東方氷娘記   作:亜莉守

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最終幕 宴会 【悪魔の妹】


第七話

 

それから一日して、またもや大宴会が開かれることと相成りました。場所はおなじみ博麗神社、ただし今回は……

 

「月見酒も乙よね」

「だな。明乃も飲むか?」

「はいはい、お断りします」

「釣れないわねぇ」

 

ブーブー言う霊夢たちから離れてため息をつく。僕は二十歳になるまで絶対に酒飲んでやるかってんだ。

 

「全く、ここの人って酒好き多いよなぁ」

 

空を見れば満天の星に綺麗な十六夜、今回は夜に宴会を開くことになったのだ。いつも昼間じゃ面白くないのと、意外と昼間が暑いのでこういうことになったらしい。

 

「でもまあ、たまには月見も悪くないかな?」

 

あー、なんかこうお団子とか欲しくなるなぁ。後、お茶 酒と甘いものなら断然甘いもの派だし。

 

「明乃」

「あれ? 咲夜、何で来たの?」

「あー、貴女には自己紹介してなかったわね」

 

え、いきなりどうかしたの? 実は咲夜の名前は偽名だったとか?

驚いていると咲夜はメイド服のスカートの端をちょこっと持ってお辞儀した。

 

「紅魔館、メイド長 十六夜咲夜でございます」

「え、咲夜ってあそこのメイドさん?!」

 

はぁ、びっくりだ。世間は狭いね。そう咲夜に言えば、ちょっと不機嫌そうな顔になった。

 

「って言うか、魔理沙とフランお嬢様が弾幕勝負をしていた時、貴女に弾幕が来ないようにしていたのは私なのだけど」

「え、そうだったの?」

 

そういえば、意識が戻った後誰かの人影を見たような……魔理沙に集中してて全然気が付かなかったや。

 

「はぁ、ま いつもの貴女らしいわ。お嬢様が貴女に話があるそうよ」

「あ、そうなんだ」

 

そういえばあの後、二人が泣き疲れて眠るまでずっと抱きつかれていたっけ、最終的に名前聞きそびれたし。

 

「ありがとうね。咲夜」

「礼を言うのは私の方、ありがとう 明乃」

「え? 何で」

 

僕は人に感謝されるようなこと何もしてないけど。

 

「貴女が行動するだけで救われる人間は居るのよ」

「???」

 

何を言いたいのかがよくわからないよ。

 

 

―― 少女移動中。

 

 

宴会場の一角に一つだけ違和感のある場所があった。他のところの食事はほぼ和食なのに対して、ここの食事は全部洋食なのだ。僕、最近自分が作った以外で洋食を見てない気がするんだけど。そこには見覚えのある面々が居た。その中の一人が僕に気付いて声をかけてきた。

 

「来たわね」

「どうも」

 

フランに抱き着いて大泣きしてたあの子だ。今日は落ち着きを払っていて、昨日のような幼さは全然見えない。

 

「わたしはレミリア・スカーレット、フランの姉で紅魔館の主よ」

「そっか、僕は明乃 湖のほとりに住む氷精の娘だよ。ところでレミリア、フランは?」

 

フランも普通に来るかなって思ってたのに。

 

「ちょっとだけ席を外してもらったの、今頃あの白黒のところよ」

「それって」

 

魔理沙で釣ったってことじゃないのかな?

 

「物は言い様ね。明乃、あの子の姉として貴女に礼を言うわ。あの子を助けてくれてありがとう」

「ううん、違うよ。僕はフランの呼びかけに『応えた』だけ、これはフランが自分でどうにかしたいってあがいた結果なんだ」

 

だから僕は誰にも礼を言われることなんてしていない、とレミリアに言えば彼女は首を横に振った。

 

「いいえ、貴女が居なかったらあの子は狂気に支配される『運命』から逃られなかった。わたしがどれだけあがいても手に入らなかったものを貴女は軽々と手に入れた。だからわたしから礼を言うのは当然なの。ありがとう、あの子を……フランを助けてくれて本当にありがとう」

 

レミリアが笑った。その笑顔は心の重荷がやっと降りたかのような顔だった。

 

「そっか、ここ最近の頭痛はレミリアとフランの二人分だったのか」

 

それは鬱になるわけだ。

 

「頭痛?」

「こっちの話、そういえばだけど他の人の名前も知らない気が」

 

だよね。結局紅魔館に潜入して、間すり抜けて、フランとバトって終わった気がする。うん、そうだ。巫女を食べてもいいとか言った門番さんとか亜里沙さんを追っかけてた紫色の魔女さんとか見事に名前知らないよ。

 

「あ、そうでしたね。私は 紅 美鈴、門番やってます」

「巫女を食べてもいい人類とか言った人」

「あ、あれは……ちょっとテンパってたと言いますか、とりあえず冗談ですから」

「そうなんだ」

 

紅 美鈴さんは身長の高い美人だ。赤い髪も長くて、雰囲気に合っている。名前の感じからして中華系かなって思う、服装も中華服に中華風の帽子だし。

 

「わたしはパチュリー・ノーレッジ、地下にある図書室に住んでいるの」

「そうですか。ちなみにだけど亜里沙さんなんで居たんですか?」

 

亜里沙さんの名前が出てきた途端にパチュリーさんの顔が引きつった。なんか地雷だったみたいだ。

 

「まあ、腐れ縁と言ったところよ」

「はぁ」

 

泥棒する亜里沙さんとそれを追いかけまわすパチュリーさん、大体そういうところかな?

 

「明乃」

「ん? どったのまり「アキノ―――っ」ふぎゃっ」

 

全身に衝撃が走った。金色と赤の弾丸に思いっきり抱き着かれる。

 

「大丈夫なのか……だぜ?」

「なんでそこを切ったのさ! 大丈夫だけどびっくりだよ」

 

いきなり抱きつかれるとは思わなかったから心の準備全然できてなかったし。

 

「驚かせてごめんね? アキノ久しぶり!!」

「昨日ぶりだね、フラン 元気そうでよかったよ」

 

フランの顔には笑顔が浮かんでいる。うん、よかったって心の底から思えた。

 

「アキノ、アキノ」

「なにかな?」

「ありがとう」

「……どういたしまして」

 





氷娘紅魔郷 これにて、閉幕


相変わらずながら本編は無駄にサクサク進むなぁ。クロスオーバーのあれ、需要ありますかね? あげておいて今更ですけど。

日常に戻ったら異界の異変が開幕予定です。
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