東方氷娘記   作:亜莉守

45 / 52
第七話

 

 その日の夕方、昼寝から起きた僕は博麗神社に来ていた。鳥居の上から夕日を眺めている。沈む夕日は綺麗な橙色で遮蔽物なんて何もない幻想郷ではそれがよく見える。

 

「もうそろそろか」

 

 日が沈んだら星が見れるといいんだけど。そんなことを考えていると下の方から声がした。博麗神社だし霊夢かな?

 

「あら、明乃 こんなところで何やってるのよ?」

 

 隣に霊夢がふわりと降りてきた。やっぱりそうだよね。ここにいると結構目立つし、霊夢がこっちに来るのも当然か。

 

「星観察でもしようかと」

「なるほどね。とは言え私は星を見る気もないから一人でやってなさい」

「あはは、霊夢は風情がないねぇ」

「ふぅ、それは人の好き嫌いにもよるわよ。じゃあね」

 

 霊夢は鳥居からすっと降りて行った。ふと、霊夢の居たところを見れば湯呑に入ったお茶が置いてある。霊夢がここで飲むわけないし……あー。

 

「霊夢ってやっぱ優しいとこあるよね」

 

 そう呟いてみた。お茶はありがたくいただくことにしよう。星、見えるといいなぁ。雲ちょっと濃くなってきたし。

 

 

―― 少女観察中。

 

 

 そのまましばらく博麗神社の鳥居で星を見ようとしてると、頭の上の方から聞き覚えのある声が降ってきた。

 

「お、明乃!」

「あれ、魔理沙?」 

 

 黒と白のエプロンドレスに夜空に映える金色の髪、魔理沙だ。箒に乗って手を振っていた、それから魔理沙は僕の隣へと着地した。

 

「何でここに?」

「んー、ちょっと空飛んでてな、その時に明乃を見かけて降りてきたんだ」

 

 あー、なるほどね。でも、ここ目立たないと思うけどなぁ。もしかして魔理沙は夜目がいいのかな?

 

「ところで何やってるんだ?」

 

 魔理沙が急に聞いてきた。まあ、答えは一つしかないんだけどね。やってることをそのまま口にした。

 

「星観察」

「へ?」

 

 魔理沙が驚いた顔をする。うーん、特に驚かれるようなことはしてないんだけどなぁ。

 

「今日七夕でしょ。だったら天の川見えるかなって」

「ふぅん、天の川か。かなり雲がすごいし、見えるのかこれ」

 

 うん、魔理沙の言うとおり雲でほとんど何も見えてない。ついでに言うなら雨でも降るんじゃないかっていうくらいしけってる。

 

「まあ見えなくてもいいけどさ。織姫と彦星が会えないのはちょっとかわいそうかと」

 

 確か七夕に雨が降ると会えないんだよね。確か しみじみ考えてると魔理沙のツッコミが入る。

 

「いや、せっかくの逢瀬を邪魔するなよ」

「え? 雨降ったら会えないんでしょう?」

「いや、別にそんなのないだろ?」

 

 ここで僕らは意見の食い違いに気が付いた。互いに同時に首を傾げる。

 

「あれ?」

「え?」

 

 結局その後もくだらない会話で盛り上がった僕らだった。

 

 

―― 少女歓談中。

 

 

「そうだ」

 

 そんなこんなでしばらく話しているといきなり魔理沙が言い出した。それから魔理沙が急に立ち上がる。どうしたのかな?

 

「天の川、見せてやるよ」

「へ?」

 

 いきなり何?! 驚いてると魔理沙が箒に乗って空を飛ぶ、ある程度飛んだらこちらを向いてきた。暗いから顔はよく見えないけど多分にやっと笑ってるに違いない。そして、スペルカードを取り出した。

 

 

魔符『ミルキーウェイ』 

 

 

「うわぁ……」

 

 そこには天の川を(かたど)った弾幕が張られていた。魔理沙のお得意の星の魔法だ。いつもは昼間しか見ないし、暗い所でも他の弾幕が光っててよく見たことないからこんな風になるとは知らなかったよ。

 

「どーだ。星の魔法ならわたしの得意分野だぜ!」

「うん、すごいや! 魔理沙」

 

 もうそれしか言葉が出なかった。他にどういっていいのかわからないくらい綺麗だ。

 

「もちろん! なんだったら流れ星流すか?」

「いや、このまま見てたいな。魔理沙も一緒に見よう」

 

 こっちこっちと手を振れば魔理沙はちょっと黙ってから僕の方に無言で来た。それから鳥居の上に座り直して僕の頭の上に手を乗せる。何で?!

 

「それもそうだな。流れ星は派手すぎだな」

 

 そのままわしわしと頭を撫でられてるんだけどなんでさ。まさか僕の扱いって魔理沙の中でも子どもなの?!

 

「え? そう」

「ああ」

 

 そのまま弾幕が消えるまで僕らは空を眺めていた。でも、所詮は弾幕で作った天の川、結構すぐに消えてしまった。あーあ、とか思ってると魔理沙が僕の手を掴んだ。

 

「明乃!」

「え、どうしたの まり、うわっ?!」

 

 魔理沙が僕を乗せて箒を物凄い勢いで飛ばしだした。驚いた僕は魔理沙に掴まった。そうじゃないと箒から落ちそうで怖いよ。

 

「ひゃっほぅ! このまま飛ばすぜ!!」

「えええ?!」

 

 ドップラー効果かって言わんばかりに僕の声が博麗神社のある山に響き渡ることになってしまったのだった。

 

 

―― 少女飛行中。

 

 

 着地したかと思ったらいきなり魔理沙の帽子を頭にかぶせられた。頭のサイズが合わなかったらしくて物凄く深めに帽子がくるせいで、前が見えない。その状態のまま魔理沙に手を引かれる。

 

「ほら、こっちこっち」

「どこに向かってるのさ! あと、この帽子どうにかしてよ!」

 

 魔理沙に文句を言ってみるけど魔理沙はくつくつと笑うだけ、もう一体何がしたいのさ? いきなり何をするのかなぁ。

 

「そりゃぁ出来ない相談だぜ。もう少しだからさ」

 

 それからしばらく手を引かれたまま進む。途中で坂道があったり、木の根っこに(つまづ)きかかったことを考えると、ここは森の中のようだ。

 

「着いた!」

 

 その声と同時にかぶせられてた帽子が外される。一言文句言ってやろうと目の前にいるはずの魔理沙の方を向いた。

 

「あーもう、何で急にこんなこと……って、え?」

 

 魔理沙の方を向いた瞬間、目の前にある光景に目を奪われた。満天の星空、としか言いようのないくらいの星空がそこにはあった。天の川もきれいに見える。

 

「わたし一番のおすすめ場所さ。凄いだろ」

「う、うん ミルキーウェイなんて比じゃないくらいだよ」

 

 褒めたつもりなのになんか魔理沙は不機嫌な顔をした。なんでだろう

 

「ちぇー、まあこれに追いつきたいんだよなぁ」

「あ……ごめん」

 

 魔理沙のことを無神経に傷つけてしまったようだ。

 

「ん、何で謝るんだ? わたしの努力不足なだけだろ。それよりもさ」

「うわっ」

 

 魔理沙に肩を押されてその場に仰向けに倒れる。あんまり痛くない。ここはどうやら草原のようだ。目を開けてみれば星空がさっきよりも輝いて見えた。

 

「星観察といこうぜ?」

 

 頭の向こうから魔理沙の声が聞こえてくる。魔理沙も仰向けになったみたいだ。でもこれは想像以上だなぁ。

 

「うん!」

 

 今年の七夕は随分と印象深いものになったのだった。

 

 





七夕話、これにて終了。


七夕終了まであと一時間

ちなみに明乃が言ってたジンクスは自分の思い込みだったもの。雨、降りませんでしたね。まあ、かなり曇ってますけど。


これと言って続きの話が思いつかないのでしばらく氷娘は更新しないと思われます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。