東方氷娘記   作:亜莉守

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氷娘真夏記
第一話


 

あの騒動からしばらくして、太陽の花畑の隅の方、そこには向日葵が咲いていないスペースがある。そこが僕の稽古場だ。師匠は……

 

「ふむ、結構いい感じの強さになってきたわね」

『そうね、回避能力は天下一品よね』

 

僕の保護者であるチルノとそれからこの太陽の花畑の住民である博麗博夢さんだ。二人は僕の弾幕勝負の稽古をしてくれているわけで、今は僕の成長度合いについて話し合っているけど……

 

「ボロ負けしている僕に向かってそれを言うとか何のいじめかな?」

 

さっき、博夢さん相手に惨敗したところだった。これで強くなったとか言われても実感がわくわけがない。

 

『いいえ、褒めてるわよ。確かに狂った吸血鬼相手に大立ち回りを決めれるくらいには成長しているし』

「そうね、これで怪我することがなくなれば完璧に合格ね」

 

いくら弾幕勝負といえども怪我はする。被弾すれば怪我はするわけで、

 

「それが一番難しい気がするんだけど?」

 

うん、そう思って悪くないはずだ。そこへ日笠をさした、緑の髪に赤い目のブラウスに赤のチェックのチョッキ、それから赤のチェックのロングスカートを穿いた、花の妖怪……風見幽香さんがやってきた。

 

「あら、あなた達また特訓してたの?」

「あ、幽香さん」

 

幽香さんは片手にじょうろを持っていた。花の水やりかな?

 

『ええ、結構強くなってきてるんだけどねぇ。一押しが足りないのよ』

「ふぅん……明乃、私と弾幕勝負しない?」

「へ?」

 

いきなりどうして?! 僕は幽香さんとは弾幕勝負をしたことがない。理由は相手が強すぎるし、相手が乗り気じゃないからってことだったのに、ここにきて急にこんなことになるなんて。

 

「あ、それいいかも」

『幽香、本気はアウトよ』

 

博夢さんが真剣な顔で言う。それだったらまず止めて、勝てる気がしません。

 

「ちぇー、でも結構明乃は骨ありそうよね」

「そこそこにとどめるように。被弾は一回でアウト、使うスペルカードは幽香が二枚、明乃は三枚、ハンデ付けた方がいいでしょ」

「まあ、それでもいいか。じゃあ、早速始めましょう」

「ええええ?!」

 

僕は抵抗する間もなく引きずられていった。

 

 

―― 少女強制弾幕中。

 

 

 

それからちょっと後、僕と幽香さんは本当に弾幕勝負をしていた。普通の弾幕からして僕のと比べ物にならないほどの威力がある。

 

「っ」

 

それをぎりぎりで避け続けているんだけど、その様子を見て幽香さんは楽しそうに笑っている。

 

「中々やるわね」

「はぁ、はぁ、はぁ 無茶ぶりにもほどがありません?!」

 

そう言うと、幽香さんはさらに楽しそうに笑った。この人どう考えたってドSだ。

 

「そうね。でもちゃんとついてきてるじゃない」

 

幽香さんが一枚目のスペルカードを取り出す。僕、避けきれるかな?

 

 

花符『幻想郷の開花』

 

 

「これを避けられたら合格よ」

 

もう、しゃべる余裕なんて全くない。とりあえず避けることに集中しないと!!

 

「うんうん、中々じゃない」

 

避けるには避けられるけど、もう完璧に余裕がなくなった僕はスペルカードを取り出して宣言する。

 

「っ、まだまだっ」

 

 

冷雨『梅雨寒(つゆざむ)

 

 

僕が作った新スペルカード、雨を思わせる細く細かい弾幕が特徴だ。ついでに言うなら実際に雨が降る、ここ最近暑いからむしろありがたい効果なんだよね。それを使ってどうにか幽香さんの一枚目のスペルカードを避けきることに成功した。

 

「へぇ」

 

幽香さんの目が細くなって、口元には笑みが浮かんでる。その背後には魔理沙のマスタースパークと同じ魔方陣が表れていた。あ、これなんかやばい?

そう思っていたらチルノが間に割り込んで来た。

 

「すとーっぷ、そこまで!!」

「あら」

「へ?」

 

 

―― 少女弾幕終了中。

 

 

『全く、トリプルスパークを撃とうとするバカがここにいるとは』

「とりぷるすぱーく?」

 

なにそれ、魔理沙のマスパの別物?

 

「魔理沙のマスタースパークを三本纏めたものよ。かわすか防御するかできる?」

「むりむりむり」

 

流石に『アイシクルイージス』でも防げないよそれ。

 

「でしょ。今回の勝負は明乃の勝ち、弾幕自体は上手くかわせてるし、合格ラインは通っているわ」

『そうね、とはいえ別に合格祝いとかあるわけでもないのだけど』

「じゃあ、これをあげるわ。元々貴女にあげようとしたものだし」

 

そういうと幽香さんが水色の布地でできた傘を差しだしてきた。

 

「え、日傘?」

「ええ、最近日差しきつくなってきたし必要かと思ったのだけど」

 

確かに冷房器具のないこの世界ではこういうものは必要だよね。最近本当に日差しが強いからありがたいかも。

 

「ありがとうございます」

「よかったわ。ところでなのだけど、あのスペルカードってどうやって発想したの?」

 

はい? なんでそんなことを?

 

「あれですか? ちょうど慧音さんの寺子屋の手伝いで季節の慣用句の勉強やってたんですよ。それで綺麗な言葉だなって思ったので、その時に。梅雨寒っていうのは冷夏を運んでくる冷気のことで、雨が冷たくなるらしくて」

 

そう言うと幽香さんがちょっと残念そうな顔でため息をついた。

 

「そうなの……はぁ」

「どうかしましたか?」

 

この人がため息つくなんて珍しい気が。

 

『あー、あれでしょ。今年は無駄に暑いから植物が水不足なのよ。それをそのスペルカードで補いたかったとかかしら』

「流石ハク、よくわかってるわね。でもどうしようかしら」

『天候を操るとかあたしには無理だしね』

 

そんな妖怪いたら確かに凄そうだよね。でもそんなのいるかな?

 

「えと、スペルカード考えましょうか?」

 

とりあえずこの状況をどうにかしないとまずいよね。そう思ってとっさにそう言った。すると博夢さんが嬉しそうな顔でお礼を言ってきた。

 

『本当、ありがとう』

「でも、すぐに思いつけとかは……あ」

 

ふと、雨を表す言葉を思い出した。あれはとても綺麗だったよね。

 

「ん?」

「あ、いえ」

 

イメージをそのままに宣言する。

 

 

慈雨『狐の嫁入り』

 

 

さぁっと晴れ渡った空に雨が降り出した。

慈雨は晴れが続いた時に降る恵みの雨、狐の嫁入りは晴れているのにいきなり雨が降ることの例え、どちらもとても綺麗だ。

 

「へぇ、なんと言うか」

『綺麗ね』

「うん、いいじゃない。それにすごく綺麗だわ」

 

まだ降っている雨を見ながら幽香さんに尋ねる。

 

「これでいいのですか?」

「ええ、これがいいわ。明乃、たまに来て水やり手伝って頂戴ね」

「あ、はい」

 

今日の稽古はこれで終わった。

 

 

―― 少女帰宅中。

 

 

家に帰ったらなぜか魔理沙がいた。挨拶をして、お茶を出して、今日の出来事を話す。

 

「へぇ、そんなことがあったのか」

「うん、それにしても魔理沙どうしたの? その大荷物」

「ああ、これか わたしは避暑地へ旅立つことにしたんだ」

 

もうそんな時期なのか、魔理沙は暑くなってくると避暑地へ旅立つ。今年もその時期になったらしい。

 

「そっか、そういえばチルノが氷室に引きこもったよ。今年は無駄に暑いよね」

 

去年まではもう少しマシだった気がするんだけど。流石のチルノでも耐え切れなくなったらしくて冷たい氷室へ移動した。僕は行ってないけど。

 

「だな、この暑さは異常だぜ。人里でも人がバタバタ倒れてるらしいぜ」

 

熱中症になる人が続出しているらしい。

 

「あー、そういえばね。慧音さんも頭抱えてた。ところでだけどさ、魔理沙」

「なんだぜ?」

 

魔理沙が首をかしげる。別に大したことじゃないんだけどさ。

 

「いつまでウチに居座るつもり?」

「最後の晩餐をいただくまで」

「………」

 

あー、なるほどね。

 

「そうですかドチクショォォォっ!!」

 

タダ飯食べに来たのか、そうなのかっ。ちょっとイラッとしながらキッチンへと向かう僕に魔理沙が言う。

 

「旨いもん期待してるぜ」

 

あー、もう決めた。今日の夕食は洋食にしてやる。ついでにパンも焼いてやるっ!! 咲夜から材料もらってるんだもんね!!

その日の夕食、不機嫌そうな僕を見て冷や汗たらす魔理沙をしり目に僕は自作の豪華フルコースを堪能したのだった。

 





夏の暑い日の話
季節的には梅雨にも入っていないわけですが

文章の中の夏には夢があるなと。実際の夏はきついですけどねー。
同じように雨の日本語表現には雅が詰まっているなぁと感じる今日この頃です。


えっと、コラボに集中するのでこちらの更新はしばらくないです。
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