も足も出なかった。一撃も入れられなかった。ましてや、パルクさんとフィーネが助けてもらえなければ、間違いなく死んでいたのだから。そんな考えが、ミシェルの脳内を巡る。

 ミシェルは自分の弱さを責め、自信を強い言葉で半ば強制的に鼓舞した。この程度で倒れてどうすると。もっと強くならなければと。だが、あの時受けつけられた不安はそう簡単には消えない。

 

「なーにそんなに悩んでんだ?」

 

 聞き覚えのある声が聞こえ、部屋のドアの方を振り向く。そこにいたのは、身体の所々に包帯が巻かれたパルクだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ミシェルは少し顔を歪めながら、パルクから目線を逸らし、口を開く

 

「もう動いていいんですか…」

「ああ。幸い、そこの女に助けられたおかげで、潰されずに済んだからな」

 

 パルクは爆睡しているフィーネに目を向ける。

 

「こいつはきっと、大物になるだろうな」

 

 ミシェルはフィーネの方を向いた。だが、気の落ちた表情は一ミリも動かない。それを見たパルクは少し神妙な顔をする。

 

「…そんなにこいつが活躍するのが嫌だったか?」

「そういう訳じゃないですよ……そうじゃないんです…」

 

 ミシェルは静かに拳を握りしめ、顔を俯かせる。

 ミシェルは、フィーネに対しては特に嫉妬はない。ただ、自分の力を過信して、挙句助けられたのが屈辱的だった。それだけだ。

 

「僕は……あいつに手も足も出なかった。それで、あなたに助けられて、フィーネにも助けられた」

 

 ミシェルは震えている拳をもう片方の手で押さえ付ける。

 

「自分は……これ以上、上にはいけない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ?マジで言ってる?」

 

 突然声が聞こえ、その方向を向く。

 

 その声の正体は、ベッドに入ったまま、目を開けたフィーネだった。

 

「流石に弱気になりすぎだろ?落ち込むなって!死んでないならまた強くなれる、だろ?」

 

 陽気な口調で、フィーネはミシェルを激励した。だが、ミシェルの表情は変わらない。

 

「どうしろっていうんですか」

 

「修行だ修行!」

 

「それで無理だったらどうするんです」

 

「そりゃまた鍛えりゃいい!!」

 

「鍛えても……無理だったら…」

 

 側で見ていたパルクは、次第にフィーネの口調に苛立ちが含まれていくことに気づく。

 

「そんな無理なんてものはない!やればできるんだよ!」

 

「無理なことだってある……」

 

「ねぇんだよそんなもん!!」

 

 フィーネは立ち上がり、怒号を上げる。ミシェルは、その声に驚きフィーネの顔を見る。

 

「そんなもんはない。自分を信じれば、その努力は必ず身を結ぶんだ!私だってそうだ!お前と出会って、めっちゃ強くなれたんだ!!」

「私はお前を超えたい!でもな、ただ超えたい訳じゃねぇ!」

 

 

 

「強くなったお前を超えたいんだよ!!」

 

 

 

 訳がわからなかった。

 今なら、こんな自分を簡単に超えられるはずの人が、逆に相手の成長を促している。それに、強くなった自分を超えたいと言い出した。

 そんなことは普通しない。だが、フィーネにとってはそれは普通じゃないのだろう。

 

 でも、その言葉で僕は一つ気がついた。

 

 僕は、後悔するのが嫌だったのだ。

 

 後悔しないような行動をずっとしてきた。歯車のことも、後悔のないように色々な情報を集めた。けど、今はたった一人の敵に負けたという後悔だ。

 そんな一つだけの後悔でウジウジ言っていた僕は、

 

 座っていられなくなった。

 

「……うるさい」

「へっ?」

 

 ミシェルは拳を、音が鳴るほどの力で握り締め、フィーネを睨みつけた。

 ミシェルの目元には涙のようなものがあったが、彼にとってそんな事は気にすることではなかった。

 次の瞬間、

 

「僕はあなたとは違うんですよ!!」

 

 今度はミシェルが、フィーネに向かって怒号を上げた。あまりの突然なことに、フィーネとその場にいたパルクも口をぽかんと開けてしまった。

 

「僕はあなたみたいに未練を振り切れるような人間じゃないし、特訓やって強くなれる人間じゃないんですよ!!」

「はぁ!?だからそれは自分を信じれば」

「ていうかなんですかその自分を信じればって!!そんなこと言う人は頭なしの熱血バカしかいませんよバカ!!」

「テメェ今バカって言ったかおい!!いじけてる身だからってなんでも言っていい訳じゃねぇぞコラ!!」

「バカなのに事実でしょうが!!戦いのセンスが良くても頭が良いっていう理由にはならないんですよーだ!!!」

「はいもう私怒りました!!てめぇをけちょんけちょんのボコボコのバカボコスカにして、入院期間伸ばしてやんよゴラァァァァァ!!」

 

 ミシェルの放った一言によって勃発した二人の大喧嘩を側で見ていたパルクは、その場で呆然として、目を剥く。だが、パルクにはミシェルがついさっきよりも楽しそうに見えていた。

 

「えぇ…と……これは止めなくてもいいやつだなっ。ヨシ!!」

 

 そのままパルクはドアの前へ近づき、

 

 そのまま部屋の外へと行ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

「はぁ……はぁ……」

 

 しばらく、病院全体に響き渡る大喧嘩をした二人が息を切らしてベッドの上で倒れていた。

 だが、フィーネは楽しそうな顔をしており、ミシェルも何やら付きものが落ちたような表情をしていた。

 

「僕とあなたの考え方、やっぱり合わないですね……」

 

 息を切らしながら、ミシェルはフィーネに話しかける。それにフィーネも答えた。

 

「……同感」

 

 お互い、嫌な気持ちなど一つもない。それどころか、お互いに貶しあって、心の不純物を吐き出せていた。

 二人は息を整えた後、身体を向き合い、口を閉じていた。そこに、フィーネが先に口を開く。

 

「……私も結構危なかったんだぜ。下手したら死んでたかも」

「そうなんですか?」

「うん。あの影使い、見えない場所から煽ってくるし、それに加えて魔力で探知できない攻撃してきたんだ」

「……それって…」

 

 まずあり得ない。フィーネの言った影というのは、あのアーシャというのが使った精霊のことだろう。基本精霊は魔力を消費して活動する。魔力が尽きれば例外なく精霊は活動を停止する。

 だが、フィーネは魔力を使わない攻撃に倒されかけたということ。アーシャの技は、精霊を応用した攻撃だと思っていたが、フィーネの話が本当なら……

 

「…おい!」

 

 ミシェルはハッとし、咄嗟にフィーネに顔を向けた。フィーネはそれを確認して、再度口を開く。

 

「……まぁ、要するに私一人でもあいつに勝てるかわからなかったってこと。力不足を認識してるのは、お前だけじゃないんだぜ」

 

 フィーネも、自身の弱さを見ていない訳ではなかった。この戦いを経て、更に強くなろうと心に誓っている。

 だが、勝てたという事実に変わりはない。勝てた原因が仲間のお陰だとしても、それをマイナスに捉える気は、フィーネには一切なかった。

 フィーネは、ミシェルに腕を差し出す。

 

「とりあえずさ、これからは仲間として協力させてくれよ。もちろん、お前を超えるっていう目標は揺るがないけどな」

 

 ミシェルは差し出された手をゆっくりと握った。

 ミシェルは、今までの考え方は今の自分には合わないと考えた。今までは、自分自身で解決しなくてはと、仲間を作らずに歩くべきだと考えていた。しかし、考え直してみると、すんなりと納得ができる部分があった。

 今までのミシェルは、自分を追い込みすぎていた。歯車に気を取られ、協力するということに気を置かなかった。そして、アーシャとの戦いで初めてフィーネと協力をした。

 案外、その時の気分は悪くなかったと、ミシェルは思ったのだ。

 

「……ありがとうございます。あなたと仲間になるのも案外悪くないかもですね」

 

 戦いが終わった後の時間。それは二人にとっての言葉を交わす時間になったのだった。




・雑談
 アーシャ戦その1でのミシェルの行動はパルクには把握されておらず、ミシェル自身も彼に協力を仰ぐことは考えてませんでした。
 そしてその後の再戦では、フィーネと言葉を交わして初めて協力をしたということです。まぁミシェルはフィーネが生き残るとは思ってなかったらしいですけどね。

次の話はパルクと関係あるキャラが出てきます。お楽しみに
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