貞操逆転世界で、軽率に女の子を自宅に招いちゃうやつ 作:休無中年
自己紹介が終わってお昼休憩の時間になった。
私たちのグループは、みんな食堂派。駄弁りながら教室を出て食堂に向かった。
食堂の券売機で食券を選ぶ。
「うーん……定食AとBどっちにしようかな」
「ちょっと未来、早く決めてよ」
「ま、待って。定食Aは生姜焼きなんだけど、Bはチキンカツ……究極の選択だよね。……どっちも食べちゃおうかな」
「やめなさい。2000キロカロリー超えるから」
そうして食券を購入して列に並ぶ。
結局、定食A。つまり生姜焼きを選択した。
食べてみるまでは分からないが、この選択が間違ってなかったことを信じたい。
「はい、定食Aね」
……うん。いいミートコンディションだ。つやつやと輝く油と香ばしいタレが何とも食欲をそそるじゃないの。
おばちゃんから定食を受け取って、空いている席に座った。みんなが座ったのを見計らって、私は生姜焼きを食べる。
「……んま~……」
口いっぱいに広がる甘い肉汁に、私は思わず声を漏らしてしまった。どうやら選択は大正解だったようだ。
「相変わらず美味そうに食べるね」
友人が呆れた視線を向けてくる。
「美味しいからね。仕方ないね」
「幸せそうでよかったよ。……あ、そういえばさ、この前のあれって……」
それからは近況や、これからの行事について話をしていたのだが……ふと友人のひとりが思い出したように訊ねてきた。
「てか、まだ未来って処女なの?」
「しょっ……」
あまりにも急な質問だったので、米を喉に詰まらせそうになった。ごほごほ咳き込んでから改めて居住まいを正した。
「しょ……じょ、ですけど何か」
「やっぱりなあ。だから、この前の合コン来なさいよって言ったのに」
「男子校のやつらなんて、ちょっと迫れば簡単にやらせてくれるよお」
「……予定があっただけだし」
「嘘つけ。インスタのストーリーに家系ラーメンの写真乗っけてただろうが」
チッ……バレてたのか。
「未来も興味がないわけじゃないんでしょ?」
「まあ……そうだけど」
私は唇を尖らせてそう言った。
「なら今の内にヤッたほうがいいって。今度男子校のやつらセッティングするよ?」
「いやー……私はまだいいかなー……」
「ふーん……もしかして未来……ビビってる?」
「び、びびびビビっとらんわ!」
「そんなあからさまに言われても逆に困る」
「うう……」
私は観念したように机に顔を突っ伏した。
さっきも言ったけど、私だって興味がないわけじゃない。ただ、男の子とそういう関係になるのは、ちょっと……いや嘘です、かなり怖いわけで。
しかも男子校の男の子とか、誰にでもやらせてくれる所謂ヤリチンってやつでしょ。そんな性の猛獣と初めてなんて正直嫌すぎる……。
せめて優しい男の子がいい。
何でも許してくれるような包容力のある男の子が……。
「じゃあ、浅倉でいいじゃん」
「は!?」
友人の言葉に私は飛び起きた。
「今朝痴漢から助けたんでしょ。それの御礼を口実として迫っちゃえば? 浅倉なら押しに弱そうだしいけるんじゃない」
「そ、それは……」
元々、私は浅倉くんのことを知っていた。
実は浅倉くん……女子の間では意外といいよね物件として、それなりに名が通っている男の子なのだ。いつも独りではあるけど、お弁当は自作らしいし、誰にでも態度を変えることなく接していて、等身大のまま生きている。
たしかに初めてなら、浅倉くんのような男の子がいいとは思う……。何をやらかしても許してくれそうだし……。
友人がラーメンのナルトを食べる。
「ま、浅倉に彼女がいる可能性もあるけどね」
「か、彼女……」
「もし彼女持ちだったら手出すのはダメだかんね。ひっどい泥沼になるからさ」
友人の言葉はもう耳に入ってこなかった。
浅倉くんに彼女かあ……全然いる可能性あるよね。
その彼女と浅倉くんが……うう、想像したくないい。
そうして私は悶々としたまま、その後の授業を受けることになったのだった。