そんなこんなで数日、博麗神社で宴会が開かれた。お昼くらいから始まって呑めや歌えやの大騒ぎ、本当にすごいなぁ。そんな様子を眺めながら僕は一人で屋根の上でお茶を飲んでいた。さっきのさっきまで知り合いに揉まれてたから疲れたんだよね。
「おー、宴会だね」
そんな意味もないことを呟く僕の隣に誰かが降りてきた気配がした。隣を向けば黒白の魔女服に金髪、そう魔理沙がそこに居た。手には何やら包みを持っている。どうしたんだろう?
「いや、普通に宴会だろ。宴会しにきてるんだから」
「そうよね。宴会してるんだから」
反対側からさらに声がしたので反対を向けば相変わらず紅白の巫女服姿の霊夢が居て片手にもった盃からお酒を飲んでいる。いつの間に、とかいうのも野暮なのでとりあえず会話の続きをすることにしようかな。
「まあ、そうなんだけど。ここまでどんちゃん騒ぎだからねー」
もうなんか宴会というよりただのお祭り騒ぎに見えてきたんだよ。あ、誰か倒れた。酔いつぶれたのかな? あれ誰だ?
「何が言いたいんだ?」
「ううん、特に深い意味はないよ。二人は別の場所行かないの?」
いつものように宴会があれば大体この二人が中心になること多いし。引っ張りだこになってるからなんとなく気になったんだよね。
「別に行かなくたっていいだろ」
「そうよね。結局主賓は紫の奴になったし。今回は特に動く気もないもの」
「ならいいけど、もうそろそろ冬だねぇ」
色づいて少しずつ落ちていく木の葉を見ながら思ったことを口にした。二人が目を丸くする。まあ、別に何か考えてこんなこと口にしてるわけじゃないけどねー。
「? まあ、そうだな」
「雪見酒もいいわよね」
「だな。縁側から雪見ながら呑むのも乙だよなぁ」
やっぱりこの二人ってお酒好きだよね。幻想郷の人って基本呑兵衛が多いししょうがない、僕より年下(な外見)の人でも躊躇なく呑んでるし。この二人は酒豪だもんなあ。皆が潰れていく中、粛々と飲み進めてたし。
「どう頑張ってもお酒を思いつくのか、僕としては炬燵にみかんだね。お鍋もいいなぁ」
冬といえばこれだし、あれだよね。炬燵でアイスは一番の贅沢! そもそも幻想郷ってアイスあんまり売ってないけど。そもそも洋菓子系が少ないのか、なければ自作するからいいけどね。
「腹が減るような話は止めにしようぜ」
魔理沙が手に持っていた包みを開いた。中からは三段重ねのお重が出てきた。あ、なるほどね。
「お弁当かー。さっきから軽食ばっかりだったからおなか減ってたんだよね」
「食べましょう。空きっ腹にお酒だけはきつかったのよね」
――― 少女食事中。
お重の中身を食べながら霊夢たちと話に興じていると、目の間に黒髪を姫カットにして十二単を着た絵本から出てきたかぐや姫みたいな人が現れた。いや、名前もかぐやだし。
「あ! 明乃、居たのね」
「ふぁい? ……あれ、輝夜さん?」
さっきも言った通り、輝夜さんだ。前に宴会があったときに出ないかって誘ったら来なかったから今回も来ないと思ってたのに。
「元気そうでなによりだわ。どうしたの? 変わったものを見るような顔をして」
「いや、前は誘っても来なかったじゃないですか」
そうだとばっかり思ったから誘ってないはず。まあ、主催は紫だし普通に呼んだのかもしれないけどね。すると輝夜さんは自慢げに胸を張った。所謂ドヤ顔ってやつ?
「色々と事情が変わったのよ。これからは外に出られるわ!」
「そうですか、よかったですね」
僕は輝夜さんの事情はよく知らないけど、良かったって思えるから不思議だなぁ。それにしてもなんでこの人というか永遠亭の人たちは異変なんか起こそうとしたんだろう? 疑問に思ったことを聞こうとしたら、先に輝夜さんが口を開いた。
「ええ、ところでてゐ見なかったかしら?」
「てゐ? 見てないですけど」
チルノと激戦を繰り広げたらしいてゐは永遠亭に担ぎ込まれた後、数日で完治した。同じだけ怪我を負ったチルノが一日で完治したことを考えると妖精の再生力(?)はよっぽどのものらしい。閑話休題
「そうなの、うーん どこに行ったのかしら?」
「見かけたら言っておきますから」
「そう? よろしくお願いね」
輝夜さんはそのままふわふわと飛んでいった。多分永遠亭の人たちが居る所に戻ったのだろう。そういえばさっきみんなに揉まれた時には会ってない気が。
「ま、いっか」
輝夜さんが去って行った方向斜め向こうの紅葉揺れる桜の木の下、そこでてゐと妹紅さんが呑んでいた。言わなかったけど、別に問題はないよね。だって「殺し合い」をしてる仲とか言ってたし。物騒なことはやめて欲しいよなぁ。
――― 少女食事中。
お重の中身もすっかりなくなりまして。僕らは食後のお茶を飲んでいた。湯呑な
「おいしかった」
「だなー。霊夢、これどこの弁当持ってきたんだ?」
そうそう、それが気になったんだよね。ここまでおいしいのって滅多に見ないよ。いや、食べたことないかな? 霊夢がめんどくさそうに答える。
「あー、里にできた食堂よ。頼んだら作ってくれたのよ。あそこ、意外においしいのね」
「……どこかわかったし、誰が作ったのかも想像ついちゃったよ」
流石、女性客を大体へこませた料理上手と食堂経営者。たまに咲夜がおかず買いに行くとかもうどれだけおいしいのって話だよねー。
「まあ、あそこの飯はうまい。わたしとしては明乃のほうがいいけど」
「えー、僕より食堂経営者のほうがおいしいでしょ」
たまに一緒になるとうまいうまい言いながら食べてるくせに。
「いや、よく食べてるから舌が合ってるってことだよ」
「ありがとう、それにしても酔いつぶれてるのも出てるしもうそろそろお開き?」
もう下の方を見渡せばたくさんの人がごろごろと転がっている。これはもう宴会じゃなくて雑魚寝大会とかになってるんじゃ。
「あー」
「適当に転がしとけばいいでしょ」
「そっかー、ところで食後のプリン食べる?」
手近に置いておいた箱の中からプリン(っぽいの)を取り出す。冷たさを操れるってこういう時には便利だよねー。まあ、牛乳は手に入りにくくて豆乳で作ったしカラメルは代用で黒蜜というなんか和風っぽい代物になってるけど。
「いただくぜ」
「ぷりん?」
霊夢が首を傾げていた。
「あれ? 食べたことない?」
「ないわね」
思えば霊夢が好きなのはおせんべいや団子、おまんじゅうといった和風な品物ばかり。さらに里にはそういった品は少ないし(ぶっちゃけあの食堂くらいでしか出してない)これはプリンも知らなくて当然か。
「洋菓子は珍しいってことかぁ。まあ、一つどうぞ」
「ありがとう」
さーて、いただきます。
お疲れ様でした。本当の意味で氷娘永夜抄、終了です。サブタイは誤字ではなく仕様です
今思えばこの章始まったの去年だったんですよね。気が付けば自分が失踪したせいで年を越していたという。とにかく、まだ次の章のプロットできてないし、別の作品に浮気するかもですが。気長にお待ちください