男だけのギルドを作ったつもりだった。   作:初投稿

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1話

 男のコミュニティに女性が入ってくると、ロクなことがない。

 朝陽(あさひ)は二十年の短い人生で、嫌というほど実感した。

 

 高校時代にハマっていたネトゲでは、ギルドに女の子が入ってきた途端、雰囲気が変わった。

 誰もがその子とクエストに行きたがり、レアアイテムを貢ぎ、奪い合った。

 次第に誰が付き合ってるだとか、二股してるだとか始まり……やがて、仲が良かったはずのギルドは崩壊した。最後は、嫉妬に狂った男たちの粘着PK合戦だった。

 

 ゲーム内の酒場で、夜通しくだらない話でチャットしてる時が一番楽しかったのに。

 

 

 大学時代に入った漫研でも、同じようなことがあった。

 男たちはオタサーの姫に群がり、勝手に恋して、勝手に失恋して、勝手にトラブル起こして消えていった。

 その子は結局部長と付き合ったのだが、サークル内で男と話しているのが気に食わない部長が嫉妬に狂った。それからは、嫉妬した男たちと嫉妬した部長による地獄のバトルロワイアルだ。

 

 朝陽はそれらを冷めた目で見ていた。

 いや、彼だって人並みに女性は好きだ。可愛いと思ったり、好きになったりすることもある。

 

 けど、男の友情を壊してまで女性に執着するのは違うだろ?

 男だけでつるんでる時のほうが楽しかっただろ?

 

 ……と、外野を気取っていたのに、なんのきっかけか、オタサーの姫が朝日のことを好きになってしまったらしい。真実は知らないが、そういう噂が流れた。

 

 で、嫉妬した部長に刺されて死んだ。

 史上最悪の死因である。

 

 

 だから……剣と魔法の異世界に転移した時、決めたのだ。

 

 男だけのギルドを作ろう。

 色恋なんてものに現を抜かさない、熱い冒険の日々を過ごすんだ、と。

 

 

 

 

 

 

「みんな、ここまでついてきてくれてありがとう! 来月、ついに俺たち『デイブレイカー』はS級ギルド認定試験を受ける!」

 

 ギルドハウスのリビングで、アサヒはそう宣言する。

 

 まばらに拍手するのは、円卓に座るギルドメンバー。通称【七曜星】。

 ギルドに入ってくれた、頼りになる男たち(・・・)だ。

 

(俺のギルド、カッコよすぎる……! 円卓はやっぱいいな! デカすぎて邪魔だけど!)

 

 その姿を見て、アサヒは満足感に酔いしれる。

 

「ここまで来れたのも皆のおかげだ……! やっぱ男の友情って最高だよな! 認定試験も頑張ろう!」

 

 つい目頭が熱くなる。

 右も左もわからないまま転移して、なんやかんやあってギルドを設立して。

 仲間を増やしつつ、気づけばこの世界に来て五年が経っていた。

 

 ギルドを設立してからも、まあ色々あった。

 でもその全てを、友情パワーで乗り越えてきたのだ。

 

 そして、ついに現存するギルドでは二つ、歴史上でも両手の指で収まる程度しかない【Sランク】に到達しようとしている。

 

(友情の力ってすげー!)

 

 男は、女性が近くにいると馬鹿になる。

 だから、デイブレイカーは女人禁制だ。男しかいなければ、トラブルは起きないようもないから。

 

「うむ。もっとも、アサヒ殿がいれば不合格などありえぬが」

 

 力強く頷いたのは、ロン毛ポニーテールイケメンの侍、アズサ。

 袴を着て、腰には刀を携えている。

 

「そうだね。ボクたちに敵はいないよ」

 

 ローブを纏い、木で作られたスタッフを持つのは魔導士のミスト。

 エルフ特有の尖った耳とエメラルドグリーンの髪が美しい。

 

「……勝つだけ」

 

 言葉少なに、全身鎧の重戦士、リィリが言った。

 2m越えの巨漢だ。アサヒ顔を見たことはないが、最前線で敵をひきつけてくれる頼れるタンクだ。

 

「ご主人様の凱旋をお待ちしております」

 

 執事のクロノス。

 戦闘員ではないが、ギルドの財務、雑務を一人でこなす超優秀クールイケメンだ。

 

「エリクサー増産しておきますね」

 

 同じく戦闘員ではなく錬金術師のアトリア。

 卓越した製薬技術を持つ、ギルドの生命線だ。なお、イケメン俳優ばりに超美形である。

 

「にゃぁあ」

 

 アサヒの膝の上で鳴き声をあげたのは、黒猫のルナ。

 ギルドの看板猫である。可愛いので、アサヒは頭を撫でまわした。

 

(うん、不細工が俺だけなのは気にしないでおこう! なぜなら女性がいないから関係ない!)

 

 なぜ転移した時に顔を変えてくれなかったのか。

 そんな恨み節も、色恋のない冒険譚には不要だ。

 

 男同士の友情に顔なんて関係ない。

 ……ギルドの外で彼らがモテモテなのは、考えないことにする。

 

「みんな、ありがとう! よし、試験までの一か月は準備に当てるぞ!」

 

 最後にそう締めくくり、定例会議は終了となった。

 

(ギルドの会議……なんて充実した異世界生活なんだ……!)

 

 達成感に満ち溢れた顔で、アサヒが退出していく。

 なぜかアサヒが出るまでみんな出ないので、最初に出るようにしているのだ。

 

 こうして、現役三つ目のS級ギルドになるため、各々準備を始めた。

 

 

 

 

 以上、五人と一匹。

 ギルド『デイブレイカー』のメンバーである。

 それぞれ曜日の称号が与えられ、【七曜星】と名乗っている。アサヒ考案だ。なぜならカッコイイから。

 

 苦楽をともにし、アサヒとともに成長してきた、大切な仲間たちである。

 

 だが一つ、アサヒだけが知らない事実がある。

 

 それは――

 アサヒを除く六人(・・)全員が、美少女ということだ。

 

 

 

「ふう……さらし(・・・)はやはり苦しいな」

「ボクは必要ないから羨ましいよ。まあ、マスターは小さいほうが好きだろうけどね?」

「アサヒくんがカッコ良すぎて鎧越しでもまだ恥ずかしいよぉおお」

「くふふ……今日のご主人様は前髪が1ミリお伸びになって、さらに美しくなられていましたから仕方ないかと」

「あら、いけない。性転換の薬が解けてきましたわ」

「薬がないと変身できないにゃんて、人間は不便じゃなぁ。ククク、それにしてもアサヒの奴、妾の全身を弄びおって」

 

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