第一話
それから一か月が過ぎた。冬が終わりを告げ、レティはどこかへと行ってしまった。チルノによるとうつ状態になっているらしい。それで寒い所へふらふらと行ってしまうそうだ。
「後、もう少しよ」
「うん」
僕はチルノに連れられて山を登っていた。これから「八雲紫」という人物に会いに行くそうだ。なんでも彼女は幻想郷と外を結ぶ門番のような存在らしい。にしてもきついねこの山。
「あら、氷精珍しいじゃない。あなたがここに来るなんて」
急に空中に裂け目ができたかと思うとそこからぱっかり空間が開いて女性が目の前に着地した。レティと同年代だろうか? それでいて何処か子供じみた雰囲気を持っている。
「紫、拾い物したから鑑定してほしいのよ」
「骨董品は専門外よ………あら? 見かけない顔ね」
彼女こと紫が僕に気が付いたらしく僕の顔をじっと見つめる。なんだか何もかもを見透かすような目だ。
「うーん。氷精、悪いけどこの子は引き取れないわ」
「何でよ」
「この子、正規ルートで幻想郷入りしているわ」
「?! それって………」
「そ、この子「誰からも必要とされなくなった」のよ」
紫の言っていることはよくわかる。劣等生の僕があの家…というよりあの姉に必要とされることなどないだろう。
それを考えているとここに来るまでの経緯を思い出した。僕の姉は頭はいいが常識が抜けている人で、弟が欲しかったらしくずっと僕を男扱いしていた。それがおかしいと気が付いたのが中学一年の春、女子制服に身を包んだときようやく本来あるべき姿に戻れたと納得した時だった。ちなみに女子制服を着たのはその時だけ、姉が発狂して取り上げた挙句の果てに燃やしたのだ。さすがにこれは異常だと感じた両親が姉さんと僕を引き離すも効果は芳しくなく、僕の住む家(独り暮らし)にストーカー並みのペースで電話をかけるわ、何処の誰かは知らないが住所をばらしたバカがいてその直後からつけられる気配がやまなくなるわで散々だった。ちなみにここに来るきっかけの大けがの原因も姉だ。確かちょっとした理由で仲良くなった女子と話した後、彼女と別れた後に姉に詰め寄られた。普通に仲良くなった子だと説明するとすごい形相で詰め寄ってきてその直後、全身の骨という骨が悲鳴を上げたようになり気が付いたら、あの草原で寝っ転がっていたというわけだ。
「んなことあるの?! 昔ならともかく現代よ!」
「認めたくないけどそうなんでしょうね。それに悪意のある誰かがこの子の存在を消そうとしたみたいね」
それはあの夢に出た転生者というものではないだろうか。この考えを紫に伝えると紫の表情は驚きに変わった。
「転生者ですって、またどこかのバカ管理人がやったのね。でも、本来あなたたちは知らないはずよ。一体どうして?」
「声が…聞こえた。自分が強くなりたいとか、邪魔な主人公を消してほしいとか…でも、最後に三人だけが優しい願い事をしてた」
「その三人に感謝するべきね。あなたがここに来れたのは三人のおかげよ」
紫に頭を撫でられた。
今後をどうするか決めるためにいったん紫の家に行くことになった。
幻想郷入りの基準がかなり曖昧です。明確な基準ってあるんでしょうか?