【インベシル】《imbecile》
低能、大馬鹿、愚鈍な。(医学用語としての)精神遅滞。
救いようのない程の愚かさ。
* * *
ヒーロー公安委員会主導の計画こと、『ヒーロー活動推進プロジェクト』。
後任が来るまでの間、
「「「ものすごくヒーローっぽいのキターっ!」」」
「話を最後まで聞け」
相澤教師の説明に、皆の興奮が止まらない。
「このプロジェクトは、規定により俺達教師やプロヒーローのバックアップは一切無い。当然、何かあった場合、責任はお前等が負うことになる。そのことを肝に銘じ、ヒーローとしてあるべき行動をしろ。いいな?」
「「「はい!」」」
そんな流れで、1-A生徒全員は
しかしこの島、オセオン国レベルで割と謎な島なのである。
12月中旬、本州では雪も降っている。
しかし
真夏の海を思わせるビーチで皆は平然と水着姿だし、人口1000人で空港なし。
漁港とは別に大型フェリー発着用の港があるから、観光客は良く来るのだろう。
歴史のありそうな城跡もある。
この城跡の歴史は琉球王国と島津家の関係にまで遡り以下略なんか色々ありました。
少なくとも、存在するだけで周辺国の歴史にまで影響を及ぼすオセオンより全然マシ。
* * *
沖縄よりさらに南西、地図の端っこにある離島。
冬でもハイビスカスが咲く常夏の楽園。
ナンパ男に言い寄られて困っていた水着美女達を助け出した
個性『複製腕』によって監視能力の高い
個性『半冷半燃』の
ギックリ腰で動けなくなったお婆ちゃんを、
耕運機のバッテリーがあがったからと、
落石で通行不能となった道を、
そばで見ていた芦戸が、真顔になっていた。
* * *
劇場版二作目から、ナイン一行とホークス要素を差し引くと何が残るのか。
そう、ただの平和な日常である。
どちらかというと「ヒーローとはなんぞや」という現実に直面する。
ヒーローは警察ではない。
ヒーローは便利屋ではない。
海の監視員(資格不要)やライフセーバー(資格取得や講習アリ)をやってる場合ではない。
仮にも海泳を許可している観光地で、監視員やライフセーバーをヒーローに任せてはいけない。
バイトでいいから、ちゃんと専門の人を雇用した方がいい。
そもそも遊泳区域なのに、沖に流され過ぎないようブイが張られていない。遊泳禁止の磯を区切るのは、ヒーローではなく自治体か観光協会か海水浴場組合でなくてはならない。
落石で通行不能となった道は、確実に行政側の対処である。
落石防止柵やネットによる、防護工や予防工をしておかないといけない。
バッテリーがあがった耕運機や壊れたバイクはそういうお店に任せよう。
そういうお店が無いのなら、近い技術職の人にお願いしよう。
ヒーローは、無料でコキ使えるバッテリーでも、修理屋でもない。
ギックリ腰で動けなくなった事を「連絡できた」のであれば、ヒーローではなく救急車へ。
旅行バッグの紛失は確実に警察だ。ヒーローの権限が弱すぎる。
弟の迷子も基本は警察で、警察の手が足りない時にヒーローに応援要請があるべきだ。
事務所にパソコン10台以上を置いた上で、ヒーロー仮免保持者20人が連携しなければ対応できない。これは、オールマイト級のヒーローが前任者だったのだろうか?
過疎地を一人で支えようと頑張る医者を村人総出で潰すブラックな話に等しい。
……ヒーローとは、一体?
* * *
太平洋側から房総半島を回り込み、浦賀水道を通って東京湾へ北上。
事前通告のない大型クルーザーが東京湾に侵入し、北東進する姿がそこにあった。
「貴船は我が国領海内に侵入している、繰り返す、貴船は我が国領海内に侵入している」
「目標、
「目標転進、針路
「このままでは
領海警備中の、 海上保安庁の巡視船が慌ただしく動く。
「我が国の領海内の通行は認められない、我が国の領海内の通行は認められない」
拡声器と国際VHF無線の双方が、大型クルーザーに何度も警告を発していた。
「貴船は日本国領海内を航行中である。直ちに停船せよ。エンジンを停止し停船せよ!」
《This is Japan Coast Guard. Stop your engine immediately!》
大型クルーザーの甲板、腕組みをしたオールマイトコスプレの男が大声で叫ぶ。
「俺は象徴だ! 止まるわけにはいかん!」
巡視船で進路を塞ぐ進路妨害は、互いの速度が速すぎて危険。
放水行為は、なんだかよくわからない向こうの個性でガードされる。
「目標を右舷に捕捉する! おもーかーじ!」
「おもーかーじ!」
「両舷、前進一杯!」
「両舷、前進一杯! ヨーソロー!」
「警告に従わない場合、実力を行使する!」
《Stop immediately, or we will open fire!》
ここまで来ると、もはや密入国ではなく、テロリストの襲撃扱いだ。
「もうすぐ東京湾奥、レインボーブリッジが見えてしまいます!」
「ええい、ヒーローズネットワークに緊急連絡!」
ようやく海保が断念し、ヒーローに協力を仰いだ。
一方、放水をされたゴリーニ・ファミリー達は激おこである。
「俺は象徴だぞ!」
「知らんがな! 停船しろ!」
報道ヘリが、テロリスト達と海保巡視船の攻防の様子を捉えていた。
「船のスピーカーで、彼は叫んでいます! 『俺が新しいオールマイトだ』……はいぃ?」
* * *
書き出してはみましたが、読まなくていいです。
【ゴリーニ・ファミリー(劇場版第4作『ユアネクスト』)】
・バルド・ゴリーニ(ダークマイト)
個性: 『錬金』触媒を利用し様々な物体を創造できる。条件は「等価交換」なので無から有を生み出せるわけではない。
特徴: オールマイトに似せた姿で「次は君だ」を曲解して暴走する。215cm。
・サイモン・ゴリーニ
個性: 『
特徴: 眼鏡に整えられたヒゲ、ファッションデザイナーのような紳士風の男。175cm。
・ジル・ゴリーニ
個性: 『
特徴:無口な巨漢。250cm。ウーゴを肩に乗せて戦う。
・ウーゴ・ゴリーニ
個性: 『
特徴: 細長い腕にピノキオの様な長い鼻を持ち、サングラスをかけた老人。帽子の下は禿頭。72cm。ジルの肩に乗る。
・カミル・ゴリーニ
個性: 『
特徴: やや小柄な体型で赤い鷲鼻が特徴の男性。
・ブルーノ・ゴリーニ
個性: 『ドレイン・スポット』指パッチンから発動する。自身を中心に半径数メートルのドーム状空間を展開。その空間の中では時間の流れがスローになるが本人は通常通りの行動ができる。
特徴: オールバックともみあげ、割れ顎が特徴のハンサムな男性。194cm。
・デボラ・ゴリーニ
個性: 『ブレイン・リモード』目を合わせるだけで発動できる洗脳系個性で、対象者ひとりに幻影を見せることで、感情、行動を支配する。
特徴: ゴリーニ・ファミリーの紅一点。グラマラスな身体に黒いシックなドレス、つばの大きな帽子。190cm。
・パウロ・ゴリーニ
個性: 『アン・イデオロギー』一定の範囲内に個性が使えなくなるフィールドを形成し、自身の周りだけ個性が使用できるようにするチート個性。
特徴: ペストマスクの顔と黒ハットを被った男性。チート個性を活かせないポンコツ。184cm。
・《補足》
ユアネクスト本編では、アンナ・シェルビーノによる個性強化バフがある。この世界においては、彼女のバフは存在しない。
* * *
バルド・ゴリーニがコインを投げると、空中に撮影用ドローンが現れた。
海上を疾走していた三階建てのクルーザーが、突然空中に浮かびあがって飛行した。
この瞬間、事態は
領空侵犯による東京湾侵入、つまりはレッドライン突破。
航空自衛隊と防衛大臣が動き、
そして、国内のあらゆるモニターにコスプレおじさんの姿が映し出された。
電波ジャック系はよくある演出ではあるが、地味に大罪である(後述)。
「ハロー・エブリワン! 俺は新しきオールマイト、次代の象徴となる男だ!」
もはや何語で話しているのかよくわからない男が、堂々と宣言する。
「俺は誓う。オールマイト誕生のこの地であるこの日本で、いや、この日本から! 世界の新たなる象徴となり飛び立つことを! オールマイトの理想を引き継ぐことを……そう、次は――」
コスプレおじさんは、カメラに向かって堂々と左手の人差し指をつきつけた。
「俺だ!」
その後、反転させた親指を自分に向けて突き立てた。
この男、本来は青山の裏切りが皆に知られた後、AFOを呼び出す作戦の直前に登場する。
少しは空気を読んで欲しい。
「まずはマイトタワーとかいう場所にいるアンナ・シェルビーノを
ではこの男が何故今このタイミングで来たのかというと、彼らの調査能力の無さゆえだ。
アンナ・シェルビーノを匿っていた塚内空だったが、「アンナが無事」かつ「日本が壊れる前」ならザ・スカイクロウラーがNo.1になるための餌になるのではないかと判断し、一応アンナとジュリオに確認をとった上でホームページに写真を公開したという裏事情がある。
つまり流れとしては「アンナ確保&隠蔽。いくら経ってもアンナが見つかる気配全く無し。ザ・スカイクロウラーがNo.1になるという方針変更後(神野事件の後なので八月第一週過ぎ)、ホームページで情報をわざと公開。11月のヒーロービルボードチャートJPが終わり、もはや関係者全員がゴリーニ・ファミリーのことを忘れ去っていた12月中旬に、アンナの情報をホームページで得て来日した」ということになる。
何もかもが、ズレていた。
「ゆ、誘拐宣言をしたコスプレ男がオールマイトを継ぐと言っています!」
謎の力で乗っ取られていたモニタが回復したので、報道ヘリは即座に中継を再開した。
「FUFUFU! 俺が正義! 俺が象徴だ!」
その時だった。
一人は空を飛び、一人はドローンに乗って。
二人のヒーローが、東京湾に現れた。
ザ・スカイクロウラーと、サー・ナイトアイだ。
彼らはどこかと連絡を取り合いながら、凄い速度でクルーザーに接近する。
ぽややんヒーローは、へにゃりと笑いながら呑気に喋っている。
「止めちゃっていいんです? あ、撃墜許可なんですね、了解ですー」
「オールマイトを馬鹿にしているのか?」
一方、こちらは激おこ臨戦態勢だ。
サー・ナイトアイは問答無用で、マッハ1.5以上の速度で5kgの印鑑を素早く三回投げた。
そのどれもが正確にクルーザーを真正面から貫き、クルーザーを貫通して抜けていった。
豪華な三階建てクルーザーは、色々な場所から煙を吐きながらゆっくりと高度を下げていく。
「新しきオールマイト、次代の象徴となる男に何をするか!」
「ザ・スカイクロウラー・ナックルスタイル」
コスプレおじさんの激怒に対する、ザ・スカイクロウラーの返事は簡潔だった。
彼だってサー・ナイトアイに負けないぐらいオールマイト好きなのだ。
仮にもオールマイト強火勢の目の前で、「俺が次のオールマイトだから女を誘拐させろ」と言ったらどうなるかというわかりやすい一例である。
ギィィィン!
ザ・スカイクロウラーの拳から四つの光が輝き始めた。
その光は、流星のごとき速度でクルーザーを殴り飛ばした。
手加減無しの、やっちゃえ☆ヒーローパンチが一撃でクルーザーを撃墜した。
ゴリーニ・ファミリーは全員海に落ち、溺れかけたところを海保に救出・逮捕された。
* * *
・出入国管理及び難民認定法違反(不法入国):パスポートなし、ビザなしで領海・領空侵犯。
・航空法違反:無許可での領空侵入、管制指示違反、低空飛行、危険飛行など。
・船舶法・港則法違反:無許可入港、航路逸脱、停船命令無視。
・自衛隊法違反(領空侵犯に対する措置への抵抗):海保の警告を無視し、強行突破した行為。
・破壊活動防止法(破防法)違反:政治的・思想的背景に基づき、国家の統治機構を攻撃しようとする予備陰謀。
・公務執行妨害罪:海保の職務を妨害。
・国際民間航空条約(シカゴ条約)違反:領空主権の侵害。
・国連海洋法条約違反:無害通航権の乱用。軍事行動やプロパガンダ目的での領海侵入。
・電波法違反:不法無線局の開設: 無免許で強力な電波を発信し、既存の放送波を妨害・乗っ取る行為。
・通信の秘密侵害:通信回線に割り込んでデータを流す行為。
・不正アクセス禁止法違反:放送局や通信事業者のサーバー、あるいは街頭ビジョンの制御システムに不正侵入して映像を流した場合。
・放送法違反(の幇助・誘発):放送局の正規の番組編成を強制的に変更させる行為。
・威力業務妨害罪:テレビ局、通信会社、およびジャックされた全ての施設の業務を麻痺させた罪。損害賠償額は天文学的数字に。
・組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)違反:「ゴリーニ・ファミリー」という組織による犯行なので、すべての罪が加重。
空を飛ぶクルーザーで日本にテロ活動をしに来て、国内のあらゆるモニターに自分の姿を映した。劇場版では、これに殺人や誘拐、放火など、沢山のものが加算される。
・対個人・会社 → 民法・刑法(映画でアンナ達にやったこと)
・対国家(治安維持) → 刑法・破防法
・対国家(主権侵害・戦争) → 自衛隊法・国際法(空飛ぶクルーザーで首都強襲&電波ジャックはここ)
法律を『ビンゴカード』か何かだと思っているフシがある。
彼らの行動は、ただの悪事を超えて、国家主権への挑戦になってしまっている。
法的な保護や人権を主張する余地すら危ういので、タルタロスから出してはいけない。
* * *
いおぎ荘。
またの名を、雄英高校ヒーロー科1-A事務所。
ヒーローというよりは便利屋としての仕事の御礼に、島民が御礼の夕飯を用意してくれた。
これが便利屋の報酬というのなら、あとは皆が納得できるかどうかのみだ。
島民が毎日ご飯を用意してくれるわけではないが、材料は用意してくれる。
女子達は、明日の献立のおかずをどうしようかと盛り上がっていた。
「明日のおかず、どうしよっか」
「島の人、魚と野菜さえ私達にあげておけばいいって思ってない?」
詰め込みを手伝いながら、
「わー、すごっ! お魚新鮮じゃん! やっぱお刺身?」
「煮付けもいいわね。お野菜はチャンプルーとかどうかしら。南国だし」
「私、現地のハーブを使ったソテーに挑戦してみようと思いますわ!」
「賛成ー! 男子たち、お腹すかせて待ってるだろうし、ガッツリ系のおかずも作っちゃお!」
「よっしゃ、腕によりをかけて作るでー! 最高のおかずにしたる!」
* * *
いおぎ荘、休憩スペース。
風呂上がりの一部男子勢が、夜風で涼みながら駄弁っていた。
なおメンバーだけを述べ、誰がどの台詞を言ったのかはあえて秘す。
「……なぁ、今夜のおかずはどうする?」
「ぶっちゃけ、島に来てからネット回線弱くね? 動画とか止まるんだけど」
「おいおい、こんな健康的な南の島に来てまで、何の話をしてんだよ」
「……で、峰田。お前の手持ちのおかず、ケータイに入ってたりする?」
「オイラのケータイは取り上げられてる」
「飯のおかずの話じゃねぇのかよ」
「バカ野郎! 男子高校生にとって、食欲と同じくらい大事なおかずだろ!」
「おめーのケータイの待ち受け、芦戸のくせに」
「お前だって耳郎が待ち受けじゃねぇのかよ!」
「うるせぇ、こっちは真面目におかずの話をしてんだよ」
「観光地だけあって水着の女性が多いんだよな。あれは極上のおかずになり得る」
「まぁ待て。ウチの女性陣も捨てたもんじゃない……冬に水着が堪能できる、いいじゃないか」
「塚内とか暑そうだよな。汗でシャツがブラ透けすんじゃね?」
「いやいや……いっそ、黒のビキニとスーツの上着のセットだよ。どうよ?」
「汗だくの塚内が、下から覗かせる黒ビキニ、か……」
いおぎ荘は、いざとなれば島民の避難所になれるレベルには部屋が余っている。
一人で静かになれる空間も、また多い。
「俺、ちょっと旅に出てくるわ」
「良い旅を」
一部男子達のおかずもまた、決まりつつあった。
* * *
夜空にまたたく満天の星の下、小さな少年がいおぎ荘を訪れた。
「ヴィ、
おどおどとしながら、そんな事を言う
「
「くわしく聞かせろ!」
怒鳴る
「……それ、私も行く」
ため息と共に、
* * *
「おめえもグルか……なら――」
「やりすぎだって、かっちゃん!」
劇場版における
だがその展開を知っている塚内空は、あっさり
「はい、捕まえた」
「な、なんなのよ、さっきのバクゴーってやつ……何がNo.1ヒーローになる男よ!」
「うん、それはいいんだけどね。貴方を逮捕します」
「……はぁ!?」
慌てた
「やっぱりダメだったんだよ、こんな事……」
「あんたらが本物のヒーローか試しただけでしょ! 一体何がいけないってのよ!」
そう啖呵を切るお姉ちゃんを、ジト目で見る塚内空。
「刑法233条、偽計業務妨害罪。嘘の通報をして、ヒーローを呼びつけ、無駄足を踏ませた行為。刑法95条、公務執行妨害罪。みなし公務員となるヒーローの職務中に、嫌がらせや妨害をおこなう行為。第1条、軽犯罪法違反。嘘の通報や、イタズラ行為全般……3年以下の懲役、または50万円以下の罰金、かなぁ~?」
今回は相手が小学生、つまり刑事未成年の行為だから説教で済む。
同じことを大人がやれば、即逮捕だ。
「さっ、3年も刑務所に!?」
「50万円も持ってないよー!」
島乃姉弟が涙目になったところで、緑谷が割り込もうとした。
「……塚内さん、そのへんで」
「うん、わかってる。あのね、
実際効果はてきめんで、姉も弟もすぐに反省してくれた。
映画では子供のやることだからと見逃そうとした緑谷だったが、爆豪の「そういう態度が昨今のガキの増長を招く」というスタイルの方が今回ばかりは正しい。
死人が出てからでは、遅い。
* * *
「そもそもね、ヒーローは便利屋じゃないと思うんだけど」
いおぎ荘の休憩スペースは、複数ある。
そのうちの一室で、塚内空と緑谷出久が休憩していた。
塚内は深く気にしていなかったが、二人きりである以上、流石に緑谷は緊張している。
「チャンネルは五つだけど、事実上四局かぁ……」
NHK総合(1ch)、Eテレ(2ch)、琉球放送(RBC・3ch)、琉球朝日放送(QAB・5ch)、沖縄テレビ(OTV・8ch)。
ニュースがやっているチャンネルを選び、塚内空はリモコンを置いた。
「ヒーロー活動推進プロジェクトはいいけど、
「そうなの?」
「親切と余計なお世話が、紙一重っていうか……行政の怠慢が酷い」
彼女らしい愚痴に、緑谷は苦笑する。
「考え方一つじゃないかな。余計なお世話は、ヒーローの本質だよ」
夜のニュースが流れ始め、部屋を沈黙が支配した。
塚内空は静かにニュースを見ているが、彼女のラフな格好に緑谷はドキリとする。
なんだかんだで、緑谷に対して彼女は無防備過ぎるのだ。
どうせお茶子ちゃんとくっつく、という意識が強すぎる弊害でもあった。
「あ。ザ・スカイクロウラーだ」
緑谷が、ぼそりと呟いた。
「東京湾でクルーザーを迎撃……欧州マフィアのボスがオールマイトを名乗る!?」
よくわからないニュースに、二人で首を傾げた。
「電波ジャックって言ってたけど、
「ここ、遠いもんね……」
やがて、特集じみたボリュームで愛知県泥花市の悲劇が報道された。
原作の報道は一週間経過した調査後だったが、これは最初の概要のみだ。
泥花市で六桁に及ぶ大量の死者が発生した見込みだが、死者も街も崩れてクレーターのような大穴があいており、詳細がいまだに不明。
ただ、デトネラットの代表取締役社長・
中でも一番大きかった報道は、犯罪の中心人物と目されるのが
本名・青山優雅、少年法適用外の未成年を殺すしか方法がなかったこと。
被害拡大を抑えるためにリュミエール・ノワールを殺したものの、ホークスが個性を失う結果となってしまったこと。
異能解放軍とヒューマライズという団体の名前が調査によって判明しつつあるが、情報は完全ではないこと。全容把握には、相当の時間がかかることなどがヒーロー公安委員会の緊急会見で明らかとなった。
「彼に罪を償わせることができなかったのは、私の不徳と致すところであり残念に思います」
スーツ姿だが羽根の無いホークスが、記者達の前で頭を下げていた。
「そんな……まさか……」
ニュースを食い入るように見つめていた塚内空が、突然頭を抱えた。
「ヒーローの本質は、余計なお世話だってこと?」
殺してもらえる理由の大半を潰された塚内空は、茫然自失とするよりなかった。
自身の罪の大半を、青山優雅に持って行かれてしまった。
「……どうしたの? 塚内さん」
「あのね、デクくん。赦すこともわかりあう事も叶わない、救いようの無い人間がいたとして……
そんな台詞を彼女が言い終えた時、彼女の目の前に緑谷の顔があった。
思わず赤面した彼女の顔をじっと見つめながら、緑谷は言った。
「どうしてだろう。塚内さんが……
ひたすら純粋に、塚内空のことを心配する感情が緑谷から伝わってくる。
本編主人公の真顔にじっと見つめられ、塚内空は恥ずかしくなって目線を逸らした。
* * *
晩年のプリンスを思わせる小山力也、もとい。
ハイネスパープル・ロマンスグレー版が
「オフィス・パープルレボリューション代表、ハイネス・パープル……見参ヨ」
老齢となった彼はそれでも引退せず、ヒーロー稼業を続けていた。
約15年前と衣装も替わらず、元気な姿と胸毛を見せている。
2人の英雄編、
ハイネスパープルの声を聞いて、ウォルフラムが脱獄したと勘違いした塚内空は驚愕した。
声質が似すぎていたのでビックリした。
「雄英ヒーロー科の諸君。皆もヒーローを
1-Aの全員が島を去る時、フェリー乗り場に島民の大半が来てくれていた。
「「みんなー、ありがとう!」」
島民達の笑顔に、様々な雑用をこなしたヒーロー科の皆も笑顔で手を振り返した。
大きな事件こそ起きなかったものの、それで良かった。
「
緑谷の大声に、
(私は……ヒーローに、なれそうもないな)
アーマード・ソラチャン リーチの試作版送付メールを確認し、塚内空は青空を見上げた。
太陽の光を受けた波しぶきが、いつまでもキラキラと輝きを放っていた。
挿絵提供:まねきねこ様(生成AI:LORAなし・使用モデル「Hoshino v2」)
EP.74を全身全霊で書いた反動で何かの糸がぷつりと切れてしまい、暫くのあいだ何も書けなくなっていました。回復に思ったより時間がかかったので、休養は大事ですね。