貞操逆転世界で、軽率に女の子を自宅に招いちゃうやつ   作:休無中年

2 / 3
遠坂さん

 電車は次の駅で停車した。

 痴漢の被害者である俺と、痴漢の容疑者OL、それを捕まえた少女がホームに降りて、警察の到着を待った。

 

 少しすると警察がやってきた。

 もちろん女性だ。彼女らは少女に感謝を告げて、痴漢OLをひっ捕らえていった。

 

「ありったけ男子高生の尻を揉めた……もうここで終わってもいい……」

「何を言ってる。来なさい!」

 

 制約でも掛けてたのかあいつは。

 

 俺は少女に向き直って御礼を告げた。

 

「ありがとう。助かったよ」

「いやいや、全然。むしろ大丈夫だった?」

 

 少女がそう訊ねてくる。

 

 そうか。何故かは知らないけど、今は男女が逆になっている。彼女はトラウマになっていないか心配してくれているのだ。

 

「うん。大丈夫」

「なら良かった、のかな? 今度から浅倉くんは、専用車両に乗るといいかもね」

 

 うむ。できたら、そうしよう。

 女性専用車両の意義を改めて体感した気がする。

 

 ……ん? 

 

「あれ、何でおれの名前知ってるの?」

「えっ。っとー……前に学校で見かけたことあってさ。それで知ったんだよね」

「あー、そういうこと」

 

 少女の言葉に納得する。

 

 そう。なんと少女は俺と同じ高校の制服を着ていた。しかも同学年のやつ。見たことはなかったので、別のクラスだろう。まあ、同じ学校なのだから一方的にあちらが知っていてもおかしくはない。

 

「名前聞いてもいい? 知ってるかもしれないけど……俺は浅倉稔っていいます」

「もちろん。私は遠坂未来。よろしくね~」

 

 そんなこんなで、お互いに自己紹介を済ませたところで、二人は肩を落とした。

 

「……じゃあ浅倉くん、そろそろ学校行こうか。遅刻は確定しちゃったけど」

「……だね」

 

 あのまま電車に乗っていれば丁度始業式に間に合うくらいの時間だ。痴漢の引き渡しなどもあって、一時間は超過していた。

 

「俺が痴漢に遭ってさえいなければ……!」

「なんか本当に気にしてなさそうだね、浅倉くん」

 

 そんな会話をしながら次の電車に乗る。

 

 

 

 

 結局、学校には二時間遅れて到着した。

 

 何をすればいいか分からなかったので、とりあえず職員室に向かった。

 ほとんどの教師は出払っていたが、その中に丁度顔見知りの人がいた。

 事のあらましを二人で説明する。

 

「……ってことがあったんですよ」

「そりゃあ大変だったな……今日は休んどくか?」

「いえ、大丈夫です」

「そうかあ……? 無理はしないようにな。それと、遠坂はよくやったな。痴漢を捕まえるなんて大人でも中々できないぞ」

「いやあ、それほどでもありますよお」

 

 遠坂さんは、でへでへと笑っていた。

 

 それから痴漢の件については、再度放課後に話をすることになった。流石に学校問題になりかねない事件なので、校長先生や他先生などを含めて、慎重に対応を進めていきたいそうだった。

 

「さて、この話はこんなところにしておこうか。これからのことだが……もう始業式は終わって、各々のクラスに向かってるとこだろうし……二人も直接クラスに向かった方がいいな。自分のクラスは把握してたりするか?」

 

 俺と遠坂さんは首を横に振った。

 

「だよな。ちょっと待ってろ」

 

 そう言って先生が何かの用紙を持ってくる。

 クラス表のようだった。

 

「えーと二年のクラスはこれか。んで二人は……」

 

 先生は「おお」と声を漏らした。

 

「二人とも同じクラスだな。2-Bだ」

 

 どうやら遠坂さんと同じクラスのようだった。

 

 おかしな縁もあったものだ。

 

 

 

 

 2-Bの教室に向かうと丁度始業式から帰ってきたクラスの人たちと合流した。

 ちらほらと見知った顔もいる。

 

「未来! 今回も同じクラスとかめっちゃ嬉しい~。てか、始業式いなかったよね? 初日にふけるなんて未来もやるう」

「違うって! ちょっと大変な事あってさ~」

 

 遠坂さんは女子グループに混ざっていった。

 

 一方で俺は……ひとりで席に着いた。

 と、ともだちがいないわけじゃないんだからね! 

 

 挨拶をするくらいの人はいる。ただ、一緒に行動して一緒に昼飯を食べるような仲の人がいないだけなのだ。

 

「はーい席に着いて」

 

 教室に担任が入ってきてそう言った。

 

 わいわいがやがやしていた教室が段々と静けさを取り戻していき、クラスメイトが席に着く音だけが教室に響き渡る。

 やがて担任の声だけが聞こえるようになる。

 

「始業式お疲れ様でした。今日から一年間はこのクラスってことで、楽しくやっていけたらいいなと思っています。まずは軽く自己紹介からしようか」

 

 担任がそう言って自分の名前を黒板に書いた。それから自分の素性や趣味などを一通り喋ったあと、俺たちのほうを指さした。

 

「次はみんなの番ね」

 

 俺は担任の言葉に歯噛みした。

 

 きてしまったか、自己紹介。

 俺が最も忌み嫌うものだ。なぜなら……

 

「えーと出席番号順でいいか。じゃあ、浅倉から自己紹介よろしくね」

 

 こうなるからだ。

 一発目の自己紹介ってやりにくいんだよ……。

「あさくら」という苗字は出席番号が前のほうになりやすい。小学生、中学生でも何度か出席番号一番になることがあった。

 

 とはいえ、何度も一発目を体験してきた。

 こういうのは無難でいいことを知っている。

 

 俺は立ち上がって自己紹介をする。

 

「浅倉稔です。去年は1-Cクラスでした。趣味は料理です。これから一年間仲良くしてくれたら嬉しいです。よろしくお願いします」

 

 そう言って頭を下げてから席に座ると、ぱちぱちと控えめな拍手が広がった。

 ……くっそつまらんけど、奇をてらって失敗するよりかはマシなのだ(二敗)

 

 その後は淡々と自己紹介は進んでいった。

 終わるころにはお昼休憩の時間になっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。