塚内空はヒーローになれない   作:RAP

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「生成AI+画像編集」による挿絵がありますので、生成AIが苦手な方はご注意下さい。


EP.62 「インターン編・難易度イージー」

 

【シリアスリー】《seriously》

 真面目に、本気で、深刻に。

 冗談や遊びではないこと。

 

 

 * * *

 

 

 翌日のザ・スカイクロウラー事務所、会議室。

 

 事務所の全員+インターンの二人(ポップ☆ステップ、デク)を相手に、塚内空(リーチ)がブリーフィングをおこなっている。

 仮にもプロヒーロー達相手に、仮免を取得しただけのインターン生が堂々と説明をおこなっていることに、デク以外誰も疑問に感じていない。

 ミーティングは双方向の相談だが、ブリーフィングは事情説明であり指令なので一方通行。

 つまり、塚内空(リーチ)は『いいからお前等、問答無用で動け』と言っていることになる。

 

 デクは「プロ相手でも、本当に指揮官(コマンダー)なんだ」と内心で引き攣っていた。

 

「本日は、死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)という小さな指定(ヴィラン)団体周辺を重点的にパトロールしたいと考えています。経緯と理由を説明します」

 

 ホワイトボードには、東京都を大雑把に示した白地図が貼られていた。

 白地図の何カ所かには、既に地名が書かれている。

 死穢八斎會と書かれた場所から、鳴羽田をはじめとした都内各所への矢印が伸びている。

 また、矢印は地図の左下にも伸ばされ『大阪・江州羽』とも書かれている。

 

鳴羽田(なるはた)を起点に、大阪の江州羽(えすは)市を含めて死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)というヤクザがクスリをばら撒きはじめました。実際に被害者が出始めており、オールライトHD関連の社員も狙われました。今回はその被害者からの、匿名希望の相談がきっかけです。話を聞くに、これは四年ほど前の話になりますが、ヴィラン達は個性因子誘発物質(イディオ・トリガー)を含む弱個性改善薬『トリガー』の流通経路を構築しました。今回の彼らは、潰しきれなかった流通経路の名残(なごり)を使用していると推測できます。警察を動かすには現時点では証拠に乏しく、流通経路から迂闊に辿るとトカゲの尻尾切りで終わってしまいます。弱個性改善薬『トリガー』は合法の正規商品もあります(ヴィジランテ5巻参照)が、当然彼らがそんなものを使っているわけがありません。実際に、雄英の(ウソの)(災害や)(事故)ルームが(ヴィラン)連合に襲撃されたことはニュースにもなりましたが、彼らは当たり前のように非正規の『トリガー』を使用していました。そこで今回は、二箇所から攻めます」

 

 そう言いながら、塚内空(リーチ)はマグネットマーカーを死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)と『大阪・江州羽』と書かれた場所に置いた。

 

「大阪のファットガム事務所にも話を通し、動いて貰います。私達は死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)周辺をパトロールすることで、本命の真犯人に繫がる証拠の類を発見します。最終的には、警察と共に乗り込めるだけの算段を整えるところまで進めます。とはいえ、私達にはコンパス・キッドさんがいますから……違法トリガー捜索の線から進めるだけで、サクサク進むのではないかと」

 

 大本命の個性消失弾のことには一切触れずに、塚内空(リーチ)が淡々と説明していく。

 事実、死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)は違法トリガーも使いまくっているので、何も問題は無い。

 

「例え今日のパトロールが空振りでもさ。そのおかげで街の人がちょっとでも安心して暮らせるなら、それは充分意義のあることでしょ!」

「そうですよね!」

 

 コンパス・キッドの発言に、デクが大きく頷く。

 

「おッ、分かる? 分かってくれる? デク君、キミ、いい奴!」

 

 コンパス・キッドとデクの二人が、意気投合する。

 原作ヴィジランテの流れを知っている塚内空(リーチ)は、苦笑しながら台詞を続ける。

 

「長期戦になる可能性もあるので、日々の業務を大きく壊したりはしません。全戦力の投入は、警察と乗り込むような事態になって、そこで初めて実行します。それまでは、普段のパトロール場所を死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)付近に寄せて、通常通りのシフトで巡回していくほうが良いでしょう。サー・ナイトアイの個性『予知』は、使うにしてもここぞという時のダメ押しで構わないと判断します」

「了解だ」

 

 サー・ナイトアイが、眼鏡クイをする。

 

「プロヒーローの皆さんは二人組(ツーマンセル)の巡回で良いと思いますが、インターン組は未熟さを考慮し、三人組(スリーマンセル)でいこうと思います。ですので私ことリーチ、デク、ポップ☆ステップの三名で巡回を担当させていただきます。仮に一人が不意打ちを受けて倒れても、残りが二人ならヴィランから逃げおおせた上で、事務所に応援を頼むこともできるでしょう」

「別に(ヴィラン)と戦う義務があるわけじゃなし。強そうな(ヴィラン)には、近寄らないようにします」

 

 ポップ☆ステップが、真面目モードで語る。

 そんなポップ☆ステップに続いてデクは何か決意を語ろうとしたが、ポップ☆ステップの大胆な腰と尻と太股のラインに赤面してしまい、モゴモゴしてしまった。

 

「ガ、ガンバリマス……」

 

 あーわかる、露出度が毒だよねー、という顔をザ・スカイクロウラーはした。

 だが次の瞬間、事務所を束ねる者として真面目な顔つきになる。

 

「じゃあ、そんな段取りで。俺とナイトさんはいつでも駆けつけられるから基本は待機。バディはいつもの組み合わせでいいんじゃないかな? ジェントルさんとラブラバさん、バブルさんとセンチさん、コンパスさんとビッグさん、エニグマさんと深夜さん。今日はバブルさんとセンチさんと、あとインターン組の巡回かな」

 

 灰廻(はいまわり)航一(こういち)は、イレイザーヘッドのことをイレイザーさんと呼ぶ。

 恐らくはそのノリで、事務所の面々と親しくなるにつれて省略形プラスさん付けで呼ぶようになったのだろう。

 呼び捨てる例外は、師匠こと塚内空と、ポップこと羽根山和歩の二人だけ。

 

 コンパス・キッドを投入すると、サクサク捜査が進んでしまう。

 捜査が進むということは、その分インターン組に危険が及びやすくなる。

 本格的に捜査に着手するのは、インターン組が学校に戻った平日からでいい。

 ザ・スカイクロウラー事務所の面々が考えることは、大体同じだった。

 

「わかりました」

「オッケー、コーイチ……じゃなくて、ハイ! わかりました!」

「イエッサー!」

 

 上から塚内空(リーチ)、ポップ☆ステップ、デクの返事。

 

 そんな流れで、死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)の周辺を、バブルガールとセンチピーダー、そしてインターン組の二年生一人、一年生二人が巡回することになった。 

 

 

 * * *

 

 

 ヒーローに捜査権は無いので、パトロール巡回が関の山。 

 ただ、『ルパン三世・カリオストロの城理論』というのがある。

 『ヴィランを探してたらとんでもないものを見つけてしまった、どうしよう(棒)』。

 

 弱個性改善薬『トリガー』を探していたら、壊理(えり)ちゃんを発見してしまった。

 この路線であれば、何も問題は無い。

 

 インターン面接の翌日は、原作で初日と定義されている。

 つまり、インターン編が本格的にはじまる日だ。

 であるのなら、初日のパトロールを原作通りに行うことができれば、運命がデクと壊理(えり)ちゃんを引き合わせるのでは……という目論見が塚内空の中にあった。

 

 そして、案の定。

 スキル・主人公補正を持った英雄(ヒーロー)の卵は、運命的な遭遇を果たしてしまう。

 

 

 インターン組が三人組(スリーマンセル)で巡回を開始し、比較的すぐ。

 路地裏から、鬼のような角が一本、額から生えた幼女が飛び出してきた。

 幼女の両手足は包帯巻きでボロボロ、両方とも素足。

 

 幼女はデクにぶつかり、こてんと転んでしまう。

 

「ごめんね、痛かったよね」

 

 デクは怖がらせないようにしゃがみ、視線をできるだけ合わせてから幼女に手を伸ばした。

 しかし幼女はビクリと怯えて、伸ばしかけた手を引っ込めてしまう。

 すかさずポップ☆ステップもしゃがみこみ、優しく声をかける。

 

「立てる? 大丈夫?」

 

 そんな心配を遮るように、一人の男が路地裏から現れた。

 

「駄目じゃないか、ヒーローに迷惑かけちゃあ」

 

 それは、オーバーホール……ではなく。

 白いペストマスクに、黒のスウェットの上下をラフに着込んだ男。

 

 塚内空(リーチ)だけは、一目でわかる。

 オーバーホールに一コマで分解された、世話役のヤクザ。

 

 白いペストマスク姿の男は、舌打ちを一つ。

 

「おい、帰るぞ」

 

 ポップ☆ステップが、流石にジロリと睨みながら問いかけた。

 

「……貴方は誰ですか?」

「あー。親です、親。遊び(ざか)りで娘の怪我が多いんスよ、困ったもんで」

 

 幼女は、震えた手でデクの胸とポップ☆ステップの腕を握りしめ、小声で呟いた。

 

「いかな……いで」

 

 幼女のその言葉に、塚内空(リーチ)が間に立つ。

 

「貴方が本当に親であるというのなら、最低でも児童虐待防止法違反が確定します。さらに刑法204条の傷害罪ではなく、その上の暴処法第1条の3に基づく常習傷害罪の疑惑があります。ちょっとそこの交番まで、娘さんと一緒に来て貰えませんか?」

 

 これは任意同行ではなく、あくまでもお願い。

 

「……その子、よく転ぶんスよ。問題ねーッス」

「その子に、この人がお父さんかどうか聞いてもらえる?」

 

 塚内空(リーチ)が、淡々と指示を出す。

 幼女は、デクとポップ☆ステップにしがみついたままだ。

 

「声を出すのが怖いなら、首の動きだけでいいからね。あの人は、お父さん?」

 

 ポップ☆ステップの問いに、幼女は首を左右に振った。

 

「知ってる人?」

 

 デクの問いに、幼女は再度、首を左右に振った。

 

「「お父さんではなく、赤の他人ってこと?」」

 

 思わず二人の問いが被ってしまったが、幼女はこくりと頷いた。

 塚内空(リーチ)が、世話役のヤクザに対して半身で構えた。

 

「刑法224条、未成年者略取・誘拐罪。刑法220条、逮捕・監禁罪が上乗せ。プロヒーロー仮免許の権限に基づき、緊急事態と判断します。デク、ポップ、被害者の確保と警察への連絡を! 私は彼を現行犯逮捕します!」

「ひっ、ひいい!」

 

 世話役のヤクザが、幼女を見捨てて振り返り、慌てて逃げ始めた。

 

「つかっ……リーチさんだけじゃ、危ないよ!」

「無理はしません、逃走方向だけでも確認します! 二人はとにかく、その子をお願いします!」

 

 そう言って、塚内空(リーチ)は逃げた男を追いはじめた。

 だが暫くしてから、路地裏に一発の銃声が鳴り響いた。

 

「……嘘っ、まさか!」

 

 警察に連絡後、デクに幼女を預けてから、ポップは親友を追いかけるべく全力で跳躍した。

 

 

 * * *

 

 

 死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)の方角に、世話役のヤクザが逃げていったのを確認できた。

 この時点で、もはや勝ち確状態。

 

 その辺のビル壁に座り込んで、地面に個性消去弾を落として、浮遊盾も地面に置いた。その上でケータイのボリュームを最大にして、事前に準備してあった銃声音を鳴らしてすぐにミュート、ケータイを(ふところ)にしまった。

 

 これで私は()()()()()()()()()()ので、後はじっくり攻めるだけ。ビル壁を背に座り込んでいたら、半泣きのポップ☆ステップがビルの屋上から現れて、目の前に着地した。

 

「空ちゃんッ!」

「……大丈夫だよ、和歩(かずほ)ちゃん。ちょっと撃たれただけ」

「ちょっと、って……!」

 

 私は苦笑しながら、地面に落ちた銃弾を指さした。

 次いで、あの日以来使用していない浮遊盾を指さす。

 

「ほら、サポートアイテムが防いでくれたおかげ。ね?」

「……うん」

 

 ポップ☆ステップこと和歩(かずほ)ちゃんは、釘崎爪牙(くぎざきそうが)達に私が襲われた時のように私に抱きついて、わんわん泣いてくれた。

 

 「死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)に撃たれて逃げられました」と事務所に報告したら、もの凄い勢いでザ・スカイクロウラーが飛んできてビックリした。

 マッハの速度で着地されると現場保全もへったくれもなくなっちゃうから、落ち着いて欲しい。

 

 グラントリノと一緒に黒霧逮捕に出かけているはずのお父さんに「ヤクザに撃たれちゃった」と伝えたら、「今すぐ行く」と返事が来た。お父さんの後ろでグラントリノが「小僧のインターンを断った俺の立場がねぇだろ!」と叫んでたのが印象深かった。

 死穢八斎會への突入日がだいぶ前倒しになりそうで、これはこれで問題無い……のかなぁ?

 

 

 * * *

 

 

 救助&確保された壊理(えり)の話を警察が聞いた瞬間、全ての話が超高速で進んだ。

 塚内空を撃った銃弾や、浮遊盾についている線条痕の分析も即日でおこなわれた。

 ヒロアカ世界は技術が進んでいるので、DNAを含めて解析の速度は早い。

 

 また同日、大阪の江州羽(えすは)市でもファットガム事務所がトラブルに遭遇。

 個性消去弾で撃たれ、一時的に個性が使えなくなった天喰環(サンイーター)

 違法トリガーを使った刃人間を撃退した、切島鋭児郎(レッドライオット)通形ミリオ(ルミリオン)

 

 事前に連絡を取り合っていたので、東京と大阪の情報共有も手早く済んだ。

 

 その結果、死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)は麻薬や違法トリガーだけでなく、個性消去弾というとんでもないものを製作しているとわかった。また個性消去弾の材料が、毎日のように六歳の幼女・壊理(えり)を切り刻み、何度も殺しては何度も蘇生させて採取した「彼女の血や細胞」だと判明した後の、警察やヒーロー関係者の怒りは凄まじかった。

 

 ・殺人罪(刑法199条)の累犯(繰り返し)

 ・殺人未遂罪(刑法203条)

 ・傷害罪(刑法204条)/ 暴力行為等処罰ニ関スル法律第1条の3・常習傷害罪

 ・逮捕・監禁罪(刑法220条)

 ・脅迫罪(刑法222条)

 ・強要罪(刑法223条)

 ・未成年者略取・誘拐罪(刑法224条)

 ・麻薬及び向精神薬取締法違反 / 覚醒剤取締法違反

 ・組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反

 ・銃砲刀剣類所持等取締法違反

 ・武器等製造法違反 / 国際法の生物兵器禁止条約に抵触する恐れあり

 ・医師法違反

 ・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律違反

 

 六歳の女の子にやる所業ではない。

 麻雀で例えるなら、大四喜(ダイスーシー)字一色(ツーイーソー)四槓子(スーカンツ)四暗刻(スーアンコ)嶺上(リンシャン)自摸(ツモ)である。

 情状酌量の余地などあるわけもなく、弁護人ですら六法全書の角で殴り殺した方が早いと考えるレベルだった。

 

 

 * * *

 

 

「切島コラァ!」

「ん?」

「おまえ、ネットニュースにヒーロー名が載ってるぞ、スゲェ!」

 

 月曜の学校。

 上鳴(かみなり)電気(でんき)切島(きりしま)鋭児郎(えいじろう)に、ケータイの画面を笑顔で見せる。

 『新米サイドキック、烈怒頼雄斗(レッドライオット)爆誕! 初日から市民を背負い、ヴィラン退治!』。

 その様子に、爆豪(ばくごう)勝己(かつき)が歯ぎしりをした。

 

「緑谷ぁ、塚内ぃ、すごいよー、名前出てる!」

 

 芦戸(あしど)三奈(みな)も同様に、ネットニュースの画面を見せる。

 『ザ・スカイクロウラー事務所に新たな相棒。少女を救出したデクとポップ☆ステップの実力は本物! 銃で撃たれたリーチは実力に不安が残るか』。

 

「塚内、銃で撃たれたとかマジ!?」

 

 耳郎(じろう)響香(きょうか)が驚く。

 

「うん。サポートアイテムのおかげで、無傷だったよ」

 

 塚内(つかうち)(そら)が、わざわざ実力不安と書かれた記事の見出しに苦笑する。

 

「仮免といえど、街へ出れば同じヒーロー。……素晴らしい活躍だ!」

 

 飯田(いいだ)天哉(てんや)は、そう言って三人を絶賛した。

 緑谷(みどりや)出久(いずく)は、ずっと考え事をしていた。

 

 

 * * *

 

 

 緑谷出久はどうにも授業に集中できず、教師陣に叱られまくった。

 このままでは、よくない。

 

 オールマイトが学校の周辺でジョギングをしていると聞いて、緑谷はオールマイトを探した。

 咳き込みながら走り続けるオールマイトは、すぐに見つかった。

 

「……緑谷少年が来た! ゴホッ」

「全部、知ってたんですか?」

 

 緑谷はオールマイトの後ろを走りながら、心中に抱えていた想いを吐き出す。

 

「ナイトアイがワン・フォー・オールを知っていて、塚内さんが後継の候補で……全部知ってたんですよね? なんで言ってくれなかったんですか」

「言う必要……あったかな」

 

 オールマイトは、振り向きすらせずに言った。

 

「あるでしょ! 新事実ばっかりで、なによりオールマイトの意図がわからなくて! 秘密にする意図がわからないからモヤモヤする! なんで教えてくれないんですか! あなたのファンとしてじゃなくて、後継者として全部知りたい!」

「……この話は、君のためにならないと思った。本当に聞きたいのか?」

「このまま秘密にされるよりはいいです」

「後悔するなよ」

「……はい」

 

 走る速度を落とさずに、オールマイトは語る。

 

「ナイトアイは元々私の大ファンでね。サイドキックは取らない主義だった私だが、根負けする形で彼を迎え入れたんだ。身体能力に関してはそれほど高くない(※比較対象はオールマイト。ナイトアイの印鑑投げは、真面目に計算するとマッハを越えてしまうのでふわっと処理しなければならない)が、ブレーンとして私の活動を支えてくれた」

「知ってます……今はザ・スカイクロウラーのサイドキック役です」

「……ああ。彼の個性は『予知』。彼は、私が近い将来に死ぬ未来を見た。そこで私の未来を巡り彼と対立、そのまま喧嘩別れになりそうだったところを、塚内少女に(いさ)めてもらった。まだ(とお)にもならぬ時期の子に、私もナイトアイも脳天を殴られたよ。今でも彼女の啖呵を覚えている。『目の前のたった一人を救えないのなら、ヒーローなんて名乗るな、サー・ナイトアイ』」

「そんなことを、塚内さんが……」

 

 オールマイトは、懐かしそうな表情を見せながら走り続ける。

 

「その後も彼女は、鳴羽田(なるはた)を救い続けた。鳴羽田ロックダウン及び東京スカイエッグ爆破事件が、最小限の被害で済んだのは彼女のおかげだ。だから私は、ワン・フォー・オールの後継者に相応しいと考え、塚内少女を選んだ」

「だったら何故僕が!」

「ワン・フォー・オールは塚内少女を拒絶した。彼女に近づくことさえ出来なかった。気落ちした私に、根津校長は通形(とおがた)少年を後継者候補として推してきた。存在感のある生徒で、彼の周りはよく笑い声が響いている。笑顔だけは絶やさないヒーローは、私のヒーロー観にぴったりではないか、とね。だが、通形(とおがた)少年と出会う前に私は君と出会った。だから君に渡した」

 

 ワン・フォー・オールは、塚内空を拒絶した。

 新たな情報に頭を殴られ、緑谷は黙り込んだ。

 

「……言いたくなかったんだ、ごめんな。君は私のファンだから」

「予知は……もう、変えられないんですか?」

「わからない。ナイトアイは未来を変えるために、独立すらせずザ・スカイクロウラー事務所にサイドキックとして飛び込んだ……きっと彼は、何かを見たんだと思う。余裕で独立できる実力者が、サイドキックとしての道を選んだ理由が必ずある。そして、今は君がいる。君が私に応えてくれる日々が、私に生きろと囁いてくれる。足掻(あが)くよ。私は生きる。運命などこの手で、好きな形にねじ曲げてやるさ」

「……僕も一緒にねじ曲げます!」

 

 オールマイトと緑谷は、拳同士をコン、とぶつけあった。

 

「手を(わずら)わせないよう、頑張るよ」

 

 それはオールマイトではなく、八木(やぎ)俊典(としのり)としての笑みだった。

 

 

 * * *

 

 

 数日後。

 原作であれば、サー・ナイトアイ事務所において、チームアップに対する会議が行われた日。

 この世界では、塚内警部を中心に、死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)へのガサ入れが実行された。

 

 警察の要請で、ザ・スカイクロウラー事務所とファットガム事務所が全面協力をした。

 

 リューキュウ事務所はいないので、波動(はどう)ねじれもいない。

 別事務所なので、蛙吹(あすい)梅雨(つゆ)麗日(うららか)お茶子もいない。

 当然ながらロックロック、ケサギリマン、地方のヒーロー達もいない。

 

 ただしイレイザーヘッドとグラントリノはいたので、まとめると以下のようになる。

 

 

【ザ・スカイクロウラー事務所】

  ザ・スカイクロウラー……『飛行』

  サー・ナイトアイ……『予知』

  ジェントル・クリミナル……『弾性(エラスティシティ)

  ラブラバ……『愛』

  バブルガール……『バブル』

  センチピーダー……『ムカデ』

  コンパス・キッド……『指さし』

  ビッグショット……『弾力』

  エニグマ……『エニグマ』

  深夜おねむ……『あくび』

  リーチ……無個性(無個性とは言ってない)

  ポップ☆ステップ……『跳躍』

  デク……『超パワー』(超パワーとは言ってない)

 

【ファットガム事務所】

  ファットガム……『脂肪吸着』

  ルミリオン……『透過』

  サンイーター……『再現』

  レッドライオット……『硬化』 

 

【個人協力者】

  イレイザーヘッド……『抹消』

  グラントリノ……『ジェット』

 

【警察】

  塚内警部……れみんとんM870、にゅーなんぶM60

  玉川三茶……SAKURA M360J

  他、ヤる気しかない警察官多数

 

 

 念のために、相手側も書き記しておく。

 

死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)

  活瓶(かつかめ)力也(りきや)……『活力吸収』

  酒木(さかき)泥泥(でいどろ)……『泥酔』

  天蓋(てんがい)壁慈(へきじ)……『バリア』

  多部(たべ)空満(からみつ)……『食』

  宝生(ほうじょう)(ゆう)……『結晶』

  窃野(せつの)トウヤ……『窃盗』

  オーバーホール、クロノスタシス、ミミック、乱波(らっぱ)肩動(けんどう)音本(ねもと)(しん)……現在ビー玉状態

  他、やる気の無いヤクザ構成員多数

 

 

 * * *

 

 

 AM8:00、警察署前。

 

 ヒーロー側も警察側もガチだった。

 救助した六歳の幼女の涙ながらの訴えを聞いて、激怒しない者はいない。

 愛娘が撃たれたと聞いて、激怒しない父親もいない。

 

 結果として、塚内警部が百人近い刑事・機動隊・警察の陣頭指揮をとることになった。

 

 原作よりスケジュールが前倒しされているのもあり、ヒーローと警察側の戦力がおかしい。

 しかも裏でMr.コンプレスが暗躍するというおまけつき。

 戦闘描写をキング・クリムゾンしても許されるのではないかという戦力比だ。

 

 

「あ、ファットさんお久しぶりですー」

「おー、塚内の嬢ちゃんやないか! 今はリーチと呼んだ方がええんか?」

「どっちでもいいですよー。ちょっと天喰環(サンイーター)に用事があって」

 

 塚内空(リーチ)に呼ばれた天喰環(サンイーター)は、ミリオへの指折りや金的を思い出した。

 ガクブルと震えながら、天喰は思わず敬語で答えてしまう。

 

「……なっ、なんですか? 塚内さん」

「ちょっと実験しておきたくて。これ、塩ゆでしたシャコの寿司です。シャコは刺すタイプと殴るタイプの二種類いますけど、これは殴る方のシャコです。シャコパンチは水中じゃないとキャビテーションが発生せず、本領発揮できないのはわかってるんですが、地上戦でもタコ足でガッチリ身体を支えた上でパンチすれば、いけるんじゃないかなーって……ただ計算上は、どう考えても速度がはやすぎて『エネルギーが伝わる前に終わるから意外と壊れない』感じになりそうなんですよね。反動も強すぎて普通の人だとボロボロになりますけど、パイセンなら大丈夫な気がして」

「……ど、どれぐらいの反動なんですか」

「計算では、地上だと骨・腱・筋肉がボロボロになって肘・肩・鎖骨が一瞬で壊れて手の皮膚が吹き飛ぶはずなんですが、そこはサンイーターパワーでどうにかこうにか……」

「オコトワリシマス」

 

 真っ青な顔で、天喰環(サンイーター)が拒絶した。

 その言葉に、塚内空(リーチ)は残念そうな顔を見せる。

 

「えー? それじゃ、切島(きりしま)くんコレ食べる?」

「お、おう。……案外うまいなコレ(もしゃもしゃ)」

「これでも江戸前の超高級寿司ネタだから、値段は大トロ級だよ?」

 

 そう言って塚内空(リーチ)が去った後、通形ミリオ(ルミリオン)は笑った。

 

「彼女は相変わらず元気だね!」

 

 ファットガムは、自分もサンイーターで実験しようとしていたのを思い出した。

 

(たまき)、コレ食うとき。カジキ」

「なんでカジキ……いただいておきます」

 

 そんな時、真剣な表情の塚内警部が叫んだ。

 

「隠蔽の時間は与えない、可能な限り迅速に行く! 多少手荒になっても構わない、少しでも怪しい素振りや反抗の意思が見えたらすぐに対応! 行くぞ!」

 

 

 * * *

 

 

 AM8:30、死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)邸宅前。

 刑事の一人が、インターホンを鳴らす。

 同時に、刑事達が怒鳴り始める。

 

「桜田門や!」

「はよ()けんかいコラァ!」

()けろやコラなめとんのか!」

「ガサじゃ()けコラ!」

 

 どちらがヤクザかわからない怒号が飛び交う。

 突然、門の前に立っていた複数の警察官ごと門が殴り飛ばされた。

 4m以上はあろうかという大型(ヴィラン)こと、活瓶(かつかめ)力也(りきや)の仕業だ。

 

「何なんですかァ、朝から大人数でぇ……」

 

 吹き飛ばされた警察官達を、デクやイレイザーヘッド達がジャンプして助ける。

 巨大な活瓶(かつかめ)力也(りきや)は、門をさらに破壊しながら暴れはじめた。

 

 ただここからの展開は、原作とは大きく変わることになる。

 現場指揮官の塚内警部が、すかさず叫んだ。

 

「警察だ、暴行をやめてその場に伏せろ! 三茶(さんさ)、威嚇射撃!」

 

 指示を受けた三茶が、すかさず空に向けて発砲した。

 

「少し元気が入ったぞ……もぉ~、何の用ですかァ!」

 

 ドガァ!

 活瓶(かつかめ)力也(りきや)は止まらずに、地面を殴りつけて威嚇した。

 その瞬間、塚内警部がニヤリと笑って指示を出す。

 

「コウボウ! ゲンタイ! 発砲を許可する!」

 

 公務執行妨害、現行犯逮捕。

 

「抵抗は無駄だ! 投降しろ!」(三茶)

「投降は無駄だ! 抵抗しろ!」(塚内警部)

 

 塚内警部が、右肩に押しつけるように『れみんとんM870(SPAS-15)』を構えた。

 

 BLAMMO!

 BLAMMO!

 BLAMMO!

 

 凄まじい銃声と共に、活瓶力也の右脚が二箇所、左脚が一箇所削れた。

 立っていられなくなったので、活瓶力也は倒れた。

 

 塚内警部が、すかさず突入指示を出す。

 

「ヒーロー、警察、突入開始! 片っ端から制圧しろ!」

「ようわからん! もう入って、行け行け!」

 

 ファットガムも叫んだ。

 突入しながら、レッドライオットが切島として振り返る。

 

「塚内、緑谷、頑張ろうな!」

「また後で!」

 

 デクは緑谷として答えた。

 

「よし……と」

 

 塚内空は、正直私いらないんじゃ? と思いながら突入した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)側の最大の問題は、組長は意識不明のままで、若頭も若頭補佐も部長も全て不在で音沙汰知れずだったので、指示が全く出ていないことだった。

 ただでさえ組長派と若頭派に分かれているのに、どちらもいない。組長の孫娘もいない。

 原作以上に、死穢(しえ)八斎會(はっさいかい)は詰んでいた。

 

 




挿絵提供:まねきねこ様(生成AI:LORAなし・使用モデル「Hoshino v2」)
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