【プロトタイプ】《prototype》
試作品、原型、模範。
量産前の実験モデルであり、動作の保証はない。
転じて、未完成ゆえの危険性と可能性を秘めたもの。
* * *
「うーん……率直に言わせて貰えれば、発目さんのサポートアイテムは使い手を信頼しないコンセプトのものが大半なので、そのまま使えるものが少ないです。雄英体育祭の時に発目さんが使っていた『ザ・ワイヤーアロウ』は素直に欲しいと思いますが、『ホバーソール』は大きすぎて歩行の邪魔。レクリエーションの時にアピールしていた『油圧式アタッチメントバー』は、回避中や回避後の位置取りが考慮されていないので実際の戦闘では使いにくいです。恐らくは非戦闘者である発目さん自身が欲しいと感じたものを作り上げているのではないかと思うのですが、使い手は戦闘を嗜んでいる者が大半である以上、先ほどのデクくんへの『パワードスーツ』も、飯田くんへの『スーパークーラー電動ブースター』も論外です。敵に破壊された瞬間に、それだけでこちらを無力化されてしまいます」
「フフフ、でもですねぇ、私思うんですよ。使い手を選ばないのが真のサポートアイテムなのではないかと」
「大衆向けに売る観点なのであれば、その思考でも良いでしょう。肝心のヒーローのニーズに応えることができていないのは問題です。合わせるのは大衆ではなく、使い手であるべきです」
「クライアントの無茶無知無謀に応えるのができるデザイナーです! お任せを!」
「現状だと、発目さんを含めた雄英のサポート科と連携をとる意味が薄いですね。《I・アイランド》のメリッサ・シールドに八割方発注することになるでしょう」
「……八割!」
がーん、とショックを受ける発目。
そばで話を聞いている緑谷は、メリッサの姿を目を閉じて思い出している。
塚内空は、ドッ可愛いベイビーの山を見ながら断言する。
「先ほども言ったように、ザ・ワイヤーアロウは捨てがたいので、そこが二割です」
雄英と組む意味が薄いとまで言われて、流石にパワーローダーが割り込んだ。
「まあ塚内、待ってくれ。そう急いで結論を出すことはない。まず、塚内の希望を聞かせてくれ。そこから実現性に合わせて落とし込んでいこう」
「基本はサラリーマンのスーツ的なものにしたいと考えています。自然に街中に溶け込みたいというか、ステルス性を重視したい。なので耐熱・耐寒・衝撃吸収性などを備えた高品質素材を使用してスーツの基礎を組みますが、ここは流石にメリッサ・シールドに一日の長があります。なので雄英サポート側が嚙むとすればそれ以外。私の弱点や苦手要素を補う部分です」
「具体的には?」
「移動補助、ないし防御補助。例えば私は、
顎に手をあてて悩んでいた飯田が発言した。
「なるほど……先生が俺のレシプロバーストを必殺技と呼ぶに値すると言ってくれたのがわかる。超速移動は、強みか……」
緑谷は、真剣に分析していた。
「ブツブツブツブツ
塚内空は、そんな緑谷に苦笑しながら言う。
「雨の日に傘をさすように、遠距離攻撃を防げればラクなんですけどね。
「子供のように、傘を剣や盾に見立てて遊んだ経験は俺にもある」
パワーローダーが、ふぅむと考える。
「足しましょう! 全部!」
発目明が、叫んだ。
「ザ・ワイヤーアロウのように射出できて、透明な盾として使えて、パラシュートとしても使える透明な傘です!」
「無茶を言うな発目、傘の素材はどうすんだ?」
パワーローダーが焦る。発目の答えは簡単だった。
「そんなにその人の作ったベイビーが凄いというのなら、雄英に呼べばいいのです!」
「……待って、駄目元で聞いてみる……」
ケータイを取り出し、塚内空が電話をはじめる。
もちろん相手は、メリッサ・シールドだ。
「ハーイ、メリッサ。ちょっといい? あのね……ってわけなんだけど。流石に無理なんじゃ……えっ、可能? そうかアカデミーって海外だから夏休みが長いんだっけ。じゃあこっちで出国の手配をすればいいのね。うん、一週間ぐらいならOK、了解。お言葉に甘えるね、メリッサ」
「えっ? メリッサさん、雄英に来るの?」
緑谷が驚く。塚内空が肩をすくめる。
「マイトおじさまにも会えるし、夏休みだし、全然OKって言ってた」
メリッサ・シールドは、情報漏洩を防ぐ守秘義務の為に旅行ができない。
だが今回、雄英高校サポート科の要請による技術協力という名目がある。
『僕のヒーローアカデミア・チームアップミッション』のように、メリッサ・シールドが雄英高校サポート科に遊びに来ることになった。チームアップミッションは冬のインターン時期、具体的には年が明けて二月頃の話なので、半年近く前倒しされたことになる。
本当は、超圧縮技術を用いて透明盾を出し入れ出来るようにすればそれで全部解決と考えていた塚内空だったが、とりあえず流れに身を任せてみることにした。
自分が勝てなかった爆豪に、勝ちたいという思いで
でも、自分はそこで止まってしまっているのではないか?
塚内空の打ち合わせ風景を見て、そう感じてしまった。
……先へ。自分とて、先へ進みたいからここにいる。
兎にも角にも、今は仮免取得に向けて集中しなければいけない。
* * *
「塚内さん、ちょっと教えてもらえないかな!?」
飯田君にレシプロバースト時の蹴りを教わっていたデク君が、私に声をかけてきた。
「何を知りたいの?」
「飯田くん式の蹴りは教えてもらったけれど、塚内さん式の身体の使い方って言えばいいのかな? 拳の他に腕、肘、肩、膝、脚、足先、なんでも使う……って言ってたから、どんな感じなのか知りたいんだ」
「よくぞ聞いてくれました」
私はそう答えて、ニコリと笑う。
「ただ、最初に説明しておかないといけないことがあります。これはデクくんも含めて、沢山の人が勘違いしてると思うから言うんだけど……拳を当てたいから当てる、蹴りを当てたいから当てる、っていう格闘ゲーム的な考えを捨ててもらう必要があります。先にそう言っておかないと、肘を当てようとして肘を、肩を当てようとして肩を使ってしまうから」
「……ええと? 違うの? ごめん塚内さん、もう少し詳しく」
「じゃあデクくん、試しに私の顔を殴ろうとしてください」
「えっと、こう?」
恐る恐る、デク君が右腕をゆっくり私の顔に向けて伸ばしてくる。
私は彼の右腕に左手を添え、右脚で軽く踏み込んだ。
「今、デクくんは私を殴ろうと意識していたから、肩は力んでいたし目線も私の顔、正確には殴ろうとした左頬の付近を見ていました。だから私から見ればデクくんがどこを殴ろうとしていたのかは丸わかりで、避けるのも簡単でした。なので私は、左手でデクくんの拳の軌道を反らし、踏み込んで反撃もできる位置どりに成功しました。ここまではいいですか?」
「うん」
「この時の、相手が絶対に回避できない状況下における、相手との距離と位置関係」
そう言いながら、私は右手を伸ばす。
「例えば、腕で右脇」
デク君の右脇に、下から前腕で触れる。
「胸に肘」
デク君の胸に、肘先で触れる。
「首、あるいは顔に背掌」
デク君の右頬に、右手の甲で触れる。
「金的。これは拳でも、膝でもなんでも」
デク君の股間を打つフリ。流石にここは、デク君もびくりとした。
「つまり、腕・肘・背掌・拳・膝の距離になったからそれを選択しただけであって、最初から腕や肘を入れようとしたわけではないんです。絶対に当たる距離であり角度だったからそうした。その意味ではデクくんの、この右腕を破壊することも出来ます。テコの原理で折ってもいいし、寸勁で折ってもいい」
「……寸勁」
「文字通り、一寸の距離から打つから寸勁です。筋肉ではなく、構造と脱力による打撃……という言い方が近いのかな? 増強系の個性であるデクくんが、脱力から生まれる打撃を覚えたら威力がどうなるのか、ちょっと興味はあります」
「あっ、雄英体育祭の時の……
「軽く……本当に軽く、実演しますね」
とん、と右拳をデク君の胸に添える。
「っ!?」
十字勁も纏絲勁も入れない、地面からの反発力も入れない、ただ構造から発生しただけの力を私の右拳からデク君の胸に流し込んだ。
でもそれだけで、デク君は数メートル後ろによろめいて転んでしまった。
「わわ……これで軽く、なんだ」
「この寸勁は、どの場所からでも放つことができます。それこそ肘でも肩でも、つま先からでも。ここで最初の話に戻りますが、距離と位置関係が拳の場所だったから拳で打った、とそういう話になります」
デク君を引っ張ろうと、近づいて手を伸ばす。
でも雄英体育祭で握手落としをしたからか、デク君は少しびくついていた。
「……握手落としを思い出させちゃいましたか。逆も体験してみますか?」
「逆?」
「握手あげ、です」
そう言って私がデク君の右手を握った瞬間に、デク君の肘が真上に跳ね上がるように調整した。
転んでいたデク君は起き上がるどころの騒ぎではなく一瞬で立ち上がらざるを得ず、立ち上がっても肘が真上にあがり続けているのでそれ以外の行動がとれない。
こっちがその気になれば、肩を折るのも腕を折るのもやりたい放題。やらないけど。
「うごごご……!」
「うわっ」
暴れるようによろめいたデク君と接触し、一緒に転がってしまった。
倒れこんだ私の胸に、デク君の頭が飛び込んでくる形になってしまった。
まぁ、これは、握手あげの制御をミスった私のせいだから良いんだけれど……。
……何故私が、発目さんのポジションに?
デク君は顔を真っ赤にしながら、慌てて離れてくれた。
「「
そのまま、二人でデク君をどつきはじめる。
「何してたんだてめェはァ!? ……てめェはァッ!?」
「ナメてんのか人生を!」
「わ、痛い、やめて、何!?」
違った。
ヒミコちゃんがいないから、ヒミコちゃんが化けた
仮免確定オケオケとか超
……って公安に言わないとダメ?
ともあれ、私はYouTubeで幾らでも見られる、寸勁の打ち方をデク君に教えてあげた。
腕を真っ直ぐ上にあげた状態から、脱力で腕を落として目標を打つ。
それに慣れたら、上から下ではなく横から横にベクトルを変えるだけ。
当然の話だけれど、寸勁だけを学んでも駄目。
相手の
そういった攻防に伴う色々なものを含めて学ばないと、何の意味もない。
でも、あくまでも『どんな感じなのか知りたい』だけだから。
デク君の希望通りにそうしてあげたという、それだけの話。
* * *
「メリッサ!?」
「マイトおじさま!」
雄英に来るなり、メリッサ・シールドはオールマイトに抱きついた。
オールマイトは、無邪気に抱きついてくる彼女に苦笑せざるを得ない。
「HAHA……元気そうだね」
「おじさまは、少し痩せたんじゃないかしら?」
そこへ、塚内空と発目明が出迎える。
「ハーイ、メリッサ」
「ソラ! 呼んでくれてありがとう!」
二人はメリッサ、ソラと呼び合う仲になっていた。
ライバルの登場に、発目もやる気が漲っている。
「フフフ……ベイビーの製作、負けません」
「勝ち負けではなく、ヒーローのサポートのために来たつもりです」
ムッとした顔で、メリッサが答える。
そんなメリッサに、発目がフッと笑いながら返す。
「ですが塚内さんは、サポートアイテムに関しては素人です」
「サポーターとして、第一にヒーローのことを考えて作るべきだと思うわ」
「見解の相違のようですね」
出会ったばかりなのに、一瞬でバチバチの空気になってしまった。
美人のメリッサを見に来た男子ギャラリーが多かったが、声すらかけられない雰囲気。
(二人ともヒーローを支えるサポーター同士ではあるが、メリッサは最先端の素材を活かしたスマート嗜好、対して発目少女はゴリゴリのメカニカル系。上手く噛み合わない可能性……)
オールマイトの顔が、引き攣った。
* * *
発目とメリッサの戦場が、開発工房へと移行した。
まずメリッサが、アイデアをまとめたノートを広げて皆に見せた。
この時室内にいるのは、発目、メリッサ、塚内空、パワーローダー、オールマイトの五人だ。
「これは構想段階と言えるもので、想定材料すら手元にないゼロベースのアイデアです。ですが理論的には、半年以内にプロトタイプまで持っていけるはずです」
そう言いながら、メリッサが一つずつ説明していく。
それは、原作におけるアーマードオールマイトの、一つ手前の仕様。
あえて『機動戦士ガンダム』で例えるが、アーマードオールマイトが「RX-78-2・ガンダム」だとするなら、メリッサが語ったのは「RX-78-1・プロトタイプガンダム」の話だった。
・デヴィット・シールド……トレノフ・Y・ミノフスキー博士
・メリッサ・シールド……テム・レイ博士
・パワーローダー先生……ジオニック社
・発目明……ツィマッド社
・塚内空……アナハイム・エレクトロニクス社の副社長(事実上のトップ)
ヒロアカ世界の超圧縮技術は、ガンダム世界におけるミノフスキー粒子級の革新的新技術。
応用範囲が広すぎるので、超圧縮技術の根幹をなす素材・コンデニウムの価格は今後、急騰どころの騒ぎではなくなるだろう。
「本来は車か何かを別途用意し、それを素材として使用者を包むフルアーマー構想です。
ですが、今は使用者であるソラが必要そうなものを抽出しリストアップするにとどめます。
・『フライングシールド』。空中浮遊と飛行を可能とした盾で、使用者を自動で守ります。
・『オートガードマント』。AIの判断で、自動で使用者を守るマントです。
・『超圧縮式スラスター』。必要時にスラスターを出し、ダッシュや飛行を可能とします。
・『アーマーモーフィング』。装甲を変形させ、任意の武器に可変させる機能です。
・『特殊光学樹脂』。レーザー級の光学兵器の熱すら軽減できる塗装です。
・『フライングユニット』。鳥を模した飛行ユニットで、高高度からの情報収集をします。
『フライングシールド』に関しては、最終的な展望はともかく、今回はソラの要望に合わせてアタッシュケースに偽装できるよう落とし込みたいと考えています」
メリッサの話を聞いた全員が驚いた。
発目明は、プロヒーローに合わせるというのはこういうことかと脳みそを殴られた。予算の縛りを無くせば、自分だってもっと可能性を広げることができると歯がみした。
パワーローダーは、開発費用を試算して、その桁に目眩がした。
塚内空は、傘の話が川上稔系の女キャラか
オールマイトが、真剣な表情で言った。
「これは……その気になれば、1-Aの皆の個性を擬似的に再現し、使えるようになる可能性を秘めている……メリッサ、塚内少女。開発費用を私にも負担させてほしい。そして最終形のプロトタイプを試作できる段階まで進んだら、それを私用にもう一台作って欲しい。名付けるなら、アーマードオールマイトといったところか。もちろん、試作分の費用は全額払う。例え私が一文無しになったとしても、このプロジェクトは全てを
「マイトおじさま……!」
塚内空は腕組みをして、うーん、と唸りながら考えた。
アーマードオールマイトは確か10枚の浮遊盾で守られていたが、作動原理が謎すぎた。
盾が空中に浮遊して静止状態を維持している時点で、意味不明すぎる。
デヴィット・シールドとメリッサ・シールドの特許という説明で、大体許されてしまう。
この路線で行くと、ザ・ワイヤーアロウが進化形となってブラックウィップ&巻き取りセロファン&電流チャージズマとなるのだろうか、とぼんやり考えたりもした。
「えーと……全体のプロジェクト名を、アーマードオールマイト計画とします。今回はプロトタイプのさらに試作ということで、マントとスラスターとアーマーモーフィングはいりません。浮遊盾を最優先開発とします。メリッサのフライングシールド案に、発目さんのザ・ワイヤーアロウを組みこんでみてください。シールドには特殊光学樹脂を
塚内空から開発コードネーム『
「お、おい塚内、開発費が軽く億単位なんだが……?」
「構いません。オールライト
「なん……だと……」
技術者に対して全力を出させる、単純にして唯一の解法。
『予算無制限で暴れていいよ』が宣言された。
これには、裏の理由がある。
現在進行形で根津校長から凄まじい桁の金を
全日本ヒーロー科高校縦断・地下リニア接続計画を実行に移す根津校長が全部悪い。
将来の
さりげなく
ゆえにパワーローダーは、思わず唾をゴクリと飲んだ。
「つ、塚内。発目。メリッサさん。……お、俺も混ぜてくれ」
「構いません。二人の仲を繋げつつ、好きにやってください」
塚内空が、即答で許可を出す。
パワーローダーは、原作において
天空に浮いた広場の周囲には電磁バリアが張られており、床には死柄木弔の『伝播する崩壊』を防ぐ装置が仕込まれている。
『伝播する崩壊』を防ぐ装置というだけで、最早意味がわからない。
メリッサ・シールドと発目明が、静かに向かい合った。
そして、どちらからともなく手を伸ばしあい、握手をする。
その握手の上に、パワーローダーが両手を乗せた。
メリッサ&発目&パワーローダーの共同開発、及びオールライト
なおアーマードリーチが正式名称なのに、関係者全員が『アーマードソラチャン』と呼び続けたため、開発コードネームが『アーマードソラチャン』になるという現象が発生してしまった。
* * *
相澤先生は『一人最低でも二つの必殺技』と言っていたが、持ち技のほぼ全てが必殺技である塚内空にとって、大変に悩ましい課題だった。
正直『
最初の頃こそ「ヒロアカ世界の敵は背の高い人が多いから、背が高い人を相手にする時用の技を開発すればいいの?」などと真面目に考えていた塚内空だったが、そもそも太極拳自体が力の差や体格差を利用する技ばかりのため、「相手を転ばせるか、足を折れば身長差が縮まるのでは?」とノーベル暴力賞を受賞したところで思考停止してしまっていた。
不意に、前世の兄が語っていた『武術の習得段階』について思い出してしまった。
・虚実の駆け引きを行っている段階。
・相手が何をどうしようが全対応できる段階。
・相手が動く前に、ただ自分のやりたい事のみを通す段階。
・相手を自分の意のままにしてしまう最終段階。
ついこの間まで、自分はずっと一段階目だと思い込んでいた。
でも思えば、
相手が手の届く範囲内なら、限定的な三段階目かもしれない。
最終段階の前に死んでしまった前世の兄だが、言い換えれば三段階目には到達していた。
兄は「上半身はオマケ」と言い切るレベルで合気捕りを得意としていた。
そして、手が触れた瞬間に終わるガード不能技を、塚内空は
10年に及ぶ
『むしろ打つ必要が無いところまで来とる』
『武術はわかってくればわかってくるほど、怠け者の横着者になる』
『わざわざ殴る蹴るとか面倒な真似をせんでも、相手を無力化できると気づく日がくる』
『おぬしの内功は、気づきさえあれば階段を上れる状態』
何か、あと一歩で届きそうな気がする。
セメントス先生は、よく「戦闘とはいかに自分の得意を押しつけるか」と言うけれど。
仮にそれが三段階目だとするならば、四段階目はどれほどの境地なのだろうか?
届きそうで届かない、なんだかとてももどかしい。
思いついた事を、片っ端から試していくしかない。
とりあえず、折ってから考えてみよう。
折るだけなら、相手は死なないはず!
ノーベル暴力賞を受賞した女は、駄目な思考に陥りはじめていた。
* * *
緑谷出久がシュートスタイル(not真剣勝負)を生み出し、夜に寮の外で練習していた頃。
女子寮の一階ロビーで、1-A女子全員がだらけていた。
「フヘエエエ、毎日大変だァ……!」
「圧縮訓練の名は、伊達じゃないね」
「梅雨ちゃんは、必殺技どう?」
「私はよりカエルらしい技が完成しつつあるわ。きっと透ちゃんもびっくりよ」
入浴後なので、髪をアップにして乾かしている
「お茶子ちゃんは?」
葉隠透が隣を見た時、面白い感じになっていた。
まず、ソファに深く背を預けたままの姿勢で、疲労の濃い
塚内空の太股を堪能するかのように、疲れ果てた
そして髪を下ろした
「みんなお疲れのようね」
蛙吹梅雨が苦笑する。
「……疲れてる時に風呂入るとさー、出た後に寝ちゃうよね……」
みんな、色々と必死なのだ。
「流石に、ここで寝ちゃうと風邪引いちゃうから、起こすわ」
「待って。写真撮る」
蛙吹梅雨が三人を起こそうとした時に、芦戸三奈が茶目っ気を出した。
塚内空、麗日お茶子、八百万百が寄り添って寝ている姿に、みんなほっこりと笑顔になった。
* * *
訓練の日々は流れ、メリッサも帰国した。
開発自体はオンラインでやりとりができるので、何も問題は無い。
そして、九月。
ヒーロー仮免許取得試験、当日を迎えることとなった。
素材の味を活かす努力。