【完結】光を失った少年の話   作:野口さん

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前後のお話と繋がりとかはありません。
めっちゃキャラ崩壊しちゃってます。
ようするにギャグ回ってこと。



【単発】 屋根裏の少年

 

 見渡す限りの青い海。

 少年は船に乗っていた。

 

 船の先端にたって風を浴びている。

 首にかけたマフラーが強くなびいていた。

 

「ようやく帰ってこれる」

 

 本土でちょっとした用事があり、彼はしばらく本土にいた。

 その用事もようやく終わり、やっと牢屋敷に帰れる。

 

「久しぶりの本土でちょっとはしゃぎすぎたな。もう少し早く帰る予定だったんだが……おっ」

 

 少年が手を伸ばすと、手のひらに雪が一粒落ちてきた。

 海の上で雪を掴む経験は初めてだった。

 

 季節外れではない雪を、彼は感慨深そうに見上げていた。

 

 今は2月の中旬。

 自分たちが牢屋で目覚めたのが4月だから、牢屋敷から解放されてもうすぐ一年が経とうとしている。

 

 この一年で大変なこともたくさんあったが、大切な友人がたくさんできた。

 そしてその友人たちと仲を深めることもできた。

 

 すこし深めすぎた気がしなくもないが……

 

 

 空を見上げ、降り注ぐ雪を避ける遊びをしていると、少年はひときわ大きな雪の粒を見つけた。

 否、それは雪ではない。

 

 翼をもち、フードを被り、顔がある。

 雪だと思ったそれはフクロウだった。

 

 バサバサと、空から白いフクロウが下りてくる。

 

 屋敷に帰って最初に見るのがこいつか、と少年が微妙な顔になる。

 ゴクチョーはそんな視線を気にせず、船に着陸した。

 

「ふぅ、失礼します。おかえりなさい、と言った方がいいですかね?」

「合ってるよ、俺は牢屋敷を家だと思ってるから」

 

 パタパタと自身に積もった雪をはらう仕草が、なかなかに人間臭い。

 結局、このフクロウの正体はわからなかったなと彼は訝し気な視線を送る。

 

「てか島の外出られるんだ」

「えぇ、ほんのわずかな距離ですけれど」

 

 もうすぐ島につきそうだ。

 この程度の距離ならば、ゴクチョーも飛んでこれるらしい。

 

「わざわざ出迎えに来てくれるなんてな。嬉しいけど、どうしたの?」

 

 一年を通じて、ゴクチョーとも少しは仲を深めることができた気がする。

 こいつが真の黒幕なのでは、と疑っていた少年だが、話してみると気が合うところもいくつか見つかったため、話が弾んでしまうこともあった。

 こうして出迎えに来ても違和感がないぐらいには、彼とゴクチョーの仲は悪くない。

 

 しかし、ゴクチョーが島から出てきた理由は、出迎え以外にもあるようだった。

 ゴクチョーはため息を吐く。

 

「今の屋敷は……少々居心地が悪いといいますか……屋敷に皆さん集合しているんですよ、あなたの同期が全員」

「え?全員?マジ!?連絡してくれれば……あぁ、そうだ俺スマホの充電切れちゃってたんだよな」

 

 ()()()昨日は少年の大切な友人である少女たちが全員牢屋敷に来ていたのだ。

 外の世界で生きることを選んだ者たちが、みんな帰ってきていた。

 

「んじゃ今は屋敷は女の子がたくさんか。そりゃ居心地悪いよな、わかるよゴクチョー」

 

 みんなが帰ってきて屋敷は久しぶりに活気を取り戻し、居心地が悪いのだろう。

 そう思っていた少年だったが、ゴクチョーはそれを否定する。

 

「いえ、居心地がわるいというのはそういう意味では無くてですね……」

「??なんかあったのか?」

「おや?心当たりがないのですか?なぜかみなさん、あなたのことを探しているようでしたが」

「俺?」

 

 少年はこてんと首を傾げる。

 確かに自分は昨日には帰ってくる予定だった。

 しかし、たかが一日。

 

 べつに、昨日はなにも特別な日なんかじゃ……

 

「あ」

 

「昨日バレンタインだった」

 

 

 ◇

 

 

 船が進み、屋敷がはっきりと見えてくる。

 しかし、少年は屋敷どころではない。

 

「おや……これはこれは。モテモテですね」

「……やっべ。やば、やばくねこれ」

 

 船着き場には、12人の少女たちが立っていた。

 少年の乗る船をじっと見つめている。

 

 出迎えに来た、といった雰囲気ではなさそうだ。

 

「昨日バレンタインじゃん!絶対みんなチョコ準備してくれてたじゃん!!」

 

 自惚れ、ではない。

 彼は自分と彼女たちのことを正しく認識している。

 自分は彼女たちと仲良くやってこれていたと思っているし、彼女たちも自分にチョコを送ってくれる優しい少女達だと信じている。

 

「準備してたのに俺いなかったら、そりゃ怒るよな!マズイマズイマズイ!!」

「いえ、彼女たちが怒っているのは、それだけの理由ではなさそうですよ?」

 

 焦ってうろうろとする少年だったが、無慈悲にも船は進んでいく。

 彼女たちの表情がはっきりと見えてきた。

 

「「「……」」」

 

 怒り、という言葉で表すのが近いのだろうか、いやそれ以上の様々な感情が込められた視線が彼のもとに送られている。

 

「皆さん、自分があなたの本命だと思っていたんでしょうね。しかし同じことを思っている相手が多いことを知り、思わせぶりな態度をとったあなたに対して、ブチギレのようです」

「え?え?」

「まぁさっさとひとりの少女を選ばなかったあなたの落ち度、ということで……受け入れてください」

 

 少年はいまいち理解していない様子だったが、事態は深刻である。

 

 この一年で様々な少女たちと交流を深めてきた。

 しかし、すこし関係を()()()()()

 その結果、少女たちは『自分が彼と付き合っている』と無意識の中で思うようになってしまったのだ。

 

 普段の彼女たちならばそんな思考には至らない。

 しかし!彼の人柄と牢屋敷という環境や魔法だなんだがなんかこううまい具合に作用したのだ!!!!なんかいい感じに!!!

 

 今の牢屋敷は、()()のためにチョコを準備した少女たちが一堂に会している。

 

「どういうことなの???」

「皆さん、あなたのことを12股のクズ野郎と思っています」

「なんで??」

「さて、到着しましたよ」

 

 面倒ごとに巻き込まれるのはゴメンだと言わんばかりに、ゴクチョーは少年と少女達から距離をとる。

 

 少年は若干震えていた。寒さのせいではないだろ。

 恐る恐る船から降りて、彼女たちの方へ歩いていく。

 彼女たちも、少年の方に近づいていった。

 

「あーその、遅れてごめ――

「おかえり、ずいぶんと遅かったじゃないか」

 

 謝ろうとする少年を、笑顔の二階堂ヒロが遮った。

 笑顔、とても笑顔だ。

 少年は知っている。この笑顔は怒っている時の彼女だ。

 

「昨日はたくさん連絡をしたのだけどね。君は全く返信をしてくれなかったな」

「スマホの充電が……切れてまして」

「言い訳は聞きたくないな」

 

「チョコを作っていたんだが、どうやら君は私よりも大切な女性がいるようだ。私のチョコを受け取るなら、その後でいい。それで、誰が本命なのかな?」

 

「あの、あのね、ボク、君にチョコを作ったんだ、あまり上手じゃなかったんだけど、心を込めて作ったから食べてほしくて……でも、君にチョコを送りたいって人、こんなにたくさんいたんだね」 

 

「……心配したんだぞ。連絡を返さないから、外の世界で何かあったんじゃないかって、わがはいは心配で……せっかくチョコも作っていたのに」

 

「のあね、お絵描きだけじゃなくて、お菓子でも喜んでくれたらなぁって思って、たくさん準備したんだ。食べて?」

 

「君は私のことを見ていくれると思っていたけれど、どうやら私だけを見ていたわけではないようだね……」

 

「そう、だよね。おじさんなんかが、君と釣り合うわけないもんね、そうだよね、ごめんね。なんかおじさん勘違いしちゃった……ごめんね」

 

「これも、あなたの思う愛、なんでしょう?ねぇ、そうだと言って?じゃないと私、どうにかなってしまいそう」

 

「私は……ごめんなさい。今は、あなたの顔を見たくないわ……」

 

「お前……なんなんだよ!あんだけウチのこと求めておいて、全員におんなじこと言ってたのかよ!なんなんだよっ!なんなんだよぉ……」

 

「うーん……あなたはてっきり、もうすこし義理堅い方だと思っていたんですけどねー……名探偵シェリーちゃんは、どうやら推理を外してしまったみたいです」

 

「どうして……どうしてですの?あなたも、私のことを置いていくんですの?そんな、そんなことって、私は私は!」

 

「死ねよ!死ね!死ね死ね死ね!あてぃしに言った言葉全部嘘だったってこと?クソ浮気野郎!ウソつき!死ね!」

 

 少女たちが次々と、彼に箱を差し出していく。

 

「チョコ、受け取ってくれるかな。君のためだけに作ったんだ」

 

「チョコ、受け取ってほしいな。それでもうボク、大丈夫だから」

 

「チョコ……わがはい、ひとりで作ったんだぞ」

 

「チョコだよ、10キロくらいあるから、ぜーんぶ食べてね」

 

「私のチョコだ、受け取ってほしい。といっても、あの『蓮見レイア』のチョコなんて君は受け取れないかな」

 

「チョコ……ごめんね、いらないよね。こんなおじさんのチョコなんてさ」

 

「私のチョコよ……受け取ってくれるかしら」

 

「チョコ……お姉ちゃんとふたりで作ったの」

 

「ほら、チョコやるよ。さっさと受け取って、ウチの前から消えろ!」

 

「これ、シェリーちゃんの心がこもったチョコです!受け取ってください!」

 

「チョコ……わたくし準備していましたの……」

 

「はいこれチョコ、ってもういらないよね、こんなにたくさんもらってんだもんねー!」

 

 

 木の上から様子を見守っていたゴクチョーが少女たちを刺激しないよう小さく口を開く。

 

「……何とか言った方がいいのでは?」

 

 

信じてくれ

本命はゴクチョー

>チョコは欲しい<

 

 

「君……ふざけているのか?これだけ多くの相手と関係を持っているとは思えない甲斐性だな」

 

「そっか……ボク、勘違いしちゃってたんだ、ごめんね」

 

「わがはいは……それでも、いい、お前と、離れるくらいならば、何番目でも、いい……う、うぅううう」

 

「大丈夫だよ、のあ、お絵描きの方が好きだから。だからもう、のあのことは気にしなくていいよ」

 

「もう、私のことはみてくれないんだね……」

 

「そう、か。あは、あはは、うん、あげるよチョコ。おじさん頑張ってつくった、から……」

 

「結局あなたも……私を()するのね……やっぱりみんな、嘘ばっかり」

 

「ごめんなさい、お姉ちゃん。私もう、笑えないみたい」

 

「いいかげんにしろよ!みんな悲しませといて、よくそんなふざけたこと言えるよな!!」

 

「やっぱり私は、人の心がわからないみたいです。あなたはどうして、この状況でそんなことが言えるんですか?」

 

「わた、わたくしは、わたくし、わ、わあぁああああああん!!」

 

「二度とその面あてぃしと推しに見せんなよ!次あったらぶっ殺すから!!」

 

 

「……あー、私は仕事を思い出したので、失礼します」

 

 白いフクロウが飛び立つと同時に、少女たちが彼のもとに歩き始める。

 

 少年の背後には海しかない。

 先ほど乗ってきた船は、もう帰ってしまった。

 

 後ろに逃げ場はなく、もうすでに横は少女たちに防がれている。

 

 少女達から逃げる術はなかった。

 

 

 ◇

 

 

 ボロ雑巾のようにズタボロになった少年に、一羽のフクロウが降りてきた。

 

「……生きてますか?」

 

「みなさんとてもご立腹でしたが……『昨日は牢屋敷の住人を守るため、政府と交渉していて忙しかった。彼はあなたのことをとても大切に思っている』と伝えたら、すこしは落ち着かれたようです」

 

「後の始末は、あなたがやってくださいね?来月までにどうにかしないと、また同じことの繰り返しですよ」

 

「やれやれ。痴情のもつれほど、面倒なコトはありませんね」

 

「あ、そうそう。これ、この先も苦労するだろうあなたへの、餞別です」

 

 

【ゴクチョーの慈悲チョコをゲットした!】

 

 





ペルソナのバレンタインイベントパロでした。

牢屋敷のみんなはこんなことしね〜こんなこと言わね〜!
でもギャグ回なので、許してください。

主人公の名前

  • いる
  • いらない
  • 見たくないから活動報告にだしといて
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