東方氷娘記   作:亜莉守

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第四話

その日、僕は寺子屋に来ていた。机の上にはパチュリーさんが選んでくれた本が数冊と一向に進まない原稿用紙(阿求さんから貰った)と湯呑に入った冷たい麦茶がある。頬杖突きながら呟く。

 

「うーん、どうしようかな」

 

僕は七夕の人形劇のナレーション用の原稿を書いていた。これがなかなか難しい。言葉使いとか、表現方法とか。色々と悩んでいるとカラカラと扉の開く音がして、慧音さんが入ってきた。

 

「明乃、どうだ。準備は進んでいるか?」

「まあ、一応? ナレーションが決まらなくて」

「なれーしょん?」

 

慧音さんが首を傾げた。あ、これも外来語だよね。僕らは普通に使ってるから違和感ないけど、こっちじゃ全然使わないか。どうにか説明しないと。

 

「あ、こっちの言葉で言うと……うーん、あらすじ紹介? いや、違う?」

 

こういうのって意外とわかんないなぁ。とっさに出てくるかって言われるとあれ? ってなるし……うーん? 困っていると慧音さんが僕に言う。

 

「とりあえずどういった物か教えてほしいのだが」

「あ、要するに場面が変わった後で大筋を紹介すること……多分そうです」

 

ナレーションってそういうことだよね? 僕としてはこういう認識なんだけど。断言できてない時点で色々と不安要素あるけど仕方がないや。ちょっと考えていた慧音さんがこっちを見て言った。

 

「つまり語り手ということか」

「あ、それだ!」

 

あー、すっきりした。うん、そういうことだよね。僕が納得してると慧音さんは不思議そうに僕に聞いた。

 

「なるほどな、それだったら普通に本にある通りでいいんじゃないか?」

「それだと子どもに伝わりませんよね。子どもって面白くないとすぐに飽きるから」

 

子ども相手に読み聞かせするときは結構注意してやってるんだよね。飽きると聞いてくれないし、わからないことはいちいちツッコミはいるし。慧音さんも「あー」といった感じ顔をするやっぱり教職はその辺気を遣うのかな?

 

「確かにな、どれ 私に見せてみなさい。これでも寺子屋の講師だ。子どもにわかりやすく伝えることは得意だぞ」

「あ、本当ですか?」

 

慧音さんが協力してくれるなんて思わなかったよ。僕が驚いていると慧音さんが笑った。

 

「もちろんだ。明乃に全部を頼んだのも私だし手助けくらいするさ」

「ありがとうございます」

 

僕ってこういう作業向いてないみたいなんだよね。さっきからずっと筆止まったままだし。慧音さんに場所を譲った僕は、慧音さんが本を片手にさらさらと書いていく様子を眺めていた。

 

 

―― 少女脚本書中。

 

 

しばらくして、慧音さんが筆を置く。その顔は満足げだった。出来たのかな?

 

「こんなものだろう」

「おお、慧音さんありがとうございます。僕一人じゃ絶対に終わらなかったですよ」

 

僕が驚いていると慧音さんは得意そうな顔をして言った。

 

「まあ、適材適所というやつだ」

 

慧音さんが作ってくれた原稿を確認しながら話をしていると、寺子屋の扉が開いた。だれかな?

 

「けいねー……ってあなたたち何やってるの?」

 

銀の髪に赤いリボン、妹紅さんだ。何時もの通りに慧音さんを訪ねてきたのかな? 手に何か持ってるし。とりあえず挨拶しないと。

 

「あ、妹紅さん 今度の七夕の劇の台本作りです」

「へぇ、何で台本なんて?」

 

妹紅さんが不思議そうにしている。人形劇だしサイレントでもいいかもしれないけどね。あ、いや普通に声とかあった方が面白いかな?

 

「幕間に入れていくらしいぞ」

「まあ、知らない子でもわかってもらえるようにって感じですかね」

 

妹紅さんが来たときに僕が机の上に置いた原稿を妹紅さんが手に取ってぱらぱらとめくる。

 

「ふぅん、わたしにも読ませて」

「ああ、いいぞ」

「別に構いませんよ」

 

妹紅さんは原稿を読み始めた。慧音さんは奥へと戻って行った。そして僕は慧音さんの邪魔をしないように借りていた本を読み始めた。

 

 

―― 少女読書中。

 

 

しばらくして、妹紅さんが原稿を置いた。視線でどうだったかと促すと真面目な顔で感想を言ってくれた。

 

「うん、はじめて知ったよ」

「そうなんですか?」

 

割と有名かなって僕は思ってたけど。でもまあ、七夕伝説自体が有名かっていうと違うよね。僕だって今回の一件があるまでは大まかなところしか知らなかったし。むしろあれだよね。短冊吊るすのあっちの方が有名だろうし。

 

「ええ、こんな悲しい恋の話だとか知らなかった」

「とりあえずわかりやすかったですか?」

 

そこ大事なんだよね。伝わりにくちゃダメ。まあ、慧音さんが書いてくれた奴だし大丈夫だろうけど。

 

「わたしとしてはちょっと物足りない感じだけど、物語としてはわかりやすかったよ」

「一応子ども向けですからね。子どもにわかるように書いてますし」

「なるほどね」

 

妹紅さんと僕が話していると奥に行っていた慧音さんが戻ってきた。手には湯呑が乗ったお盆がある。

 

「おーい、茶が入ったぞ。二人とも飲むか?」

「あ、いいんですか?」

「ありがとう慧音、わたしもお団子買ってきたんだけど」

「それはちょうどいいな」

 

話してる二人を見てちょっと申し訳なくなった。僕、これといって何もしてないよね。ついでに言うならお菓子とか持って来てないし。

 

「なんかごめんなさい。何もなくて」

「いいわよ。わたしが好きでやってるんだから」

「構わないぞ。明乃はいつもがんばっているんだ。気にするな」

 

二人は笑って僕の頭を撫でた。あれ? 何でかな。もしかしてやっぱり僕の扱いって子ども? いや、年齢的には二人よりも確かに年下だし。難しく考えるの止めておこう。うん、そうしよう。

 

「それじゃ、食べましょう」

「だな」

「頂きます」

 

そんなわけで僕らは三時のおやつを楽しんだのだった。




久しぶりの更新です。CCCとかいろいろうつつを抜かしてすみませんでした。
七夕までには一応終わらせたいなぁという願望は一応持ってます。七夕話なのに七夕過ぎてからラストとか流石に無いですからね。

それから、蓬莱人形様がコラボしてくださいました。この場を借りましてお礼申し上げます。
ついでに番外編収録の「氷娘刹那録」も合わせてどうぞ。

※追記 うっかり番外の方に更新してました。すみません
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