ダンジョンで花嫁修業です!~王妃たるもの、ドラゴンくらい素手で倒せませんと~ 作:好きって言いなよ
「いいですか、サテラ。あなたは公爵家に生まれ、ゆくゆくは王妃になる存在です。そして、王国の妃になるからには、強い女性でないといけません」
「はい、お母様」
お母様の言葉に、私は素直に頷く。
第一王子のシオン様と婚約しているので、将来的には王妃になることが決まっている。シオン様は身体が弱いみたいで、会ったことはないんだけどね。
私は今十二歳で、シオン様も同い年。
十五歳で結婚すると定められているから、あと三年だね。
「国に危機が訪れたとき。民が飢えたとき。政治が上手くゆかないとき。様々な困難のさなかであっても、王妃は強くあらねばなりません。常に先頭に立ち、決して、挫けてはならぬのです」
厳しい口調とは対照的に、私の頭を撫でる手は優しい。
「ですから、今から修行をする必要があるのです。算術や地理、帝王学……様々な学問を修め、作法を学び、心を鍛え、賢くなるのです」
「花嫁修業ですね!」
「そうです。そのためにも、遊んでばかりではダメですよ。きちんと花嫁修業をしないと」
母の目が少し鋭くなる。
なるほど、これが一番言いたかったことなんだね。
「わかりました!」
私は満面の笑みで、元気よく手を挙げる。
「返事はいいのですよね……」
「私、花嫁修業、頑張ります!」
「え、ええ。わかっていただけてなによりです。でも、なぜでしょう、そこはかとなく不安が……」
お母様は心配そうな顔をしている。
ちゃんと聞いてるよ!
私、知らなかった。
王妃が強くなきゃいけないなんて。
でも、そうだよね。この国は近くに
「今の王妃様もお強いのですか?」
「ええ。なにものにも負けない、強い心を持ったお方ですよ」
「なにものにも負けない……それはすごい強いですね!」
「……? そうですね?」
王妃様とは以前、一度会ったことがある。
あんなに細身なのに、まさか最強だったなんて。
私はちっちゃいけど、肉体に恵まれなくても強くなれるんだ。
魔法が得意なのかな? 憧れる。
「私、強くなりたいです! 今までは怠けてばかりでした。今からでも間に合いますか?」
「今からでも遅くはありませんよ。いえ、怠けるというより、むしろパワフルすぎた気がしますが……もう少し落ち着いてほしいと言いますか……」
公爵令嬢という立場に甘んじて、強くなろうとしてこなかった。
なんてダメな子だったの私……これじゃあお母様が呆れるのも無理ない。
でも、優しいお母様はまだ間に合うと言ってくれた。
立派な王妃になるべく、これから頑張ろう!
拳を握りしめて、決意を固めた。
そして、お母様の目をしかと見つめて、宣言する。
「では、私ダンジョンに行ってまいります!」
「へ……?」
「ダンジョンで花嫁修業をして、強い女性になります!」
そうと決まれば、善は急げ。
目を点にして固まる母に優雅にお辞儀をすると、踵を返した。
そのまま部屋を出て、廊下に出た瞬間駆け出す。
「ダンジョンにしゅっぱーつ!」
お母様の言葉は、しっかりと胸に刻んだ。
王国に危機が訪れたとき……魔物とかかな? パワーがあれば倒せるよね!
民が飢えたとき……魔物を倒せばご飯にできそうじゃない?
政治が上手くゆかないとき……決闘だー!
戦争が起きたら先陣を切る。そんな王妃になります!
学問がどうとか言っていた気もするけど、そっちはあんまり覚えてない!
「だれかあのお転婆娘を止めてええええええ」
遠くから、母の絶叫が聞こえてくる。
安心して、お母様。
私、ダンジョンで花嫁修行をして、強い女性になって帰ってきます!
ドラゴンを簡単に倒せるくらい!