塚内空はヒーローになれない   作:RAP

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「生成AI+画像編集」による挿絵がありますので、生成AIが苦手な方はご注意下さい。


EP.49 「林間合宿・初日」

 

【ミッション】《mission》

 任務、使命。

 (宗教的な)伝道、布教。

 

 

 * * *

 

 

開闢(かいびゃく)行動隊】

 

 ・死柄木(しがらき)(とむら)

 ・リュミエール・ノワール

 ・黒霧(くろぎり)

 ・荼毘(だび)

 ・スピナー

 ・Mr.コンプレス

 ・マグネ

 ・マスタード

 ・ムーンフィッシュ

 ・マスキュラー

 ・脳無ネホヒャン

 

 

 * * *

 

 

「うーん……」

 

 リュミエール・ノワールこと青山優雅は、皮肉にも協力関係を拒絶したステインの死がきっかけで、(ヴィラン)連合に参戦してきたメンバーをノートに書き込んでいった。

 彼らの完全な勘違いではあるが、死人に口なしとはよく言ったもので、特にスピナーはステイン思想を色濃く主張し、しつこく口に出してくる。

 

 彼らの勘違い自体は問題無い。戦力になりさえすればそれでいい。

 友人の弔と話し合いを重ね、塚内空が言及した『目的』については結論づけていた。

 

 ・超人社会にヒビを入れたい

 

 友人たる弔の考えをまとめていくと結局のところ、ここに行き着く。

 青山は、ノートの端をペン先でつつきながら思考を深めていく。

 

 ・雄英生徒が襲われたという事実がヒーローを脅かす

   → 襲撃自体は成功しても失敗してもいい

 

 思いついたことを、とりあえずノートに書き込んでいく。

 

 襲撃をすることで既に目的を完遂するので、その意味では成否は問われない。

 弔は、RPG(ロールプレイングゲーム)からSLG(シミュレーションゲーム)にジャンルが変わったのだと笑う。

 向いている方向はバラバラでも、頼れる仲間を投入すれば勝てると彼は信じている。

 

 ただ、弔は彼らを信じすぎていると青山は考える。

 信じるのは良いが、過信になってしまってはいけない。

 蘇生魔法の無いゲームで無意味にコマを浪費するのは、死亡フラグの塊だ。

 

 弔やスピナーが好むのは、リアルタイムで皆と協力してアクションするゲーム。

 LoL(League of Legends)や、銃で撃ち合うFPS系。

 

 青山も誘われてゲームに触れてみたが、単純に騒がしいのは好みではなかった。

 片目を失い遠近感が狂ったのもあり、激しいゲームよりは腰を据えて遊べる方が良かった。

 結果としてターン制SLG(シミュレーションゲーム)をはじめとした、自分のペースで輝けるゲームが好きになった。

 

 ・夏の学校っぽいイベントは必ずある

  →海か山、どちらにせよ宿泊

 

 雄英がどんなイベントをしているのかというのは、実のところホームページであっさりわかる。

 (公式キャラクターブック・ウルトラアーカイブ参照。大体載ってる)

 どこに行くのかまではわからないが、『どこかに行く=学校外に出る』情報さえあれば蜂が尾行できる。確定で宿泊するのであれば、宿泊先を狙うのがベストか。

 

「海か山かもわからないのに、肝試しとかでバラバラになるのを期待するのは……流石になぁ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()だろう。

 突発的にバラバラになるイベントが発生したのであれば、そこに介入すればいい。

 しかし内通者はいない。あくまでも、蜂に尾行させるのが限度だ。

 

 USJ奇襲時は、かなりの戦力を投入した。

 なのに塚内空の号令一下(ごうれいいっか)、全てを引っくり返されてしまった。

 

 無個性だからどうでもいい、のではなく。

 無個性であれ、出来る事を全部やった結果が目の前にあった。

 

 ……皆と同じでありたいと願ったばかりに、ヴィランとして生きている自分。

 そんな自分を嘲笑(あざわら)うかのように、無個性なのに光り輝いている彼女。

 

 ヴィランの女神、塚内空。

 『塚内空、お前が欲しいとか言やいいの?』と冗談めかして弔は笑った。

 彼女が本当にヴィランの女神となってしまえば、話は大きく変わってくるだろう。

 

 シミュレーションゲーマーが常日頃から夢想する、寡兵(かへい)にて大軍を破るという行為。

 強い仲間をただ信じるだけなら、呂布じみた武力キャラさえ居ればいい。

 現実には、武力キャラを適材適所に配置して動かす軍師は重要だ。

 SLG(シミュレーションゲーム)表現において知力と政治力が95以上ある塚内空は、ユニットとして欲しい。

 

 悔しいが、大変悔しいが、今の自分では彼女に届かない。

 

 ・宿泊が確定しているのなら寝込みを襲う

  →荼毘とマスタード(広範囲攻撃キャラ)をうまく使う

 

 淡々と、思考をノートに書き(つら)ねていく。

 

 もしかしたら、塚内空をこちらに取り込むことができるかもしれない。

 あるいは、居場所がこちら側にしかないように工作できるかもしれない。

 

 そうなったら。

 

(とむら)くんは、喜んでくれるかな?)

 

 頭を撫でてもらえるかもしれない。

 笑顔で褒めてもらえるかもしれない。

 

 青山優雅は微笑を浮かべながら、ノートに奇襲案を書き込んでいった。

 死柄木(しがらき)(とむら)に必要とされたい、ただその一心だった。

 

 

 * * *

 

 

 夏休み、林間合宿当日。

 

「え? A組補習いるの? つまり赤点取った人がいるってこと!? ええ!? おかしくない!? おかしくない!? A組はB組よりずっと優秀なハズなのにぃ!? あれれれれえ!?」

 

 早速ながら私達A組は、B組・物間(ものま)寧人(ねいと)の煽りを受けた。

 なので私は、苦笑しながら彼に近づいた。

 

 前世の兄から、フィクションだから絶対にやってはいけないと言われていたアレ。

 拳藤(けんどう)一佳(いつか)さんが、楽しそうにいつもやってるアレ。

 

「物間くん」

「なになに!? 補習者は何人なんだい!?」

 

 笑顔の首トン。

 

 無事に成功して、物間君は失神。

 本当にゴメンという顔で、拳藤さんが引き取りに来てくれた。

 

「ごめんねー、ウチの物間がアレで」

「いえ、構いません」

 

 一度やってみたかったので、全く問題ありません。

 

 なお、前世のお兄ちゃん曰く『第一から第三頸椎でミスると呼吸困難で死亡、第四頸椎以下でミスると四肢が麻痺する可能性がある。脳を揺らすのも頸動脈も迷走神経反射も、どれもこれも一歩間違えると死んだり後遺症が残ったりする。物語(フィクション)のようにはいかないから、興味本位で気絶アタックはやらないように』とのこと。

 だけどこの世界は【殺意や悪意のある攻撃じゃないと死なない法則】のおかげで、ヘリの大爆発からも生還できるので余裕で大丈夫です。

 

「体育祭じゃなんやかんやあったけど、まァよろしくね、A組」

「ん」

 

 取蔭(とかげ)切奈(せつな)さんと、小大(こだい)(ゆい)さんが笑ってる。

 

「よりどりみどりかよ……!」

「お前ダメだぞそろそろ」

 

 AB両組の女子勢を見ながら、峰田(みねた)(みのる)君が涎を垂らす。

 それに切島(きりしま)鋭児郎(えいじろう)君がツッコミを入れる、いつものやりとり。

 

「では、みんな席順で乗り込もう!」

 

 飯田君の仕切りで席順でバスに乗りかけたその時、突然の雄英白書展開になった。

 

「えー」

「席順じゃなくてもいいじゃん。適当に自由に座ろうよ!」

「せっかくの合宿なのに、いつもと同じ席順じゃつまんないじゃん」

「俺も自由に座りてー」

 

 そんな流れで、席順はランダムになったのだけれど。

 席順自体はさらにランダムというか、原作でも雄英白書でもない並びになった。

 

 具体的に言うと、私の隣りは緑谷(みどりや)出久(いずく)ことデク君になりました。

 ……普段の授業と変わらないんですけど!

 

「あはは……よろしくね、塚内さん」

「うん、よろしくね、デクくん」

 

 ま、いっか。

 

 私が窓の外の景色を眺めようとすると、彼の横顔が常に見えることになる。

 流石の主人公なので、愛嬌のある顔というかなんというか。

 

 イケメンでなくとも、これはこれで栄養です。

 お茶子ちゃん、頑張れ!

 

 

 * * *

 

 

「しりとりの『り』!」

「りそな銀行!」

 

 芦戸(あしど)三奈(みな)さんと葉隠(はがくれ)(とおる)さんが、原作通りにしりとりをはじめた。

 雄英白書展開だと、乗り物酔いで苦しむ青山君のために皆でしりとりが始まるのだけれど、あいにくこのバスに青山君は乗っていない。

 

 ま、原作通りの流れかな?

 そんな事を考えていたら、私同様、窓の外の景色を眺めていたデク君がぼそりと呟いた。

 

「リューキュウ」

 

 なのでつい、応えてしまった。

 

「ウォッシュ」

 

 物凄く驚いた顔で、デク君が私の方を振り向いた。

 私は苦笑しながら、デク君に伝える。

 

「濁点付け外し自由。拗音(ようおん)は二文字扱い。だから、シュかジュかユ」

 

 拗音(ようおん)は、小さい「ゃ・ゅ・ょ」が使われる音のこと。

 濁点付け外し自由なので、シュかジュ、そしてユの三択になる。

 

 デク君は……とても嬉しそうに、ニヤリとした。

 僕相手に、そんな勝負を挑んでいいの? と顔に書いてある。

 

「13号」

 

 ドヤ顔で、デク君が答える。

 

「ウワバミ」

「ミッドナイト」

 

 と、ど。

 

「トイトイ」

 

 トイトイは、麻雀の技名ではない。

 『爆豪(ばくごう)勝己(かつき) vs 麗日(うららか)お茶子』戦でヤジを飛ばしたヒーロー。

 そして当然、そのヒーローは誰? なんて質問をデク君がするわけもない。

 

「イヤホン=ジャック」

 

 耳郎(じろう)響香(きょうか)さんのヒーローネームが出た時点で、心なしかバス内が静かになった気がする。

 私は少し悩んだ後、B組生徒の名前を出した。

 

黒色(くろいろ)支配(しはい)

「イレイザーヘッド」

 

 流石のデク君、返しが早い。

 

(とどろき)焦凍(しょうと)

常闇(とこやみ)踏陰(ふみかげ)

拳藤(けんどう)一佳(いつか)

上鳴(かみなり)電気(でんき)

 

 生徒名が有効になった時点で、皆の注目が余計に集まってしまった。

 あれだけ騒がしかったバス内に、私とデク君の声しか響いていない。

 

「キドウ」

 

 私がそう言った時、砂藤(さとう)力道(りきどう)君が首を傾げて小声で呟いた。

 

「誰よ?」

「ウチの親父のサイドキック」

 

 (とどろき)焦凍(しょうと)君が、小声で伝える。

 デク君は、有名なサイドキックだよね? という顔をしている。

 

「ウォーターホース」

「スライディン・ゴー」(表向きはヒーロー)

小森(こもり)希乃子(きのこ)

小大(こだい)(ゆい)

飯田(いいだ)天晴(てんせい)」(インゲニウム兄の本名)

飯田(いいだ)天哉(てんや)

「山田ひざし」(プレゼントマイクの本名)

「シシド」(プロヒーロー)

「虎」

「ラブラバ」(この世界ではプロヒーロー)

発目(はつめ)(めい)

犬井(いぬい)(りょう)」(ハウンドドッグの本名)

麗日(うららか)お茶子」

口田(こうだ)甲司(こうじ)

心操(しんそう)人使(ひとし)

塩崎(しおざき)(いばら)

 

 バス内の皆が、固唾(かたず)を呑んで見守っている。

 

「ラグドール」

 

 デク君がそう返した時、私は勝ったと思った。

 何故ならル行は、ほぼいない。

 

「ルール」

 

 B組、小大(こだい)(ゆい)さんのヒーローネーム。

 デク君はルミリオンと返すしかないが、現段階でルミリオンのことをデク君はよく覚えていないし、そもそも最後に「ん」がつくので終了。

 

「……まいりました」

 

 駄目だ思い浮かばない、という顔でデク君が頭を下げてくれた。

 

「少しでも長く続くように配慮してくれましたよね、デクくん」

 

 多分、デク君の知識なら勝とうと思えばいつでも勝てたはず。

 あえて私に花を持たせてくれたんだと思う。

 (例:『い』をインゲニウムで返すと相当厳しくなる)

 

「女子とこんな話が出来るだなんて、思ってなかった」

 

 そう言って、恥ずかしそうにデク君が笑う。

 

「楽しそうやね、(そら)ちゃん」

 

 ぐぎぎ、と首を巡らせて声の主を見る。

 お茶子ちゃんが、笑顔で私を見つめていた。

 

「楽しそうやね」

(二回言った!)

 

 そこは、2人の英雄編でデク君に二度言うヤツですよねお茶子ちゃん!?

 何故私にィ!

 

 

 * * *

 

 

 一時間後、山奥の休憩用駐車スペースでバスが停まった。

 

「煌めく瞳でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!」

 

 マンダレイと、ピクシーボブのお出迎え。

 

「山岳救助などを得意とするベテランチームだよ! キャリアは今年でもう12年にもなる……」

「心は18!」

「へぶっ」

 

 余計なことを言ったデク君が、顔面にピクシーボブの右ストレートを喰らって悶絶した。

 個人的には、彼女達はチーム名を変えた方がいいと思う。

 

 プッシーキャッツは子猫という意味なので、普通に受け取るなら『獰猛な子猫』。

 でもプッシーは女性器の意味があるので、英語圏の人に言ったら『SEXに自信のある過激な女達』と解釈されてひきつった笑みを浮かべられる。

 そしてそれを理解できてしまう男性は彼女達を結婚相手に選ぼうとは思わず、さりげなく離れていってしまう。

 

 ……女性プロヒーロー晩婚化問題!

 

「悪いね諸君。合宿はもう、始まっている」

 

 相澤先生の一言と同時に、ピクシーボブの個性『土流』で皆が森に落とされた。

 

「今から三時間! 自分の足で、施設までおいでませ!」

 

 土魔獣を倒しながら施設まで向かうサバイバルが、いま始まった。

 

 

 * * *

 

 

 天界ジャンプ(プラス)編集部。

 外回りの営業名目でパチスロを打ってきた担当編集は、ストレス発散で新人神を叱り飛ばした。

 

「マジュウ戦の描写とかいらねーんだよ! いい感じにぶった切ってエロいとこ行け!」

「ええっ? 出水(いずみ)洸汰(こうた)の陰嚢殴りシーンで彼が抱えた激情を見せておかないと、新規の上位存在に色々伝わらなくなってしまうのでは?」

「こんな平行宇宙に新規の上位存在がやってくるわけねぇだろバカ!」

「では、土鍋で炊いたお米が美味しいなどの描写は……」

「いらねぇ、早送りだ早送り! ギリギリまで飛ばせ! そしてギリギリまで攻めろ!」

 

 そういうことになった。

 

 

 * * *

 

 

「まァまァ……飯とかはね……ぶっちゃけどうでもいいんスよ。求められてんのってそこじゃないんスよ。その辺わかってるんスよオイラぁ……求められてるのはこの壁の向こうなんスよ……」

 

 綺麗な半月が夜空に浮かんでいるのが見える、広い露天風呂。

 担当編集と打ち合わせをしたわけでもないが、読者が望む動きをしようとしている峰田(みねた)(みのる)が、タオル一枚を腰に巻いた姿でウォール・マリアの前に立っていた。

 

 林間合宿を輪姦合宿と脳内変換してしまう峰田にとって、これはやらねばならぬ戦いであった。

 ヒーローだって分解すればHとEROになるのだ。

 HとEROでヒーローなんだ!

 

今日日(きょうび)男女の入浴時間ズラさないなんて、事故……そう、もうこれは事故なんスよ」

「峰田くん、やめたまえ!」

 

 飯田の制止程度で、峰田が止まるわけがない。

 真面目に処理すると彼の休学や退学は免れないが、今の峰田は『その先』を望む上位存在の読者が彼に加護を(さず)けているため、下位宇宙の法律などあってなきがごとし。

 アンケート葉書(評価や感想)は最強なのである。

 

「やかましいんスよ……壁とは越える為にあるんスよ……ッ」

 

 個性『もぎもぎ』を使い、峰田は凄まじい勢いで壁を登り始める。

 だが壁を登り終えた瞬間、出水洸汰が顔を出し、峰田を突き飛ばそうと試みた。

 

「ヒーロー以前に、ヒトのあれこれから学び直せ」

Plus Ultra(プルス・ウルトラ)!」

「……なぁっ!?」

 

 洸汰が伸ばした手を、峰田が掴んだ。

 少年の手を引いて男子風呂に落とす勢いを利用し、さらに上へ、さらなる高みへ……!

 

 峰田は、少年の落下を犠牲にして壁の端で盛大にジャンプした!

 

 

【本日公開の「塚内空はヒーローになれない」は紙冊子センターカラー、デジタルは一部フルカラーです。アニメ版は謎の光がありますが、Blu-rayでは謎の光はありません。 [x]閉じる 】

 

 麗日(うららか)お茶子は、片腕のみをブラ代わりにして温泉に浸かろうとしていた。

 立っている状態のため、下乳から鼠径部ラインの裸がガッツリ見えている。

 うららかバディの股間部分は、強い反射光のせいでよく見えない。

 

 芦戸(あしど)三奈(みな)は、露天風呂の岩部分に座って足をちゃぷちゃぷさせていた。

 当然全てが丸見えだが、両乳首のラインに謎の月光が差し込んでうまく見えない。

 彼女が足を揺らすたびに、物理エンジンが壊れたかのごとく、乳房が妙に揺れていた。

 

 葉隠(はがくれ)(とおる)は、鏡の前にある椅子に座って髪の毛を洗っていた。

 夏の風呂場で湿度が高いのに、何故か静電気が発生した。

 彼女は普段から透明なので、髪の手入れが杜撰だったためと推測される。

 静電気のせいで彼女の個性が何故かバグり、彼女の座り洗髪姿勢が露わになっていた。

 本来ならば彼女の背中から尻ライン、溢れる横乳しか見えないが、鏡の反射で正面も完璧。

 

 蛙吹(あすい)梅雨(つゆ)は、ボディソープで身体を洗っていた。

 長い髪を後ろでまとめた彼女の姿は、普段と違ってまた艶っぽい。

 なんだかんだで、彼女の裸が描く曲線は美しい。

 ボディーソープの泡が何故か乳首付近と股間付近に張り付いている。

 Blu-rayでの修正が待たれるところだ。

 

 八百万(やおよろず)(もも)は、温泉に浸かった状態であまりの気持ちよさに伸びをしていた。

 ただでさえ巨乳の彼女がグッと伸びをしているものだから、乳房の主張がとんでもない。

 温泉の関係で血流が良くなり、頬が上気しているので妙にエロチック。

 謎の光で乳首は良く見えないが、乳房に浮かぶ水滴はここぞとばかりにつるりと垂れる。

 

 耳郎(じろう)響香(きょうか)は、自分以外の女性陣のナイスバディっぷりに昏い目をしていた。

 もうちょっと膨らんでくれても良いのにな、と思いながら自分の胸をなんとなく揉んでいた。

 そこがいい、それが良いという男性もまた居ることに、彼女が気づくのは何年後だろうか。

 現状は、気にせずとも良いものを気にするという詫び寂びの境地、禅の悟りがそこにあった。

 

 塚内(つかうち)(そら)は、原作通りに峰田が落下するものと思い込んでいた。

 ゆえにタオルで前を隠す程度でいいかと、単純に考えていた。

 しかし現実はそうではなかった。神の加護の存在を彼女は知らなかった。

 叔母の相澤真にも負けぬ身体のラインが、普通に見えていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ぼちゃーん!

 

 そのまま、峰田は女湯に落下した。

 全てをやり遂げたという満ち足りた顔、溢れ出る彼の鼻血。

 

「……ヤオモモちゃん」

「はい」

「ロープを」

「はい」

 

 塚内空に要請され、八百万百は真顔でロープを生成した。

 塚内空は、半裸の峰田をギリギリと縛り上げる。

 

「お茶子ちゃん」

「うん」

「触りたくないだろうけれど、彼を浮かせてもらえる?」

「うん」

 

 塚内空に要請され、麗日お茶子は個性『無重力(ゼログラビティ)』で峰田を浮かばせた。

 雁字搦めに縛られた半裸の峰田が、そのままゆらりゆらりと天高く上っていく。

 

「改めて温泉を楽しんで、身体を温め直して……ちゃんと身体を拭いて、寝間着に着替えて。水分補給して一息ついたら、彼を落としてあげましょう」

「「「異議無し」」」

 

 本懐を遂げた峰田は、使い方によっては最強格となる個性『無重力(ゼログラビティ)』の、一番やってはいけない使い方の実験台にされた。

 峰田は成層圏あたりから自由落下するという貴重な経験をすることができた。

 

 なおヘイロー(HALO)降下は「高高度降下(High Altitude)低高度開傘(Low Opening)」を意味するため、パラシュートが無ければ意味として成立しない。

 人類史上初のHANO降下(高高度降下・無傘)という、レンジャー部隊でもしたことがない体験を峰田はすることができた。

 

 峰田はほぼ氷漬けで地上に落下してきたが、女湯での解凍なら本望だろうと、そのまま温泉で放置された。【殺意や悪意のある攻撃じゃないと死なない法則】と言っておけば大体通るので、何も問題は無かった。

 

 * * *

 

 

「落下の恐怖で失神しちゃっただけだね、ありがとう」

 

 出水洸汰にとってヒーローは理解できない気持ちの悪い人種だということを、風呂上がりの半裸のままのデクがマンダレイから聞くシーンは原作通りなので省略する。

 

「それより君……服、着てきな?」

 

 

 * * *

 

 

 峰田がやらかした関係で、次の日から男女の風呂時間がずれることになった。

 これ自体は雄英白書展開だが、その先が少し違った。

 

拳藤(けんどう)だけど、ちょっといいかな」

 

 雄英白書では二日目に行われるはずのAB組合同女子会が、初日の夜に行われることになった。

 峰田ショックで気落ちしているA組女子を、元気づけてあげようという趣旨らしい。

 

 A組女子全員とB組女子全員が集まった、華やかな空間。

 女子勢は部屋の真ん中にお菓子を広げ、自販機でジュースを購入し、布団をクッション代わりに車座になった。

 皆でジュースを掲げ、思い思いに乾杯をする。

 

 甘いお菓子は、口と心をゆるりと溶かしていく。

 加えて合宿というシチュエーション。

 葉隠(はがくれ)(とおる)が、真っ先に声をあげた。

 

「女子会といえば……恋バナでしょうがー!」

 

 その言葉を聞いて、女子のテンションがあがっていく。

 

「そうだ、恋バナだ! 女子会っぽい!」(芦戸)

「うわぁ~」(麗日)

「恋ねぇ」(蛙吹)

「えー……」(耳郎)

「あー、そういうノリか」(拳藤)

「こ、恋!? そんなっ、結婚前ですのに……!」(八百万)

「そもそも結婚というのは神の御前での約束で……」(塩崎)

「鯉バナナ?」(柳)

「んーん」(小大)

 

 しかし、とりあえず恋バナをしたいというだけなので、そこで空回りしてしまう。

 

「それじゃ、付き合ってる人がいる人……えっ、誰もいないの!?」

 

 葉隠透の驚愕に、皆は顔を見合わせる。

 芦戸(あしど)三奈(みな)が、すかさず問いただす。

 

「塚内は轟とだよね?」

「確かに焦凍(しょうと)くんって呼んでるけど、緑谷(みどりや)くんをデクくんって呼ぶようなもんだよ?」

「えー」

 

 つまらなさそうに、芦戸が口を尖らせる。

 

「じゃあ、彼氏にするなら誰がいい?」

「彼氏かー」

「いざ彼氏って考えてみると、誰もピンと来ないんだよねぇ」

「つーか、彼氏にしたい男がいないっていうのが一番大きいんじゃ?」

上鳴(かみなり)は浮気しそう」

「轟は、親が息子の彼女に厳しそう」

「飯田くんは、結婚してからじゃないと手を繋げなさそう」

 

 皆がわいわい言いはじめた。

 塚内空は、ため息をついた。

 

「……あのね、みんな。引き算で考えていられるのは、10代の今だけだよ。女性プロヒーロー晩婚化のニュースとか、見たこと無い? 文句ばっかり言ってると行き遅れちゃうよ」

 

 なんだか実感の籠もった台詞に、女子勢はゴクリと息を呑んだ。

 塚内空は、真顔で台詞を続けていく。

 

「彼氏が浮気しそうなら、ちゃんと繋ぎ止めておく。本気で浮気をしたらトドメを刺す。結婚は親と離れる儀式でもあるから、親が厳しいなら距離を置けばいい。貴方に孫を会わせたくない、と一言告げるだけで、厳しい親なんて全員黙り込むしかなくなる。手を繋げる云々は恋愛観を溶かしてあげればいい……飯田くんの視野が狭いことには、同意するけれど」

「空ちゃん、大人すぎ……大人すぎない?」

 

 お茶子が驚く。

 

「緑谷ちゃんは……凄く努力家だと思うわ」

「そんですんごくオールマイトオタク」

「彼女とのデートにオールマイトの握手会に行きそうだよね」

「彼氏としてはナイ」

 

 それぞれ蛙吹(あすい)芦戸(あしど)葉隠(はがくれ)、柳の順だ。

 そしてそれにも、塚内空はフッと笑う。

 

「オールマイト好きなんて、十分可愛い趣味だよ。握手会に関しては『私に倍のフォローをしてね?』って言えばそれだけでいいし。浮気に繫がらない趣味を受け入れる度量ぐらいは持たないと、気がつけば40代になっちゃうよ?」

「なんで実感こもってるの空ちゃん」

 

 お茶子が心配そうな顔になる。

 

「相手のイヤなところって、根っこではない部分なら修正の相談ぐらいはできるからそこまで気にしなくていいと思うよ? オールマイト好きの人にオールマイトを好きになるな、って言うのは根っこの部分だからダメだけど、さっきの例で言うならデートと握手会ならデートを優先して、ときっぱり告げるのはアリだと思う。貴方が私の思い通りじゃないからイヤだ、っていう思考で引き算していくと真面目に行き遅れるから、足し算してあげた方がいい」

「そっ、そんなに簡単に行き遅れてしまいますの!?」

 

 八百万(やおよろず)がぽかーんとする。

 

「ヤオモモちゃんなら、恋愛以前に実家でお見合いのイメージが強いから簡単に結婚できそうだけど……あえて名前は出さないけど、25歳以上の女性プロヒーローで未婚の人がどれだけいるか、知ってるヒーローだけでいいから頭の中で考えてみて? 名前は言わなくていいから、何人思い浮かんだか数えてみて」

「「「あっ」」」

 

 ミッドナイト(31)、ピクシーボブ(31)、マンダレイ(31)、ラグドール(31)、13号(29)、 Ms.ジョーク(28)、リューキュウ(26)、ミルコ(26)、バーニン(25)。

 ついでに言うとスターアンドストライプ(42)。

 

「せっ、世知辛いなぁー?」

 

 拳藤が、たまらず苦笑いを浮かべた。

 

「拳藤さんは男子の間でめっちゃ人気高いから大丈夫じゃないかな」

「そ、そうなの?」

「文化祭のミスコンで三位以内に入れる逸材だし」

「いやいや、そもそもエントリーしないし」

 

 呆れ顔で、拳藤が片手を左右に振る。

 

「塚内、こなれすぎ! 正直に吐いて!」

 

 芦戸が泣きついてきたので、塚内空は苦笑した。

 

「片思いで好きな人は、確かにいるけど……絶対にかなわない恋だから最初から諦めてるパターン、かな? 恋バナだからって、いい話ばかりではないっていうか」

「空ちゃんその人誰なの教えて? ちゃんと『話し合い』しておくけん」

 

 お茶子が微笑を浮かべた。

 誤魔化すように、塚内空は早口になる。

 

「なんにしても、さ。男子達はもう少し長い目で、前向きに見てあげようよ」

「峰田は?」

「次は消す」

 

 死体が出ると見つかっちゃうからね、と塚内空の顔に書いてあった。

 

 翌日は五時半集合というのも忘れて、なんだかんだで女子会は大いに盛り上がった。

 

 




挿絵提供:まねきねこ様(生成AI:LORAなし・使用モデル「Hoshino v2」)

イールボーイとか居たっけな、と書き終えた後で思い出しました。
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