【カルマ】《karma》
業、宿命。
行いによって生じる報い。
* * *
「爆豪 対 常闇! 爆豪のラッシュが止まんねえ!」
……プレゼントマイク先生の実況が、控え室にも聞こえてくる。
お茶子ちゃんと一緒に観客席で試合を見ても良かったんだけど、結果はわかりきってる。
付け加えるのなら、そろそろ飯田君に電話連絡が入る頃だろうし。
「塚内。ちょっといいか」
そんな事を考えていたら、丁寧なノックと共に控え室に声をかけられた。
「うん。いいよ、轟くん」
扉が開けられ、
場外に吹き飛ばしたとはいえ、リカバリーガールの治療でさっくり回復した模様。
……まぁ、吹き飛ばすのは手加減だし。
「さっきの、伝言の話。もう少し、聞かせてくれねぇか」
「轟くん……だと今は紛らわしいか。焦凍くんのお兄さんの話、だね?」
「ああ」
焦凍君はそう言って、控え室に置かれているパイプ椅子に静かに座った。
「連絡先は聞いてない。お父さんも含めて問題がありすぎるから、今は家族に会いたくない……そんな感じだった」
そんな感じだった(会って話したとは言ってない)。
「でも、その人は
「うん。夏くん、冬美ちゃん、
彼はそんな事言ってないし、当然私も聞いてないけど。
なんかこう、言葉尻を濁せばきっと伝わるって信じてる。
「そうか……幽霊ってわけじゃ、ないよな?」
「違うよ。私に霊感とか無いし。少なくとも、自称お兄さんにちゃんと足はあったもの」
そっか、遠くから見てるっていう表現だと幽霊に会った説も有効になっちゃうか。
でも、私が幽霊と話した前提になるのはどうかと思う。
「『フラフラ中途半端だと、何者にもなれない』……だったか?」
「うん。ちゃんと炎を使え、ってことだと思う。炎だって、焦凍くんの力なんでしょう?」
「……っ、親父の力は……」
焦凍君が、泣きそうな顔になっていた。
とりあえず、どこでいつ会ったとか、細かい設定を尋ねられないように。
ミステリアスな感じで、ふんわり立ち回る努力。
「考え方を変えてみれば? お父さんの力ではなく、焦凍くん自身の力だと思えばいい。それすらも抵抗があるのなら、お兄さんの力なんだって思えばいい」
物凄く驚いた顔で、焦凍君がこちらを見てくる。
その発想は無かった、って顔に書いてある。
「……これは、私の想像でしかないんだけど。『夏くんと冬美ちゃんは別』ってことは、その夏くんと冬美ちゃんは、氷結系の個性なんじゃない? 合ってる?」
「あっ、ああ……合っている」
よし、いける。このまま有耶無耶に押し切る。
「だから同じ炎使いの仲間として、自称お兄さんは焦凍くんに伝えたかったんじゃない?」
伝えたかった(会ったことも話したこともない相手)。
焦凍君は、真剣な顔で尋ねてくる。
「その人は……他に何か、言っていたか?」
「うん」
原作の緑谷戦と爆豪戦で焦凍君が抱いた感情を、ここで上乗せできるはず。
「『会いたくても会いに行けない人に、代わりに会っておいてくれ』」
「会いたくても、会いに行けない人……」
「焦凍くんの家の事情は、知らないけど。察するに、今まで話に出てきてないお母さんのことなんじゃ?」
「お母さん……」
轟家の事情は知らない(知らないとは言ってない)。
でも焦凍君は、物凄く複雑な感情を抱えた顔で悩み出した。
「よって決勝は、塚内 対 爆豪に決定だあ!」
控え室の外から、観客達の大歓声とプレゼントマイク先生の声が聞こえてくる。
「……ごめんね、焦凍くん。時間だから、もう行かなきゃ」
「ああ、試合前に済まなかった、塚内」
「もし、その人に会って話せたら……伝言じゃなくて直接言え、って伝えてあげるね」
私がそう言うと、焦凍君は落ち着いた顔ではにかんだ。
これ、今の時期だとすっごいレア表情なのでは?
「よろしく頼む、塚内」
むぐぅ、流石にこのSSRはにかみ顔は、スクショしたい!
* * *
「さァいよいよラスト! 雄英一年の頂点がここで決まる! 決勝戦、塚内 対 爆豪!」
舞台の上で、
塚内空は、相手にどう近づくかをある程度絞り込んでいた。
その手段は、大きく分けて二つ。
どうにも爆豪は、無個性に対する身体能力への期待が低すぎるフシがある。
恐らく、無個性時代の
塚内空がビルの屋上ラインでパルクールできる機動力がある事を理解していない。
ゆえに一度『爆破』を撃たせてから、ジャンプで空中から奇襲する案の実行。
欠点は、姿が見えた瞬間に対空迎撃される可能性があること。
もう一つは、個性『爆破』と徹底的に付き合う案。
まず、『爆破』の有効射程範囲ギリギリを見極める立ち回りをする。
結果として、舞台上は原作の常闇戦レベルで煙幕状態になる。
そこをエコーロケーションを使って煙幕を駆け抜け、一気に接近する。
近接3m圏内にまで辿り着いたら、あとは歩法でどうにかする。
欠点は、再度距離を引き離された場合、再接近に手間がかかること。
『面倒臭い』という感情が誰の目にもわかる顔で、塚内空はイヤイヤ舞台に立っていた。
勝つにせよ負けるにせよ、疲労困憊のズタボロ化は間違いなし。
服も身体も顔も
勝っても負けても、良い事なんて何一つ無い。
はぁ、と塚内空がため息をついたのを見て、爆豪はつい大声で叫んでしまった。
「没個性どころか無個性のテメェがぁ〜、何で俺と同じ土俵に立てるんだ!?
ブッ殺すぞ! 俺が取んのは『完膚なきまでの一位』なんだよ!
デクより上に行かねえと意味ねえんだよ!
勝つつもりもねえなら俺の前に立つな、何でここに立っとんだクソが!」
罵倒されまくって個性『否定』に栄養補給されたのもあるが、それ以上に。
「……は?」
単純に、塚内空はカチンと来た。
* * *
なにさりげなく『デクより上に行かねえと意味ない』とか言ってんの、馬鹿なの?
貴方はデク君より上に行くんじゃなくて、デク君の上に乗りたいだけなんでしょ!?
その辺の腐女子に餌をあげてどうすんの!
pixivで「#勝デク」を検索してみたことある!?
ごめん今世だとどれだけ検索しても出ないですね!
前世だと3万7000件以上出てきました!
「爆デク」でGoogle検索をかけても、出てくるのは「#勝デク」です!
あと、勝デクオンリーイベントで必ず設置されるのが『女体化スペース』!
一度興味本位で統計とった時は、6%の確率でどちらかが女体化されてたんですよ!
なんで統計とっちゃったのか自分でも良くわからなかったんですけど!
わかりますか、オタ女の業の深さが!
「出勝」の検索だと1万件ちょいになるんです!
順番の前後が違うだけで戦争が始まる界隈を、舐めないで貰えますか!
* * *
塚内空は、ミッドナイトにマイクを要求した。
首を傾げながらミッドナイトがマイクを渡すと、塚内空は観客達に向かって語り始めた。
……演説というよりは、『口撃』であったが。
「この雄英体育祭のガチバトルトーナメントですが、怪我に関する道徳倫理は一旦捨て置けと言いながら、命に関わるようなモノはアウトというルールです。そして爆豪くんは、この雄英体育祭において『完膚なきまでの一位』を取るといいながら、麗日さんに死ねといい、切島くんに死ねといい、そしてたった今、私を殺すと発言しました。
彼の個性『爆破』はとても強力です。
有言実行とばかりに、彼は対戦相手が死んでもおかしくないような攻撃を連発しています。
しかし雄英教師陣は、彼の
ならば、誤って相手を殺してしまったとしても、きっと爆豪くんの方が正しいのでしょう。
ただ、私はこうも思います。
彼の言う『完膚なきまでの一位』とは、一体なんなのでしょうか?
自身の個性が有利な遠距離から、相手を一方的に蹂躙できる大会ルールに助けられた勝利を積み重ねたものが、彼の言う『完膚なきまでの一位』なのでしょうか?」
今の塚内空の発言は、正確ではない。
直前の常闇戦も、切島戦も、爆豪はちゃんと近接戦をしていた。
個性の相性が絡んでいるだけだ。だが観客的には、近づこうとしても近づけず、力尽きて敗退した
冷静に考えればただの印象操作発言でしかないのだが、死ねも殺すも爆豪は実際に言っていた為、観客の印象は『彼の勝利は遠距離スタートのルールに助けられたもの』という認識に塗り潰されてしまった。
塚内空は、さらに語り続ける。
「雄英の授業において、統計的には屋内の方が凶悪
実戦重視を謳っている雄英なら、対戦時の開始位置はランダムか任意であるべきです。
突然現れた
実戦重視の雄英のイベントなら、不意の遭遇戦は考慮に入っていなければおかしい。
しかし大変残念なことに、この大会のルールはそういった事を考慮されていません。
開始位置が固定で定められている以上、『実戦重視』という言葉は幻想だったのでしょう。
となると、彼の暴言に対して指導が入らない理由もわかります。
死ねだの殺すだのという発言には、
近接戦で勝てないのであれば、暴言で畏怖させて距離を離す戦略は確かに有効でしょう。
……つまり、開始位置が任意となってしまうと、彼に敗北の可能性が生じてしまいます。
彼がそんなに一位を取りたいのであれば、私は彼に負けてあげてもいいです。
だって――」
塚内空はそこで一旦区切り、爆豪勝己の顔を見ながらこう言った。
「――君が、助けを求める顔してた」
ビキビキビキビキィ!
彼のこめかみに走る青筋の擬音が、聞こえてくるかのようだった。
凄まじい歯ぎしりの音と共に、爆豪勝己は完全にぶち切れた。
「……てめェ、
そしてぶち切れたまま、早歩きで塚内空に近づいていった。
「無個性の出来損ないが、見下すんじゃねえぞ……」
ボクシングや格闘技の試合直前に、選手達が眼前で睨み合う光景を見たことはあるだろうか。
爆豪勝己172cm、塚内空169cm。
鼻先と鼻先が触れあう寸前の、極端な睨み合いが唐突にはじまった。
「あ!? なあ!? 見下すなよ俺を!」
あ"? お"? やんのかコラ。どこ中だテメェ!
ぶち切れた爆豪の表情は、そんな副音声だった。
「取ればいいじゃないですか、『完膚なきまでの一位』。負けてあげますから」
「ウダウダと、どうでもいいんだよ……どうでもいいから今すぐヤれや、三つ編み!」
言質をとった塚内空は、手にしたマイクを悠然とミッドナイトに返した。
その上で、殺気バチバチの眼前睨み合いを受けて返した。
「では、この距離から試合開始ということで」
「テメェを捻じ伏せる……そんで、俺がトップだ」
爆豪を、淡々と見つめる塚内空。
凄まじい形相で睨みつける爆豪勝己。
個性『否定』は、大喜びで栄養補給をしていた。
* * *
なお、大変どうでもいい話ではあるが。
もし前世の兄がこの光景を見ていたら「惜しい、DDTプロレスなら」と残念がっただろう。
更に言えば、前世の兄なら塚内空に対する即死呪文があるのを知っている。
「自認『Ado』? それとも『マキマ』か『レゼ』? まさか『
この即死呪文を唱えると、塚内空は大量に吐血して死ぬ。
最低三日間は、ガチ泣きで寝込む。
* * *
DDTプロレスなら確実に二人はキスしていたであろう距離。
塚内空と爆豪勝己が眼前で睨み合う中、プレゼントマイクのGOサインが出た。
「……改めて決勝戦、塚内 対 爆豪! 今! ……スタート!」
開始と同時に、三つの事が発生した。
爆豪の頭突きを、塚内があっさり躱した。
爆豪は塚内に両手を向けようと試みたが、塚内が両手を前に差し出し爆豪の腕に絡めた瞬間、爆豪の両手が外に向けられ、二つの『爆破』が外方向に
塚内の膝が爆豪の金的を狙ったが、爆豪の頭突きで下半身が後方に下がったため、金的の威力が低下した。
「いきなりかましたぁ!」
一度に色々な事が起きすぎて、プレゼントマイクの実況が間に合わない。
塚内が両手を回しながら、腕を前に出す。左手は右回転、右手は左回転。
爆豪の両腕は、その回転に合わせて肘から先が真上、垂直にあがる。
(彼女は腕力を使っていない。身体構造を利用しているので爆豪側は抵抗できず逆らえない)
爆豪はお返しとばかりに膝蹴りで塚内の股間への蹴り返しを狙うも、塚内が腕を前に出したぶんの距離を引き離されたため威力が出ない。
男性に対する金的と比べて、女性の股間なら平気だと考える人もいるがそれは大きな誤解だ。
女子格闘技用に女性用ファウルカップが存在しているぐらいには、女性の股間もまた立派な急所である。
骨が折れる覚悟で、爆豪がその両手を強引に塚内の顔面へと向けた。
両手からの個性『爆破』が発動し、クロス状に交錯する。
しかし、塚内空の顔は既にそこには無い。
塚内空の上体はかなり後ろにのけぞっているが、これは粘と呼ばれる技術によって爆豪の腕を擬似的に掴んだ状態になっている為に可能な角度だ。
両腕が触れあっている程の超絶至近距離、20cmも無い隙間から極端な縦楕円を描いた塚内の脚が、爆豪の顔面を蹴り抜こうとした。
しかし流石の反射神経、爆豪は寸前で見切ってその蹴りを躱してみせる。
塚内の両手の円が回り続ける。横円の動きに、縦円の動きが重なった。
蹴り脚の着地に合わせて、爆豪の身体が前に崩される(
姿勢を崩された爆豪の両腕が伸び、塚内の両手円の動きによって腕がXを描くように交差させられた。この時、爆豪の両手の先が明後日の方角に向くよう調整されている(『爆破』対策)。
塚内の右脚が爆豪の左脚にかかるように踏み込み、同時に右肘が水月(胸部急所)に飛んだ。
爆豪は超反応で後ろに
しかし塚内の右脚が左脚にかかっているため、上半身のみが
上半身が
その隙間を縫うように、塚内の肘打ちから変化した右背掌(手の甲)が爆豪の右顔面を強打せしめた。
この辺りの動きは、太極拳の
爆豪の体勢は大きく崩れ、完全に斜めの姿勢となり、支えが無ければ立っていられなくなった。
そこに、爆豪の顔面を強打し終えた右手から、肘部分が垂直落下で胸骨に叩き込まれる。
当然だが、爆豪は地面に倒れるしかない。腕の交差により、受け身を取ることすらできない。
観客が呼吸も忘れる攻防。
気がつけば、爆豪勝己は塚内空に、いわゆるマウントポジションを取られていた。
自分の胸を両手で押さえるような姿勢で、両肘を塚内空の太股でそれぞれ押さえ込まれている。
自身の腹に座られているのもあり、彼女の尻を含めた下半身の感触をダイレクトで味わえる体勢だったが、これで喜べるのは
塚内空の両手がフリーのため、爆豪勝己の顔面を殴り放題となっている。
マウントポジションの概念は、中国拳法にはない。
相手を転がす、イコール殺すというのは日本も中国も古武術において共通している。
なのでこれはどちらかといえば、前世知識だった。
お互いに睨み合いながら、二人は呼吸を整える。
爆豪は脱出を試みようとしたが、完全に固定されていて動けない。
より正確には、脱出しようした行為を起こりの時点で全て潰されている。
マウントポジションを取る行為は初めてだったので不安だったが、無事に取れていたっぽいので塚内空は微笑みながら、こう言った。
「――『まいった』と、言いなさい」
「誰が言うかバーカ」
塚内空は、ぺしん、と優しく爆豪の頬を引っぱたいた。
「返事は『ハイ』か『わん』」
「死ね」
ぺしん。
「『まいった』って言って?」
「どうした、殴れよ」
不敵な笑みを、爆豪勝己は浮かべる。
「……負けるな、頑張れ!」
観客席から、
「へっ、クソナードが」
観客席からの声に悪態をつく爆豪に対し、塚内の態度は変わらない。
「デクくん大好き爆豪くん、『まいった』が聞こえないんですけど」
ぺしん。
「俺の前に……ここに立つ以上! テメェは勝つためだけに頭回してりゃいいんだよ!」
ドォン!
自爆前提の『
凄まじい熱量の爆発が、二人を覆い尽くす。
爆豪の胸部は大ダメージを受け、顔も含めて血塗れとなり、体操服の上半身はボロボロとなって崩れた。
一方、塚内空の体操服も全体的にボロボロになった。
ゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』における艦娘の中破・大破画像。
あるいは、ダメージを受けると美少女の服が脱げるゲーム的なナニカ。
体操着類の奥に隠れていた、彼女のブラもショーツも素肌も所々見えている。
下着以外の服が破損しているのに、下着がノーダメージな理由は不明。
叔母の相澤真(旧姓・塚内)がモデル体型のように、塚内空もまたモデル体型だ。
豊満な胸も、くびれた腰も、
ただでさえ爆豪に
自身を追い詰めた塚内空の半裸姿に、煤と血で
「ハッ! いい
「遺言はそれでいい?」
無表情と化した塚内空の左手が、爆豪の額を引っ掛けるように置かれた。
右手がそっと、爆豪の顎に添えられる。
「じゃあ、殺すね。さようなら、爆豪くん」
塚内空が爆豪の首を捻って頸椎を折ろうとした、まさにその瞬間。
同性である女性には効きにくいはずのミッドナイトの個性『眠り香』が、全力で発動した。
「……塚内空、反則負け。よって、爆豪くんの反則勝ちとします」
ふらり。
半裸姿でエロティックな塚内空が、爆豪の腹の上で揺れた。
次の瞬間、血塗れの爆豪の上に、半裸の彼女が完全なる無防備で倒れ伏した。
「オイッ……ふっ、ふざけんなよ! こんなの!」
錯乱しかけた爆豪の意識が、個性『眠り香』によって飛んでいく。
「こんっ……」
爆豪が、完全に意識を失って無力化された。
男性に効きやすいはずの個性『眠り香』が、中々通じない程の強固な精神力。
女性たる塚内空の方が先に眠り、男の爆豪の方が後から眠るという逆転現象が発生した。
「以上で全ての競技が終了! 今年度雄英体育祭一年、優勝は――」
いいから巻きを入れて早く終わらせろ、彼女の半裸をこれ以上全国放送で流させるなというミッドナイトのハンドサインを見たプレゼントマイクが、慌てて叫ぶ。
「A組、
観客の大歓声と共に、雄英体育祭のメイン種目は全て終わった。
なんだかんだで凄まじいレベルの高度な攻防に、観客達は大満足した。
* * *
半裸騎乗位・
一位:不動の全裸神・
二位:半裸騎乗位・
三位:ヤオ太腿ッパイ・
四位:壁張り付きを尻側から(原作no.46扉絵)・
五位:チア服時の脇の下とヘソ・
ランク変動により、パツパツスーツは圏外となった。
『チア服でしゃがんでた時の見せパン見え・
1-B女子勢のチアガール姿も同様の理由で据え置きとなった。
関係者KDさんは語る。
「俺のやべー女装がそのうちランクインすっからよ! マジ期待しててくれよな!」
* * *
表彰式は、私が寝ている間に終わったらしい。
体操服の予備が無かったので、その意味では丁度良かった。
原作のように、爆豪君は表彰台の上で
とはいえ、あそこで爆豪君を殺しちゃってたら原作破壊ってレベルじゃなかったから、止めてもらえて助かった。流れるように素で殺すつもりになってた。
飯田君はやっぱりというか、案の定早退。
表彰台には、二人しかいなかったことになる。
私の枕元には、二位の表彰メダルが置かれていた。
爆豪君じゃないけど、本気で要らないと感じた。
せーの、ネク・プルス・ウルトラ。
心の中で一人唱和をしてから、私は帰路についた。
その後、インゲニウムが襲撃されて重傷を負ったニュースが報道された。
チームIDATENはどうなるんだろうと思ったけど、多くのヒーロー事務所が協力して、サイドキック達を分散して預かることになった模様。
その結果、ザ・スカイクロウラー事務所に、新たにビッグショット、エニグマ、深夜おねむの三名が加入。
サイドキックが九人となって、航一さんから依頼と忙しさが増したという嬉しい悲鳴のメッセージが届いて苦笑した。っていうか地味に日本最強のヒーロー事務所なのでは?
そっけない文面だったけど、彼らしい実直な報告だった。
『前に進めそう?』と返してあげた。
面倒臭くなったので、そのまま焦凍くんと名前呼びを続けている。
勘違いした
和歩ちゃん大先輩から嫌がらせのように「空ちゃんの半裸がエロい」と観客席で撮影された画像が送られてきたので、私はマジギレした。
「新アルバム製作とMV撮影と全国ツアーを計画してあげる」と返したらギャン泣きしてた。
最後の決勝戦が壮絶すぎたのか、休日の二日間、全ての家事をお茶子ちゃんがやってくれた。
いえーい、お茶子ちゃんの手料理最高。
……なんか疲れてやる気出なかったから、本気で助かった。
ありがとうね、お茶子ちゃん。
デク君が爆豪君のお嫁さんになっちゃったら、焦凍君とかどう?
そして、五月第二週の水曜日。
予定通りなら、午後のヒーロー情報学でヒーロー名を考案することになる。
ってことは、その後は職場体験か。
……それにしても。
爆豪君と、顔を合わせづらいなぁ……。
私は顔をもにょもにょさせながら、雨の中、傘を差してお茶子ちゃんと登校した。