つまりはそう言うことです
ハムスターみたいな子が彼女を宥めると、まるでさっきの光景が嘘だったみたいに彼女の顔が笑みを浮かべる。落ち着いた彼女から話を聞くと、彼女ー
「もー!杏ちゃん、初対面の人に自己紹介もしてなかったの?」
「だって...みんなが来てからまとめて自己紹介すればいいと思ったから忘れてたー」
「だとしても。後でみんなを紹介しなきゃなんだし自己紹介をしない理由にはならないでしょ」
「ハイ.スイマセンデシタ」
「お兄さんも大丈夫でしたか?」
「ええ。あまり気にしていなかったので大丈夫ですよ」
「それよりこはね。他の2人は?まだ来ないんだったら少し合わせる?」
「東雲くんと青柳くんは15分くらい後だって」
「じゃあ良いじゃん。時間もあるしちょっとだけ合わせよ?ね?ね?」
「あ、杏ちゃん。近い...」
なんか、なんて言えばいいんだろうか。多分だけど意外と馬が会うんだろうな。普段は白石さんが主導だけど、いざとなった時は小豆沢さんが謎メンタルを発揮して引っ張り上げてそう。みたいなありきたりなものを考えて頭を振る。そのまま彼女らは2人の世界に入ってしまったので、なんとなしに手が空いてそうなマスターに聞いてみるあれか?どっかのピンクジャージみたいなやつか?有り得そうなのが怖いよなぁ
「あの2人のチームって何か目標みたいなものはあるんですか?」
「数年前にRAD WEEKENDっていうイベントがあってな。そのイベントの熱狂を超えようと頑張ってるんだよ。ここでは歌は力だからな。ここで歌ってる奴らの大半はあの夜を超えようとしてる。最も本気でそう思ってる奴らは片手で足りる程度にしかいないが」
「へー。RAD WEEKENDねぇ。マスターから見てVivid BAD…ビバスクはそのイベントをは超えられると思います?」
「そうだな。まずあいつらは自分たちのことはビビバスって呼んでる。その変な略称じゃなくビビバスって呼んでやってくれ。それで4人が超えられるかだが…」
そう行ってマスターは顎髭に手を添えて、少しの間ふむなんて効果音が聞こえそうな感じで悩みだす。マスターもこんなところでお店を開いている以上そのイベントとやらを見ているのだろう。そんなマスターから見て彼女らの実力は本物なのか純粋に気になってしまったこのおっさん結構いい声してるし案外そのイベントやった本人だったりするんじゃねえの?
「あくまで俺の予想でしかないが…いや、違うな。あの夜を俺は超えてほしいと思ってる。あいつらには話すなよ?」
「もちろん。これでも口は硬い方なんですよ」
「ならいい。俺としてもこういうのはあんま話すもんじゃねえしな」
そのまま「ほれ」と、お皿に湯気を燻らせたトースト...いや、これはホットサンドかな
「杏の暇つぶしに付き合ってくれた礼だ。食っとけ。まだ腹に余裕はあるだろ?」
「ありがとうございます」
そのまま熱々のホットサンドをつかんで見ると断面からとろけたチーズが顔を出し、ハムや卵の香りにお腹の虫がキュルキュルと音を立てる。かぶりついてみると、さっくりとしたパンの中からじゅわりと音を立てるようにやけどしそうなほどに熱い具材が口の中に雪崩れ込んでくる。熱気を逃がそうとハフッハフッと新鮮な空気を取り入れても、1つ1つの具材が旨味を主張するように口の中で暴れる
「アツッ,ハッ,ングッ。美味しいですね。これ」
「結局こういうのが一番美味く作れたりするもんだよ。普段は賄いとしてしか出してねえが、その顔ならメニューに加えても良さそうだな」
「いいと思いますよ。お腹を眠くならない程度に膨らませたい時とかに良さそうです」
「よし、じゃあ決まり!父さん。ちょっと前で歌ってくる!」
「おう。迷惑かけんなよ」
「もっちろん!こはね。行くよ!」
そのまま台風が去った後みたいに店内が静かになる。なんていうか
「嵐みたいですね」
「確かにな。でもあそこまで明るくなったのはあの嬢ちゃんが来てからだよ」
「へぇ〜。あの子かなり気弱そうですけど、そんなにすごい子なんですか?」
「荒削りだが、磨けば光る。少なくとも杏はそう思ってるんじゃないか?」
その言葉を聞きながらもう1切れをお腹の中に収める。流石にサンドイッチの後にホットサンドは完食には多すぎるけど、そこは夜ご飯を少なめにするとかで調整すればいいだろう流石に食い過ぎだよアホ。というかサンドイッチの後にホットサンドて。系統丸かぶりじゃねーか
「ホットサンドごちそうさまでした。せっかくなんで2人の歌。聞いてから帰ることにします」
「お粗末さん。せっかくだから4人揃ってからも聞いてけ。実力は保証するぞ」
「ひどかったらすぐに帰りますよ?」
チョけたようにそんなことを言ってみると、マスターはまるでライオンみたいに獰猛な笑みを浮かべたこっわ。やっぱあのおっさんここで一番うめえだろ
「むしろそうしろ。その方があいつらにとってもいい勉強になる」
その言葉を聞いて僕も笑みを浮かべ、外で既に歌い始めている少女たちの声を間近で聴こうと店を出るのだった
面白いやつだった
喫茶店のマスターであり白石杏の父でもある謙は、まだ僅かにホットサンドの暖かさが残るお皿を拭きながらそんなことを考える
恐らくここに来たのもただコーヒーを飲むだけというわけでもなく、ここの音楽を聴きに来たんだろう
「謙さん。さっきの優男。杏ちゃんたちの歌を聴いたら腰抜かすんじゃねえか?」
カウンターの端で飄々とした雰囲気の常連が先ほどの男を揶揄すると、普段は表に出てこないRAD WEEKENDで伝説の夜を作った男の顔が覗きだす
「あいつは...
そのままガラス戸を開ける際にチラリと見えたあの顔を思い出しながら応える
杏じゃ太刀打ちできないかもな」
その声に期待と僅かばかりの確信を持たせて
一応前書きであんなことを言ったけどコメントに◯◯さんの◯◯ですか?みたいな感じで書くのは控えてくださいね(書くなって意味だぞ?小説読んでる以上わかるよな?)
本人さんはこれ私のことだ、って1人でニヤニヤしてください
歌い出すまでが長いですがこういうものです。というか自分の作品でスピーディに進む方がレアです