塚内空はヒーローになれない   作:RAP

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EP.20 「痛み分け」

 

【ブランダー】《blunder》

 大失敗、へま。

 不覚を取る、しくじる。

 

 

 * * *

 

 

 鳴羽田(なるはた)は、何故か凶悪な(ヴィラン)がよく出る街だ。

 いつだって危険な事件が起きている。

 

 街の大通りにある様々なものが、瞬時に一刀両断されていく。

 大きなカマキリ型の(ヴィラン)が高速移動をしながら大暴れをし、市民達が逃げ惑っている。

 

 しかし、我らがヒーローは即座に現れる!

 

「キャプテン・ニンジャ・セレブリティ、推参! カイシャクツカマツリソウロー!」

 

 介錯したら駄目なんじゃないか、などと疑問を呈する市民はいない!

 アイサツを含めて、寄せすぎるとクロスオーバーになってしまう!

 ビミョウ・ヘンカキュウによるグーゼン・チョト・ニテルダケ・アピール!

 

「ネギトロ・スラッシュ! イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

 今日もキャプテン・ニンジャ・セレブリティは大活躍!

 子供達も大はしゃぎ!

 

「すごかとよー、キャプテン・ニンジャ・セレブリティ!」

 

 キラキラした瞳で、麗日お茶子も応援していた!

 東京って、楽しい!

 

 

 * * *

 

 

 お父さんと真さんと私の三人は、大阪行き新幹線の車内で仲良く駅弁を食べていた。

 

 お父さんは、純粋に捜査の絡んだ大阪出張。

 真さんは、大阪の超ミナミ町にある江州羽(えすは)SSモールから、キャプテン・ニンジャ・セレブリティを主題にしたヒーローショー(出演者は劇団)を打診されたのでその打ち合わせに。

 私は、私が一人で留守番になることを懸念した父と叔母の意向によって、大阪旅行とヒーローショーのアドバイザーを兼ねて同行していた。

 

 私ごときがヒーローショーのアドバイザーをできてしまうのには、理由がある。

 

 この世界、130年以上前はヒーロー的なものが架空の存在として夢や妄想の中にしかいなかったけれど、今は現実のものとしてすぐ隣りにいる。

 まして今はオールマイト全盛期(内部事情はともかく)だから、ヒーローものや魔法少女ものなど、そういった方向性の架空の物語はいまいち進化していない。

 前世で二刀流レジェンドが野球フィクションを、最年少八冠達成者が将棋フィクションを破壊してしまったように。

 今世のヒーロー社会は、ヒーロー系フィクション物語の進化を破壊してしまっているように私からは見える。

 

 ヒーロー物って、別に勧善懲悪でもなんでもない……とは思うんだけど。

 どうもこの世界の人達は、勧善懲悪のわかりやすいタイプに押し込めたがる。

 だからヴィジランテという枠外の存在や、アンチヒーロー的存在の理解はされにくい。

 

 この世界の漫画家や小説家は大変だな、と思う。

 だって、ヒーローがフィクションじゃないんだもん。

 そういった背景もあって、お兄ちゃん程でないにせよ『物語のパターン』を知っている私は、どういう展開にすればヒーローショーが盛り上がるのか、すぐに助言することができたから割と引っ張りだこだった。

 

 

 ……それはともかく。

 今回の大阪行きって、原作だと航一さんと和歩ちゃんが、ご当地アイドルのコラボ企画として行くやつだよね。

 

 航一さんは非番で、家で疲れを癒やしてる。

 和歩ちゃんは、将来のヒーロー科入学のために真面目に勉強をしている。

 

麗日(うららか)さんちのお茶子さん、連れてきてあげれば良かったかなぁ」

「お互い仕事だ、空を連れていくのが限界だろう」

 

 真さんとお父さんが、お茶をすすりながらのんびり話し合っている。

 何故お茶子ちゃんの名前が出たかというと、理由がある。

 

 原作では雄英体育祭での爆豪戦の反省を踏まえてガンヘッドのヒーロー事務所へと行き、G・M・A(ガンヘッド・マーシャル・アーツ)を習得したお茶子ちゃんだったけど。

 個性の関係でこの世界の武術関連が大幅に弱体化してしまったから、()()()()実戦的なG・M・Aを学びに行ったんだと思う。

 多分、忍術が学べたのならお茶子ちゃんはそっちに走ったはずだ。

 

 これには深いようで浅い理由がある。

 忍者と言えば伊賀。伊賀と言えば三重県。三重県といえばお茶子ちゃん。

 つまり、お茶子ちゃんは忍者の末裔だった可能性がある。

 

 お茶子ちゃんの個性、『無重力(ゼログラビティ)』は忍術に由来しているのではないだろうか。

 『無重力(ゼログラビティ)』の解除の際は指先を合わせるけれど、あれって本来は早九字(はやくじ)における「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の『在』の形、つまり日輪印を模したものなのではないだろうか。

 って前世のお兄ちゃんがもっともらしい顔で嘘八百を並び立てていたけれど、お茶子ちゃんが忍者好きなのは本当。

 個性をフル活用すれば忍者っぽいこと色々できるから、仕方ないね。

 

 お茶子ちゃん忍者説は、一旦横に置いておいて。

 

 このままの流れだと、お父さんがNo.6に撃たれて怪我をしてしまう。

 お父さんの怪我は、できれば阻止したい。

 怪我自体は阻止できなかったとしても、証拠品の隠滅やそれに類することは邪魔してやりたい。

 でも今の手持ちのカードでは、No.6を殺すのも捕まえるのも無理。

 

 ただ、何が起こるかわかっているのなら……できることは、あるよね。

 シンカンセン・スゴイカタイアイスを食べ終えたので、私はケータイを取り出した。

 

 

 * * *

 

 

 お父さんと別れて、私は真さんと一緒に超ミナミ商店街を歩いていた。

 大阪はどうにも居心地が変というか。

 小学生の私が歩いているだけで、通りすがりのオバチャンが「飴ちゃんお食べ」と飴をくれる。

 おかげで私は当分の間、飴に困らない。

 

「ワァァァ……ッ!」

 

 人の騒ぎ声、何かが倒れる音、破壊音、全力疾走音。

 見れば、いかにもチンピラ然とした風体の剃り頭の男が、懸命に逃げている。

 

「ちょい待ちや、傷害事件のチンピラくん! このタコ焼き喰うたら捕まえたるさかい!」

 

 でかい。縦は2メートル半ぐらい、横も同じぐらいでかい。

 膨れた風船のようなプロヒーロー・ファットガムだ。

 そのファットガムが、タコ焼きを手にチンピラを追いかけていた。

 

「なめたらあかんぞコラァ!」

 

 追われていたチンピラが、後ろに居るファットガムを見て立ち止まって。

 振り返りざまに、懐から拳銃を取り出した。

 お兄ちゃんなら拳銃の型番までわかったかもしれないけれど、私から言えるのは一つ。

 チンピラの意識は、ファットガムにしか向いてない。

 

 前世で『マジカル☆八極拳/Zero』を見た時のことを思い出す。

 マジカル☆八極拳の人の上段回し蹴りは、銃を狙うでもなく普通に顔面狙いだった。

 うーん、これは……私でも初手は銃を狙うかな、やっぱり。

 

 外擺腿(がいはいきゃく)という蹴り技が、太極拳にはある。

 足を高くあげて円を描くように蹴る技だ。

 

 外擺腿(がいはいきゃく)の練習の時は、両手を水平に広げる。

 そのうえで、水平に広げた手の高さよりも高く脚があがるように蹴る練習をする。

 私は長拳の練習によって、体操選手ばりに身体が柔らかくなっている。

 だから立った姿勢のまま、自分の背の高さまで蹴ることができる。

 それはつまり、目の前に立っている人間だろうと顔面を蹴ることができるということ。

 

 チンピラは、右手に持った拳銃をファットガムに向けている。

 右腕は当然真っ直ぐ伸びていて、左手は懐から銃を取り出した時の肘をあげた体勢。

 

 外擺腿(がいはいきゃく)の練習の時、両手を水平に広げる意味がよくわからなかった。

 でもこうして相対してみると、理由がよくわかる。

 

 蹴った後に相手から離れる理由は、何一つ無いよね。

 

 私はチンピラに近づいて、彼の左腕に右手を添える。

 私が右手を添えたことで、私がそばにいる、という情報が相手に伝わる。

 情報が伝わったから、相手の意識がファットガムから私に(うつ)る。 

 

 左脚による外擺腿(がいはいきゃく)と、左手背掌による目潰し。

 円を描くような軌道で、私の左脚がチンピラの拳銃を上から蹴り落とす。

 同時に、私の左の指先がチンピラの両目をかするように叩いた。

 

 左脚の着地と同時に、外擺腿(がいはいきゃく)で生じた円の流れを上半身に移動させる。

 相手の左腕を両腕で引っ張り、円を描くように左腕を上へ回しつつ、私の右脚を相手の左膝に外側から差し込んだ。

 右脚を差し込んだことで接触点が増え、相手への崩しが増大した。

 だから向こうは抵抗どころか、踏ん張ることすらできない。

 後ろにのけぞるように、チンピラの体勢が大きく崩れた。

 チンピラの顔の位置が、彼より背が低いはずの私の眼前にまで下がってしまっている。

 

 チンピラの体は崩れて戻らないから、相手の左腕から両手を離しても問題ない。

 外擺腿(がいはいきゃく)から始まり、相手の腕を引っ張って、上に回して生じた円の力の流れが、そのまま私の両手に残っている。

 

 双按。

 私は双掌をチンピラの顔面に押し当て、全ての勁をながしこみ……?

 

 ――あっ、これ、お兄ちゃんが言ってた『人体の折りたたみ』が発生するやつでは――

 

 私は慌てて、チンピラの顔面をそっと押すだけに変更した。

 相手の軸は既に崩れているから、顔を押すだけでチンピラは何もできずに倒れるはず。

 というか、倒れた。

 

 (ワイ)(バイ)(トゥイ)からの(バオ)(フー)(クイ)(シャン)

 結構綺麗に決まったんじゃないだろうか。 

 

 本来の用法だと、相手の身体がU字に折りたたまれてしまうのは理解した。

 もしそうなったら、『過剰防衛』とかいうレベルではない。

 

「ご協力、ありがとさん」

 

 ファットガムが、私の頭を撫でてくれた。

 チンピラの拳銃を踏みながら、彼は笑う。

 

「この『浪速のやわら重戦車』ファットガムさんに、こないなオモチャは効かんかったけどな」

「そっ、(そら)ちゃん、ヒーローの邪魔しちゃダメだってば……!」

 

 真さんが、慌てて駆け寄ってくる。

 私は倒れて震えているチンピラを、ちらりと見てから。

 

「この人ファットガムさんの方を向いてたし、隙だらけだったから」

「そういう問題じゃなくて~!」

「この子のお姉さんでっか? べっぴんさんでんな~!」

「あっ、あらそう?」

「終わりよければ全てよし言いますやろ。助かったでホンマ」

 

 なんか、真さんが一瞬で丸め込まれた気がする。

 流石関西人、トークが絶妙。

 

「お互い気ぃつけんとアカンなあ。ほな!」

 

 ファットガムが私の口の中に、タコ焼きを入れてくれた。

 熱々で、美味しかった。

 

 

 * * *

 

 

「どーもー、遠いトコからお疲れさん!」

 

 大阪の超ミナミ町にある江州羽(えすは)SSモール。

 打ち合わせの予定場所に行くと、蟹のような髪型をした女性がそこで待っていた。

 

「東京の、ニンジャショーの人達やな?」

「あ、はい」

 

 真さんが名刺を取り出そうとすると、彼女は先んじて挨拶をしてくる。

 

「はじめまして! ウチは――」

 

 彼女はピースサインと共に、突然踊り出す。

 

「活ーき活っき、プーリプッリ♪ ……平家ガニっ!」

「わっ!?」

 

 『平家ガニ』のタイミングで、美少女台無しの変顔になった。

 変顔が凄すぎて、真さんが絶句して硬直してた。

 

「――でおなじみの蟹屋敷(かにやしき)モニカ。『かに道化』チェーン公式アイドルや。どうぞよろしゅうに!」

 

 満面の笑みのまま、チョキをチョキチョキとされる。

 真さんは、気を取り直して挨拶をした。

 

「キャプテン・ニンジャ・セレブリティ事務所、チーフマネージャーの塚内真と申します」

「同じく、アドバイザーの塚内空と申します」

「なんや、東京の人はノリ悪いなァ~」

 

 がっくりと気落ちした蟹屋敷さんが、突然カニポーズで平行移動往復を始める。

 

「ハサんだろか~い!」

「はあ」

 

 問題は、私も真さんもノリが悪いということだった。

 蟹屋敷さんが、がっくりと落ち込む。

 

「……手強いわ~。これが全国区の壁なんやね……」

「あー、蟹屋敷さん?」

「『カニ子』でええよ。ほいでな? ニンジャショーの打ち合わせの件なんやけど……」

 

 蟹屋敷(かにやしき)モニカさんは、困り顔で事情を説明してくれた。

 

 

 * * *

 

 

 蟹屋敷(かにやしき)モニカさんは、ニンジャショーでくのいち役をやる予定だった。

 ギャグもイケてるスゴ腕美少女アイドルにして女忍者(アンダーカバー)

 ファットガムさんが即答で「盛りすぎや」とツッコミ入れるやつ。

 

 で、江州羽(えすは)SSモールの人と一緒に、ニンジャショーの打ち合わせの予定だったんだけど。

 

 個人情報無しの使い捨てメールアドレスから、子供じみた内容の爆破予告があった。

 迷惑メールに割り振られたそれは、通常の処理ならそのままゴミ箱行きでおしまい。

 だけど別件で警察がモールの調査をしていたから、念のために調べてもらったら本当に爆弾が発見されてしまった。

 モール側はモールを閉鎖したかったけど、警察は警察で別件調査のために表向きは何も無かったことにしておきたい。

 

 だからモール側は、巡回する社員を増やすことで対応するしかなかった。

 人手が急に裂かれて、ピリピリしているという。

 

 話を聞いて、真さんが困り顔で手を頬に添える。

 

「つまり、今日は打ち合わせどころではないと」

「モール側で宿泊費用は負担するから、明日改めてって事になるんちゃうか? 知らんけど」

 

 まあ、爆破予告メールを送ったのは私なんですけどね。

 『とくとくDの捜査をやめろ。俺の個性・加速を甘く見るな。要求を呑まなければ倉庫作業用アームを爆破する』。

 ラブラバの助言と監修を受けて、匿名メールを事前に新幹線から送っておきました。

 

 そのタイミングで、蟹屋敷(かにやしき)モニカさんの携帯が鳴る。

 

「……っと、待ってえな。ふん。ふん。わかったで。上の指示じゃ、しゃーないな」

 

 そう言うと、彼女は私達を見る。

 

「警察からの連絡や。事情が事情ゆえ、安全確保のために機材準備室……特設本部に一時退避してほしい、っちゅー話や。なんや、アンタらVIPかなんかなん?」

「VIPっていうか……」

 

 真さんが、どうしようという顔で私を見る。

 隠すことでもないので、私は素直に答える。

 

「塚内直正警部は、真さんの兄であり、私の父です」

「公私混同の職権乱用かーい!」

 

 蟹屋敷(かにやしき)モニカさんが、素晴らしい角度で右手ツッコミをしてくれた。

 私は思わず、拍手をしてしまった。

 

 

 * * *

 

 

「おー。さっきの嬢ちゃんやんか」

「おや、ファットガムさんと知り合っていたのかい?」

 

 『関係者以外立入禁止』と紙が貼られた機材準備室。

 そこにはファットガムさんと、お父さんをはじめとした警察の人達がモニターとにらめっこしていた。

 

「暴漢がファットガムさんを銃で撃とうとしていたので、転ばせました」

「ころ……ばせた?」

 

 真さんが首を傾げていたが、私は華麗にスルーした。

 

「そうか。あんまり危ないことはしないでくれよ」

「見事なシバきっぷりやったで」

 

 お父さんが、困り顔で心配してくれる。

 ファットガムさんはニコニコ笑顔だ。

 

「軽く事情を聞いたかもしれないが、爆弾騒ぎでね。色々あってモールの閉鎖ができない。騒ぎが一段落するまでは、目に届くとこに居て欲しいんだ」

「ウチが行って、パパッと解決したるで? バイトの顔は全員覚えとるし、なんとかなるやろ」

「だが、メールの内容が内容だ。確かにアホらしい、子供じみた内容だが……中身が本当なら、ある程度の閉鎖空間に押し込めてから尋問したい」

 

 お父さんと蟹屋敷(かにやしき)さんが、悩んでいる。

 メールの内容は、わざとアホらしくしました。

 わかりやすさ最優先。

 

「うーん……下手こくと、怪しまれて逃げられてまうで? 作業アームは緊急メンテ名目で離しとるけど、作業員は動きが読めへん。カニ子がバイト全員覚えとるとしても、一人一人チェックなんかしとったら逃げられてまうわ」

「伝票違い名目で、現場確認じゃ駄目なん?」

「素早く調べたいところだ。流通経路の最後が東京の鳴羽田である以上、犯人は関東圏の人間だと思われる。せめてそれを手早く、可能なら数秒で絞り込めればいいんだが……」

「数秒で関東圏在住の判別とか、無茶言いよるでホンマ」

 

 あーだ、こーだ。

 蟹屋敷(かにやしき)さん、実は巡査だって内緒にしなくていいんですか?

 

「あのー」

「どうしたんだい、(そら)?」

 

 大絶賛職権乱用中のお父さんが、微笑を向けてくれる。

 

「関東圏在住と思われる犯人を、手早く一発で見分けたいんですか?」

「ああ、そうだね。だが、そんな都合の良い方法は――」

「関東圏かはともかく、関西の人かそうでないかを一瞬で見分ける方法なら、ありますよ?」

 

 私の言葉に、お父さんも真さんもファットガムさんも蟹屋敷(かにやしき)さんも、顔を見合わせた。

 

 

 * * *

 

 

 倉庫作業用アームの全てが、緊急メンテ名目で脇に寄せられている。

 突然倉庫のシャッターが閉まり、威勢の良い声が倉庫内に響いた。

 

「やあやあどーも、おつかれさーん!」

「あれ、カニ子ちゃん、どしたん?」

 

 『かに道化』チェーン公式アイドル・カニ子が、手を振りながら倉庫にやってきた。

 

「最近、作業用アームの操作ミスによる接触事故が増えとるって話でな? アームの緊急メンテは金がかかるさかい、『かに道化倉庫内で作業をするにあたり、規定の視力を保持していない作業員がいるかどうか先にチェックしてください』と江州羽(えすは)SSモールの人が言い出してなぁ。文字が読めるかどうかの、簡単な視力検査だけしとけって言われてん」

「えー? 急に言われてもなあ」

「作業止めなあかんの?」

 

 困惑の声をあげる作業員に、カニ子が笑う。

 

「一人あたり五秒もかからん! 並んでもろて、文字が読めればそれで終わり! 読めなかったとしても、次からの倉庫作業は眼鏡があればOKっちゅーわけや!」

「あれかいな、上とか右とかそういうやつ」

 

 作業員からタブレットを預かりながら、カニ子は疑問に答える。

 

「もっと簡単やで、五秒でしまいや! ほらほら、並んで並んで、二人ずつ二部屋でさくっと行こか!」

「しゃーない、作業は一旦中止やな」

 

 二人ずつが二つある個室に同時に呼ばれて、30秒も経たずに部屋から出てくる。

 そんな簡単な視力検査が、唐突にはじまった。

 

 

 * * *

 

 

 ただの視力検査、しかも五秒で終わる。

 実際に、作業員達は「たいしたことなかった」と笑顔で個室から出てくる。

 

 となれば、無理に脱出する必要は無い。

 予定通りに『とくとくD』を出荷させて、東京で保冷剤を確保する……それだけの話だ。

 

 そう思いながら、No.6は作業員二人と共に個室に入った。

 プロヒーロー・ファットガムが、個室の奥でホワイトボードを手に立っている。

 

「ほい、そこの線に並んでー、止まってー。今からホワイトボードを引っくり返すから、書かれとる文字を読み上げるだけやで!」

 

 ファットガムの指示に、作業員が笑う。

 

「なんや、ほんまに五秒かいな」

「随分あっさりした視力検査ですね」

 

 No.6は、苦笑した。

 間抜けなプロヒーローめ、こんなところで何をしているのか。

 

「ほな、いくで!」

 

 ファットガムが、じゃじゃん、とホワイトボードを引っくり返した。

 なんとくだらない視力検査かと思いながら、No.6は書かれた文字を読み上げた。

 

「関西電気保安協会」

「かんさい〜でんきほ〜あんきょ〜かいっ♪」

 

 隣りに立っていた作業員は、何故か歌うように読み上げた。

 

「お疲れさん、視力検査は終わりやで」

 

 ファットガムの笑顔。

 No.6が会釈して振り向いた、その瞬間だった。

 ファットガムが、いつの間にかNo.6の腕を握っていた。

 

「カニ子! こいつや!」

「見覚えないわ、不審人物確定!」

 

 個室の外で待機していたカニ子の台詞を聞いた瞬間、ファットガムがNo.6の両腕を掴んで後ろ手でクロスさせた。

 

「えっ? お、俺ッスか? 配送担当のバイトで――」

「嘘こけ。バイトの顔は全員知っとるわ。こちら蟹屋敷、不審人物と接触、至急応援乞う!」

 

 仕方なくNo.6は、個性『加速』を発動させてファットガムの拘束から一旦脱出した。

 情報が詰まっているタブレットは、カニ子が持っている。

 だから、ついでにカニ子のタブレットを取り上げておいた。

 

「警察だ! 全員作業を中止し、両手を挙げろ!」

 

 隠れていた塚内警部をはじめ、十数人の警官が同時に倉庫内に侵入する。

 堂々とした姿のNo.6に、ファットガムは叫ぶ。

 

「そこの(ヴィラン)、なに余裕かましとんねん!?」

 

 No.6は、鼻で笑いながら素早くタブレットを操作した。

 クラック済みの倉庫作業用アームの全てを暴走させ、爆破させる。

 その隙に逃走して――

 

「情報なら同期済みやし、そのタブレットにはなーんも権限は無いで♪」

 

 カニ子が、ニタリと笑った。

 これらは、何もかも塚内空の助言だった。

 

 『関西電気保安協会』という文字列を見たら、歌うように読み上げなければならない。

 疑うのなら、関西人に聞いてみればいい。

 『何言うてんねん、法律でそう決まっとるがな』と返事がくる。

 

 内部犯の疑いが濃厚なら、犯人が操作しそうなものを事前にチェックしておく。

 データの同期も、手動できっちりおこなう。

 

 No.6は、苦笑した。

 

「……へぇ。やるなあ、カニ子さん」

「動くな!」

 

 一発の銃弾が、No.6のすぐそばに命中する。

 明確な警告と、威嚇射撃。

 拳銃を手にした塚内警部をはじめ、警官達がNo.6に対して一斉に銃口を向けた。

 

「次は当てる!」

「そいつはご勘弁」

「塚内さん気ィつけや、そいつめっちゃ素早いで!」

「両手を挙げ、ゆっくりと腹ばいに!」

 

 No.6は両手を挙げながら個性『加速』を発動させ、警官達の間のすり抜けを試みた。

 シャッターが閉まっている関係で、脱出路が警官達の奥にしかない。

 

「被疑者は危険個性を有する爆弾犯、警告と威嚇射撃に対し投降の意思無し……やむを得ん!」

 

 距離の関係で、移動途中で加速が切れる。

 瞬間移動じみた移動に、警官達は困惑した。

 同士討ちを避けるために、飛びかかった方が早いと警官達は判断する。

 

「ほーら、同士討ちしちゃうっすよー? 拳銃なんか無駄無駄♪」

「いいや、射撃は有効だ!」

 

 塚内警部の正確無比な射撃が、No.6の左太股に命中した。

 たまらず、No.6はよろめく。

 

「ぐっ!?」

 

 大量の警官達が、No.6をうつ伏せにし、制圧にかかった。

 No.6が躊躇わず個性『加速』を発動させようとした、まさにその時だった。

 

 倉庫の天井に据えられたスピーカーから、少女の声が響いた。

 ただし、それは一般の人には聞くことすら叶わない。

 

 録音音声を300倍速で再生すると、音は周波数が300倍に引き伸ばされる。

 女性の声なら、簡単に60,000Hz以上に到達してしまう。

 余裕で20,000Hzを超えてしまい、完全に可聴域を超えるので人間にはまったく聞こえない。

 つまり、ほぼ無音として認識される。

 

「No.6って言ったら小説を思い出すかドラマを思い出すかで年齢層が変わりますよね。近未来SF小説の『No.6』はアニメ化もコミカライズもミュージカル化もされているし14年ぶりに新シリーズもはじまったし、私的にはそっちかなって思うんです。でもお兄ちゃんに言わせると『プリズナーNo.6』だって言うんですよ。イギリスのテレビドラマだけど放送年は1967年頃。お兄ちゃんが生まれるより前のドラマなのになんで知ってるのかって思ったら日本で何度も再放送されてたんですね。実際色んなお話でオマージュされてます。有名処だと『新世紀エヴァンゲリオン』、『少女革命ウテナ・アドゥレセンス黙示録』、『THEビッグオー』、『かぐや様は告らせたい』、『ルパン三世』、エトセトラ。映画『マトリックス』や『ニューヨークの恋人』だと、『プリズナーNo.6』のドラマ映像そのものが使われてます。他にも本当に沢山あってキリが無い。押井守監督に至ってはインタビューで『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は『プリズナーNo.6』の影響が大きいって堂々と語ってました。古橋秀之さんはデビュー作の『ブラックロッド』シリーズをはじめSF小説作家として電撃文庫の礎となった人ですが、じゃあなんでNo.6って単語を導入したのかって考えるとやっぱり『プリズナーNo.6』へのリスペクトかなって考えるしかないんですよ。古橋秀之さんが『プリズナーNo.6』を知らないわけがない。だって『プリズナーNo.6』の主人公、No.6の有名な台詞が『番号なんかで呼ぶな、私は自由な人間だ!』なんです。No.6も『俺は俺らしく自由に生きたい』って言ってましたよね。実際、最後の最後でハゲからの殺害命令や、顔なんて必要ないという指示に逆らって、自分が存在した証を傷跡として残すことを優先しました。こういうリスペクトやオマージュってわかる人だけがわかればいいんで、知っている人はわざわざ語らないし知らない人は何も知らないまま。でもリスペクトってそういうものだから仕方ないです。だけど加速ってなんとも不思議。思考能力の加速はわかるけど行動速度までの加速って別枠じゃないですか? 『サイボーグ009』みたく全部勢いで押し切ってくれた方がわかりやすいんですけど。DCの『フラッシュ』は知らないけどマーベルの『クイックシルバー』は加速シーンだけYoutubeで1億再生以上されてるからそこだけ見ました。ああいうの出来たら格好いい。私も加速してみたい!」

 

 犯人制圧のために警官の大半が駆り出され、隙だらけとなった機材準備室。

 現場の中継を見ていた塚内空はこっそりと、倉庫のスピーカーから300倍速にした録音音声を流した。

 だがそれは、No.6以外には誰にも認識できない周波数。

 なので塚内空が何かをしたとは、誰も思わなかった。

 

 気がつけば、No.6はうつ伏せで後ろ手にされ、手錠をかけられていた。

 脳が疲弊し、息切れを起こしていた。

 

「確保!」

 

 警官達が、喜びの声を挙げる。

 塚内空も、ニンマリした。

 

 No.6は内心で舌打ちをした。

 自らに寄生させた爆弾敵(ボマー)の細胞を動かし、自分の腕を爆弾に変えた。

 

 

 * * *

 

 

 突然の爆発が、手錠と周囲の警官ごと吹き飛ばした。

 

 ほぼ同時に、No.6の個性『加速』が発動した。

 No.6は左手首から先を無くし、あちこちが怪我をしていて、大量の血が流れている。

 苛立ちを隠せないNo.6は、警官から拳銃を奪いとった。

 周囲の警官達に銃を乱射し、弾切れしたら再び銃を強奪し、改めて乱射する作業を繰り返した。

 警官達を皆殺しにしても良かったが、オクロックへの憧れが脳裏をよぎったので自重した。

 

 次の瞬間、爆発の範囲外に居た警官達は全員、銃で何発も撃たれて吹き飛んだ。

 防弾チョッキ越しといえど、限度があった。

 

 鎖骨と肋骨に激痛が走り、動けない。

 倒れ伏した塚内警部は、それでも職務を全うしようと床を這いずる。

 

「……ま……待て……!」

「フザケんな、待たねーよ」

「ぬおおお、どういうこっちゃ!?」

 

 突然の爆発に驚愕したファットガムの前に、No.6の左肘から手首までの部分が投擲された。

 左肘から先を、No.6が自ら千切り取って投げたのだ。

 ファットガムの目の前にある中途半端な腕部分が異様に膨らみはじめ、光を放ちはじめた。

 

「ファーやん!」

 

 カニ子が叫ぶと同時にファットガムはジャンプした。

 もはや腕とは呼べぬ異形と化したNo.6の左肘から先の部分に、腹から飛び乗った。

 

 ズムン!

 

 衝撃吸着。

 脂肪の燃焼と引き換えに、爆発の衝撃がファットガムの体内に一度保持された。

 

「みんな、危ないで! 離れて、離れて!」

 

 カニ子が必死に誘導する。

 

 バァン!

 

 周囲に人がいないことを確認し、衝撃解放がなされた。

 すさまじい勢いの爆発の中から、痩せて別人となったファットガムの姿が現れた。

 ファットガム低脂肪(ローファット)verだ。

 

「……ファ~、危ないトコやった……ギリギリやったな~」

 

 上半身の服がズタボロになり、全身が(すす)塗れの細身のファットガムが一息つく。

 

「カニ子、怪我人は!?」

「作業員にはおらんで! 警察がヤバいで!」

「救急車や!」

(せわ)しいな~」

 

 No.6の姿は、もうどこにも見えない。

 慌ただしくなりはじめた現場に、塚内真が駆けつけた。

 

「兄さん!」

「……真……」

 

 怪我の場所や内容を把握するために、真は兄の防弾チョッキを外していく。

 塚内直正は、自己診断はできていた。

 

「鎖骨と肋骨……多分、ヒビだ」

「兄さん……!」

 

 

 * * *

 

 

 真さんはともかく、私は機材準備室から出られなかった。

 残っていた数少ない警官達に、現場には行かないでくれと懇願されていた。

 ただでさえ公私混同の職権乱用で迷惑をかけていたのだから、これ以上は無理。

 

 自分の顔が(こわ)ばっているのが、わかる。

 機材準備室の片隅に置かれていた、適当なパイプ椅子に座りこむ。

 誰の目にもわかりやすい、私は大人しくしていますよアピールだ。

 

 原作と違って、保冷剤に偽装した薬物の爆破による証拠隠滅は防げた。

 流通ルートが記録されたタブレットのデータは同期済み。

 No.6がどうにかしようとしても、流石に無理がある。

 作業用アームは爆破されることも暴走することもなく、切り刻まれることもなかった。

 

 自分にできるだけのことはした、と思う。

 現場に出て、迷惑をかけることもなく。

 待機していてくれと言われた機材準備室から、可能なことは全部やった。

 

 ……それでも、No.6は止められなかった。

 お父さんは原作同様に怪我をしてしまった。

 

 でもこれは、いわば相手の善意的なもので助けられたに過ぎない。

 No.6以外の(ヴィラン)が相手だったら、お父さんは殺されていてもおかしくなかった。

 

 悔しい。悔しい。悔しい。

 涙が溢れて、止まらない。

 

 ……私はあまりにも、無力な存在だった。

 

 気がつけば、左腕を吊られたお父さんと、真さんに抱きしめられていた。

 それでも涙が止まらなくて、私はしばらく泣き続けた。

 

 吐き気がするほど無力だから、私はヒーローになれない。

 

 

 * * *

 

 

 私の心理的負担を考慮し、真さんはアドバイザーの私抜きで江州羽(えすは)SSモールの人と打ち合わせを済ませたらしい。

 ホテルのレストランで食事をしていたら『もう打ち合わせしといたから』と真さんから言われてしまったから、そうなんだ、と答えるしかなかった。

 

 右手だけのお父さんが食べにくそうにしていたので、私は必死にお世話をしてあげた。

 お父さんは嬉しそうに『あーん』を受けてくれた。

 

 

 * * *

 

 

 鳴羽田(なるはた)功夫(クンフー)道場。

 

 道場の隅で、一人の少女がでんでん太鼓のように腕を左右に振っていた。

 いつもなら色々な人が彼女に話しかけているのだが、今日に限っては誰も話しかけない。

 

 指導役の白爺(しろじ)太一(たいち)は、出勤するなり受付のお姉さんに尋ねた。

 

()()は、いつからやっとる?」

 

 問われた受付のお姉さんは、チラリと壁時計を見てから、ため息一つ。

 

「五時間。でんでん太鼓(スワイショウ)のみを、五時間やっています」

「……そうか」

 

 塚内空は、ただひたすらにでんでん太鼓(スワイショウ)を続けていた。

 

 

 * * *

 

 

(BGM:amazarashi「空に歌えば」)

 

 

 虚実を切り裂いて 蒼天を仰いで 飛び立った永久(とこしえ)

 

 (塚内空の太極拳の套路姿。途中、相手に対して自然な構えをとる)

 

 空に歌えば 後悔も否応無く

 

 (蒼天を飛んできたザ・スカイクロウラーが、塚内空の目の前に着地する)

 

 必然 必然 なるべくしてなる未来だ

 

 (向かい合った塚内空とザ・スカイクロウラーが笑い合い、握手ではなく推手を交わす)

 

 それ故、足掻け

 

 (凄まじい震脚と共に、塚内空が纏絲勁の籠もった背掌を打ち出す)

 

 【僕のヒーローアカデミア ~塚内空はヒーローになれない~】

 

 (塚内直正の横顔)

 (顔をあげる塚内真)

 (笑顔の羽根山和歩)

 (真剣な顔の灰廻航一)

 (前を見つめる塚内空)

 

 蜃気楼 涙の川を漕ぎだして 幾星霜

 

 (ビルの屋上、風にマントをたなびかせているオールマイト)

 (画面左側で振り返る白爺太一)

 (画面右側に移る塚内翔子の後ろ姿)

 

 さよなら 行かざるを得ない 何を失ったとて

 

 (不安そうな顔の塚内空)

 (塚内空を守るように立つ塚内直正)

 (真剣な顔をした雄黒巌の姿が、ナックルダスターに変化する)

 (ナックルダスターの瞳の部分に、妻と珠緒が映る)

 

 忘れない 悔しさも 屈辱も

 

 (資金繰りに苦しむ両親を見ている事しかできない麗日お茶子)

 (突然社長にぶん殴られ、クビを告げられる分倍河原仁)

 (救助に失敗した過去を背景に、拳を握る学生時代の飛田弾柔郎)

 

 胸に飾って

 

 (ラブラバの応援。ピンク色のオーラと共に飛び上がるジェントル・クリミナル)

 

 虚実を切り裂いて 蒼天を仰いで 飛び立った永久(とこしえ)

 

 (スタンダールの仮面を割り、ナイフを鼻に添える赤黒血染)

 (怪獣型ヴィランにハラキリ・キックをするキャプテン・ニンジャ・セレブリティ)

 (ソニックブームの衝撃波と共に蝙蝠男を殴る灰廻航一)

 

 空に歌えば 後悔も否応無く

 

 (瓦礫の山と化した街中で、ヴィランの頸椎を金剛搗碓でへし折る塚内空)

 (不敵に笑うNo.6、その背後にいるAFOと黒霧の姿)

 

 必然 必然 断ち切るには眩しすぎた

 

 (左下方向を睨んでいる塚内空の顔アップ)

 (右上方向を睨んでいるNo.6の顔アップ)

 (一直線に青空を駆け抜けていくザ・スカイクロウラー)

 

 未来へ、足掻け

 

 (人差し指を掲げた羽根山和歩が、その右腕を前に伸ばす)

 (横一列に並んだジェントル、ラブラバ、塚内真、羽根山和歩、塚内空、灰廻航一、塚内直正、ナックルダスター、分倍河原仁)

 

 (拳銃を構える塚内警部と三茶)

 (シガーキスで煙草の火を移す分倍河原と義爛)

 (下を俯いて歩く中学生の渡我被身子)

 (指示を出すインゲニウム、頷いてジャンプする深夜おねむ、巨大化するエニグマ)

 (山と積まれた書類に超高速で押印していくサー・ナイトアイ)

 (喫茶ジェンラバでコーヒーを入れるジェントルと、サンドイッチを運ぶラブラバ)

 (店内で優雅にコーヒーを飲むイレイザーヘッド、塚内真、分倍河原仁)

 (紅茶を注文したミッドナイトに対して涙ぐむジェントル、慌てるミッドナイト)

 (月夜の晩、ビルの屋上の自室から夜空を見上げる灰廻航一)

 (「Nec Plus Ultra」と書かれた巨大な壁を、ただ見つめる塚内空)

 

 

 




決して明るくはないこの物語につきあっていただいている皆様に、改めて感謝を。
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