無事に薬師屋も下した僕たちは事の元凶であろう女王様を探しに廊下の先にある扉をくぐってここに来た。あの廊下といいここの廊下といい長すぎやしない?
「この廊下無駄に長い気が」
「だなー。あたしもくたびれてきたぜ」
愚痴を言い合いながらもふらふらと当てもなく飛んでいく。すると銀髪青眼のロングスカートのメイド服が壁に寄りかかって気持ち悪そうにしていて、金髪赤目の赤と白のワンピースに一見すると壁飾りのような羽の少女が一生懸命に彼女に話しかけていた。ああ、あの紅い館の住民たちがここに来ていたらしい。ある意味僕自身にとっての原点ともいうべき存在だよなぁ。特に赤白
「あら、明乃に……大きい魔理沙?」
「! 誰だ。あんた」
「やっほー、銀時計」
あー、そういえば銀時計(さっき命名)はこの魔女服とは会ったことないんだっけ。思えば『僕』の交友関係って『僕』から派生しないことが多いかも。
「あ、明乃?」
銀時計は僕の反応を見て固まった。まあ、それはしょうがないよね。みんなが知っている『僕』とは確実に違う反応なわけだし。
「あたしはガン無視かい」
「あら、ごめんあそばせ。気が付いておりませんでしたの」
「見りゃなんかあの赤い館のメイドっぽい恰好してるな。でも人間だよな?」
二人が会話をしているのを見ながら銀時計の様子を観察する。やっぱりこの空間の力によるダメージを受けているみたいだ。あの調子じゃ平行感覚とか距離感とか全く取れてないんじゃないのかな。一応忠告するだけしようか。
「……はぁ、狂い掛けの銀時計はささっと戻った方がいいよ? ただですら人の気を狂わそうとする月の光がある空間なんだ。そんなわけも分からない様子じゃ大変でしょ」
「明乃……」
僕の調子がよっぽどショックらしい。完ぺきに絶句してるよ。うわぁ、どうしようとか考えていると背中に衝撃が走った。
「アキノ!」
「うわっ……吸血鬼、妹の方か」
赤白に飾りのような羽、こいつの名前なんだっけなぁとか僕は考える。すると彼女は僕の考えを察知したのか。
「わたしはフランだよ? アキノ大丈夫」
「あー、まあ
とまあ聞いてきた。察しがいいよねこの子。
「違うよ。どっちのアキノもだよ? わたしが心配してるのはアナタも一緒」
「……吸血鬼の妹は狂気に関しては一枚上手だった」
「違うよ。わたしはフランだよ!」
それに何のこだわりがあるのだろう? とりあえず呼び方はちゃんとしたのにしよう。確かこの前……
「あー、ハイハイ 分かったよ。妹様」
「むー……」
こんな風に呼ばれていたはずだよね。呼んでみたけど彼女はむくれる一方だ。何が悪いのだろう? 僕たちがそんなやり取りをしているのを見ていた銀時計と魔女服が話し合い始めた。
「えっと、どういうことなのかしら」
「さあ? あたしもよくわからん」
まあ、
「てか、銀時計と妹様だけ? 姉の方はどうした? それから少年は?」
「お姉さまと彼なら氷精のお姉さんのところで足止め、だからわたしと咲夜できたの」
少年ドンマイ、それにしても本当に急いで異変終わらせないと大変なことになる気がしてきたよ。夜が明けないのもそうだけどもっと別の被害が出る気がする。
「マジか、チルノってやっぱり強いんだ。それにしても放しておくれ」
「ヤダよ。だって話したらアナタは飛んでいくんだもの」
あー、なるほど。急ぎたい気持ちがばれてたか。
「ばれてたかー」
「だからダメ、行くなら一緒。わたしは咲夜にこれ以上無理をさせたくないけど進みたいし、アナタ達はそもそも前に進みたいでしょ」
「ま、僕は一人で進む気満々なんだけど」
「それはダメ。わたしはアキノが傷つくのは嫌だよ」
まあ、この調子じゃ元凶のところまでのんびり行くしかないしね。でもさっき思ったこともあるし急ぎたいんだよなぁ。それからそこまで静観していた二人が口を挟んできた。
「ちょい待ち、お前らあたしらを置いてく気か」
「お待ちください妹様、私も行きますわ」
いやいや、そんなふらふらの状態でついていくか言われても困るだけなんだけど。本当に大丈夫なのかこの銀時計。
「あー、銀時計はともかく魔女服は置いてく気ないよ。まあ、わかってないようなら置いてく気あったけど」
「おい」
「いや、そもそも理解を求めているわけでもないけどなー」
分かってもらえるように説明する気はみじんもない。自分がわかっているのならそれでいいし、それ以上のことをする気もないからね。
「何て言うか明乃よりも投げやりだなお前」
「それはどうも」
「咲夜はお姉さまの従者なんだからここまで来なくていいよ? この空間って人間にはきついものだし。普通に耐えられてるアキノの方がよっぽど不思議だから」
まあ、普通の人間は狂気に耐えられるわけがないよねぇ。もちろん
「まあ正直な話、SAN値はとっくに0だからね?」
「さんち? なにそれ」
「なんだそりゃ」
「? 一体何のこと」
あ、思ってた反応と何か違う。あれかなぁ?
「あー
性格的に興味を持ちそうなのは魔理沙かな? いや、むしろ新しい物好きの魔理沙のことだし、教えたら絶対に巻き込んでくるよね。ついでに大図書館とか人形使いとかその辺が釣れるに違いない。何その
「ほんとに明乃とは違いが酷すぎるぜ」
「本当ね」
「そうですね」
「うん、それからいらっしゃい」
返事の中に誰か別の人間の声が混ざっている。声のほうへと目を向ければ、黒い長髪を姫カットにし、十二単を纏ったザ・平安女子のような誰かが混ざっていた。事の元凶が会いに来るとは考えもつかなかったよ。
「!」
「!!」
「おー、
「あら私、姫なのだけど? 明乃はそんな単純なことまで忘れちゃうような子だったかしら?」
十二単を纏った姫君が首を傾げた。まあ、大体そんな反応だとは思ったよ。説明もめんどくさいけど、とりあえずわかろうがわからなかろうが説明するかー。
「お生憎、あんたが知っている明乃はどこぞの三月兎のせいで酷い目に遭ってるんだよね。ついでに言うなら夜が明けないせいで今日の洗濯物が乾かない。冬の騒動と言い吸血鬼の時の騒動と言い何でこう生活しづらくなるような異変が多いんだろうなぁ」
「もしかしてだけど異変の解決したかった根底的な理由ってそれかよ」
魔女服にツッコミを入れられた。僕自身が異変解決するために出かけることってめったにないんだけどね。というか基本的に魔理沙と霊夢に連れられて異変解決に行くことが多いし。そもそも異変解決に出かけたことない気がするんだけど。
「ん? いやいや、『呼んでいる』誰かに『応える』って言うのが根本的だよ? そんな生活染みた理由なんてさ……
例えば「遊んで」と呼ばれて遊ぶのも、花見がしたいから春を探しに行くのも、霧で洗濯物が乾かないから湖を探検するのも、そういった理由のほうがいいからなんだろうなぁ。いや、理由なんてそんなもので十分なんだよ。お城に剣を収めに行った鍛冶屋の息子がいつの間にか勇者になってるのと同じくらいに簡単なことだろうし。
「それはそうかもね。壮大な理由なんて後付けみたいなものだもの」
「さて、僕は一応弾幕勝負する気あるんだけどそちらは?」
「私はあんまりないのよね。でもまあ、ここまでやってくれたあの子たちに失礼だからちゃんと『お姫様』らしくしてみようかしら」
――― 少女弾幕中。
サブタイの月下美人に特に意味はないです。四文字で語呂がいいのを考えた結果がこれでした。花言葉は関係がなかったり
そして今更気が付く時系列問題、色々と改変してるんですよね。
一応 妖々夢→紅魔館→永夜抄の順番です。次は萃夢想? もしくは花映塚? 原作の順番だとそもそも紅魔館と妖々夢が逆という。まあ、逆なのは重々承知で書いてましたけど、ここにきて順番どうしようと迷う羽目になるとは