【ヒカあか】報われない恋でもいいから 作:無名のヒカあか好き
ヒカルの特別になりたい。
それは4月も末の日曜日。
ヒカルとあかりは、住宅街の中へ隠れるようにして営まれている喫茶店を目指して歩いている。
二週間前にヒカルと濃密な一日を過ごして以来、あかりは三週続けてヒカルに呼び出されて、想い人の下へ通うということを繰り返していた。
今となっては毎週日曜日がヒカルの指定席になってしまいそうな予感を、あかりは抱いている。
そんなわけですっかり心の平穏を取り戻したあかりは、昼食後にヒカルを、
そして母の薦めだけあって、件の喫茶店は自宅近くに構えていたため、二人は徒歩で向かうことにしたわけである。
小学校も、中学校も。夏も、冬も。
ヒカルと一緒に歩いた道を、今一度肩を並べて歩いていることに喜びを隠せないあかり。
自然とあかりの口数は増えて、「あそこの看板、無くなっちゃたんだ」「見て、ヒカル。あのお家のリラの花、今年もきれいに咲いてるよ」としきりにヒカルへ話しかける。
そんなあかりのお喋りに釣られ、ヒカルも笑みを浮かべながら、幼馴染の少女の小さな歩幅に合わせてのんびりと歩いていく。
あかりの言葉に応えを返すばかりで、見慣れた街中の景色には殊更コメントすることをしなかったヒカルだが、ふと懐かしい店が視界に入って足を止める。
本山商店。昔はあかりと、単に『駄菓子屋』と呼び合っていた店だ。
「こんな名前だったのか……」
「どうしたの、ヒカル?
あ、駄菓子屋さん。懐かしいね」
「ああ。いや、こんな店の名前だったんだなって」
「そうだね。お店のおじいちゃんが、本山さんって言うのかな?
おじいちゃん、元気かなあ……」
「あかり、少し覗いていくか?」
「いいの?
やった、寄り道だね」
ヒカルから思わぬ提案をうけたあかりは、うきうきとした歩調で店へと入っていく。
「いらっしゃい」
「あ、こんにちは。少しお邪魔しますね」
「ああ……。久しぶりだね。ゆっくり見ていっておくれ」
「えっ、覚えてらっしゃるんですか?」
「覚えているよ。
あっちの男の子と遠足のおやつを買いに来た子だろう」
「そうです。300円分のおやつを──」
早速店主に捕まって、よくわからない昔話に興じ始めたあかりを他所に、ヒカルはぶらぶらと店の中を見て回る。
昔は駄菓子屋だと思っていた店も、実際にはお酒やカップラーメンなどが置いてあり、一般的な商店の顔も持っていることがわかる。
それでも、店主が子ども好きなのだろうか。駄菓子やプラモデル、女の子が好きそうな魔法少女のおもちゃと、小学生に好まれそうな品は特に豊富に揃えられていた。
(この店の呼び名は、やっぱり『駄菓子屋』でいいな)
店主のおじいちゃんとの会話をほどほどのところで切り上げたあかりは、店のあちこちを案外興味深そうに眺めるヒカルの姿を、後ろから見ていた。
そしてヒカルが、小さな折りたたみ式のオセロの前で足を止めたのを見て、あかりはくすくすと笑う。
(ヒカル、囲碁じゃなくても……似ているものについつい惹かれちゃうんだね)
「なんだよ、あかり。人を見ていきなり笑ったりして」
「えっ、あっ、うん。
……ほら、ヒカル見て!
あのくじ引き、昔ヒカルが外したやつだよ」
『囲碁が大好きなヒカル……かわいい』と考えていたことを誤魔化そうとして、ヒカルの苦い記憶を呼び覚まそうとするのは、あまり良い手段とは言えないと思われるのだが。とにかく、あかりはそれをやった。
オセロから目線を外して、あかりの示すままに、店内の高いところへ展示されたガンダムのプラモデルへ目をやるヒカル。
あかりにはわからないだろうが、ヒカルにはそのプラモデルが当時自分が外したものと異なり、しっかりと最新のものに置き換わっていることが理解できた。
自分の後にも死屍累々の犠牲者が出て、そいつらも売り上げに貢献したんだろうなと考え、思わず憮然とした表情になるヒカル。
駄菓子屋のおじいちゃんは決して詐欺や悪徳な商売をしたわけではないのだが、これはヒカルにとっては感情の問題だった。
「ちぇっ。人の失敗を笑うなんて、あかり、性格わりーぞ」
「ち、違っ……ぅう、もう!
……ヒカルのいじわる。
本当に私の性格が悪かったら、ヒカルにおやつを分けたりなんかしないのに」
くじ引きという商品と小学生男子との相性の悪さに燃え上がったヒカルの義憤は、何故かあかりに矛先が向かう。
そんな理不尽なヒカルの八つ当たりに、あかりは小学校の遠足でおやつを半分あげた功績をアピールすることで対抗した。
ヒカルのもとに詰め寄って「あの時、おやつ代を全部くじ引きに使っちゃったヒカルが悲しい思いをせずに済んだのは、私のおかげでしょ!」と必死で抗議するあかりがかわいらしくて。ヒカルはぽんぽんとあかりの頭を撫でて、実にいい加減に幼馴染をなだめた。
要するにヒカルは、想い人から性格ブス呼ばわりされてしまった
「そんなこともあったな……。
あかり、駄菓子買っていかねえ?
俺が出すから、ぴったり300円分。あの時に買えなかっただけ。
それで食べながら歩いて行こうぜ」
これからケーキを食べに行こうとしているのに、ヒカルは「何か久しぶりに食べてみたくなったし」と、計画性の欠片もない思いつきをあかりに話す。
しかし、そんな提案であってもあかりにとっては非常に魅力的なものなのだ。
(喫茶店もデートっぽくていいけど、駄菓子屋さんデートはヒカルと私にしかできないもん)
「うん……!
ね、ね、ヒカル。おやつは150円ずつ選ぼう?
それでお互いに選んだものを交換するの」
「はは、あかりもわかってきたな」
あかりの提案は『ヒカルに何かを贈り、贈られたい』、『ヒカルの好きなものを知りたい』、『私の好きなものを知ってほしい』*1といった乙女心が複雑に絡み合った結果、出力されたものなのだが。残念なヒカルには全く伝わっていない。
だからヒカルは、店舗入口へ買い物かごを2つ取りに行った*2あかりを他所に、色物の駄菓子を選んでやるべきか、普通に当時のお気に入りを選んでしまうかと口元に悪戯げな笑みを浮かべて考え始めたのであった。
「ありがとうね。またいらっしゃい」
店主の挨拶を背に店を出たヒカルとあかり。
早速ヒカルは紙袋へ手を突っ込んで、食べ始めようとしている。
あかりも『歩き食いなんて行儀が悪いけど、今日くらいはいいよね……』と自分に言い訳をして、ヒカルの振る舞いに倣う。
果たしてあかりが取り出した1つ目の駄菓子は、小さなパッケージに色鮮やかな餅が詰められたものだった。
(あ、これ知ってる。
でもヒカルはりんご味じゃなくてコーラ味のイメージだったから、そこは意外かも)
あかりは地面に落とさないよう慎重にパッケージを開けて、小粒の餅を1つぱくりとつまんだ。
グミのような歯ごたえがある餅をむぐむぐと噛んで、口の中にほんのり溢れるりんごの風味に目を細めるあかり。
その隣でヒカルは、あかりが選んだチョコレートバーに大口を開けてかぶり付いた。
「あかり、おまえこんな時でもチョコレートかよ」
「うん。昔から好きだったから……どう?」
「まあまあかな……。あかりのチョコの方が普通にうまいけど。
ま、こういう時からリサーチを怠らなかったから、あかりは菓子を作るのが得意なんだろうな」
そこでヒカルは少し遠くを見やって、「何事も積み重ねだもんな」と続けた。
(ヒカル、また碁のことを考えてる)
あかりはそっと、肩が触れ合うような距離までヒカルに身を寄せて。ヒカルの好きな味の餅を、もう一つ口へ運んだ。
(ヒカル、こういうのが好きだったんだなあ……)
・頑張れ 無名のヒカあか好き 頑張れ!!
俺は今までよくやってきた!! 俺はできる奴だ!!
そして今日も!! これからも!!
毎日投稿が途切れてしまっても!!
本日二回目の投稿……すごく頑張った!!
・評価とお気に入り登録、本当にありがとうございます。
筆を進める原動力になっています。
頑張って続きを書きます。
R-18版の需要はありますか?
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あかりを性的に食べるヒカル……ありだな!
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やっぱりヒカあかはプラトニック路線で。
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