【完結】光を失った少年の話   作:野口さん

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Ifルート 桜羽エマ

 

 ラウンジで少年がエマを見つけた時、彼女はキョロキョロとあたりを見回していて、とても怪しい様子だった。

 

「あ……」

 

 少年と目が合うと、エマは咄嗟に何かの小包を自分の背中に隠した。

 チラリと見えるそれは、高級そうな黒い用紙に包まれているようだ。

 

 自分には見せたくない物だったのだろうか、なら無理やり暴きに掛かるのもいけないだろう。

 少年はそう思ってしょんぼりと踵を返す。

 

「あ!待って!!」

 

 そこまで必死に隠したいものでもなかったのだろう。悲しそうに引き返そうとした少年に、エマは慌てて駆け寄った。

 

「いいんだよ桜羽さん、俺に見られたら嫌なことくらいあるよね」

「そんなのないよ!コレを持ってたってだけで……」

 

 そう言ってエマが差し出したのは、厳かな雰囲気を醸し出す何かの箱だ。

 厚みのあるしっかりとした箱であり、黒い包みを撫でてみると上品な手触りが伝わってくる。

 明らかに高級品だ。

 

「えっとこれ、ヘリコプターで運ばれてきてて、何だかすごそうだなって思ってひとつ持ってきちゃったんだ。たくさんあったから、いいかなって……」

 

 エマのたどたどしい説明を聞いて少年は思い出す。

 そういえば食品カテゴリの物質の中に、やけに高そうな包みがいくつもあったなと。

 

 エマはその中のひとつを持ってきたのだろう。

 気になってしまうのもしょうがないほど、この包みは不思議な魅力に包まれていた。

 

「……開けてみるか」

 

 少年がワクワクとした様子で呟くと、うずうずとしていたエマも元気に頷いた。

 高級品の中身を、彼女も気になっていたらしい。

 

 慎重に黒い包装を解いていくと、そこにあったのはお菓子だった。

 いくつものひと口サイズのチョコレートがいくつも並んでいる。

 

 肉じゃないのか、と少年が少し肩を落とすが、エマはキラリと瞳を輝かせる。

 

「わぁ!チョコレートだよ!美味しそう!」

 

 エマは思わずと言った様子で飛び跳ねる。

 彼女からすれば、肉よりもこういったお菓子の方が嬉しいのだろう。

 

 近づいてそのチョコを詳しく見てみると、ふたりは今まで嗅いだことのない匂いを感じ取る事ができた。

 

「なんだか不思議な匂いのするお菓子だね」

「いくつか食べてみようぜ」

 

 少年がひとつ口に入れると、エマも同じようにその菓子を食べ始める。

 

 それはチョコレートだった。久しぶりの味に思わず少年の口角が上がる。

 エマもとっても嬉しそうに落ちる頬を支えていた。

 

 食感を楽しむ少年だったが、すぐに気がつく。どうやらこれはただのチョコレートではないようだ。

 噛んでみると、中から何らかの液体が流れ出す。

 

「中になんか入ってるタイプか」

「不思議な味だけど……なんだかクセになるね」

「そうだな……美味いなこれ」

 

 チョコの中から流れる液体は、ふたりにとって未知の味だった。

 どこかで嗅いだことにある匂いに感じるが、それが何なのかまではふたりとも察することはできない。

 

 この液体は何だろう。

 気になってしまったふたりはひとつ、またひとつとそのお菓子を頬張る。

 

 クセになる未知の味に、ふたりは病みつきになっていた。

 気がつけば、もうケースの半分ほどを食べてしまっている。

 

 他のみんなの分を考えなくてはいけないし、そろそろ辞めておこう。

 

 普段の彼らなら、そう判断して箱を閉じていただろう。

 しかし、この時の彼らはなぜか冷静ではなかった。

 少し顔を赤くしながら、さらにお菓子を手に取る。

 

「たくさんあるし、ひと箱分くらいなら俺らで食べきってもいい、よな」

「そ、そうだよね。すこしくらい……」

 

 ふたりの手は止まらない。

 その姿はまるで、お酒を手放さない酔っ払いのように見える。

 

 いや、酔っ払いそのものだ。

 なぜなら彼らが食べているものはアルコールなのだから。

 

 チョコレートでウイスキーを包んであるそのお菓子はウイスキーボンボンと呼ばれ、多くの人に親しまれている。

 ふたりが口にしてしまったのはそれだ。

 

 ウイスキーボンボンに含まれるアルコールは、そこまで多いわけではない。だが、多くの量を摂取した場合、少ないとはいえアルコールを摂取しているわけだから酔っ払ってしまう。

 

 美味しい美味しい。

 エマと少年は、パクパクとその不思議な味のするお菓子を食べ続け、そして……

 

 

 

「それで、ふたりして酔っ払ったと……」

 

 腕を組んでエマと少年を見下ろしているのは二階堂ヒロだ。

 エマと少年は赤い顔でフラフラと落ち着かない様子でソファに座っている。

 ときおり急にヘラヘラと笑ったり、突然悲しみだしたり、よくわからない言葉を発している。ふたりが酔っ払っているのは誰の目にも明らかだった。

 

「ヒロちゃん!見て今のボク!顔が真っ赤だよ!炙りエマだね!あはは!」

「見ててくれ二階堂さん!抱腹絶倒の一発ギャグ見せるからな今すぐ!というわけで脱ぎます!」

 

 酔っ払いふたりを見つめるヒロの冷ややかな視線は何よりも彼女の感情を表してる。ヒロが頭を押さえているのは、二日酔いではないだろう。彼らの愚行にうんざりしているのだ。

 

 服を脱ごうとする少年を無理やり座らせ、ヒロは鋭い目で口を開く。

 

「未成年相手にアルコールが多分に含まれた食品を提供した政府側にも落ち度はある。しかし、どのような物かもわからず匂いが良かったからという理由で口に入れるなんて、君たちには警戒心というものがないのか?野良犬でも毒は食べない知識はあるというのに、君たちは野良犬以下のバカ犬だったようだ」

 

「きゃん!」

 

「……すまない、少し言いすぎた。ただ、君たちはもっと警戒心というものを持つべきだ。今回はアルコールだったからまだいい。もしもこれが身体に甚大な影響をもたらす毒物だった場合、今頃君たちは死んでいたかもしれない」

 

「二階堂しゃんが3人いりゅ……分身してりゅ……す…すげぇ……」

 

 もはやふたりは呂律すら回っていないようだ。それにヒロの話を聞いているようにも見えない。少年に至っては幻覚を見ていた。

 

 空虚な説教を続けていたヒロは、大きくため息を吐く。

 

「はぁ……アルコールが入っていては私の話も耳に入らないだろう。今日はもう寝て、体内のアルコールを早く分解するんだ。続きは明日話す……はぁ、正しくない」

 

 ヒロが立ち去って解放されたふたり。

 ヒロの言った通り早く寝てしまおうと医務室に移動しようとするが、なんだか体が重い。

 どうにか立ち上がって歩き出そうとするも、足に力が入らずふらふらとしてしまう。

 

 慌てた様子でマーゴが彼らを引き止める。

 

「まだ立ち上がってはダメよ。水を持ってきたからゆっくり飲みなさい」

 

 マーゴはふたりを座らせ、持ってきたコップで水を飲ませる。

 ふたりが酔っ払ったと聞いて飛んできたらしい。

 

「酔っ払う経験なんて、ふたりとも初めてでしょう?体が落ち着くまではここに座っていなさい」

 

 水を飲むことで、少年は多少酔いがマシになってきたように感じる。それでもまだマトモに歩ける気はしない。

 エマと少年は、彼女の言う通りおとなしく座っていることにした。

 

 ぼーっとラウンジの天井を見つめる。

 

「ふぃ〜……」

 

 自然と少年の口からため息が溢れる。

 これが酔うという感覚か。将来お酒を飲む時は気をつけよう。

 

 どこか冷静になってくた頭で少年がそう考えていると、ふと自分の手が握られているような感覚がする。

 そちらを見てみると、エマが少年の手を握って静かに寝息を立てていた。

 

 無防備だなぁ、医務室まで運んであげようかな。

 

 そうしようとする少年だが、酔っているなかで立ち上がるわけにはいかないし、何より彼自身も眠たくなってしまった。

 エマには悪いが、手を繋いだまま眠ってしまうことにする。

 

 自然に閉じていく瞼にしたがって、少年はゆっくりと眠りについた。

 

 

 ◇

 

 

 どれほど眠っていただろうか。ふと少年が座ったままの姿勢で目を覚ました。

 あたりはもうすっかり暗くなっている。

 この暗闇でも少年が恐怖に震える事がないのは、彼がトラウマ克服のために様々な訓練をしてきたからだろう。

 

 自分の成長に喜ぶ少年だが、さて、今は何時だろうか。

 時計を見ていないから具体的に今が何時かはわからない。だが深夜であることは確かだろう。

 変な時間に寝たから、変な時間に起きてしまった。おまけにまだアルコールが残っているような気がする。

 

 飲酒なんてするもんじゃないな。

 そう思った少年が立ちあがろうとして、気がつく。

 

 ()()()

 

 自分の体の上に何かが乗っているような感覚がする。

 立ちあがろうとしてもできないのだ。

 

 先ほどまでは暗闇で見えていなかったが、だんだんと目が慣れてきた。

 おかげでゆっくりとだが、自分の体に毛布がかかっていること、そしてその毛布が不自然に膨れ上がっていることに気がつく。

 

 毛布をめくると、そこにはエマがいた。

 

 座っている姿勢の少年の足にまたがるようにして乗り、彼の体に倒れ掛かって眠っている。両腕は木にしがみつくコアラのように、少年の胴体を掴んでいる。

 少年とエマは、まるで恋人のように抱き合いながら眠っていたようだ。

 

 女性を重たいと感じてしまったことを少年がめちゃくちゃ反省していると、エマの体がぴくりと動いた。

 どうやら少年が動いたのに反応して、彼女も目を覚ましたようだ。

 

「んん……」

 

 暗闇に目が慣れていないからか、エマはキョロキョロと周囲を見回す。

 自分がどこで寝ているのか、なぜここにいるのかよく分かっていないようだった。

 やがて自分が少年に抱き着いていることに気が付いたのだろう。自分を見つめている少年と目があった。

 

 ふたりとも固まっていた。

  

 エマはふぅと息を吐くと、その吐息が首にあたり少年の体が跳ねる。

 それほど、ふたりの距離は近かった。

 

 しばらく見つめ合っていたふたりだが、少年は気が付く。

 エマの目がやけにとろんとしているのだ。

 

(まさか桜羽さん、まだ酔っぱらって!?)

 

 気づくのには遅すぎた。

 赤くなったエマの手が、ゆっくりと少年の胸に触れた。

 

「!?」

「しーっ♡」

 

 驚く少年が声をあげようとすると、エマが小さく笑って彼を止めた。

 そのとろんとした目が言っている。

 

 みんな起きちゃうよ?

 

 今が深夜であることを彼女も気が付いているのだろう。

 大声をあげてはいけないと、彼を視線だけで制して見せた。

 

 少年が声をあげないことが分かると、エマはペタペタと少年の胸板を触り始めた。

 いいや、触るだけにとどまらず、少年の服の中に手を滑り込ませる。

 

 アルコールでほてった体に、彼女のひんやりとした手が置かれ、少年の心臓が跳ねた。

 

 彼女を止めないといけない。

 少年のなぜか冷静な頭がそう判断し、少年は彼女を止めようとその肩を軽く押す。

 

 細い体だな

 少年の冷静でない頭がそう判断した。

 

 肩に置かれた彼の手を気にせずエマは彼の素肌を触り続ける。 

 

「わぁ……」

 

 自分とは違う、筋肉質で硬い体に興味津々なのだろう。エマは夢中でペタペタと少年の胸を撫で回していた。

 

 さすがに止めたほうがいいだろう。

 そう思った少年がエマの方を見る。すると彼女も同時に少年のことを見上げ、目が合った。

 

 否、目は合っていない。

 正しくは、少年はエマの目をみて、エマは少年の()を見ていた。

 

 以前の彼女もそうだった。

 自分を守って首を切断された少年のことを覚えており、無傷である少年の首をチラチラと見てしまうことがあった。

 今の彼女の視線もそれと同じなのだろう。少年はそう推測する。

 

 しかし、今回は状況が少し違う。

 これほどの至近距離であること。

 みんなが寝静まった夜であること。

 そして、彼女は酔っぱらっていること。

 ようするに、今の彼女を普段の彼女と同一視するのは間違っていたのだ。 

 

 顔が赤いエマは、ゆっくりと少年の首に近づき……

 

 

 その首筋をペロリと舐めた。

 

 

「っ!?」

 

 流石に少年も無反応ではいられず、反射的に首元を手で抑える。

 エマの舐めた部分が少し濡れていて、自分は本当に首筋を舐められたのだと理解した。

 

 なんで、なめられた、首、桜羽さん、

 

 様々な疑問が少年の頭に湧きあがり、混乱する少年。

 一方、エマは悲しそうな声を出していた。 

 

「あ……」

 

 少年がとっさに距離を取ったことで、エマは幼い子供がお気に入りのおもちゃを取り上げられたような、そんな絶望的な表情になる。

 そんな顔をされてしまっては、少年の選択肢はない。

 というか、突然の刺激に驚いてしまっただけで、彼女に首元を舐められても不思議と不快感は感じなかった。

 

 少年が姿勢を戻すと、エマは嬉しそうに再び首筋を舐めるのを再開し始める。

 

 ぴちゃぴちゃと、ラウンジに小さく淫らな水音が響く。

 

 少年にとって、それは未知の刺激だった。

 当然だろう。彼の人生において首を舐められるなんて経験なかったのだから。

 

 少し歯をたてるだけで命の危機がある場所を舐めさせている。

 

 そんな行動が彼の心臓を大きく高鳴らせ、ただでさえ早かったその鼓動がさらに加速する。

 

 彼もまた、興奮を抑えられていなくなってきた。

 ただでさえ性欲の発散がしづらい環境なのだ。情欲を煽るようなことをされてしまっては、彼の()()()()が、彼女の下で大きく主張を始める。

 

「あ……」

 

 自分の座る部分がムクムクと変化していることに気がついたのだろう。エマは恥ずかしそうな顔を見せる。

 しかし、首を舐めるのを止めるつもりはないようだ。少し腰を浮かせて、座りやすい場所を探している。

 

「えへへ……」

 

 まだ酔いが残っているのだろうか。赤みがかった顔でエマはフリフリと腰を動かしていた。

 とても可愛らしい動きだったが、ふにふにとお尻で陰部を刺激されている少年はたまった物ではない。

 このままでは耐えられなくなってしまう。

 

 体を動かすのをやめてくれ。首を舐めるのを辞めてくれ。そう伝えなくてはならない。

 しかし今は深夜だ。

 ラウンジから近い医務室では、みんな寝ているだろう。大きな声を出すわけにはいかない。

 

 彼女にメッセージを伝えるためには、声ではいけない。ならば、肩に触れたように触覚に訴えかけるしかない。しかし、肩に触れるだけでは効果は薄いだろう。ならば、もっと敏感な部分を触るしかない。

 

 これは桜羽さんを止めるためだ、やましい気持ちなんて、ない、

 

 彼女を止めるためだと必死に自分に言い訳をしながら、少年はエマの()()()をそっと撫でた。

 

「んっ……」

 

 足を触られ、エマは小さく声を上げる。

 

 しかし、動きを止めるつもりはないようだった。首をなめるのも腰を動かすのも止めない。

 彼女が止まらないから、太ももの外側を撫でる少年も止まらない。

 

 ガーターベルドで締め付けられてもなお、その存在を主張し続ける健康的な太もも。少年は遠慮なく両手で揉み上げるように撫でまわしていく。モチモチとした感触がクセになる。

 

「あ、んんっ……れろっ」

 

 少年に対抗するためか、エマは舌の動きを早くする。

 もはや舐めるだけに止まらず、吸っているようにも見えた。

 少年の首筋に口をくっつけている。

 

 ただでさえ強かった首元への刺激がさらに強くなり、少年はもう我慢の限界だ。

 

 彼女を止めなくてはいけない。しかし足を撫でているだけでは彼女は止まらないようだ。

 そこで彼は更なる強い刺激を彼女に与えることにした。

 

 ガシッと力強く、彼女のお尻を掴んだのだ。

 

「ひゃっ!?」

 

 突然の痛覚に似た強い刺激に、エマの体が飛び跳ねる。

 首元への刺激が止まり、ようやく少年はひと息つく事ができた。

 

(ふぅ……っ!?)

 

 しかし、休憩できたのはひと息だけだった。

 エマは尻を少年に掴まれたまま、首を舐めるのをすぐに継続し始めたからだ。

 

「っ……」

 

 まさかまだ続けられるとは思っておらず、少年は小さく息を漏らす。

 このままではいろいろな意味で耐えられない。

 

 これは彼女に動きを止めてもらうためだ。

 

 そう何度目かもわからない言い訳をしながら、少年は尻に添えられた手をゆっくりと動かしていく。

 足と同じように、十分な肉付きを感じる健康的な臀部であった。

 しかし服越しでもわかるやわらかさがある。

 

「ふっ、んんっ」

 

 少年に尻を揉み上げられ、エマは小さく息を漏らす。

 医務室が近いことは彼女も理解している。声を漏らさないよう我慢しているのだろう。

 

 首をなめ続ける少女と、尻を触り続ける少年。

 恋人同士の何らかのプレイにしか見えない。

 

 首を舐められ続け、興奮が高まっている少年は考えた。

 自分ももっと攻勢にまわってもいいのではないかと。

 

 先ほどから自分は防戦一方だ。

 もっと彼女を刺激する側にまわってもいいのではないか。

 そう思った少年は、

 

 グイッと彼女の座る腰を突き上げた。

 

 

「〜〜〜!!!」

 

 

 少年の固くなったソレが、ちょうど彼女のいい位置に当たったのだろう。 

 

 エマは声を押し殺しながらビクビクと震えだした。

 ぎゅうっと強く少年の肩にしがみつき、快楽の波を必死にこらえている。

 

 やがて波が収まったのか、エマが肩で息をしながら少年の胸にもたれかかる。

 

 ようやく首舐めから解放され、少年は一息つく事ができた。

 倒れてきたエマを受け止めて、ふたりそろって荒い息を吐く。

 

(……あれ?俺今なにした?)

 

 冷静になってきた少年が、自分の行動を振り返る。

 首を舐める女友達に対抗して、太ももとお尻を揉みまわし、とどめに陰部で彼女の秘部を突き上げた。

 一線を越えてはいないが、もはやそれと同義だろう。

 

 呼吸が整いだして、ふたりはそろって目を見合わせた。

 お互い、顔が真っ赤だった。

 

 エマは自分の体の下で、いまだに少年の()()がガチガチになっていることを知っている。

 意味ありげに少年の胸を撫でた。

 いつの間にか彼の服は脱げかかっており、上半身が裸になっている。

 

「えへへ……」

 

 恥ずかしそうに笑うエマの瞳が彼に問いかける。

 

 もうおしまい?

 

 少年はゴクリと唾を飲み込んだ。

 彼ももう我慢の限界だった。

 

 場所を変えよう

 

 その一言を少年が伝えることができたのは、先ほど冷静になれたおかげだろう。

 ふたりは手を繋いでどこかへと消えていく。

 

 そのふたりを止める者は、誰もいなかった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 幸い、ふたりの逢瀬は誰にもバレることはなかった。

 深夜だったこと、ふたりが静かだったこと、()()は屋敷から離れた場所だったこと。

 それらがうまく作用した。

 

 男女の情事は見逃さないであろうマーゴも、勘の鋭いノアにも、不純異性交遊は正しくない絶対正義少女二階堂ヒロにも気が付かれることはなかった。

 

 ふたりはラウンジのソファで静かにねむっていた。

 屋敷の少女たちはそう認識している。

 

 バレていないことに安心したエマと少年だが、ジロリとした目でヒロに引き止められる。

 昨晩の説教の続きだ。

 

 正座させられ、正論を浴びせられる。

 言い訳を探そうにも、あまりにもヒロの言葉が正しすぎるから、おとなしく反省することしかできない。

 

 しばらく説教を続けていたヒロが、エマを見ながら頭を抑える。

 

「特にエマ、君は今回が初めてじゃないだろう」

「え?」

 

 その言葉が気になり、少年が思わず顔をあげるとヒロは説明し始めた。

 

「まだ私たちが小さかったときだ。同じようにアルコールが含まれた洋菓子を一緒に食べたことがある。その時も君は、今回のように大いに酔っぱらっていたじゃないか。忘れたとは言わせないよ」

 

 ヒロは当時のことを話す。

 その時もエマはめちゃくちゃに酔っ払い、笑い上戸になっていたらしい。

 周囲の大人たちが慌ててエマを介抱していたようだ。

 

 苦笑いでその話を聞いていた少年だが、次のヒロの言葉を聞いて、ピクリと表情が固まった。

 

「あれほど周りに心配をかけておきながら、一時間も眠れば酔いが完全に冷めているのだから、まったく……君は酒に強いのか弱いのかはっきりしないな」

 

 言われたエマは、はい……と返事して小さくなってしまう。

 その様子をみて、ヒロは彼女たちが反省していると判断したのか、説教もそこそこに立ち去っていった。

 

 正義少女から解放された少年だったが、ふと彼女の言葉が気になってしまう。

 

「……一時間も眠れば酔いが完全に冷める?」

 

 ヒロの言葉を、少年は繰り返した。

 

 もしも彼女の言っていたことが本当ならば、夜中に起きた時の桜羽さんは……

 

 少年がなんらかの結論に至ろうとしたその時、肩にトンと重さがかかる。

 少年の隣に正座していたエマが、彼の肩に頭をのせたのだ。

 

「お酒って怖いね」

 

 そう言って小さく笑う彼女の表情を見て、彼女と()()()()()()少年は気が付く。自分が彼女の策にはまってしまったことを。

 

 昨晩、深夜に目を覚ました時の彼女は、完全に素面だったのだ。酔ってなどいなかった。

 すべて自分をその気にさせるための演技。

 眠りから覚めた瞬間から仕組まれていたのだろうその演技に自分はまんまと釣られ、彼女を押し倒してしまった。

 

 少年が今更になって気が付くがもう遅い。

 もはやしっかり彼はエマと最後までシてしまったし、彼女との関係をやめるという思考回路すら浮かんでこないほど、少年の心は桜羽エマという少女に掴まれていた。

 今もこうして、幸せそうに笑う彼女を見ているだけで、多幸感に包まれている。

 

 

「責任、とってくれるよね」

 

 

「これからも、ずっと一緒だよ」

 

 

日向(ひゅうが)ヒカリくん!」

 

 





R18書いてらっしゃる方はすごいなぁ、と思いながら書いてたら、つられてしまいました。本番はしてないからセーフです!!!

主人公の名前開示してしまいました。
他作品様と被ってないか祈るばかりです。

名前にコレじゃない、と感じた方。
あと2話くらいしか使う予定ないので、もう少しだけお付き合いください。
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