塚内空はヒーローになれない   作:RAP

39 / 76
EP.39 「各々の胸に」

 

【オーバーウェルム】《overwhelm》

 圧倒する。

 打ちのめす。

 理不尽な暴力を、より理不尽な論理で否定すること。

 

 

 * * *

 

 

 武術は、強い者が強くなるためではなく、弱き者が強くなる為に編み出される。

 お前より俺の方が強いのを証明するとか、正々堂々とした試合とか、そんな事は無関係だ。

 

 圧倒的な暴力から村や家族、恋人や自分を護りたいという、原初かつ根源の願い。

 北斗の拳やマッドマックスに出てくる、世紀末じみた悪党の多くは恵まれた体格の男性達だ。

 力があるから奪う。力があるから犯す。力があるから殺す。

 

 そんな悪党が来た時に、やるかやられるか。

 護りきることが出来るか、全てを奪われ殺されるか。

 

 相手の弱点を潰し、戦意を削ぐのは立派な戦略の一つだ。

 ならば、最初に狙うのも狙われるのもまた女性。

 女性は常に奪われ、犯され、殺される対象だった。

 

 それが大昔の正義であり、ごく普通で当たり前の残酷な真実だ。

 ほんの少し歴史を紐解いてみれば、誇張でもなんでもないとすぐにわかる。

 

 トロイア戦争では、スパルタ王妃ヘレネーをトロイア王子パリスが連れ去った。

 ローマ帝国は蛮族王族の娘をローマに迎え入れ、人質婚姻政策をおこなった。

 中世ヨーロッパの王妃と王女は、ピーチ姫より誘拐されまくった。

 

 項羽は劉邦の父母や妻を人質にとった。

 五胡十六国や南北朝時代は、王朝交代時に旧王朝の皇后や妃嬪を戦利品とした。

 日本でも、戦国時代は人質政策として正室・側室・娘を戦略物資同然に扱った。

 

 ただ、女性だって黙って奪われ続けているわけではない。

 詠春拳や白鶴拳といった武術は、女性が創始者だとされている。

 

 太極拳は、その独自の身体操作と技術体系により、体格差の影響を比較的受けにくい。

 これは、相手の力を利用する「小よく大を制す」という太極拳の原則に基づいている。

 

 つまり。

 ()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()のだ。

 

 

 * * *

 

 

 塚内空は気をつけの姿勢から、そっと片足を横に出した。

 太極拳と一口にいっても、本来は多くの流派があり、套路(とうろ)が存在する。

 塚内空が学んだ(チー)(シー)は、両手を胸の高さまで上げ、下ろす動作だ。

 

 脳無(のうむ)は哀れな小娘の頭を握りつぶそうと、左腕を前に出した。

 

 身長約240cmの脳無と、169cmの塚内空とではプロレスラーを相手に小学生が挑むに等しい。

 体格、腕のリーチ、腕力、何もかもが根底から全然違う。

 血の詰まった肉の風船を片手で握り潰すことなど、脳無には容易い。

 

 だが、その時既に塚内空の両腕は高くあがっていた。

 脳無が狙った位置には、既に彼女の頭はない。

 塚内空は両腕を上げることで、脳無の左腕の軌道を上に逸らしていた。

 そして懐に入りこみ、脳無の腰(身長差のせいで、塚内空が腕を前に伸ばすと腰が真正面に来る)に両手の掌を添え、腰を撫でるかのように両手を下に降ろした。

 

 この時、塚内空は脳無の腰骨、正確には仙骨を揺らした。

 仙骨は、上半身と下半身を結ぶ重要な骨であり、バランサーだ。

 脳無が二足歩行である限り、重心という地球の法則に逆らうことはできない。

 

 故に、脳無は転びかけて、右膝をついた。

 片膝をついた関係で脳無の身長は約180cmとなり、塚内空に近い目線となった。

 

 外から見ている連中にとっては、たまったものではなかった。

 少女が手を触れ、腰を軽く撫でただけで、巨躯の脳無が膝を付いたように見えた。

 

 塚内空の両手がそのまま円を描くように、下から上に左回転で回る。

 同時に、左足が前に出る。

 

 少女の両手が円を描いたから、丁度脳無の目線を塞ぐコースを辿った。

 いらついた脳無は、右拳で少女の顔面を殴ろうと試みた。

  

 塚内空からすれば、脳無の視線も肩の起こりも見えるので、全ては予測可能な動きだ。

 二度目の円と共に脳無の右腕を引き込み、左手は脳無の右肘を外から押さえ、右手はそのまま脳無の右手を引く。この引き込みは、相手の力が強ければ強いほど、効果が高い。

 相手は、自分の力の強さゆえに自滅する。 

 

 右脚の斧刃脚。

 腰から上を動かさない為に、起こりがほぼ発生しない独特の蹴りが、膝をついた脳無の金的を蹴り上げた。

 たいした手応えが無かったため、塚内空は脳無に男性器は無いと判断した。

 

 この斧刃脚は寸腿と呼ばれる寸勁技法で蹴っているため、石を割る威力を秘めている。

 脳無の股間にナッツがあれば、一撃で粉砕されていた。

 

 それでも、蹴られれば意識はそちらに向く。

 元男性、いや、意識としては今も男性のため、男性器は無くとも股間に対する意識は強い。 

 

 脳無の意識が股間に向いたのは、聴勁(ちょうけい)で感じ取れた。

 ゆえにその瞬間、脳無の右肘をテコの原理を伴う左掌底の寸勁でへし折った。

 

「ショック吸収だから、脳無にダメージを与えたいのなら、ゆぅっくりと……?」

 

 イレイザーヘッドと戦いながらドヤ顔をしていた死柄木(しがらき)(とむら)だったが、対オールマイト個体である脳無が気のせいかフルボッコにされているような気がして、戦いながら二度見、いや三度見した。

 

 塚内空の両手の動きは止まらない。

 折った脳無の右腕を、左手の右回転で脳無の身体の下に回し、自身の右手は掌底で脳無の顎をカチ上げる。

 カチ上げは当然のように寸勁であり、脳無の下顎骨を粉砕した。

 左手の右回転で脳無の(たい)を崩したまま、塚内空は右腕と右脚を同時に浮かせ蓄勁を行った。

 

 ドン!

 

 塚内空の得意技、金剛搗碓(こんごうとうたい)

 脳無の剥き出しの弱点とも言える脳みそが、上下からの凄まじい発勁で目に見えて凹んだ。

 上からは右拳輪(拳の小指側)による鉄槌、下からは右膝、両方とも全力の震脚を伴った凄まじい威力だ。

 

「塚内さん!」

 

 状況がわからず、慌てて戦場に駆け寄った緑谷(みどりや)出久(いずく)が、その右手を振りかぶる。

 塚内空は慌てず騒がず、両方の目玉が半分飛び出た脳無の顔面を緑谷出久に向けた。

 

 SMASSH!

 

 緑谷出久は、内心で喜ぶ。

 指や手は折れてない。力の調整が上手にできた。

 うまくスマッシュが決まった!

 

 脳無の顔は半分凹み、スマッシュによる強烈な衝撃で吹き出た血が、返り血として塚内空の身を紅く染めた。血や脳漿が飛び散って汚くなりすぎたので、脳無を掴んだ手を離し、距離を置いた。

 

 全力で個性『否定』を使いながら戦えたことに、塚内空は大満足していた。

 普段は秘密にしているから、こういう時でもないと個性の鍛錬ができない。

 その意味では、合宿とかどうしよう、というのが悩みの種だった。

 

 とりあえず、今回は緑谷君が全部助けてくれたことにしよう、そうしよう。

 クリーニングで返り血が落ちてくれればいいな、と塚内空は遠い目をした。

 

 

 * * *

 

 

 山岳ゾーン寄りに隠れていた、中途半端なドクロみたいな仮面。

 電波系の妨害個体なだけあって苦労すると思われたが、障子(しょうじ)目蔵(めぞう)が盾となり、砂藤(さとう)力道(りきどう)が個性『シュガードープ』による連打を決めて勝負は一瞬で決まった。

 

「俺強え!」

 

 上鳴(かみなり)電気(でんき)が、ガッツポーズをする。

 

「お前は何もしていないだろう」

 

 流石の障子目蔵も、素でツッコミを入れた。

 

「それより……早く……学校に、連絡……」

 

 シュガードープの切れた砂藤は、脳機能が低下して凄まじい眠気と倦怠感に襲われていた。

 調子に乗っていた上鳴が、慌てて無線で学校に連絡を取り始める。

 

「やった、梅雨(つゆ)ちゃん!」

 

 その様子を見て、麗日(うららか)お茶子はにんまり笑った。

 

「うん、やったわね、麗日(うららか)ちゃん」

 

 蛙吹(あすい)梅雨(つゆ)の返事に、お茶子は恥ずかしそうに微笑む。

 

「私のことも、お茶子ちゃんって呼んで」

「……わかったわ、お茶子ちゃん」

 

 いつも、自分から『梅雨(つゆ)ちゃんと呼んで』と声をかけていた蛙吹梅雨は、嬉しそうにはにかんだ。

 

 

 * * *

 

 

 戦闘経験が劣る13号を処理。

 生徒達を分散して処理。

 ゴミのようなヴィラン共はトリガーで強化して使えなければ爆弾にする。

 脳無でオールマイトを殺す。

 ノワールのために、無個性女を殺して寿司を奢ってもらう。

 

 死柄木(しがらき)(とむら)の完璧な作戦は、崩壊しかけていた。

 

死柄木(てめー)はブッ殺す! スカしてんじゃねえぞ、モヤモブが!」

 

 何よりも、イレイザーヘッドとのタイマンが、いつの間にか変なトゲトゲ男に乱入されていた。

 

「すごいなぁ、最近の子供は……恥ずかしくなってくるぜ、(ヴィラン)連合……!」

 

 まさに、その時だった。

 

 バアン!

 USJの入り口扉が吹き飛び、見覚えのある姿と、安心できる声がやってくる。

 

「来る途中で飯田少年とすれ違って……何が起きているかあらまし聞いた」

 

 オールマイトは、胸のネクタイを引きちぎりながら宣言する。

 

「もう大丈夫……私が来た(I AM HERE)

 

 彼の到着を待ち望んでいたクラス全員が、歓声に沸く。

 

「「「オールマイトー!」」」

 

 だがオールマイトは、視界の中、血塗れで立ち尽くしている塚内空の姿を見てしまった。

 自分よりも背も高く大きな(ヴィラン)が、相対している塚内空と緑谷出久の目の前で再生をはじめているのがわかる。

 

(オールマイト! ……笑ってない!)

 

 緑谷出久は、一瞬で理解する。

 彼は、激怒している。

 

「待ったよヒーロー、社会のゴミめ」

 

 死柄木弔が何か言いかけた、次の瞬間だった。

 幹部級を除いた全ての(ヴィラン)が殴り飛ばされ、緑谷出久と血塗れの塚内空が丁寧に抱きかかえられて階段下まで運ばれた。(※無事そうなイレイザーヘッドと爆豪少年は放置)

 問答無用で、再生しかけていた脳無がUSJのドーム外壁をぶち破って天高く飛んでいった。

 

「平和の象徴は、てめェら(ごと)きに()れねぇよ」

 

 (とどろき)焦凍(しょうと)が、冷静に言い放つ。

 一瞬で決着がつきかけた、その時。

 

 ドドドドォン!

 

 リュミエール・ノワールの爆弾蜂が、イレイザーヘッドと爆豪(ばくごう)勝己(かつき)から死柄木弔を守るように爆発した。そのおかげで、死柄木弔はヒーロー達から距離を離すことに成功する。

 

「俺はな、オールマイト! 怒ってるんだ! 同じ暴力がヒーローと(ヴィラン)でカテゴライズされ、善し悪しが決まるこの世の中に! 何が平和の象徴……」

 

 決め台詞を言いかけた死柄木弔に、返り血で真っ赤となった塚内空が呆れ顔で告げる。

 

「勉強不足です。アメリカのロードアイランド州新州法の制定により、189名のヴィジランテが(ふるい)にかけられた結果、無事にヒーローとなれたのはわずか7名。残りの182名が個性犯罪者として(ヴィラン)に分類されてしまった理由は至極単純、人気が無かったから。つまり、無名の貴方たちは無名であるがゆえに、どれだけ暴れてもヒーローにはなれないんですよ。わかりましたか、不人気君」

 

 ククッ、とオールマイトが笑う。

 

「……だ、そうだよ不人気君。早めに決着をつけようか」

「この、チート野郎が……!」

 

 死柄木弔は、わなわなと震える。

 

「ゲームオーバーだ、あーあ……今回はゲームオーバーだ」

 

 その時、二発の銃声が響いた。

 

「うぐっ」

「痛っ」

 

 一発は死柄木弔の手。

 もう一発は、リュミエール・ノワールの足に命中した。

 

「ごめんよみんな、遅くなったね。すぐ動ける者をかき集めてきた」

 

 根津校長の声が、USJに響き渡る。

 同時に現れる雄英教師陣。

 ブラドキング、セメントス、スナイプ、ミッドナイト、プレゼントマイク、パワーローダー、エクトプラズム、ハウンドドッグ。

 銃声のうち一発は、スナイプだった。

 この場にはイレイザーヘッドと13号もいるから、ほぼ勢揃いだ。

 

「1-Aクラス委員長・飯田天哉! ただいま戻りました!」

 

 無事に帰還した飯田天哉委員長と、そして。

 

「被疑者の公務執行に対する抵抗を確認。警告と威嚇射撃に対し投降の意思無し。やむを得ん、射殺する」

「……いま、無警告で威嚇射撃を当てませんでしたか、塚内警部?」

「ちょっとよくわからない。ドーム型の建物だ、跳弾ではないのか?」

 

 三茶(さんさ)の疑問に、淡々と答える塚内警部が立っていた。

 血塗れの愛娘の姿を見た瞬間、塚内警部は脊髄反射の抜き撃ちでSIG P230JPを発砲したはずだが、跳弾だというのなら仕方が無い。

 最悪の場合、線条痕の書類を誤魔化す必要があるな、と三茶は遠い目をした。

 

「帰って出直すか、黒霧、ノワール……」

 

 その瞬間、(ヴィラン)連合の三人を包むようにワープゲートが出現した。

 容赦無くスナイプの射撃と、塚内警部のSIG P230JPセミオートと、三茶のSAKURA M360Jリボルバーが火を噴いた。

 若干一名がガチの連射すぎて、(ヴィラン)連合がオールマイトにちょっかいをかける余裕すら生まれ無かった。

 

「今回は失敗だったけど……今度は殺すぞ、平和の象徴オールマイト」

 

 原作の三倍近い量の銃弾を浴びながら、(ヴィラン)連合はワープゲートの奥に消え去っていった。

 

「何も……できなかった……」

 

 緑谷出久が、気落ちした台詞を吐く。

 

「そんなことは、ありません」

 

 返り血で紅く染まった塚内空が、微笑む。

 

「あなたの助けが無ければ、私はやられていました……緑谷くんに、助けられてしまいましたね」

「無事で良かったです、塚内さん……!」

 

 嬉しさに涙を流す緑谷出久だったが、塚内空と脳無の戦いを見ていた者達は首を傾げた。

 うん……うん?

 

 

 主な戦場が入り口エリア付近だったため、入り口エリアの惨状に応援として来た教師陣はため息をつくしかなかった。

 ミッドナイトが、呆れ顔になる。

 

「これだけ派手に侵入されて、逃げられちゃうなんて……」

「完全に虚をつかれたね……それより今は、生徒らの安否さ」

 

 根津校長が、USJを観察していく。

 

「教師陣か……ここにこれだけ集まるってことは、学校全体に仕掛けてきたってことじゃなさそうだ」

 

 轟焦凍が、分析の言葉を述べる。

 

「……塚内、大丈夫か? 怪我は無いか?」

 

 返り血で染まっている塚内空に、イレイザーヘッドが心配の声をかけた。

 

「相澤先生こそ。骨折したりはしていませんか?」

「……いや? 軽い擦り傷程度だ、すぐ治る」

「良かったぁ……」

 

 塚内空の心の底からの安堵に、イレイザーヘッドは意味がわからず動揺してしまった。

 姪としての心配なのだろうか、と内心で首を傾げた。

 

 独身時代ならいざ知らず、一児のパパとなっている今、彼の顔に傷をつけたくはなかった。

 まして、今の自分にとっては叔父だ。

 できれば、片足義足化なども阻止したいと、塚内空は考えていた。

 

 

 * * *

 

 

 結論から言えば、教師・生徒共にUSJで大怪我をした者は出なかった。

 ちょっとした火傷や、擦り傷などの軽い怪我で済んだ。

 

 脳無個体も無事に確保したし、警察が得たものは多かった。

 

 雄英ヒーロー科に落ちた青山優雅が、リュミエール・ノワールと名乗る(ヴィラン)になってしまったことは、すぐに調べがついた。これにより青山優雅の両親は事情聴取と身の安全を兼ねて逮捕された為、ノワールは寿司係を維持できなくなってしまった。

 

 現時点では大きな報道になっていないが、青山優雅は少年法の適用外に認定され、(ヴィラン)指定を受けた。だから、彼はもう立派な(ヴィラン)連合の一員だ。

 

 

 翌日のヒーロー科は、臨時休校となった。

 

 とはいうものの、この年頃の男子は性欲の塊である。

 どれだけ隠していようが、俺に性欲は関係無いというツラをしていようが、猿である。

 

 特に、階段の上で葉隠(はがくれ)(とおる)の美貌と裸体を見てしまった男子生徒は、色々と大変だった。

 ただでさえアイドル級の美人、グラビアモデル級の巨乳裸体、しかも至近距離。

 

 さらにいえば、八百万(やおよろず)(もも)もだ。

 あのコスチュームで、作戦遂行のために沢山のものをヤオヨロッパイの隙間から生み出していた。普通に犯罪である。

 「FC2・7桁」とか「FANZAブックス25%OFFクーポン」とか言ってる場合ではない。

 

 そう考えていくと、麗日(うららか)お茶子のパツパツスーツも結構ヤバいのではないか。

 そんなノリで1-A男子は女子勢の事で頭が一杯になり、USJ事件より性欲処理の方が課題となってしまった。

 

 峰田のリトルミネタは立派な万歳行為で赫灼熱拳プロミネンスバーンとなり、手袋を見るだけで裸体のラインを計算できるのではないかと真摯に、いや紳士に考える方向性に悟りを開いていた。

 

 

 * * *

 

 

 一方、(ヴィラン)連合(3人+2人)は色々と大変だった。

 原作の三倍の銃弾を浴びたので、被弾が両腕両脚では済まなかった。

 

 しかも勝てると思い込んでいたことで、調子に乗ってノワールを紹介してしまった。

 当たり前の話だが、青山優雅の両親が逮捕されてしまった。

 結果として被弾で血が沢山流れるわ、寿司は食えなくなるわで散々だった。

 

 ヴィジランテ時間軸もだが、AFOは生活費のことが頭からすっぽり抜けているフシがある。

 蜂須賀九印も、バイトという名目だったはずなのに無給でコキ使っていた形跡がある。

 No.6も、ヒーローやら正社員やら色々なりすましてはいたが、普通に生活費を稼いでいたのではないだろうか。

 オールマイトが教職に不慣れなのと同様に、AFOもまた、(ヴィラン)連合の育成に不慣れ疑惑がある。

 

 ドクターはドクターで研究のことしか考えていないから、余計にダメかもしれない。

 

「ワシと先生の共作の脳無は? 回収してないのかい?」

「何発も銃で撃たれて血が止まらねぇんだが」

「せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに……まァ、仕方ないか。残念」

「止血ぐらいしろよ……ああ、そうだ」

 

 死柄木弔は、遠のく意識の中で考える。

 

「一人……あの脳無を普通に圧倒してたやつがいたな……」

「……へえ」

 

 話を聞いていたAFOは、死柄木弔の教育を試みる。

 

「悔やんでも仕方ない。今回だって決して無駄ではなかったはずだ。精鋭を集めよう! じっくり時間をかけて! 我々は自由に動けない。だから君のようなシンボルが必要なんだ、死柄木(しがらき)(とむら)! 次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!」

「……」

 

 ドヤ顔のAFOだったが、肝心の死柄木弔達は三人共に出血多量で死にかけていた。

 瀕死すぎて、返事が無かった。

 それに気がついたAFOは、慌ててドクターに治療を依頼した。

 

 結果的に、原作の相澤のように包帯でぐるぐる巻きになったのは、(ヴィラン)連合の方だった。

 

 

 * * *

 

 

 そして。

 ブリティッシュスタイルのオーダースーツ姿の相澤先生が、朝のホームルームで皆に告げた。

 

「お早う。早速だが、雄英体育祭が迫ってる」

「「クソ学校っぽいの来たあああ!」」

 

 雄英体育祭。

 個性の関係で滅茶苦茶になってしまったオリンピックの代わりに人気となっているイベント。

 当然、全国のトップヒーロー達がスカウト目的で鑑賞するので、皆は必死だ。

 

「警備は例年の五倍に強化するそうだ。(ヴィラン)ごときで、中止していい催しじゃねぇからな」

 

 私にとっては、あんまり興味の無いイベント。

 私には、ザ・スカイクロウラー事務所があるし。

 最後の最期は、んー、あー、えーと、以下略だし。

 

 でも、だからといって水を差すつもりは無い。

 一つだけ断言できることはある。

 

 お茶子ちゃんの戦う理由が、純粋にヒーローになりたいから、になっているのが喜ばしい。

 貧乏すぎてご飯を抜いたり、ただ寝るだけで誤魔化したりとか、そんなの私がゆるさない!

 

 自分なりに頑張って、どこまでいけるかを試すぐらいはやってもいい。

 

 あーっ!?

 もしかして選手宣誓、私の役目!?

 

 な、何を言おう?

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。