Let's Enjoy SAO!   作:青い灰

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2話 出会いはこういうもの

 

 

 

 

「よっ」

 

 

宝箱を蹴り飛ばす。

と、ばふっ、と煙幕が宝箱の中から噴き出してくる。罠だ。そしてこの罠の正体はただのドッキリ煙幕ではない。

 

つまり。

 

 

 

「♪︎」

 

 

モンスタートラップ。

宝箱を開けるだけでモンスターが大量にポップする。そんな殺意高めのトラップである。勿論ですが狙ってやりました。真紅のカーソルと共に現れていくのは、数えきれないほどのゴブリン……ではなく、コボルドだ。

 

シミターを抜き放つ。

旅の剣士さまは卑劣なトラップなどには負けないのだ。まぁドロップ品ならこれが一番やりやすいだけなんだが。

 

 

「Let's Enjoy!」

 

 

飛びかかってくるコボルドの群れを相手に笑い、身体を捻りシミターを薙ぎ払う。

 

狙うは『コボルドの剣(仮)』。

恐らくはドロップアイテム。またコボルドといえば迷宮区、もしくはこの洞窟だ。たまにゴーレムが沸いたりするがそのゴーレムは経験値もコルもマズあじ。

そしてこの洞窟は、こういうトラップがたんまりある。

ただ流石は二日目か、残っている他の宝箱のアイテムも大概回収済みである。

 

 

 

ガリガリ削られていくコボルドたち。

 

そして、同じように削られる俺の左上にあるHP。

 

 

 

コボルドたちの数は減った気がせず、次々と飛びかかって、ボロ剣や腐った唐揚げみたいなメイスを振りかざしてくる。

 

HPバーが黄色の危険域に突入する。

 

 

「あははははっ!いいねいいね!!」

 

 

振り下ろされるメイス、その柄をシミターの刃で受け流し、コボルドの腕と頭を斬り飛ばす。身体がまた、熱くなる。

この感覚だ。命賭けのギリギリ感、たまらない!!

 

 

索敵スキルをフル活用しながら、背後から襲いかかってくるコボルドを、振り向きざまに斬り飛ばす。

 

下から迫るコボルドの顎を蹴り上げ、片手で固く拳を握り、その胴体を殴り付けて壁に吹き飛ばす。

 

 

斬る。蹴る。殴る。

 

刃を、肉を、骨を。

 

 

全て使って、そうして、戦う。

 

 

 

「ふ────ッ」

 

 

振り抜かれるボロ剣を身体を逸らし避けつつ、斬りつける。回避と同時に攻撃、それを繰り返す。当たらなければ、とは良く言ったものだが、この数だとやはりジリ貧かな。あぁ、これは多分死にそうだ。

 

HPバーが、少しずつ赤く染まっていく。

コボルドたちとのレベル差はこちらが一つ上、いや、今二つ上に変わったが、やはり数は正義だな。ポーションを二つ、一気にオブジェクト化して口に咥える。

 

 

「よっ……!」

 

 

だが、この状況。

試してみる価値はあるか。

 

シミターを大きく引き、身体を捻る。

 

 

ソードスキルとは、その予備動作に応じて発動するシステムアシストによる一連の動き。ならばその動きを完璧に模倣、再現すれば、システムを誤認させられるのではないか──

 

 

つまり人力でシステムアシストを発生させずソードスキルの動きを完全に再現、ソードスキルの()()()()を抽出する。

 

 

これで駄目ならシステムの硬直時間で死ぬだろう。

踏み込みや勢いでブーストできる、システム外スキルが効くようなガバいシステムだ。きっといける。しかし、使うのはまだ熟練度の足りてないソードスキル。ベータで動きだけは完全に把握しているが─────

 

やれるか?

 

 

いいや、やる。

 

 

 

 

やらなければ、死ぬだけだ。

 

 

 

 

そういうのは───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最高に、楽しいね!!」

 

 

 

シミターを黄金のエフェクトが包む。

身体を捻り放つ回転斬りが、コボルドたちを一気に捉える。まだ終わらない。

 

更にそこから流れるように前方を斬りつけ、その勢いのまま後方へ振り向き斬りつけ。黄金の軌跡で二重の満月を描く、範囲ソードスキル。当然ながらクールタイムも硬直も重い。─────が。

 

 

「いいね!」

 

 

周囲で一気に弾けるポリゴンの渦のなかで頷き、笑う。

そもそも発動しないそれは、発動した時点で成功していた。硬直もクールタイムも存在しない、なにせ人力、バグじみた挙動だが、これはいい。コボルドを一撃で屠れる範囲技だ、これなら囲まれても衝撃でスタンさせつつ動揺も誘える。

 

ベータでやりこんだ甲斐があったというもの。

これなら熟練度が必要な威力の高い重単発のソードスキルも乱用できる。最高のバグだろこれ。楽しすぎる。

つまり予備動作無視、硬直無視、クールタイム無視だ。

サンキューカーディナル。フォーエバー茅場。

 

 

「っ、と!」

 

 

メイスを避け、反撃を叩きつける。

いから強力なバグ技とはいえども、突進技なんかの敏捷では追いつけない速度を出すソードスキルの再現は無理だ。単発もしくは連続技、その場で再現できるものに限定される。

これに頼るのも危険だな。………と?

 

索敵スキルが反応する。新手か、とは思ったが、これは。

 

 

「おいっ、大丈夫か!?」

 

「おぉ」

 

 

プレイヤーか。

突如として現れたプレイヤーが、コボルドを斬り捨てながらこちらに走り寄ってくる。握ってるのは、見覚えのある片手直剣……アニールブレードか。ということはテスターだ。

 

経験値稼ぎには邪魔だが、ヘイトが分散した。

これじゃ死ねそうにない。

 

現れた少年プレイヤーが、俺の後ろにつく。

 

 

「逃げるぞ!」

 

「断る」

 

「あぁ……え!?」

 

「クエストのドロップ目当てなんだよ。全滅させる」

 

「これ、トラップじゃないのか!?無茶だ!」

 

「はぁ、無茶を通すんだよ」

 

「っ!?おい!?」

 

 

溜め息と一緒にコボルドの群れに飛び込み、再び、バグ技の満月斬りを放つ。一掃しつつ、これ人に見せて良かったか、と考える。まぁいいか。大丈夫だろ。

 

 

「!?今のは……」

 

「そら来てるぞ、後ろさぁ!!」

 

「うっ!?」

 

 

索敵スキルで少年を狙ったコボルドの位置を知らせてやる。まぁ何はともあれ、こいつらを殲滅する。少年は後でいい。

襲い来るコボルドを捌きつつ、少年に笑いかける。

 

少年もまた、コボルドの攻撃を躱してはね除ける。

 

 

「くそっ……!」

 

「はははっ!

 お前が死んだらその剣も有効活用してやるよ!

 それが嫌なら─────」

 

 

その時、索敵スキルに新たな反応。

洞窟の天井が崩れ始め、何匹ものコボルドを押し潰し何かが現れる。舞い上がる土煙のなかで、赤いカーソルが光る。

 

瓦礫が、洞窟の通路を塞いだ。その逃げ場が消えた。

全く、こんなのベータになかったろ。最高か?

 

 

 

「その偽善を恨めよ」

 

 

 

カーソルに現れた名はTuff Elemental……レベルは、18!

フィールドボス並みじゃねぇかな、最高か!

 

索敵スキル上で、コボルドの反応が次々と消えていく。これ二重トラップか?プレイヤー数に応じて反応したか、現れたゴーレムは、同じ名前の雑魚敵よりも遥かにレベルが高い。

 

 

「っ!……最悪だ」

 

「あははははっ!いいじゃねーか、最高だな!」

 

 

絶望したように吐き捨て、コボルドを斬り捨てた少年にそう笑いかけ、だけども俺たちは同時に得物を構えた。そうだ、こんな殺意マシマシのトラップを切り抜けるのも醍醐味だ!

 

 

「イカれてる」

 

「お前ほどじゃないさ、ヒーローくん」

 

 

俺ならトラップにかかった奴は見捨てるだろう。

それを助けに来るこいつの方がよっぽどイカれてるだろう。余程の死にたがりか、英雄根性というやつか。どっちかは、興味ないが。

 

 

「さあて、倒せば経験値ガッポリだろ。

 隠れててもいいぞ?」

 

「………オレが死ぬのが遅くなるだけだろ。足掻くよ」

 

「なら頑張ろうか、ヒーローくん!」

 

 

振り下ろされるゴーレムの拳を、両左右に飛び退いて回避。余波の衝撃だけでHPが削られる。回避は早めを意識。

着地して体勢を整える俺を他所に、ソードスキルの光を纒いヒーローくんが駆け抜けていく。

 

 

「おぉあッ!!」

 

 

跳躍した少年が、単発ソードスキルをゴーレムに叩き込む。が、削れたHPは、三本あるうち一本の二割ほど。

素敵なHPだな!

 

 

「スイッチ!!」

 

「おうともさ」

 

 

こんなのを見せられて黙ってはいられない。

合図とほぼ同時に走り出して、バグ技ソードスキルを発動。こちらも重単発、予備動作を無視し、シミターが輝き金色のエフェクトを煌めかせる。

 

突進技は無理だ。だが、その突進距離を無視した零距離なら発動は容易。斜め上からの振り下ろしのみ。

 

 

 

「ぬぅア!!」

 

 

 

〝フェル・クレセント(バグ)〟。

それをゴーレムの足に叩き込む。発生するはずのスタンは、だがやはりフィールドボス相手には無効化されたか。すぐにゴーレムが動き出し、少年を睨みつける。

 

 

「とう!」

 

 

硬直ゼロを活かし、真横に側転飛び。

振り下ろされたゴーレムの腕に飛び乗り、再び跳躍。

 

 

「なっ!?お前、今ので硬直……!」

 

「舌ぁ噛むぞ、黙れ!!」

 

「うぉっ!?」

 

 

少年のコートを引き寄せ、腕を薙ぎ払うゴーレムの攻撃から救い出す。そのまま手を離し、互いに着地して後ろに走り、ゴーレムから距離を取る。

 

 

「な、なぁ、今のレベルいくつなんだ!?」

 

「11、そっちは」

 

「……じゅ、10だ!

 でも、そのレベルと装備でこんな削りは……!」

 

「……お互い無茶は承知だな、気張ってこうか!」

 

 

流石は単発ソードスキル二連発、ゴーレムの削り具合は中々好調だ。片手直剣ソードスキルは手札が多い、少年もかなりやり手だし、ここは期待させて貰おう。

 

今度はこちらからだ。駆け出す。

 

 

「■■■────!」

 

「とうっ!」

 

 

ゴーレムの地団駄、そしてそれに伴う衝撃波を、ジャンプで回避。そのまま斬りつけながら背後に回る。ヘイトが俺へと向き直り、ゴーレムが少年に背を向ける。

 

 

「カバーする。

 主力はヒーローくんに任せようかな!」

 

「っ……キリトだ!」

 

「霧!任せた!」

 

「キリ『ト』だ!」

 

 

こちらがゴーレムの腕攻撃を避ける、と同時に。

ごりっ、とまたも霧のソードスキルが炸裂、HPが削れる。いいソードスキルと踏み込みだ、ほぼほぼ完璧に後隙を消し威力を上げてる。隙の見極めも完璧!

 

 

「いいね!」

 

 

跳躍、ヘイトの切り替わりを狙い、無防備を晒すゴーレムの首、その隙間にシミターを叩きつける。クリティカルの強いエフェクトが弾け、そして。

 

 

『スキル:カタナを習得しました』

 

 

キタコレ。ナイスタイミング。

なかなかどうして、良いタイミングで来てくれる。隠し枠の武器スキルだけあり、武器自体はそう見ないが攻撃力の高い武器種がカタナだ。対ボスよりは人型Mobや対人向けの技が多いソードスキルは利便性が高い。

単純に言えば、手数とダメージ稼ぎに優れる武器。隠し枠の片手直剣のような立ち位置ではなかろうか。

 

 

「おォッ……!」

 

 

隙だらけのゴーレムに、全速、かつ全力でシミターを一気に叩きつけ、ダメージと耐久値消費を稼ぎまくれば、HPバーの一本目が遂に吹き飛ぶ。

 

そして同時に、シミターの刃が欠ける。

 

 

「砕けろ!!」

 

 

着地と同時に後ろへ飛び、シミターを投擲。

ゴーレムの頭に突き刺さるそれが、光の欠片となって爆散。その視界を奪う。

 

即座にメニューを開き、スキル欄を操作。

新たに現れたカタナスキルをセットし、ウチガタナを装備。左腰に、黒鞘に納められた無骨な刀が現れる。

 

 

同時に、霧のソードスキルエフェクトが再び炸裂。

今度は二連撃、青のエフェクトが空を舞い、そのHPバーを半分、纏めて斬り裂いた。

 

 

「スイッチ!!」

 

「ははっ!!」

 

 

強烈な攻撃に頭を押さえ、スタンするゴーレム。

中々豪華な初陣だ、一息にソードスキルを叩き込む。

 

柄に手を添え、強く踏み込み、腰だめに。

ベータで身体に染み付いた動きを、再現する。

 

 

「──────!」

 

 

〝絶空〟。居合いからの一閃で、膝を崩す。

 

 

「ふ────ッ!」

 

 

もう一度。ステップしながら刀を引き、再び〝絶空〟をまだ立っている膝に打ち込む。

 

 

「しぃ─────ッ!!」

 

 

 

〝緋扇〟。

上段、下段、二連の刺突でダメージを加速、スタンを麻痺に変化させる。踏み込み、更に三連目の渾身突きを放つ。

 

HPバーを、吹き飛ばす。

残り一本。だが、打ち止めだ。

 

 

「■■■■────!!!」

 

「っ、来るぞ!」

 

「分かってるよ」

 

 

霧の必死な叫びを聞き流しつつ、その場から飛び退く。

ゴーレムが放った咆哮、そしてそれに伴う衝撃波。それらを左手に握る鞘で受けつつ、下がる。

 

ゴーレムのHPバーに表示されていた麻痺マークが消える。

威力と発生速度の減衰、役目は果たしてくれた。

 

ゴーレムが立ち上がり、地面に両腕をつくと、洞窟の地面が隆起し、ゴーレムに纏わりつく。そして、砕け散ったはずの空のHPバーが、変化する。

 

空のバーに土くれが纏わりつき、新たなHPが現れる。

中々に粋な演出だ。残りHPバーはこれで二本。

 

 

「はははっ、なんじゃそら!

 こんなの知ってたか、霧?」

 

「っ、防御力が上がるだけじゃなかったのか……!?」

 

 

 

 

「■■■■■──────!!!!」

 

 

 

 

ゴーレムが咆哮する。

俺たちは驚きながらも、だがやはり、得物を構え直した。

 

 

 

 

 

 

 

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