「ただいま」
随分と遅くなってしまった。あの後、盛大に引き留められて帰るに帰れなくなったんだ。
パタパタと足音がして、チルノがやってきた。少し心配そうな顔をしている。
「お帰りなさい。遅かったけど大丈夫?」
「うん」
僕がそう答えれば心配そうな顔をしていたチルノは笑った。
「そう、ならよかったわ。今日は明乃が料理当番よ」
「あ、忘れてた」
今日の料理当番は僕だったのか。何があったっけ?
――― 少女調理中。
食事を作る片手間にふと思い出したことをチルノに尋ねる。
「……チルノ、フランドール・スカーレットって名前に心当たりある?」
「? どうしたのよ。急に」
「ちょっとね」
あの暗い部屋で泣いていたあの子は今何をしているんだろうか? それを考えながらチルノの回答を待つ。しばらく悩んでチルノは言った。
「うーん、フランドールには聞き覚えないけどスカーレットなら聞き覚えあるわね」
「ホント?!」
もしかしたらすぐにあの子に会えるかもしれないと胸が躍った。でも、その期待はちょっとだけ裏切られることとなった。チルノは僕の様子を怪しみながら続ける。
「でも、何でそういうことを言い出したのか理由を説明してくれたら教えるわ」
「……あー、実はね」
――― 少女説明中。
「なるほどね。で、そのフランって子とどうしたいの?」
「……会いたい。できるなら、助けてあげたい」
あんな暗い部屋で一人ぼっちは寂しいって思った。それに僕はあの子に『応える』って約束をしたんだ。僕の目を見たチルノは少しだけ考える素振りをしてため息をついた。
「なるほどね、とは言え正気じゃない吸血鬼をあんたが相手するなんて無茶があるわ。しばらくは無理ね」
「そんな………」
僕はあの子に会えないのだろうか。そう考えていると顔に出ていたらしくチルノが笑って僕の頭を撫でた。
「バカね、しばらくの間よ。ハクに頼んで稽古つけてもらいなさい。それで見合った強さになったら案内するわよ」
「……わかったよ」
すぐには無理かもしれないけど会えるってわかったら少しやる気が出た。
その後、食事を食べて、ちょっとだけチルノと話し込んで、僕は眠りについた。
――― 少女夢見中。
見覚えのある暗い部屋に金髪のあの子が居た。声をかけた。
「フランドール、久しぶり」
「あ……えっと」
そうだった。最悪のタイミングで切れたせいで僕は名乗ってなかった。
「僕は明乃って言うんだ。よろしくね」
「そっか、よろしくね。アキノ、わたしのことはフランでいいよ」
「そう? じゃあフラン、何話そうか」
この子に会いに行けるのはまだまだ先かもしれない、それでも今の僕にできることをしていきたい。そう思った
――― 梅雨もようやく過ぎ、夏が本格的になりそうな頃 幻想郷は赤い霧に包まれた。
久々です。そしてスランプなう