黒髪の女性の襲撃にあった後、ミシェルと金髪の男性は、騒動に駆けつけた騎士達に状況を説明した。騎士達には納得してもらえたが、雷の音の正体を聞かれた際は、ミシェルは知らないフリをした。
その後、路地裏から出た二人は休息を求めて、酒場に入店した。
「はぁ…」
「疲れたな…俺休暇中だってのに…」
二人は同時にため息を吐き、ぐったりと椅子に寄りかかった。
ミシェルはぐったりとしながらも、あの女性が髪飾りを狙っていた理由を考えた。ただの金目的だろうか?けど、そんな事をするほど貧しいようには見えなかった。それに、彼女はこう言っていた。
(リリス…か)
リリス…盗賊の親玉の名前にしては珍しい。ミシェルが考えていると、金髪の男性は机に置いてある水を飲んだ後、ミシェルの方を向いた。
「改めて自己紹介を…俺はパルク。パルク・メーティスだ。あんたは?」
「ミシェルです。パルクさんは冒険者ですか?」
ミシェルの問いかけに、一瞬パルクの動きが止まったが、目を細めた後に再度水を飲んだ。
「まー…そゆこと」
「なんですか今の間は」
「それはそれとしてさ、あんたも冒険者だろ?未成年はなれないはずじゃ…」
「大人ですよ。はい」
そうミシェルが言うと、バッグから冒険者カードを取り出した。パルクはそれを手に取り、詳細をしっかり確認した。そして、パルクは驚くように冒険者カードの内容とミシェルの容姿を交互に見た。
「…その見た目で?」
「よく言われます」
「世界は広いな…」
パルクはカードをミシェルに返した後、顎に指を置き、何かを考えた。その後、パルクはミシェルに対して質問した。
「親はどうしてんの?」
「母さんはまぁ普通に働いてる人です。父さんは…わからないです。僕が小さい頃には
「あっ父親に問題アリってこと?」
「さぁ?あ、そういや何かを探しに行ったみたいな事言ってたかも。旅の途中で会えるかもしれないですね」
「赤の他人みたいな言い方だな…そんなに嫌な奴だった?」
ミシェルは水を飲んだ後、ふぅとため息を吐いた。無表情だった顔が、少し不機嫌な顔になったとパルクは感じた。
「別に嫌ってる訳じゃないです。ただ、どこにいるんだろうなって。顔合わせて色々疑問をぶつけたいなって感じですよ」
あ…これ、内心怒ってそうだな
パルクは内心そう思っていた。
ミシェルはどのような状況でも落ち着いた表情をしているからこそ、感情の変化がわかりやすい。ミシェルが不機嫌な顔になった辺りから、パルクはミシェルが父に対して抱いている感情がなんとなくわかってしまった。
パルクはこういう空気はあまり好きじゃない。親の話を出したことに、パルクは少し後悔していた。
「一旦この話終わろう!俺が悪かった!!んー、さっきの女の話をしよう!!」
多少強引気味だったが、ミシェルは何も言わずに、また落ち着いた表情に戻った。
さっきの女の話、それは先程ミシェル達を襲った黒髪の女性のことだ。精霊使いかつ、自立型の精霊を持った人。そして、何より引っかかったのは彼女が発したリリスという存在。最初に気になった部分はミシェルとパルク、どちらもリリスについてだった。
「リリスって誰なんでしょうか?」
「さぁな、ただあの女性を従える頭だったら、相当強い奴だろうな。それに、名前も偽名っぽいからな」
「パルクさん、
「あー、一回読んだことあるけど長すぎて俺には全然読めなかった奴だ…」
旧人類総合歴史書
著者は不明なのだが、精密な内容かつ、旧人類についての信憑性の高い情報が多く載っている本。一部の歴史マニアと本好きに好まれている本だ。
それの原因が、他の本とは明らかにページの量が多い、多すぎる。大人が使用する単語辞書の分厚さを軽く超えている。その為、並の読者は数ページ読んだだけで体力が持たない。それが積み重なった結果、熟練の読者のみがこの本を愛読するようになった。
話を戻そう。その本の中には旧人類の繁栄と滅亡までの過程が描かれている。そして、その滅亡の原因であり、このワールドアイランドを造った存在である人物と、先程女性が発したリリスという名前が同じだったのだ。
「なんで歴史書内の人物の名前を…?」
ミシェルはこれが他人による痛々しい行為だとは思わなかった。あの女性の様子、あれはただ演技をしている皮を被った人間がするようなことではない。明らかな本物の、皮を被っていない人間の雰囲気だった。
「俺はそう深く考えたくてもいいと思うぜ。イタイことしてる奴なんてそう珍しくないからな」
「そうでしょうか…」
「ま、どの道ほっとけないからな」
パルクはコップの水を飲み干した後、席を立ち上がり歩き出した。
「さっきはありがとうな!またどっか出会おうぜ!」
そのまま、パルクは外へ行ってしまった。パルクに色々と聞きたいことがあったのだが、仕方ない。
ミシェルもそのまま荷物を背負い、買い出しと、歯車の情報を調達する為に再び外に出た。
同時刻、酒場の暗い片隅にある女性が隠れていた。
ついさっき、ミシェルとパルクを襲った人物である。名前はアーシャ・ミリエッタ。返り討ちにされた時、彼女は影の空間に潜り込みその場を凌いでいた。彼女は影がある場所ならどこでも移動が可能になるため、ミシェル達はアーシャに付けられていることを知るよしもなかった。そして、酒場にある小さい影から聞き耳を立てていた。
「ミシェル…あっ」
アーシャが反応したのはミシェルに対してだった。襲った際は名前を知らなかったが、ここに来てアーシャの主が話していた人物と重なった。
「リリス様の言ってた人だ。じゃ、じゃあ早くあのことを伝えないと…」
アーシャは急いで影から出ようとするが、影の空間から腕が生えていきて彼女を静止する。アーシャはハッとし、影から出ることをやめた。
「あ、ありがとうね」
自立型の精霊である"エイリ"は影を主体とした精霊。影の中でならどんな強敵でも十分に相手にできるほどのポテンシャルを持つ。私は生まれつきの精霊使いではないのだが、10歳の頃に誕生したこの精霊はどんな時でも側にいてくれた。悲しかった時は一緒に泣いてくれた。そんな感じの優しい優しい精霊なのだ。
今ここで出れば、また話を聞いてもらえずにボコボコにされるに違いない。それを恐れたアーシャは一度機会を伺うことにした。
数分経った後、金髪の男性のパルクが酒場から出て行った。その後、ミシェルも荷物をまとめて酒場を出ようとしていた。
おそらく、あの二人は別行動。そこに好機を見出したアーシャは、一人になったミシェルの後を追うことにした。
「早く伝えなきゃ…」
アーシャは、少し危機感を覚えていた。ミシェルはあの時、リリスという名前に対して興味を抱いていた。おそらく、何処かでリリス様に出会ってしまうだろう。ただ、ミシェルがあの目的を持っている以上、接触は避けられない。
けど、今リリス様に会わせられない。会わせてはいけないのだ。
「早くしないと…リリス様に…」
「
アーシャは影から生えた温かい腕に包まれながら、その身体を影の中に入り込んでいった。
パルク君は明るくてリーダーシップはあるけど、若さ故のお調子者
アーシャちゃんはいつもは気弱だけど、周りが見えなくなりすぎて癇癪起こして周りを傷つけちゃう子
感想くれると励みになります。