【ヒカあか】報われない恋でもいいから 作:無名のヒカあか好き
ヒカルが近くにいたから、ヒカルに恋をしたんじゃないの。
私がヒカルを好きだよって、ずっと隣にいるって、そう決めたんだよ。
現在、時刻は20時をわずかに回ったところ。
ヒカルとあかりは三度目の対局を終え、感想戦に熱中している。
「──で、ここであかりは三々に打っただろ?
多分しっかり勉強していて、自信があったからそうしたんだと思う。
けど、全体の流れからすると少しチグハグだったよな」
「うん。それで結局、ヒカルにうまく中央の地を広げられちゃった」
「まあ、単純に読みの深さと言ってもいいんだろうけど。
こればっかりは、最終的に経験からくる直感が頼りみたいなところもあるんだよな。
でも今回のあかりのミスは、プロだと凡ミスレベルだぜ?」
「あぅ……ヒカル、厳しいよお」
「ま、そのレベルの話は追々かな。
とは言え、今のようにあかりが自信を持って打ってるのは、すげえ大事なことなんだよな。
気持ちで負けてたら、勝てるもんも勝てないからな」
ヒカルは「やるじゃん、あかり」と頭を撫でながら*1、嬉しそうに笑う幼馴染を見つめた。
(佐為が俺に囲碁を教えてくれた時も、こんな気持ちだったのか?
昔の俺と比べれば、あかりはずっと素直でかわいげのある教え子だけどな)
あかりの頭から手を離したヒカルが「じゃ、次は……」と碁石を並べ直していると、部屋の扉越しにヒカルへ声がかかる。
「ヒカル、いるの?
どなたかが遊びに来ているみたいだけど。*2
……開けるわね?」
扉を開けて姿をあらわしたのは、果たしてヒカルの母、美津子であった。
美津子は部屋の中をさっと見回してあかりのところで目線を止め、おっとりした調子で「あら、あかりちゃん。いらっしゃい」と言った。*3
それに対してあかりは慌てて立ち上がり、ぺこりと一礼して挨拶をする。
「おばさん、こんばんわ。
そしてすみません、ご不在の間にお邪魔しています」
「いいのよ。どうせヒカルが呼んだんでしょう」
「ち、違うんです。私が図々しく押しかけたんです」
「うちのバカ息子を庇わなくてもいいのよ。
あかりちゃんはそんなことはしません」
「でも……」
美津子の前でわたわたしているあかりを他所に、ヒカルは『 ❞あかりちゃんに連絡しろ、謝れ、埋め合わせしろ❞ って昨日しつこく言ったのは、母さんだからなあ』と、全く悪びれずにいた。
そして自らの行いに恥じるところは何もないと確信しているヒカルは、堂々とした態度で美津子へ尋ねる。
「それで、母さんは何の用?
俺は今あかりと打ってるんだから、邪魔しないで欲しいんだけど」
「ヒカルっ、何の用じゃありません! 今は何時だと思っているの?!
こんなに遅い時間まであかりちゃんを引き止めて、非常識だと思わないの!」
「遅い時間って、まだ8時だろう?
もう俺たちは小学生でもないんだからさ──」
「あ、あのっ! 私、もう帰ります。
おばさん、今日は失礼をしてしまって本当にごめんなさい。
私が押しかけてヒカルに囲碁を教えてもらったので、ヒカルのことは怒らないでください」
美津子とヒカルの間に口論が発生しかけたタイミングで、間に挟まれておろおろしていたあかりが、慌てて帰宅の意志を伝える。
それに続けてもう一つ、あかりは美津子に言わなければと考えていた言葉を発した。
「おばさん、ごめんなさい。
あと、今日は台所も勝手にお借りしてしまいました」
「いや、母さん。俺があかりに昼メシ作れって言ったんだからな」
礼儀正しく頭を下げるあかりの姿に、美津子が穏和な雰囲気を取り戻しかけていたところで、ヒカルは事態を混ぜっ返すような一言を発した。
そしてヒカルは、目を三角にして再び不肖の息子を叱りつけようとする美津子を置き去りに、あかりの手を取って「帰るんだろ」と出て行こうとする。
そこで美津子は、たまらず「待ちなさいっ! ヒカル、どこへ行くの!!」と制止の声を上げた。
「あかりを送ってくるだけだよ。
……あ。俺、あかりの家で夜食ってくるから、少し遅くなる」
平然とした表情であまりにも非常識なことを言うヒカルに、いよいよ本格的な怒声を発しそうになった美津子。
しかしそこで『ごめんなさい。ごめんなさい。私が悪いんです』と申し訳なさそうな顔をして何度も頭を下げるあかりの姿が視界に入ったことで、美津子は「ふう」と一つ大きな溜め息を吐いて怒りを収めた。
「……ヒカル。帰ってきたら家族会議ですからね。
今日はお父さんにもしっかりと言ってもらいますから。
「んー、わかった」
「はあ……本当にこの子は。
ヒカルにあかりちゃんはもったいないわ。
本当に健気でかわいそうすぎる……。
でも。ヒカルには、あかりちゃんしか居ないのよねえ……」
ヒカルが片手にあかりの手を、もう片方の手には折りたたみの碁盤を握っていたことを見逃さなかった美津子は、息子の帰りが絶対に早くならないことを察して、もう一度溜め息を吐いた。
「ヒカル」
「あ、父さん。
おかえり。出張大変だっただろ?
お疲れ様」
あかりと二人連れ合って玄関で靴を履いていたヒカルへ、今度はヒカルの父、正夫が声をかける。
階上から漏れる美津子の声を聞いていた正夫は、『自分なりにヒカルへ言うべきことを言わねば』と意気込んでいたのだが、息子からの意外なほど殊勝な言葉に「む……」と意気を挫かれた。
「あー。その、なんだ……。
ヒカル、あかりちゃんの好意*4に、あまり甘えすぎないようにな」
「ああ、わかってる。あかりにはちゃんとお返しするから」
「そうか。それがしっかりわかっているなら、それでいいんだ」
「父さん」
「どうした?」
「心配してくれて、サンキュ」
「……ああ」
あかりに手を差し出して「行こうぜ」と出ていくヒカルの姿に、ゆるゆると息を吐き出す正夫。
自分の知らぬ間に何やら息子が成長していた事実に、言葉にならない思いが正夫の胸を満たした。
仲睦まじそうに歩いていく二人の後ろ姿を呆然と見送り、その場に立ち尽くしていた正夫の背に、妻からの声がかかる。
「お父さん」
「ああ……母さん。
ヒカルは、大丈夫なんじゃないかなぁ」
「もう、お父さんが今からそんな調子では困りますよ。
これからヒカルが何時に帰ってくるのか、しっかり見ていてください。
絶対に22時を過ぎてからですよ」
美津子は『私は納得していません』という色をありありと顔に浮かべて、ぶつぶつ呟くようにヒカルへの不満を口にする。
「あの子は本当に。
今日はあかりちゃんにお昼ご飯だけじゃなくて、おやつまで作らせているんですよ。*5
その上、夜までごちそうになるなんて信じられません。
ヒカルが自分でなんとかすると言うから、今日はお父さんと二人で出かけたのに。
それがこの有様ではね。
根本的にヒカルは、女の子の気持ちがわかっていないんです」
「まあまあ、母さん。
あかりちゃんはそれで辛そうにしていたわけじゃないだろう?
私には幸せそうに見えたよ」
「そんなことは当たり前です!
あかりちゃんは、ずっとヒカルのことが好きだったんですよ。
傍に居られれば嬉しいに決まっているでしょう。
だからヒカルはあかりちゃんをもっと大事にしないといけないのに、あの子ときたら」
「それはそうだね。
でも母さん、気付かなかったかい?
今日のヒカルは、あかりちゃんと並んで歩いていたよ。
数年前はあかりちゃんを置いて先に行ってしまうような子だったのに……」
「あら。そうなの……」
正夫と美津子は玄関で二人、顔を合わせて見つめ合った。
・これで付き合ってないし両思いでもないとかマジ?
・原作であったあかりとヒカルの身長を比較するシーンって、多分ですけど
伊勢物語の筒井筒を意識してるんですね。
自分でヒカあかを書くまで全くわからずにいた……(雑魚)
R-18版の需要はありますか?
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あかりを性的に食べるヒカル……ありだな!
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やっぱりヒカあかはプラトニック路線で。
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