不幸体質な少年の青春の物語   作:イルカはシャチ

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目的とシンジツ

 

僕は包帯を巻いた頭を抑えながら、アヤネから送られた地点に向かう

 

 

「ホシノー、みんなー」

 

 

僕はみんなを見つけて手を振る。ヒフミも一緒のようだ

 

 

「あっ先生だ。って頭のケガー!」

 

 

「これは大丈夫な方の怪我だよ」

 

 

「それよりも何か成果はあった?」

 

 

「時間稼ぎして貰ったところ悪いんだけどさー」

 

 

「まだなんにも」

 

 

「そっか、それじゃあその覆面は?」

 

 

僕は目出し帽を被ったみんなを見て尋ねる

 

 

「先生、これから銀行を襲う」

 

 

「、、、え、えぇ?!」

 

 

「カイザーローンがあの銀行と絡んでるみたいなんだよね〜」

 

 

「あ、先生の分も買って置きましたよー」

 

 

「ノノミ?それは、、、たいやきの袋」

 

 

「これでヒフミと先生も完璧。ん、行こう」

 

 

「シロコちゃん、先生からの許可がまだだよ」

 

 

みんなの視線が僕に集まる

 

 

「、、、今回だけだからね」

 

 

シロコに説明された策戦によると、目的物はアビドスからお金を受け取ったとわかる集金確認の書類、基本行動はシロコに合わせればいいとのこと

 

 

「はい。それじゃあ、、、銀行を襲うよ、開始!」

 

 

まずは僕の出番シッテムの箱で銀行の電源を落とす。その隙に侵入する。次に明かりがついた頃には僕らは銀行内だ

 

 

「全員その場に伏せなさい!持っている武器は捨てて!」

 

 

「言うこと聞かないと、痛い目にあいますよ☆」

 

 

「あ、あはは、、、みなさん、ケガしちゃいけないので、、、伏せてくださいね、、、」

 

 

やってることは銀行強盗のそれだが、みんな凄く楽しそうに見える。僕は見張り役でいいとの事だから、出入り口付近でスタンガンを持ちその光景を眺めていた

 

 

「全員撤収!」

 

 

「先生、行くよ」

 

 

「はやっ」

 

 

銀行を襲うのに有した時間は予想していたよりも遥かに早く、前々からシミュレーションしていたのかと思う程だった

 

 

「マーケットガードです!撒きましょう」

 

 

「アロナ、バイク」

 

 

僕は初めてアビドスに来るのにお世話になったアドベンチャーバイクを取り出し、先に走って行ったみんなを追いかける。バイクに乗った僕の役割は勿論撹乱

 

 

「少し遠回りするからまた後で」

 

 

僕はバイクで小道や大通りを行ったり来たりし振り切った

 

 

………

 

 

 

………

 

 

僕らは手に入れた記録を確認するため、アビドス校舎に戻り机を囲んでいた

 

 

「なっ、何これ!?一体どういうことなのっ!!」

 

 

セリカが勢いよく机を叩き声を上げる

 

 

「現金輸送車の集金記録にはアビドスで788万円集金したと記されてる。私たちの学校に来たあのトラックで間違いない」

 

 

「、、、でも、その後すぐにカタカタヘルメット団に対して「任務補助金500万円提供」って記録がある」

 

 

「私たちのお金を受け取った後に、ヘルメット団のアジトに直行して、任務補助金を渡したってことだよね!?」

 

 

カタカタヘルメット団とは、僕がアビドスに辿りつけずグダグダしている間にホシノが一人で片付けたヘルメット団だ

 

 

「ど、どういうことでしょう!?理解できません!学校が破綻したら、貸し付けたお金も回収出来ないでしょうに、、、どうしてそのようなことを、、、?」

 

 

ノノミの言葉を聞いて思い直すと確かに変だ。銀行にとって貸した金が返ってこないのは不利益でしかない。すると後ろにデカい企業が付いていることになる

 

アビドス廃校対策委員会、今のアビドスが借金を返済出来なくなったらどうなる?

 

僕はホシノの言葉を思い出す。借金が返せなくなればこの校舎から立ち退くことになる。つまりは土地

 

 

「っ!アヤネ、アビドス周辺の土地の所有権を調べて欲しい」

 

 

「土地ですか?わかりました」

 

 

もしもそうなら最悪もいいところだ

 

 

「これといって変わったところはないですね、、、最近のデータでしたら地籍図を確認すればわかるかもしれません」

 

 

「地籍図、つまり役所に行けばわかるってことだよね。僕行ってくるよ」

 

 

「気をつけて下さいねー」

 

 

「じゃあね先生」

 

 

「また明日、ヒフミも今日はありがとね。色々と付き合わせちゃったけど」

 

 

「いえいえ、楽しかったので大丈夫です」

 

 

「それじゃ」

 

 

僕は手を振り対策委員会の教室を後にした

 

 

──

 

 

「みなさん先生のこと、どう思います?」

 

 

「悪い意味じゃないんだけど、年が近すぎて先生って感じがしないよね」

 

 

「本人としては頼れる先生を演じたいんだろうねー」

 

 

「先生は頑張ってる。実際私たちを先生は助けてる」

 

 

「先生は本来学生で私たちと同じように学園生活を送るはずの年齢です。それなのになぜ先生の道を選んだのでしょうか?」

 

 

「さあね、おじさん的には先生という役割を全うしようとしているように見えるけどね」

 

 

「先生ば脅されて先生になるしかなかった。とか?」

 

 

「シロコ先輩それはないと思う、、、」

 

 

「じゃあ先生も私たちみたいに借金があって働く必要があった。とか」

 

 

「それもなんか違う気がするー」

 

 

「こういう事は本人に直接聞いてみるのが一番ですね」

 

 

「もし青春が名残惜しいようなら、おじさんたちで先生を楽しませてあげようよ」

 

 

「そうね、あの年で仕事ばっかりなんて勿体ないわよ」

 

 

──

 

 

「アロナ、ヴァニタス、バニタエト、オマエ、ヴァニタスの意味わかる?」

 

 

僕は役所までの道中、アロナと近頃起きた事をまとめていた

 

 

「先生vanitas vanitatum et omnia vanitasです!少し待っていてください」

 

 

「録音してたの?!さすがアロナ!」

 

 

「えへへ、これは「全ては虚しい。 どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。」という意味ですね」

 

 

「短くまとめると「すべては空虚」のような表現です!」

 

 

「旧約聖書の「空は空」的なやつかな?」

 

 

この世界、いやキヴォトスには聖書やらキリスト関連と似た関係がある。けどキヴォトスではいくら調べてもキリストなどの宗教は出てこない。世界が違うのだろう

 

ベースは同じだが流行りの動画が違ったり、商品や世界観が地球よりも発展している。今更だが転移説で合っていそうだ

 

聖書について勉強しておけばこの世界のメタ的な設定がわかったかもしれないが、それはもう叶わない

 

せめてアリウスがどこに復讐するかがわかればよかったのだが

 

 

「、、、。」

 

 

そんなことを考えている内に役所へと到着した。人気の少ない静かな室内に入り目的の物を見つけ出す

 

 

「すみません。これの写真を撮ってもいいですか」

 

 

「ああ、どうぞ。近頃大きく所有者が変わったみたいでなぁ」

 

 

そうだよ。最悪だよ、これじゃあ他の学園からの支援は絶望的だ。どこもこうなる前から気づいていたんだろうけど、見捨てられ続けてここまで来たのなら手遅れだ

 

土地の半数以上いや、アビドス校舎を除くほぼ全てがカイザーグループが所有する土地になっていた

 

 

………

 

 

 

………

 

 

どうして皆手を貸そうとしなかったのだろう。ここまで酷く前に誰か手を差し伸べられなかったのだろうか

 

もし自分がある学園で一番権力を持っていたとして、アビドスの惨状を知っていたらどうしたか考える。そして出た結論が

 

世はそんなに甘くない。アビドスが例外なだけかもしれないが、大概の学校は資金援助までの余裕はない。そして余裕があったとしても無理なリスクを進んで受けるようなことはないだろう。それは自らの学園内での信頼に関係してくるからだ

 

元はアビドスもマンモス校で政治的に大きく関与できるほどの権力を持っていたとしたらどうだろうか、むしろ衰退してくれた方がよいと考える学園もあるかも知れない

 

政治とはそういう世界だ。常に行動の先に何かしらの利益をもたらしている。だから僕が先生になったからには、学園間が手を取り合う。そうなることを望んでいる

 

 

「、、、。」

 

 

その後も僕はしばらくの間、土地に関する資料を眺めていた

 

自問自答を繰り返していた内にお腹が減ってきた。気分が悪い、一度腹を満たそう。確かこの辺にはセリカがバイトで通ってるラーメン屋さんがあった気がする

 

役所を出て少し歩いて行くと予想通り、柴関ラーメンというラーメン屋が見えてきた

 

 

「ごめんくださーい」

 

 

「あっ、、、」

 

 

僕が入店するとすぐに見覚えのある顔触れが目に入った

 

 

「先生!?」

 

 

「次の策戦会議中だったかな?」

 

 

「え、ええそうよ!アビドスを倒すための一手を、、、先生?」

 

 

僕はアルが喋る中ムツキに視線を移していた。理由はもちろん

 

 

「よ、、も、、」

 

 

「ん?先生なになに?」

 

 

「よくもーっ!笑顔で名前を呼んでくれたなー!」

 

 

僕はそう言いながらムツキの頭をグリグリする

 

 

「う、うわぁ!ちょ、ちょ!」

 

 

「あれから仲間だと思われて尋問受けてるのっ!!」

 

 

「先生も大変そうね、、、」

 

 

「助けてくれても良くない?!」

 

 

「ムツキは自業自得でしょ」

 

 

僕はムツキへ軽い仕返しを終えた後、一息付いて柴関ラーメンを注文した

 

 

「相席いい?せっかくだしお話しようよ」

 

 

「な、なんのつもりかしら?私たちは敵同士よ」

 

 

「やっぱり先生として出来るだけ多くの生徒に手を差し伸べたいからね」

 

 

「利用できるものは利用していくのがアウトローだよ」

 

 

「そうね!いいわよ」

 

 

「それで、便利屋68はどんな組織なの?」

 

 

「金を貰えばなんでもするのが便利屋のモットー。法律と規律に縛られないハードボイルドなアウトロー組織よ」

 

 

「自由奔放に金を稼いでみたいってことでいい?」

 

 

「そんなんじゃないわよ!アウトローなカッコよさも大事よ」

 

 

「先生、今のでだいたいあってる」

 

 

問題なのはやはり金さえ貰えれば何でもやっちゃう事だ。せっかくだしハードボイルドとかアウトローとかはやらせてあげたいし

 

てかこの子達が冷徹な無法者になれるのか、、、?

 

 

「先生として君達便利屋を放って置くわけにはいかない、けど生徒にはやりたい事をやる自由があって欲しい」

 

 

「だから周囲へ被害が出る依頼を避けてもらいたいんだ。変わりに食費と生活費の仕送りはする。どう?」

 

 

「食費に、生活費まで?!」

 

 

「アルちゃんどうするの?」

 

 

「食料と生活費が安定して貰えるのは確かに大きいね」

 

 

「毎日お腹いっぱいに食べれるようになるんですか?!」

 

 

「周囲を取り巻くカッコよさもあるけどさ、誰かの為にするカッコよさもあるでしょ」

 

 

「アウトローには不合理なルールに反発したり、責任のある行動も含まれてる。アウトローは完全に悪なわけじゃない。その中にちょっとした優しさや善意があってもいいんだよ」

 

 

「悪らしく振る舞うんじゃなくて、アウトローとは何かという問いに縛られず、アルがやりたいと思うように結果を進めればそれもアウトローなんだよ」

 

 

「そう、よね。そうよね!」

 

 

「本当にやりたい事をやるのがアウトロー!」

 

 

「仕送りの件、どうする?」

 

 

「先生のお陰で目が覚めたわ、でも仕送りはお断りするわ」

 

 

「アル様、、、?」

 

 

「いいのー?アルちゃん」

 

 

「ええ、欲しい物は自分で手に入れるのが私のアウトローよ!」

 

 

「えっと、みんなはそれでいいかしら?」

 

 

「社長がいいなら文句はないよ」

 

 

「私もさんせー」

 

 

「アル様!一生ついていきます!」

 

 

、、、これなら大丈夫かな

 

僕は自分の分と4人の分の会計を済ませて店を後にした

 

 

………

 

 

 

………

 

 

店を出てすぐのことだ、市街地から爆発音が聞こえてきた。僕は便利屋の4人と現場に向かうことにした

 

 

──

 

 

「これはこれは」

 

 

「お待ちしておりましたよ、暁のホル、、、いや、ホシノさんでしたね。これは失礼」

 

 

私小鳥遊ホシノは今、とあるオフィスを訪れている

 

 

「黒服の人、今度は何のようなのさ?」

 

 

「、、、ふふ、状況が少しかわりましてね。この度はアビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんにご提案をしようと思いまして」

 

 

「提案?ふざけるな!!!それはもう、、、!!」

 

 

その言葉を聞いて思わず怒りをあらわにする。そんな私を気にもとめずこいつは話を続ける

 

 

「あなたに、決して拒めないであろう提案をひとつ。興味深い提案だと思いますので、どうかご清聴ください」

 

 

「ククッ、クックックックッ、、、」

 

 

不敵に笑う黒服、私はそいつが話す提案を黙って聞いていた

 

 

………

 

 

 

………

 

 

トントン

 

 

黒服から話を聞き終えた直後、部屋にノック音が響いた

 

 

「よっ、黒服さん」

 

 

「終わった?お話し」

 

 

軽い挨拶をしながら入って来たのは、背中に剣を背負った少年

 

 

「おやおや、双真さん。いらしていましたか」

 

 

「いらしたと何も、黒服さんが呼んでくれたんじゃないっすかー」

 

 

「誰?」

 

 

「君話聞いてた?双真、剱崎 双真(けんざき そうま)」

 

 

自分の名前を名乗ると、そいつは私との距離を詰めてじっくりと観察し始めた

 

 

「ふーんなるほど、神秘がどうとかはわからんけどー、あれだね」

 

 

「君すっごく可愛いね。ボコボコにしたい!」

 

 

「黒服、コイツを何とかしてくれない」

 

 

「せっかく名乗ったのにコイツ呼ばわりはないわー。まあ可愛いから許してあげる」

 

 

「代わりにボコボコにさせてよ」

 

 

「クククックックッ双真さん、あなたの邪魔はしませんがオフィスで荒事は控えて下さいね」

 

 

「わーってるよ。」

 

 

そう言うが手元は背負う剣に伸びていて、今すぐにでも引き抜いて斬りかかって来そうだ

 

 

「、、、ホシノさんが信憑性に欠けるといった表情をされておりますよ?」

 

 

「はいはい。神に誓おう」

 

 

そいつは両手を合わせて胸の前で握りだした

 

 

「我に聖剣をさずけた神ヴルカヌス様、我が道を切り開き他の者を導くためにこの力を使うことをここに誓います」

 

 

「クックックッホシノさん、気にしないで結構です。彼が持つ聖剣Durandal、それを作った神への敬意と信仰は本物ですから」

 

 

「誓いで縛り、祈りで強化する」とのこと。突然の誓いで状況が読み込めない私に、黒服はそう説明した

 

 

「次に会う時は戦いだからな、そこんとこよろしく」

 

 

結局、最後までそいつは軽々しくふざけた調子だった

 

 

──

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