アフターワールド   作:プラモプール

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真価

ミシェルが今持っているドールズC&Gを突破する方法は三つある。

 一つ目、ブーメラン型の剣はを盾にしながらそのまま突っ込む方法。これは先程の爆弾入りの弾丸の存在を知り、押し負けると考え却下する。

 二つ目、ブーメラン型の剣を再度空中へ飛ばし、それに気を取られているうちに破壊する方法。これも先程発動した魔力の波動によっていち早く無力化される可能性を考え、却下。

 残った三つ目の方法は、全ての魔力のリソースを全て武器生成に注ぎ込み、ドールズの攻撃に合わせた武器で攻撃する方法だった。1秒でも対応が遅れれば、ドールズに絶好のチャンスを与えてしまう。逆に成功してしまえば、攻撃の調子を完全にこっちの物にできる。

 

 問題は、ミシェル自身がそれをできるかだ。

 

(……何故だろう。何故僕はこんなに落ち着いてられるんだ)

 

 劣勢の状態でも、ミシェルの脳内には何故か落ち着いていた。あれ程までに歯車の存在に焦っていたミシェルが、今は一番冷静にこの状況を分析していた。

 ミリエラに操られていた際、ミシェルは歯車の至近距離にいた。歯車は周辺の魔力の性質を変化させる力を持つ。その歯車が放つ魔力の波動にその力があったとするのなら、ミシェルに起こった魔力の変化が、運良く良い方向に進んだということだろう。

 今のミシェルのコンディションは完璧、それ以上と言っても過言ではなかった。

 

「やってやる……!」

 

 ミシェルがミリエラの方に向かって走り出す。

 

「ただ突っ込むだけじゃ勝てないのはお分かりでしょう?まぁそれをやるなら……」

 

「私は全力であなたを拒んであげます」

 

 ミリエラが糸を操作し、それと呼応してドールズC&Gが弾幕を周辺にばら撒く。弾丸が地面に当たる音、爆発する音が間髪なく轟く。

 

(まずはこの弾幕を……)

 

 ミシェルがブーメランになっていた円弧型の剣を回転させ、前へ押し出す。普通の弾丸は弾かれるが、爆弾入りの弾丸は普通の防御では爆風によって体勢を崩される。

 

 だが、それは爆発が起こればの話。

 

(……!)

 

 爆発が起こる前にその弾丸を無力化してしまえば……

 

 体勢を崩すことなく前に進める!

 

 

 

 

 

 

「今だ!」

 

 ミシェルの回転する剣に爆弾入りが着弾しようとするその瞬間、ミシェルはその回転する剣を横に退かした。

 更に、ミシェルはもう片方の腕に持つ剣を前へ押し出した。その剣は爆弾入りの弾丸に向かっていき、音も無く接触した。そのまま弾丸は弾かれることなく剣を流れていき、

 

 完全に通り過ぎた瞬間、弾丸が真っ二つに割れた。

 

「なっ……!?」

 

 ミシェルが押し出した腕で持っている剣。それはもう一つのブーメラン型の剣に少し手を加えた物で、それは完全の円の形をしている。

 ミシェルはその剣で弾丸に衝撃を与えることなく、弾丸を切り裂いたのだ。

 

 間髪入れずにミシェルが走り出す。ミリエラはドールズを操作し、再度弾幕を発射する。

 しかし、ミシェルは進みながら通常の弾丸を回転する剣で防ぎ、爆弾入りの弾丸は円形の剣をスライサーのように回転させ、真っ向からその弾丸を切り裂く。

 

「ならこれでぇ!!」

 

 ミリエラの動きに同調したドールズが、両手のチェーンソーの刃を回転させ、ミシェルに振り下ろす。そのチェーンソーは魔力を纏っており、先程より切れ味も回転数も上がっている。どこの部位に当たっても致命傷は避けられないだろう。

 だが、ミシェルは避けずに真正面から立ち向かう。

 

 目の前にチェーンソーが迫る。ミシェルは臆することなく次の武器を生成し、チェーンソーの先端にぶつけた。

 普通の武器では強化されたチェーンソーにあっさりと切られてしまう。だが、ミシェルがぶつけた武器はそうはならず、逆にチェーンソーを勢いよく弾いてしまった。

 

 その武器は剣などという立派な物ではなかった。その武器は……

 

「……石で?ドールズのチェーンソーを……」

 

「弾いた……!?」

 

 キックバック。

 

 旧人類にもチェーンソーという道具は存在しており、かなりの需要があった。だが、その道具には一つ欠点がある。それは先端部分に異物が引っ掛かると、その反動で刃が自分の方へ跳ね返るというものだった。それは最悪、人を死に至らしめる最悪の欠点だった。

 そして、その欠点はドールズのチェーンソーにも備わっていた。

 

 攻撃を弾いた後もミシェルの行動が続く。

 ドールズの攻撃を弾いたことにより、ドールズは大きく仰け反った。だが、ここでミシェルが大きな致命傷与えられなければ、最初に逆戻りになってしまう。

 

「だからこそ……」

 

 ミシェルが持っていた武器を捨て、再度別の武器を生成する。

 ミシェルが想像する。どんな硬く、大きな物でも切り裂くことができる剣を。脳内に記憶しているあらゆる情報を使い、最適な形を作っていく。

 

 ミシェルの手に、一つの刀が握られた。

 

 ミシェルは両手で刀を持ち上げ、上からドールズの胴体を狙い、一気に振り下ろした。

 

 

 

 

 

 束の間の静寂が、場の空気を重くする。その静寂は、一つのひび割れるような音によって破られた。

 

「わ、私のドールズが……」

 

 ドールズの身体にヒビが入る。そのヒビは段々と広くなっていき、破片がパラパラと地面に落ちていく。

 ミリエラにだけ見える最後の糸が指から消える。それは即ち、ドールズが完全に機能を停止したということを意味していた。ミリエラの顔が歪み、膝から崩れ落ちる。

 

「やったのか!やるじゃねぇかミシェル!」

 

 歓声を上げるフィーネの横で、テイルがミシェルを見ていた。

 

(やれるとは思ったけど、ここまで成長してるなんてね……)

 

 隠れた顔の表情はどうなっているかはわからない。だが、先程までテイルの身に纏わりついていた殺気が少し薄れていた。

 

(直接触ってなくてもここまで効果があるなんてね……もし触っていたら……)

 

 テイルは自身の脳裏に浮かんだ状況を、一度脳内の片隅に置いた。最悪の事態は起こらなかった。起きてないことを想像しても、意味はない。

 

「さて……パルク、歯車の回収を……」

 

 テイルが歯車が置いてある台を見る。そこあったはずの歯車が消えていた。

 

「……は?」

 

 テイルの脳内にある片隅に置いたはずの想像が、一気に膨らみ出した。その想像が、テイルの動きを一瞬遅らせた。

 

「まさか……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミリエラの目に見るも無惨な姿で倒れ伏しているドールズが映る。彼女が小さい頃から常に大切にしてきた物の成れの果てを、ミリエラの目にくっきりと見えてしまった。

 

「あ…あぁ……」

 

 嗚咽を漏らしているミリエラの前に、ミシェルが立つ。黄金色に輝く瞳が、ミリエラを見下ろしていた。

 ミシェルは何も言わずにミリエラの服を引っ張り、

 

 握りしめた拳でミリエラの顔面を殴り飛ばした。

 

 ミリエラは後方へ吹き飛ばされ、地面に落ちた後微動だにしなくなった。

 ミシェルはいつの間にか粗くなっていた呼吸を整える。

 

「なんだこれ……この力は……」

 

 不思議と、あれだけ動いた後でも、ミシェルの状態はあまり悪くなっていなかった。今回は一対一の状況だったが、連戦しても大丈夫な程疲労が多くなかった。

 

(……あの歯車のせいだろうか)

 

 ミシェルの心は妙に落ち着いていた。あれほどまでのミリエラに対する怒りの感情が、今はすっかりと消えていた。あの歯車の波動による身体の変化と同時に、自身の感情が抑圧されたということだろうか。

 

(……後で考えるか)

 

 ミリエラを倒した今、戦闘はないと思ってもいいだろう。

 ミシェルはそのまま歯車の元へ向かおうと、振り返ろうとする。今のミシェルの脳内は、歯車の仕組みがどうなっているかを解明することしか頭になかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっ」

 

 振り返った先には、見知らぬ少女がいた。銀髪で白いワンピースを着ており、綺麗な素肌が空気に触れている。そして、その少女の目は、()()()()()()()()黄金色に輝いていた。

 

 その少女の手には、魔力を纏った歯車

 

 その歯車は、既にミシェルの胸に接触していた。

 

「えいっ」

 

 少女がその歯車を押した瞬間、歯車が段々とミシェルの体内に入っていく。

 

 ミシェルの視界が点滅する。歯車が中に入ってくる味わったことのない感触が、全体に渡ってくる。

 その感触の間に、脳内で何かが漏れ出した。

 

 それはミシェルが持つ記憶。だが、その記憶はどれもミシェルが()()()()()()だった。

 溢れてくる知らない記憶が、ミシェルの脳内に溢れ出す。

 

(こ……これ……は……?)

 

 思考を整えることも叶わず、止まらず溢れ出る記憶にミシェルは耐えることができなかった。

 気を失う瞬間、誰かの背中が見えた。それはミシェルの父だ。ミシェルの父は、光の方へ足を運んでいく途中、一つ言葉を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もし、俺のことを思い出したなら……』

 

 男の声がミシェルに何度も響き渡る。遠のく意識の中で必死にその声を聞き取ろうとする。

 

()()に来い。そこに……』

 

 しかし、ミシェルは耐えきれず、意識が途切れ、それと同時に男の声も消えてしまった。

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