アフターワールド   作:プラモプール

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大変遅れました


呆気ない再スタート

「それで…何か言うことはあるかい?」

「あ…いや……ごめんなさい…」

 

 現在、フィーネの大声で起床したお婆さんに、フィーネが問い詰められていた。

 婆さんは穏やかな表情だったが、怒りの感情が少し滲み出ており、フィーネは正座をして下を向きながら説教を受け、それをそばから見ていたミシェルも、思わず冷や汗をかいてしまった。

 

「私はね…フィーネちゃんが何か私に隠してるっていうのは、薄々気づいてたのよ」

「…え?」

 

 婆さんはフィーネを椅子に座らせ、お婆さん自身も反対側にある椅子に座った。

 双方、目をじっと見つめた。お婆さんは、優しい目付きでフィーネを見つめていた。

 

 そこから、婆さんは話し始めた。

 フィーネが帰ってくるごとに傷だらけになって帰ってくること。それを酒場の店主に話したところ、お偉いさんの息子に手をつけられていたこと。

 そしてフィーネには何かしたいことがあるのではないかということ。

 

「婆ちゃん…なんでそこまで…」

「何年面倒見てると思ってんだい?顔見りゃわかるのよ」

 

 血は繋がってない。特殊な力があるわけでもない。だが、婆さんなりにフィーネを見続けたことで、フィーネが何を考えているかがなんとなくわかっていたようだ。

 それを見ていたミシェルは、婆さんに対して目を見開いていた。

 

「この際だから、はっきりと言わせてもらうわね」

 

 フィーネは息を呑んだ。先程はミシェルに意思表明をし、その為に今一度歩こうとした。けど、もしここで婆さんにそれを断られたら、そこまでだ。

 

「…我慢せずに生きなさい!」

 

 婆さんの言葉の意味は許可だった。5年間も一人だけにしてしまったのに、それでも、婆さんはフィーネのことを思って自由に歩くことを認めてくれたのだ。

 フィーネは思わず、涙が漏れてしまった。罪悪感があるが、それと同時に、嬉しい気持ちが溢れてきてしまった。

 

「…っ…ありがとう…婆ちゃん…!」

 

 

 

 

 

 その後、朝飯を婆さんの家で済ませた後、ミシェルとフィーネは家を出た。

 ミシェルとフィーネは酒場に向かっていた。フィーネ自身は改心してくれたが、赤紙によって彼女は賞金首のような扱いだ。そのままの扱いで村を出てしまえば、どの場所でも首を狙われるだろう。

 

「んで…私を突き出すってこと?」

「まぁ、元々僕はあなたを捕まえるのが目的なので。それに、一旦刑期を終わらせてから僕を追うのもいいんじゃないですか?」

「それしてる間にどっか行っちまうだろお前。」

 

 二人が話していくうちに、ある酒場に辿り着いた。そこには看板で大きな文字で"ジョッキー"と書かれていた。

 

 ガラッと木製のドアが開いた。その音にいち早く気付いていたのは、スキンヘッドが特徴のゲイルだった。

 

「おっ来たな…て、何和気藹々としてるんだよ」

「そう見えますかね?」

 

 ゲイルは、ミシェルの後ろにいるフィーネを見て、すぐに近づいた。

 フィーネは近づいたゲイルを睨み付け、対してゲイルは、フィーネが纏っている魔力に気付き、目を細めてた。

 

「…嬢ちゃん、魔力の操作いつ覚えたよ?」

「こいつと戦ってる最中に」

 

 そうフィーネが言うと、親指でミシェルを指差した。

 ゲイルには、フィーネが魔力を使うという情報は回っていなかった。それに加えて、フィーネの魔力は、初めて魔力を扱う人間より正確に練られている。

 一度の戦いで得たとは思えない程のコントロール能力にゲイルは驚愕してしまった。

 

「なんで?」

「才能としか…」

 

 ミシェルのあまりにも単純な回答に呆れながらも、ゲイルは本題に入ることにした。

 

「とりあえず、依頼は達成したからヨシ!報酬は後程渡す。それと、フィーネは俺と一緒に来い」

「牢獄行きってか?」

「良いから来い」

 

 ゲイルは、フィーネの腕を掴み引き摺るように引っ張った。

 フィーネはいきなりの対応にびっくりし、手を引き剥がそうとするが、何故かゲイルの腕が滑り、触れなくなっていた。

 

「なんだよこれ?…力つよっ!?」

 

 フィーネ自身は自分の力が強大である事を知っている。だからこそ、並の冒険者では捕まえることはできなかった。

 だが、ゲイルはその様な人間の腕を人も容易く引き摺っている。フィーネはその原因が力だけじゃないことがわかっていた。単に対策方法がわからなかったのだ。

 そのままフィーネは、ゲイルに奥の扉へと連れてかれてしまった。

 

「ふぅ、ひと段落かな」

 

 ミシェルは一息つき、近くの椅子に座り込んだ。治癒魔法で治したはずの部分が、まだ地味に痛い。それ程の相手と戦って勝てたことは、間違いなく良い進歩だった。

 良い進歩ではある。しかし、今のままだと、後程に現れるであろう歯車を狙う強豪相手には手も足も出ないとミシェルは感じていた。

 

「もっと…強くならなきゃ」

 

 ミシェルは自分の腕を見つめた。

 小さい腕ではあるが、成人男性以上の力を持つ腕だ。いつからこの腕なのかは、ミシェルにはわからなかった。いつのまにか、身体の成長が止まり、今の様な子供の様な姿になっている。なのに、内部の強度は段々と上がっていることに、幼い頃のミシェルは度々疑問に思っていた。

 だが、歳を重ねるごとに、段々と疑問に思うことはなくなっていた。自分の意識に、身体の謎を"そういう身体"だという考えが浸透していったからだろう。

 

 束の間の休息、ミシェルはスクっと立ち上がり、荷物を回収しに向かった。

 内に潜む疑問を一度置いておき、次の目的地に向かう準備を始めるのだった。目的はただ一つ。

 

 歯車を手に入れる為に。

 

 その為にも、もっと強くなる為に。

 

 

 

─────────────────────

 

 フィーネは、ゲイルに地下深くの牢獄部屋に連れてかれていた。ゲイルは、フィーネの腕を引っ張り、牢屋の中に投げ入れた。

 

「痛ぇな!もう少し丁寧に扱えよ!」

「お前丈夫だから大丈夫だろ?」

 

 フィーネはゲイルに近づこうとするが、牢屋に阻まれ近づけなかった。ゲイルは側にあった椅子をフィーネの真正面に置き、そこに座った。

 フィーネには、ゲイルが何を考えているかわからなかった。拘束が目的なら、既に身体を何かで縛ることができた。しかし、ゲイルはそれをしなかったのだ。

 すると、ゲイルは一つの手紙を取り出した。ゲイルは牢屋の隙間から手紙を投げ入れ、ニヤッと笑った。

 

「あんたの知り合いからだ」

 

 フィーネは怪しがりながら、手紙を開けた。

 その中には、何か書いてある紙と一つの写真が入っていた。その写真に写っていた人物に、フィーネは驚愕していた。何故ならその人物は、フィーネが最も嫌っている人物、受付嬢の仕事をしていた時、怒りのあまり殴ってしまったあの時のお偉いさんの息子だった。

 見た目は小太りではあるが、全体的に清潔感があり、豪華な暮らしをしていることが一目でわかる。

 

「…!?」

 

 だが、それよりも驚いたことは、その写真で息子さんが土下座をしていたのだ。顔は何かに恐れている様な顔で、手には汗が流れており、誰かに強制されているのだろう。

 フィーネは、あの傲慢な息子を、土下座させることができる人間がいるとは思わなかった。スッキリしたというより、困惑していた。

 ゲイルは、その様子を見ながら話し出した。

 

「この国には騎士団長っていう人がいてな、偉い人なんだが、庶民にしっかり目を配れるし、人を見た目で判断しない、それに加えて実力もあって頭もいい!そんな超人がいる訳よ」

「…その人が土下座させたのか?」

「いや、厳密にはこの酒場の前の店主だ」

 

 ゲイル曰く、前任の店主は息子さんがフィーネにちょかいをかけていることを気にしていた。だが、当時はその息子に文句を言えば、その人はその内にどこかへ消えてしまうのだ。実際そうなった人もいるらしい。大多数の人間は、それが息子が命令してやった事だという事を知っていた。だからこそ、息子を恐れて何も言えなくなっていたらしい。

 だが、その店主は定年退職の後、後任のゲイルにその事を話したらしい。ゲイルは、それを聞いてある人物に連絡した。するとその人がなんと、騎士団長との関係者らしく、騎士団長も真剣に捜査に取り組んでくれたらしく、結果的に息子さんがしてきた悪行が雪崩の様に判明していき、それに便乗した前店主が、フィーネの事を騎士団長に話した結果、手紙で謝罪文を書いてもらい、写真である程度の誠意を見せている様子を撮ったらしい。

 

「とまぁ…あんたの罪はほぼなかった事になった訳よ」

「………」

 

 フィーネの空いた口は、閉じれなかった。そんな都合のいい事があっていいのかと、疑ったが、写真がある以上、信じるしかないだろう。

 フィーネは安堵した。が、それ以上になだれ込んできた情報に、思考が止まっていた。こんな簡単に、解決してしまうとは思わなかったのだ。

 ゲイルは身体を前に起こし、フィーネに問いかけた

 

「ミシェルから聞いたぞ。目標があるんだって?」

 

 その問いに、フィーネは首を縦に振った。

 フィーネには、確かな目標がある。それを成すための手順が省略された今、今にでも駆け出したかった。だが、あまりにも上手く出来事が進み過ぎてることに戸惑い、躊躇ってしまった。

 

「……そんな都合のいい話あんのかよ」

「あるんだなぁこれが。実際その写真は本物だぜ」

 

 写真に写る息子さんと、今の会話の内容、それに嘘は感じられなかった。だから、一応納得することにした。

 実際、あの息子さんがあんな姿になっていたら、いつものフィーネなら腹がちぎれる程笑っていただろう。その点に関しては、今度騎士団長にはお礼を言おうと思いながら、フィーネは少し体を休めた。

 するとゲイルは、一つの袋を取り出した。

 

「お前宛だ」

 

 フィーネはその袋を鉄格子の間から取り、中身を開けた。その中には一式の新しい服が入れてあった。

 

「これって…」

 

 

─────────────────────

 

 

 

 一方、ミシェルは荷物を整えて、町を出るところだった。荷物を入れたバッグを背負い、酒場を後にしていた。

 フィーネという強敵に出会い、叩き込まれた感覚を思い出す。一つ一つの打撃が重く、魔力をコントールできてから、さらにその打撃が重くなっていた。何より、一番ミシェル興味が湧いていたのは、その成長スピードだった。ただ拳を振るうだけだった状態から、魔力をバランス良く扱い、即座に戦闘に活用できる様になっていた。あの様な人材はこの世の中には数少ないだろう。

 

「これから、あの人みたいなのに沢山出会う。だから、僕もこのままじゃいられない」

 

 ミシェルは、自身の持つ魔力特性にまだ可能性を見出していた。剣という一つの括りに捉われなければ、更に強力な使い方ができるはずだと。

 

 ミシェルは、ゲイルに頼んでいた馬車に乗り込み、運転手に行き先を伝えた。

 

()()()()()()()()()までお願いします。行けるところまでで」

 

 ミシェルは、この"騎士の国"の中心部である場所に向かう。

 

 それに対して、フィーネも次のステージに行くため、準備を進める。

 

 目標は違えど、それの為に二人は…

 

ナイツ・エンパイアへの道のりを進むのだった。

 




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