ミシェルとフィーネがギアフィールドを訪れて2日が経った。二人はパーティで着ていく服を購入し、参加準備は既に終わっていた。
そして、遂にこの日がやってきた。
「スッゲェ豪華……」
綺麗な白色のドレスを身に着けたフィーネが、目の前の豪華な建物を見上げながら唖然とする。
パーティの会場であるドールズホテル。透明なガラスから様々な歯車が組み合わさっているのが見え、電飾もとても豪華なホテルだった。ミシェルとフィーネはそのような豪華なホテルを見たことがなかったため、しばらくはそのホテルの造形をじっと観察していた。
その後、二人はホテルの入口へ向かう。そこでは、受付が来場者の入場券の確認をしていた。
ここで、黒いタキシードを纏ったミシェルが前に立つ。
「ようこそ、ドールズホテルへ。こちらで開催されるパーティには入場券が必要となりますが……」
そう言われるのを予測していたように、ミシェルは招待状を差し出した。
「……これはこれは、社長の招待したお方だったとは、失礼しました」
招待状を確認し終えた受付は、ミシェルとフィーネにお辞儀をした後、ホテルの扉を開けた。その扉を二人は通過していった。案内人に従いホテルの中を歩き、奥のパーティ会場に辿り着いた。
豪華に装飾された重い扉がゆっくりと開いた。そこにはワインを飲みながら対談していたり、食べ物を手当たり次第取っている人など、様々な人がいる。そして、奥のステージには台の上に何かが置いてあった。布に覆われ全容は見えないが、場所が場所であるため、大変高価なものだとミシェルは瞬時に理解した。
「なぁミシェル……」
フィーネは指差した方向には、様々な料理が置いてある。ミシェルはフィーネの顔を見た。明らかに食べたそうな顔をしている。ヨダレも垂らしている。その姿を見て、ミシェルはフィーネが次の放つ言葉をなんとなく察した。
「食いに行っても」
「いいですよ。でも、はしたない真似はしないでくださいね……」
「いやっふぉぉぉぉぉぉぉぉい!!朝食昼食抜いてきた甲斐があったぜ!!食うぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
……フィーネの脳内に礼儀はないのか。
今にも声が出そうになるミシェルだが、それを抑えフィーネの向かう場所で、再度叱ろうとする。だが、歩いている途中で横から誰かがぶつかってきた。
「すみません!大丈夫ですか……」
ミシェルは誤った後に、ぶつかってきた相手を見る。
黒のドレスを見に纏った赤髪の少女、身長はミシェルと同じくらいか、それより少し小さい。口元は機械型のマスクで隠れており、目元も機械型のバイザーで隠れ、全体の表情が全く見えない。
「こちらこそごめんなさい。怪我はない?」
「はい、大丈夫です」
「そう……なら良かった」
口調は見た目に反して大人びている。声も少女の声とは思えないほど凛々しい。
ミシェルが少し不思議に思っていると、少女がミシェルに話しかけてきた。
「あなた、このパーティは初めて?」
その質問に、ミシェルは作った笑顔で答える。
「はい。招待状を貰いまして、あまりに唐突でしたから驚きましたよ」
「唐突でも何でもないと思うわ。ミシェルって子でしょ?ナイツ・エンパイアを襲った悪者を退治したって子」
「…い、いつから知って……」
「このパーティの主催者が大々的に宣伝してたわ。
ミシェルは困惑した。そんなこと、一言も知らされていない。あの招待状には、パーティを開催することしか知らされていない。もし、善意でこんなことを知らせていたのなら、ありがた迷惑としか言えない。
ミシェルは不服そうに、その内容を否定する。
「僕……そんな大層なことしてませんよ」
「でしょうね。あなたみたいな子供がそんな大層なことできるわけないもの」
「……」
ミシェルは僅かにイラついた。
確かに言葉ではそう言ったが、本当に起きたことを見ず知らずの人間に否定されるのは、ミシェルにとっては良い気持ちではない。
「何が言いたいんです?」
「あなたの想像通りよ」
沈黙が続く。ミシェルはこの少女とは全く面識がない。なのに少女は、喧嘩を売るような口調で話しかけてきており、ミシェルには尚更意味がわからなかった。
「……失礼します」
これ以上この人とは関わりたくない。
ミシェルは少女に背を向け、フィーネの向かった場所へ歩いていった。その背中を、少女は黙って見つめる。
「……思い出した、
赤髪の少女は、スタッフが持っている酒が入ったグラスを手に取り、マスクを取り外しクイっと口に入れた。一瞬見えた口元は、透けて見えるほど綺麗だった。
「……そろそろ時間ね」
少女改め女性は、飲み終えてからになったグラスをスタッフに預け、人混みの中に紛れ込んでいった。途中、女性目的と思われるパーティの参加者から話しかけられそうになるが、その人が瞬きをした瞬間に、女性はその場から姿を消していた。
──────────────────────
少し時間が経ち、ミシェルとフィーネは食事を堪能したり、同じパーティの参加者と話したりと、この時間を有意義に過ごしていた。
そんな中、突如として会場の電気が消えた。突然の状況に会場の人々が困惑していると、スポットライトが光り、ステージ上に集中する。
色とりどりのスポットライトが入り混じり、段々と一つの箇所に集中していく。そして、完全に光が集中した時、その場所には、一人の女性が立っていた。紫色に染まった髪に帽子を被せており、目元に仮面を付けている。白色のタキシードに黒いマントを羽織り、下には少し長めの黒いスカートを履いている。
「ようこそ皆さま。パーティは楽しんでおりますかぁ?」
人々がステージ上の人物に注目する。無論、ミシェルとフィーネもその内の人間だ。
すると、女性の背中から二つの小さな人形が現れた。人形は女性の肩に乗り、優雅に踊り始める。
「私は、このドールズホテルの社長……」
「ミリエラ・ドールズでございます!」
ミリエラが堂々と名を上げ、スポットライトがステージ上にある布に覆われた何かに集中する。クルクルと回りながらミリエラはその
「ご来場時から皆さま気になっていたであろうこちら、招待者の中から抽選で渡そうと思っている物です。裏面に番号をよ〜く見て?」
ミシェルは招待状を取り出し、急いで裏面を見る。そこには数字が書かれており、ミシェルには"666"と書かれていた。
「その番号が呼ばれれば、晴れてこの謎の物体を手にすることができるのです!」
パーティ会場は騒然としていた。突然の状況に困惑する人もいれば、いち早く状況を理解し、自身の当選を願う人、「俺に寄越せ!」と大声を放つ人もいた。
様々な声が入り混じる中、ミシェルは人混みを掻き分け、ステージ前の最前列に立った。
「それは一体何なんですか?それがわからないと、安心してそれを貰えません。それとも、ここの人達に押し付けたいほどの厄介な物なんですか?」
ミシェルはステージ上のそれを指差し、堂々と言い放つ。自分が貰うことを前提とした言葉に引っ掛かる人もいたが、大半がミシェルの意見に賛同していた。
その様子を見て、ミリエラは首を傾け考える。
「……たぁしかに、物の全容を見せなければ皆様も安心できないというのは一理ありますね……ならわかりました!」
ミリエラは急速にそれに近づき、布の端を摘む。
「こちらが皆様お待ちかねの……」
「景品だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
布が勢いよく引かれ、遂にそれの全貌が現れた。スポットライトに当てられ見えなかったが、次第に光が薄れていく。
会場内の人々はそれを凝視する。ミシェルも、フィーネも、物陰に隠れるパルクと赤髪の女性も、それを見つめていた。
それの正体は、
「……おい、あれって…!」
その光の後ろにあったのは、
「……最悪ね」
「
「………なんで、なんで
「何でこんなところに……歯車があるんだ!?」
"歯車"
ステージ上の台の上にあるそれは、青い魔力を纏い、ガラスの箱の中に入っている……
偽物でも、贋作でもない、純粋な本物がそこ存在していた。