男だけのギルドを作ったつもりだった。 作:初投稿
男のコミュニティに女性が入ってくると、ロクなことがない。
高校時代にハマっていたネトゲでは、ギルドに女の子が入ってきた途端、雰囲気が変わった。
誰もがその子とクエストに行きたがり、レアアイテムを貢ぎ、奪い合った。
次第に誰が付き合ってるだとか、二股してるだとか始まり……やがて、仲が良かったはずのギルドは崩壊した。最後は、嫉妬に狂った男たちの粘着PK合戦だった。
ゲーム内の酒場で、夜通しくだらない話でチャットしてる時が一番楽しかったのに。
大学時代に入った漫研でも、同じようなことがあった。
男たちはオタサーの姫に群がり、勝手に恋して、勝手に失恋して、勝手にトラブル起こして消えていった。
その子は結局部長と付き合ったのだが、サークル内で男と話しているのが気に食わない部長が嫉妬に狂った。それからは、嫉妬した男たちと嫉妬した部長による地獄のバトルロワイアルだ。
朝陽はそれらを冷めた目で見ていた。
いや、彼だって人並みに女性は好きだ。可愛いと思ったり、好きになったりすることもある。
けど、男の友情を壊してまで女性に執着するのは違うだろ?
男だけでつるんでる時のほうが楽しかっただろ?
……と、外野を気取っていたのに、なんのきっかけか、オタサーの姫が朝日のことを好きになってしまったらしい。真実は知らないが、そういう噂が流れた。
で、嫉妬した部長に刺されて死んだ。
史上最悪の死因である。
だから……剣と魔法の異世界に転移した時、決めたのだ。
男だけのギルドを作ろう。
色恋なんてものに現を抜かさない、熱い冒険の日々を過ごすんだ、と。
「みんな、ここまでついてきてくれてありがとう! 来月、ついに俺たち『デイブレイカー』はS級ギルド認定試験を受ける!」
ギルドハウスのリビングで、アサヒはそう宣言する。
まばらに拍手するのは、円卓に座るギルドメンバー。通称【七曜星】。
ギルドに入ってくれた、頼りになる
(俺のギルド、カッコよすぎる……! 円卓はやっぱいいな! デカすぎて邪魔だけど!)
その姿を見て、アサヒは満足感に酔いしれる。
「ここまで来れたのも皆のおかげだ……! やっぱ男の友情って最高だよな! 認定試験も頑張ろう!」
つい目頭が熱くなる。
右も左もわからないまま転移して、なんやかんやあってギルドを設立して。
仲間を増やしつつ、気づけばこの世界に来て五年が経っていた。
ギルドを設立してからも、まあ色々あった。
でもその全てを、友情パワーで乗り越えてきたのだ。
そして、ついに現存するギルドでは二つ、歴史上でも両手の指で収まる程度しかない【Sランク】に到達しようとしている。
(友情の力ってすげー!)
男は、女性が近くにいると馬鹿になる。
だから、デイブレイカーは女人禁制だ。男しかいなければ、トラブルは起きないようもないから。
「うむ。もっとも、アサヒ殿がいれば不合格などありえぬが」
力強く頷いたのは、ロン毛ポニーテールイケメンの侍、アズサ。
袴を着て、腰には刀を携えている。
「そうだね。ボクたちに敵はいないよ」
ローブを纏い、木で作られたスタッフを持つのは魔導士のミスト。
エルフ特有の尖った耳とエメラルドグリーンの髪が美しい。
「……勝つだけ」
言葉少なに、全身鎧の重戦士、リィリが言った。
2m越えの巨漢だ。アサヒ顔を見たことはないが、最前線で敵をひきつけてくれる頼れるタンクだ。
「ご主人様の凱旋をお待ちしております」
執事のクロノス。
戦闘員ではないが、ギルドの財務、雑務を一人でこなす超優秀クールイケメンだ。
「エリクサー増産しておきますね」
同じく戦闘員ではなく錬金術師のアトリア。
卓越した製薬技術を持つ、ギルドの生命線だ。なお、イケメン俳優ばりに超美形である。
「にゃぁあ」
アサヒの膝の上で鳴き声をあげたのは、黒猫のルナ。
ギルドの看板猫である。可愛いので、アサヒは頭を撫でまわした。
(うん、不細工が俺だけなのは気にしないでおこう! なぜなら女性がいないから関係ない!)
なぜ転移した時に顔を変えてくれなかったのか。
そんな恨み節も、色恋のない冒険譚には不要だ。
男同士の友情に顔なんて関係ない。
……ギルドの外で彼らがモテモテなのは、考えないことにする。
「みんな、ありがとう! よし、試験までの一か月は準備に当てるぞ!」
最後にそう締めくくり、定例会議は終了となった。
(ギルドの会議……なんて充実した異世界生活なんだ……!)
達成感に満ち溢れた顔で、アサヒが退出していく。
なぜかアサヒが出るまでみんな出ないので、最初に出るようにしているのだ。
こうして、現役三つ目のS級ギルドになるため、各々準備を始めた。
以上、五人と一匹。
ギルド『デイブレイカー』のメンバーである。
それぞれ曜日の称号が与えられ、【七曜星】と名乗っている。アサヒ考案だ。なぜならカッコイイから。
苦楽をともにし、アサヒとともに成長してきた、大切な仲間たちである。
だが一つ、アサヒだけが知らない事実がある。
それは――
アサヒを除く
「ふう……
「ボクは必要ないから羨ましいよ。まあ、マスターは小さいほうが好きだろうけどね?」
「アサヒくんがカッコ良すぎて鎧越しでもまだ恥ずかしいよぉおお」
「くふふ……今日のご主人様は前髪が1ミリお伸びになって、さらに美しくなられていましたから仕方ないかと」
「あら、いけない。性転換の薬が解けてきましたわ」
「薬がないと変身できないにゃんて、人間は不便じゃなぁ。ククク、それにしてもアサヒの奴、妾の全身を弄びおって」