「ふぃー、暑いなぁ」
日差しで溶けてしまいそうだよ。
僕はふらふらと湖の上を飛ぶ、反射する太陽の光もとても眩しい。水面ギリギリを飛んでどうにか反射を見ないようにしてるけどそれでも眩しいなぁ。上の方、飛んでると暑いし。
しばらく飛んで、僕は赤が特徴的な屋敷に着いた。門をくぐる前に門のそばに立って(もたれかかって?)いた美鈴さんに声をかける。
「こんにちはー、今日も暑いねー」
夏だし暑くないといけないんだけど、それでも日差しがきついのは勘弁して欲しいなぁ。
僕が声をかければ美鈴さんが笑って返す。顔赤いけど大丈夫かな?
「ええ今日も真夏日ですねー」
「何も日差し避けるのなくて大丈夫?」
特に日陰とかなさそうだし、これでよく立っていられるよね。僕が聞いてみたら美鈴さんは親指をぐっと立てて答えた。
「まあ、これくらいなら気合でどうにかなりますよ」
「ちょ、気合ってシャレにならないから!」
気合だけで夏がどうにかなったらすごいよ。とりあえずってことで取り出した手ぬぐいを持っていた水筒の水でばしゃばしゃと濡らしてから軽く凍らせた。それを少しほぐしてから美鈴さんに渡す。
「はい、少しはマシかと」
「うわぁ、ひんやりしてますね」
手ぬぐいを額に当てる美鈴さんは気持ちよさそうな顔をしてた。やっぱり気合だけでどうにかなるものじゃないよね。うん
「後で咲夜に言っておくよ。門番さん暑そうって」
メイドさんバタバタ倒れて大変だろうけど門番は一人しかいないんだし倒れたら余計に大変じゃないか。
「あ、いや そこまでしてもらわなくても」
美鈴さんは慌てたように言った。
「いいの、僕がやりたいだけなんだから。じゃあ失礼しまーす」
「あ……行っちゃった」
―― 少女来訪中。
しばらく道なりに飛んでいると見慣れた銀髪の青いメイド服を着たメイドさんが居た。咲夜だ。
「こんにちは」
「あら、明乃いらっしゃい、今日は何か用事?」
手にはお盆を持っている。もしかしたらフランとレミリアに紅茶を持って行った後なのかもしれない。まあ、全部憶測にしかならないけどねー。
「やっほー、咲夜 パチュリーさん居る?」
「パチュリー様なら図書館よ」
予想はついてたけどやっぱりかー。パチュリーさんが外に出るってことの方が珍しいのかな?
「そっか、ありがと。そうだ、これ差し入れ。メイドさんバタバタ倒れて大変だって聞いたから」
手荷物の中から粉末のスポドリを取り出す。紫に言ったところ普通に用意してくれたんだよね。これが一体何なのかを説明すると咲夜は黙って聞いてくれた。
「……ありがとう、後で何か冷たいもの持っていくわ」
「お、さんきゅー」
さーて、僕は図書館へ行かないと。
―― 少女移動中。
「こんにちは」
図書館の扉を開けてそう言えば、赤い髪に白のブラウス、黒のチョッキ? にロングスカート姿の悪魔の羽みたいなのを生やした女の人が飛んできた。彼女は小悪魔さん、大体の人からはこあさんと呼ばれている。この図書館の司書さんだ。
「あ、明乃さんいらっしゃいませ。どうかなさいましたか?」
「こあさん、パチュリーさん居る?」
今日はパチュリーさんに会いに来たんだ。別に目的からしたらこあさんでもいいかもしれないけど、たまにはパチュリーさんと話すのも悪くないかもしれない。
「あ、パチュリー様ですか。えっと」
「こあ、私ならここにいるわ」
パチュリーさんがこっちへ飛んできた。珍しいなぁ。亜里沙さんでも来ない限り、滅多に動かないのに。
「パチュリー様」
「こあ、悪いけど この本棚に戻してきて頂戴。それから明乃、いらっしゃい」
パチュリーさんが挨拶してくれた。探す手間が省けてこっちとしてはうれしいかぎりだよ。
「こんにちは、パチュリーさん 実は探してる本があって」
「本? まあ、いいわ。奥へいらっしゃい」
―― 少女移動中。
僕は図書館の奥にある長いテーブルと椅子に案内された。パチュリーさんに促されて椅子に腰かける。パチュリーさんも目の前の席に座った。
「それで何の本探しに来たのかしら?」
「七夕の本ありません?」
ぼくがそう言うとパチュリーさんはちょっとびっくりしたような顔をした。
「七夕っていうとあれかしら、笹飾って短冊たらす」
「はい、それです。今度、寺子屋で七夕の劇やろうかって話になって」
なんでそんなことになったのかは今となっては不明だけど、七夕伝説の劇を子どもたちに見せることになったのだ。当然僕は見せる側、しかも慧音さんが割と忙しいから僕の方に丸投げされたし。
「それくらいであれば人里の資料で足りるはずじゃないかしら?」
「まあ、そうだったら嬉しかったんですけどねー。どう考えても別のおとぎ話としか思えないものしか見つからなくって」
阿求さんの家で見つけたあれって七夕伝説に入るのかなぁ?
「? どういうことよ」
「織姫と彦星の話ではなく、とある仙女と農民の話が出てきて………」
とある仙女が地上に水浴びをしに来た。その折に仙女を見かけて、仙女に惚れた農民は仙女の羽衣を隠してしまう。でも、隠したものはいつか見つかってしまうわけで、子どもも生まれた頃、仙女は羽衣を見つけて天上へと帰って行ってしまう。仙女は帰る前に夫である農民が天上に来れるようにメッセージを残しておいた。『草鞋を100足編んで埋めること』農民は99足まで編むのだけど我慢できずに99足を埋めてしまう。それでもまあ、辿り着けたことには着けたわけだからいいとして。その後、農民は仙女の父親と食事をすることになる。天上の食べ物は縦に切ってはいけないと仙女から忠告を受けるのだが、農民は瓜を思わず縦に切ってしまう。瓜からあふれた水はとんでもない量となって二人を分断してしまった。仙女が農民に「七日の日に」と言い続けたせいで「七月七日」にのみ会うことができるようになってしまったのでした。
―――って話だったはず。最近読んだばっかりなのにうろ覚えだなぁ。
「あー、そういうこと。亜流ね」
「はい、そういうわけなんで正規の資料が欲しいなぁと」
これ知ってるのと全然違うし。
「別にそれが間違っているってわけじゃないのだけど……まあ、いいわ。適当に見繕ってあげる」
「ありがとうございます」
助かった。これで断られたらどうしようかと思ったよ。
「別にいいわよ」
「失礼します」
そこに咲夜がお茶を持って来てくれた。流石、紅魔館だ。グラスに入ってるよ。でも、氷とかはないんだ。
「あら咲夜、ありがとう」
「いえ、構いませんわ。明乃もどうぞ」
咲夜がコースターを敷いて、グラスを置いてくれた。流石メイド長、こういう気配りもできるんだ。
「ありがとう。あれ、ぬるい」
コップを持ってみたらぬるかった。あれ?
「ごめんなさい、氷をちょうど切らして」
「あ、そうなんだ。大丈夫だよ」
僕が力を込めると、コップの中身がじわりと凍っていく。これくらいかな? 飲んでみたらちょうどいい冷たさになってた。うん、これで良しと。
「明乃の能力って『氷を使う程度の能力』なのかしら」
「え? なんで、僕の能力は『呼びかけに応える程度の能力』だよ?」
物理面じゃ何にも仕事しない能力だけどねー。咲夜とかの方がよっぽど使い勝手よさそうだよ。
「そういう話じゃないわよ」
「?」
一体どういうことさ? それはそうと咲夜の顔を見たら大切なことを思い出した。
「咲夜、美鈴さん暑そうだったよ。日陰とかもないし」
「あら、そう?」
咲夜が首を傾げた。重要度はかなり大きいと思うんだけど……。
「うん、ちょっと顔とか赤くなってたし。いくら妖怪でも夏バテとかあるんじゃない?」
「そこまで考えが回ってなかったわ。ありがとう、明乃」
「役に立てたならうれしいよ」
咲夜がパッといなくなった。多分時間を止めて移動したのかな?
「美鈴も大変ね」
「そうですね」
美鈴さんは何で門番やってるんだろうなー。
夏の日の話
七夕の話ってこれで合ってます? なんか「まんが日本昔話」で見た気がするんですよね。この内容
自分的には織姫と彦星の話の方がイメージあるなぁって感じがする。
明乃さんの七夕奮闘記?