東方氷娘記   作:亜莉守

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第二夜 竹林幸兎 【幸運の素兎】


第二話

 

亜里沙さんの箒に(無理やり)乗せられて僕は夜が続く幻想郷を飛んでいく。そして、亜里沙さんの箒がちょっと見知った場所へと向かっていく。

 

「あそこって……竹林?」

「ああ、白兎が管理人を務める魔法の竹林だ」

 

亜里沙さんが得意そうに言う。白兎……兎?

 

「へ? 白兎って……てゐ?」

 

確か黒髪だけど白い耳があったはず。

 

「お、知ってたか。その、因幡てゐだ。妖怪兎の大将なんだぜ。でも、この林なんか妙な力が働いてるな」

 

こんな力が竹林にあったか? と亜里沙さんが呟いている。妙な力って何だろう?

 

「妙な? 迷うとかそんなわけじゃなくって?」

「ああ、うーん。なんて言ったらいいんだ? 元々この竹林にある魔法と違うんだよ」

 

え? 魔法?!

 

「え、この竹林って魔法が掛かってるの?」

「まあ、一応な。あの竹林が人を惑わしやすいっていうのは知ってるだろ」

「あ、うん。兎居なかったら診療所まで行けないし」

 

未だにあそこは行くたびに迷うんだよね。飛んでいくときはいいんだけど妹紅さんちとか行くときには絶対迷ってるし。

 

「そ、あの迷いやすさっていうのがあの竹林にある魔法って奴なんだ」

「具体的にどんな魔法なの?」

 

そんな魔法ってあるんだ。魔法って何かこうすごいどーんって感じがしてるんだけど。

 

「似たような竹が生えやすい」

「え、そんなこと?」

 

凄くしょうもない気がするんだけど。てか、地味すぎない?

 

「魔法っていうものは、別に奇跡を起こすようなものじゃなくって身近にあるものなんだよ。意識をしなくたって魔法は世界に行き渡ってる。それに気が付くのも気が付かないのもそいつの運さ」

「そうなんだ……魔法は身近にある」

 

探したら実は魔法ってたくさんあるのかもしれないなぁ。そんなことを考えてたら呆れたような感じで亜里沙さんが言う。

 

「ま、別に研究する人間でも使おうっていう人間でもないんだから。そんなもんだーって思っときゃーいいんだよ」

「そっか、でも魔法かぁ」

 

釘を刺されるとさらに興味が湧いてくるっていうかさ。亜里沙さんはそんな僕も見透かしていたらしい。前を向いたまま亜里沙さんは僕に言う。

 

「魔法は極めりゃ人間やめる羽目になるし、中途半端に習得すれば身を滅ぼすことだってある。興味本位で始めるのはあたし的にはおすすめしねーぞ」

「あはは、そう? でも、魔理沙の魔法は綺麗だなって思うよ」

 

魔理沙という単語を聞いて亜里沙さんが少しだけ固まる。それからさらに呆れたような声を出す。

 

「はぁー、あれもどうしてあんなの始めようなんて思ったんだか」

「………僕は魔理沙の魔法好きだよ」

 

僕は亜里沙さんの腰に腕を回してぎゅっと抱き着く。亜里沙さんが少しだけ黙ってからちょっとだけ嬉しそうな声で言う。

 

「そりゃよかった。あたしが嬉しいよ」

「それにしてもここが騒動の原因ってことは………」

 

騒動の原因ってもしかして………。

 

「! どうやら、あちらさんから出てきてくれたみたいだぜ?」

 

箒が急に向きを変える。何が起こったのかと見てみれば、弾幕を纏ったてゐがそこに居た。

 

「………」

 

 

――― 少女対峙中。

 

 

 

弾幕を纏ったてゐと亜里沙さん、それから箒をどうにか降りた僕の三人が向き合う。

 

「よー、白兎」

 

亜里沙さんが軽い感じでてゐに声をかける。するとてゐは呆れたような表情で額に掌を当てながら呟いた。

 

「はぁー、ウサギたちが『魔法使い』がやってきたってうるさかったから様子を見に来たら『普通の魔法使い』とはね。しかも500年物の超大物だし」

「あー、そっかてゐって長生きだったんだ」

 

僕と外見ほとんど一緒だったから全然そんな感じしてなかったよ。その呟きでようやく僕に気が付いたらしくてゐがこっちを向いた。

 

「あら、明乃も居たの? ま、今回は私は永遠亭の味方だからごめんね?」

 

てゐがにやりと笑う。うん、これは本気モードだ。チルノが本気出してるときとかこんな感じだよ。

 

「よーし、行くか!」

 

亜里沙さんがさっそくスペルカードを構える。これは流れ弾覚悟で行かないとまずいかも………って、あ。なにやってるんだろう僕は。

 

「結局こうなるんだね。はぁーあ、チルノどうにかしないといけないのに」

 

そうだよ。異変を解決して、チルノと慧音さんの戦いを止めないといけなかったんだ。

 

「ん? チルノ? あのバカ氷精が何かあったの?」

「いや、なんか慧音さんと躊躇ない弾幕勝負をやってて……」

 

僕がてゐにそう言うとてゐが今度はてゐは髪をわしゃわしゃと掻きだした。

 

「……あー、だからあたしはこの計画反対だったのよ。明乃、バカ氷精はどの辺で戦ってる?」

「えっと、人里のあたり……」

 

場所を言うとてゐさんはすぐに僕と亜里沙さんをすり抜けて行く。慌てて振り返ればてゐは全く振り返りもしないで、ちょっと止まって言った。多分にんまりと笑ってると思う。

 

「あいよ。じゃあ行ってくるか」

「え、あ。あれ?!」

「ちぇー、つまんねーの」

 

反応するのがちょっと遅れた。そして、見る見る間にてゐが遠くなっていく。前には誰も居ない。えーっと……?

 

「これ、進んでも大丈夫なのかな?」

「多分大丈夫だろ。あれはあれで腐れ縁だしな。慧音の事となるとあいつも絡んでくるからそれが一番大きいんだろうけどな」

「???」

 

亜里沙さんの言っている事が全くもってわからない僕だった。

 





あれー? 弾幕勝負の機会がどんどん減ってく気がする。何だろう、てゐとチルノのライバル関係は前からの設定だけどこんなところで発揮されるなんて思わなかったんだ。

それから魔法に関しては完全なる自己解釈です。そんな地味なもん魔法じゃねーよと言うツッコミは心の内にお願いします。

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