アフターワールド   作:プラモプール

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少し時間を戻します


突然の再会

 時を遡り、当選番号が発表される数分前。

 

「あ……れぇ?ミシェルの奴……どこ行ったんだぁ……?」

 

 フィーネはパーティ会場を抜け出したミシェルを探していた。だが、どれだけ探してもミシェルの姿が見えない。

 それに、フィーネは眠そうな顔をしており、視界は何故か段々ボヤけていた。加えて、今にも倒れてしまいそうな程に身体が重く、身体を引きずる様に歩いている。

 フィーネは意識を保っているが、気を抜けばすぐに倒れてしまいそうな程に危険な状態だった。

 

「おっかしい……なぁ……昨日はしっかり休んだ筈なのに……ん?」

 

 フィーネは自身の身体に全く別の違和感を感じた。体調に変化が起こった訳ではない。フィーネの中身、即ち魔力の核に何かが起こっていた。

 

「っ!?」

 

 あまりにも突然の出来事で驚きで唖然とする。フィーネの視界に映る色が反転していたのだ。ソファー、飾ってある瓶、装飾品、あらゆる物の色が反転して見える。

 フィーネは明らかな目の異常と思い込み、目を擦ってみると、視界にくっきりと見える紫色の線が見えた。その線からは、黒い粒子が漏れ出ている。

 

「……なんだこれ?」

 

 恐る恐るその線を手に取る。すると、線は案外にも脆く、少し持ち上げただけで音を立てずに切れてしまった。切れた線は数多の粒子になり、空気に帰っていった。それと同時に視界も元に戻り、ボヤけもなくなり、体調も元に戻っている。

 フィーネは胸に手を当てる。心臓部分にある魔力の核が少し熱を帯びている様に感じた。

 

「なんだったんだ今の……?」

 

 不思議に思い立ち止まっていると、パーティ会場の扉からゾロゾロと人が出てきた。不意を食らうかの様に、フィーネは出てきた人々の群れに巻き込まれてしまう。

 

(なんだこの人の群れ!?パーティはまだ終わってない筈じゃ……)

 

 ハッとするかの様にフィーネは群れの人々の顔を見た。先程まで元気そうにパーティを満喫していた人達が、眠そうな顔をしながら出口まで引きずられる様に歩いている。

 ついさっきのフィーネの状態と全く一緒だった。

 

(なんか変だ!皆んな何かに引っ張られているみたいだ……!)

 

 フィーネは柱に捕まって人の波に流されない様にしながら、ロビーの周囲を見渡す。そこで、視界から見える階段の上に黒い軍服を着た二人組を見つけた。

 

「あいつらか!」

 

 フィーネはその二人を原因と考え、人の波を上から抜け出し、その黒い軍服姿の二人の元へ、引っ張られている人々の肩を踏み台にしながら向かう。

 片方の背の小さい赤髪の女性が、向かってくるフィーネに一足早く気付き、遅れるかの様にもう片方の高身長の金髪の人物も気付いた。

 フィーネは猛スピードで近づき、拳に力を込め背の小さい方に狙いを定めた。

 

「オラっ!」

 

 フィーネの拳が一直線に赤髪の女性に向かって放たれる。その拳を、女性は軽々と避け、そのまま階段を登り二階のフロアに上がった。それをフィーネは追う。

 狙われなかった金髪の人物は助太刀しようと階段を登り後を追う。追いついた後に見たのは、フィーネが繰り出す拳を軽々と避ける女性の様子だった。

 フィーネと赤髪の女性の戦闘を見ているうちに、金髪の人物はナイツ・エンパイアで窮地を救われたあの人物と同じ顔をしている事に気が付いた。

 

「あれ?こいつって……」

 

 お構いなしに、フィーネは拳を再度赤髪の女性に向かって放つ。だが、女性は今度は避けるのではなく、真正面から片手で受け止めてしまった。

 

「なっ……!」

 

 魔力込めていないとはいえ、力をしっかりと込めた拳をあっさりと止められ、フィーネは目を見開く。

 赤髪の女性はグッと力を込め、フィーネの手を骨を折ろうとする。が、フィーネは赤髪の女性の手首を掴み、背負い投げで反対側に飛ばした。

 赤髪の人物は軽々と受け身を取った後、機械型のマスクの中から声を上げた。

 

「一つ質問。これをやったのはアンタかしら?」

「それはこっちの台詞だ!!」

「ちょっと待って!!一旦ストップ!!」

 

 金髪の人物が、二人の間に割って入る。

 フィーネは水を刺された様な気分になり、その人物に対して文句を言う。

 

「いきなり割って入ってきて何してぇんだ?あぁ!?」

「おいおい!俺の顔よく見ろよ。ほら!」

「お前とは一度も会ってな……あれっ?」

 

 ここでフィーネは、金髪の人物の顔を見て初めて気付く。この男が、ナイツ・エンパイアで助けた人物だと言う事を、ミシェルが旅路の途中で言っていたパルク・メーティスだということを。

 

「……あー!ちょっと前にボロボロになってたあの!」

「そうそれ!良かったぁ覚えてて……!」

「名前はミシェルから聞いてる!パルク・メーティス……だったよな。なんでこんなところに?」

「ちょっとに……俺も招待されたから暇だから来たーって感じだよ。休日を潰されちゃったから気分転換にって感じで」

 

「ちょっと?」

 

 赤髪の女性が声を上げ、フィーネとパルクは少し身体が震えてしまった。

 赤髪の女性はパルクの方へ近づき、フィーネを指で指した。

 

「知り合いなの?」

「はい!ナイツ・エンパイアでの……」

「ふーん……()()()の仲間か」

 

 女性はナイツ・エンパイアの病室でミシェルとフィーネが言葉を交わし合っていた場面を思い出す。

 女性がフィーネをじっと見続けていると、フィーネは女性にある事を質問した。

 

「アンタ、名前は?」

 

 女性は躊躇った。女性の名前は、女性の仲間、パルクですら知らない。女性もこれまでに本名を明かした事はない。フィーネも例外ではなく、この質問には女性の偽名を使う必要があった。

 

「テイルよ」

「それだけ?」

「そう。"テイル"」

「……わかった。よろしく」

 

 質問をした際の溜めがあっとのをフィーネは気にするが、今考える事ではないと、その疑問を忘れた。

 そこから三人はこの時までに何が起こったかを話しあった。フィーネは先程自身の身体に起こった事、ついさっきの人々の異常な行動について話した。

 パルクとテイルは、酒の酔いを覚ますために、一度パーティ会場を抜け出して休んでいたところ、先程の異常事態に遭遇した事を話した。

 ここでフィーネは、その会話の際にできた疑問をパルクとテイルに問いかける。

 

「お前らドレス着てたよな……なんで違う服装になってんだ?」

 

 パルクは少し焦る。会話で話した事には、パルクとテイルが冒険者という建前の姿を入れ、嘘を混じらせている。二人の()()()()()は、他人には決して知られてはいけないものだからだ。

 パルクが咄嗟に答えようとするよりも先に、テイルが早く答える。

 

「冒険者流マジックよ。内部の服を綺麗に隠す技がいくつかあるわ」

 

 それは流石に無茶苦茶な……

 

「えっ何それ!?どうやんだ!?」

 

 信じるんかい!!

 

 テイルは嘘を感じさせないほどの、自然な話し方で話している。これ程の技術なら、どんな人でもすぐに騙すことが出来るだろう。だが……

 フィーネの顔はなんともまぁ純粋無垢な顔で、冒険者流マジックをどうやってやるかを、テイルに対して若干興奮気味に問いかけている。

 

(そこはもうちょっと……)

(疑えよ……)

 

 この時、パルクとテイルの考えが珍しく一致した。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 気を取り直し、三人はパーティ会場がどうなっているかを確かめるため、VIPルームへ向かおうとする。すると、フィーネが待ったをかけた。

 

「ごめん、ちょっと待ってて!」

 

 そう言うと、フィーネは全速力で走り出し、ホテルの外に出た。そこから向かいの宿に突っ走り、部屋にあるいつも着ている服を手に取り、そのままパルクとテイルの元に戻った。

 

「まさか……これの為だけに、下に降りたの?」

「あぁ!まだ人がいるかと思ったけど、ガラガラだった。多分元凶は私たちの事なんて眼中にないんだろ」

「おい待て。ここで着替えるのかよ?」

「パルク。目を覆ってなさい」

「言われなくてもやりますよ!」

 

 フィーネの着替えは思ったより早く終わった。生地の薄いヘソの出た服装の上にジャケットを着け、ショートパンツを履いた姿。パルクを助けた時と全く同じ服装だ。

 

「ドレスは動きづらいからなー。やっぱいつもの服がしっくりくるな」

「あなた……この状況を楽しんでない?」

「そりゃそうだろ!立ち塞がる敵をぶっ飛ばして、最後にミシェルと戦って勝つ!それが私の目標だからな!」

 

 フィーネの目標はミシェルに勝つ事。その為ならどんな敵とも戦えるのだ。今のフィーネは、元凶を見つけたいのと同時に、元凶と戦い強くなりたいという二つの考えがあった。

 その様子は、テイルにとっては驚く事であり、呆れる事でもあった。

 

「あなた、思ったより戦闘狂なのね」

 

 その後、三人はそのまま静かな空間を走り、VIPルームへ辿り着いた。部屋に入ると、豪華な装飾が至る所にあり、グラスが地面に落ち、飲みかけの瓶が置いてあった。

 VIPルームには、巨大なガラスの窓から会場一目できる様になっている。フィーネはそのガラスの窓から会場を見た。

 

「ミシェル?何してんだあいつ……」

 

 会場にいるのはたった二人。ドールズホテルの社長のミリエラ・ドールズとミシェル。

 テイルは歯車を見る。ガラスの箱が取り除かれており、今にもミシェルが触ろうとしていた。

 

 生身で歯車に触ってしまえば、その人間は死に至る。

 

 テイルにとって最悪な事態が頭を過ぎる。

 

「まさか……」

 

 テイルはガラスを破壊しようとする。だが、それよりも先にフィーネが動いた。

 

「……!」

 

 フィーネの拳に魔力が籠る。その魔力は、近くにいるテイルとパルクに強風の様に強く当たる。

 ミシェルが危機的状況に陥っている事は、あの様子を見た時点でフィーネは既にわかっていたのだ。

 テイルはフィーネがやろうとしている事を把握し、一歩後ろに下がり、姿勢を低くして突撃の姿勢を取った。パルクも同じく突撃の姿勢をとり、魔力を使い槍を生成する。

 

「ふんっ!!」

 

 魔力を纏った拳がガラスに直撃する。ガラスは一気にひび割れ、崩壊した。

 

 それと同時に三人が、壊れたガラスから会場へ飛び出した。

 




次回!フィーネ&パルク&テイルvsミリエラ!
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