東方氷娘記   作:亜莉守

30 / 52
第六話

 

何処か暗い地下室、そこで金色の髪をした赤い目の女の子が泣いていた。

外に出たいんだよね。そうなんだよね?

でも、彼女の答えは違った……そう、彼女は―――――

 

「あ、よかった目が覚めたのね。急に倒れるからびっくりしたよ」

 

気が付けば知らない天井。ここは何処だ。

……あ、そっか永遠亭に来てたんだ。

起き上れば因幡さんがホッとした顔をした。

 

「永琳が言うには精神的なものらしいよ。顔色がまだよくないね。もうちょっとの間大人しく寝ておきなさい」

「うん」

 

もう少しだけ眠ることにしよう。そしたら『彼女』ともまた会えるかもしれないから。

 

 

――― 少女就寝中。

 

 

その頃、湖の中に建つ紅の館。紅魔館

 

「……まただわ」

「お嬢様、どうなされましたか?」

 

主の部屋で館主である少女レミリアが呟く。それを耳ざとく聞きつけたメイドの咲夜は主に問いかけた。

 

「あと少しなのよ。あの子を運命から解き放てる存在、それがすぐそばまで来ているのに……」

 

歯ぎしりをするレミリア、そんな彼女の目の前に咲夜は紅茶を出した。何事かと咲夜を見るレミリアに咲夜が言う。

 

「お嬢様、急ぎすぎてはせっかくの機会を逃してしまいますわ。ここが正念場です。辛抱強く参りましょう?」

「……そうよね。ありがとう咲夜」

「いえ、当然のことをしたまでですわ」

 

さっと咲夜が去り、一人になったレミリアが呟く。

 

「早く着て頂戴。あの子のためにも……わたしのためにも」

 

 

――― 少女夢見中。

 

 

「そっか、もう壊したくないんだ」

「うん。でもね、物を見ると壊したくなっちゃうんだ。どうしてなのかな」

 

僕は今、金髪のあの子と話をしている。あの子はここが夢の中だと知っているようだ。

夢の中なら大丈夫という彼女が不憫で仕方なくなる。

現実だと全然大丈夫じゃないってことじゃないか。

 

「あのね、また夢の中でお話してもいいかな?」

「うん。会えるかわからないけど」

「……そうだよね」

 

あ、落ち込ませた。

何か気の利いたこと言わないと。

 

「でもさ、君が本当に助けてって呼んだなら僕はそれに『応える』よ」

 

そういう能力持ちなんだし。それ以上にこの子を何とかしてあげたいって思いがある。

 

「そっか……ありがとう。私はね、フランドール・スカーレット。貴女は?」

「僕は――――――」

 

名乗ろうとしたところでホワイトアウトが襲ってきた。全く、空気は読んでほしいものだよ。

 

 

――― 少女起床中。

 

 

「……最悪」

 

思わずそうつぶやいた。なんてタイミングが悪いんだろう。

 

「開口一番ひどい一言ね」

「あれ? 紫?」

「そうよ。貴女が倒れたって聞いてこっちに来たんだから」

「そう………」

 

あの子は大丈夫だろうか。暗い地下室の中で泣いていたあの子は

 

「その様子だと何かあったみたいね」

「……まあ」

「言いたくないの?」

「……うん」

 

言ったところで信じてくれるわけがない。

 

「なら言わなくていいわ。あなたが正しいって思ったことをしなさい」

 

紫は僕の頭を撫でてから去って行った。入れ替わるように因幡さんが入ってくる。

 

「お、目が覚めた? 顔色もちょっとよくなっているようだね。はい これ、依頼された薬だよ」

「あ」

 

すっかりお使いを忘れていた。そうだよね。そのためにここに来たんだよね。





えー、短編の方にかまけまして遅れました。
時間軸としては『妖々夢』→『紅魔郷』の順です。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。